J-PARC/MLF 偏極中性子反射率計『写楽』の紹介と それを用いた磁性

J-PARC/MLF 偏極中性子反射率計『写楽』の紹介と
それを用いた磁性薄膜の研究
宮田 登
総合科学研究機構(CROSS) 東海事業センター
Current status of the Polarized Neutron Reflectometer “SHARAKU” at the MLF of
J-PARC and the study of magnetic thin films using “SHARAKU”
Noboru Miyata
Research Center for Neutron Science and Technology, Comprehensive Research Organization
for Science and Society (CROSS)
偏極中性子反射率計「写楽」は、薄膜のナノスケールの構造や自由界面を除く表面・界面の物
性評価を目的として J-PARC/MLF BL17 に設置されており、特に偏極中性子による磁性薄膜・多
層膜の評価を意識した設計になっている[1]。図1に「写楽」の概略図を示す。加速器駆動の中性
子源から発生するパルス状の中性子は、線源から15.5m離れた試料ステージ上の試料に照射
され、試料から反射した中性子はさらに2.5m離れた検出器により飛行時間法で検出される。こ
の試料ステージは900kgの耐荷重をもち、以下に述べる電磁石のような大型の試料環境装置を
設置することができる。ビームパス上には9つのスリット及び高速中性子や前のパルスに含まれる
遅い中性子を除去する4台のチョッパーが設置されている。さらに偏極子も設置されており、試料
の上流側および下流側に設置された2台のスピンフリッパーと合わせて反射前後で中性子の偏極
状態の変化を測定することができ、この状態の変化を解析することで、試料面内の磁化の大きさ
の深さ方向の分布を求めることができる。
「写楽」の磁性薄膜の測定では、図2に示す1T電磁石及び4K冷凍機の使用頻度が高い。4K
冷凍機は1T電磁石と組み合わせて使用されることが多く、15mm角程度までの大きさの試料を
取り付けることができ、2時間弱で4K前後まで試料を冷却させることができる。また、この他にも7
T超伝導電磁石などが使用できる。
講演では、「写楽」の整備状況及び得られた実験結果を紹介するとともに、ユーザー供用への環
境整備についても議論したい。
[1] M. Takeda et al., Chi. J. Phys., 50, No. 2, p161, (2012).
スピンフリッパー2+検極子
スピンフリッパー1
検出器
偏極/非偏極
切替機構
T0チョッパー
試料ステージ
ディスクチョッパー×3
B4Cビームスリット ×9
図1:偏極中性子反射率計「写楽」の概略図
図 2:主 な試 料 環 境 機 器 (左 :1T電 磁 石 、右 :4K
冷凍機)