平成27年度 日独指導者セミナー 「困難を抱える青少年などの支援 ~社会全体で青少年を育む~」 成果発表 グループ別テーマ(A2):「青少年援助と予防:過度なインターネット使用・ネット依存」 過度なメディア使用に対する予防教育および介入的支援について 日独の比較から学んだこと 2015年5月22日 東京にて 発表内容 • 現状 インターネット依存:日独におけるデータ比較 日独の実情 • 予防的取組み 日独の共通点 日独の相違点 • 介入的取組み 日独の共通点 日独の相違点 • 日独への提案 日独の現状 3 12 10 Anteil 8 6 4 2 0 Internetabhängigkeit in Deutschland ドイツにおけるネット依存有病率 (14 - 16 J.) (調査対象:14歳~16歳) Internetabhängigkeit in Japan 日本におけるネット依存有病率 (Zielgruppe - 15 J.) (調査対象:15歳前後) 日独の実情比較 4 中央集権制 国家の形態 連邦制 「努力義務」 法律の拘束力 法的請求権 管轄範囲が不透明 官庁間の連携 管轄範囲が縦割り ボランティアを積極的に活用 地域に根差した 活動や支援 多様な団体が提供 15.7 % 貧困率(OECD) 8.9 % 家庭内で解決する 傾向が強い 家庭内の問題を 解決する方法 外部の支援に頼る 傾向が強い 均一 社会 多様 日独の実情比較 5 教育 教育に対する保護者の不安が高まったことや親の教育力の低下による 教育任務の他者への委譲 権威主義的 養育・教育の 形態 制限をしつつ協同的 集団で責任を担う 社会の 結束力 個人主義的傾向が強い 高文脈文化のコミュニケーション コミュニケーショ ン 低文脈文化のコミュニケーション トップクラス OECDによる 生徒の学習 到達度調査 平均点以上 全国すべての学校で導入 全日制学校 導入が進んでいる 30人~40人 1クラス当たりの 生徒数 20人~30人 子どもを要支援とみなす 不登校への対 応の出発点 児童虐待とみなされる 予防的取組み:日独の共通点 デジタルメディアの扱い方を子どもに教える際、保護者が不安を抱いている 外部の専門家を学校へ招き、メディア教育のための保護者会を開催する デジタルメディアの利用において、使用制限や利用方法の管理に 大きな焦点が当てられている デジタルメディアの危険性に焦点を当てた予防教育 財源と人材の不足から、デジタルメディアの利用が学校教育の現場で あまり進んでいない 啓蒙、予防教育におけるサポート役として警察が参加している 6 予防的取組み:日独の相違点 7 全国的に啓蒙キャンペーンが展開されている 予防教育活動の多くが個別のキャンペー /メディア依存予防教育を普及するための調 ンや機関により展開されている 整機関が多くの都道府県で設置されている 三分岐型の学校教育制度 小・中・高校と進学する直線的学校制度 (全日制学校の導入が進んでいる) (すべて全日制学校) 青少年育成活動が公の財源により行われ ボランティアが積極的に活用されている ている/専門知識を有する指導者の投入 が義務づけられている(社会法典第8編) コミュニティースクールによる活動/クラブ活 動/学童保育/学習塾 青少年が余暇活動を主体的に選べるよう なプログラムが数多く提供されている 養護教諭 スクールソーシャルワーカー(一部導入) メディア利用に代わる「アナログ事業」の提供 /余暇の過ごし方に焦点が当てられている 積極的にメディアを活用した教育活動 ピア・サポートは少ない ピア・サポートが多く活用されている 介入的取組み:日独の共通点 現時点ではまだ、WHOの診断基準、ICD-10に基づいて正式に判定することができな いが、日本でもドイツでも、ネット嗜癖が治療を必要とする現象として認められている。 ネット依存有病者への支援体制や、有病者にアクセスする手法や紹介ルートは、 基本的に類似している。 日本でもドイツでも、介入的取組みにおいては、 有病者のリソース(= 長所や可能性)に着目したアプローチに焦点が当てられている。 家庭内の問題は現場で解決されるよりも、専門機関にゆだねられた上で解決される ケースのほうがはるかに多い。 日独の専門家による共同研究チームが、 介入的取組みや疫学、疾病分類において協力している。 8 介入的取組み:日独の相違点 日本では、久里浜にネット依存の予防、相談、 ドイツでは、ネット依存に対する支援機関 治療を行う専門の医療センターがある。 が緊密なネットワークを形成しており、専 門性の極めて高い支援が行われている ネット嗜癖の児童生徒は、ドイツよりも要扶助、 (依存症相談機関による支援)。 要支援とみなされている。社会においては、 本人の努力を要求するより、共感的理解を 高い専門性を有する指導者による、アウト もって接する姿勢がみられる(適応指導教室、 リーチ型を含む青少年支援措置が幅広く フリースクール等)。 提供されている。 支援システムにおいては、専門家の手による 自助プロジェクトを促進するための社会 支援よりも、ボランティアが積極的に活用され 的・法的枠組み条件が、ドイツのほうが進 ているケースが多くみられる(学生サポーター、 んでいる(支援団体による取り組みが社 親によるボランティア支援) 会に根差している/公の助成金による運 営/専門家による寄り添い支援)。 9 ドイツへの提案 10 • 学校および社会教育施設において、メディア教育プロフィールを促進、認証するための プログラムを提供する(現存している「人種差別のない学校」を例に)。 • 具体的なプログラムを実施し、家庭における教育力の向上を目指す(例、「親トーク」「親 メディアトレーナー」)。 • 現在ドイツ国内にあるメディア教育におけるスキームを評価するための研究事業を行う。 • 効果的な広報活動を通じて、メディア倫理に関する啓発キャンペーンを全国規模で 大々的に展開する。 • 教育現場で積極的なメディア活用(教育のツールの一つとしてのメディア)を重視する。 • 生活の場としての学校(知識伝達のための機関として機能するだけではなく) • 青少年が気軽に参加できる予防教育プログラムおよび依存症の支援プログラムを市町 村レベルで確実に提供できる体制を築く。 • 法律や財源等の基本的枠組みを整備し、教育分野、リハビリテーション分野、支援機関 がそれぞれの責任を果たしつつ連携して対策を講じることのできる協働チームを作る。 • 支援機関による相談および治療を効果的に提供できるように、継続的に更新される データベースを全国規模で構築する。 日本への提案 11 • 予防教育のための調整機関の設置をすべての都道府県に拡大する。 • 子ども・若者の持つ可能性や長所により着目した取組みを提供する。 • 文部科学省が推奨するメディア情報教育プログラムの実践において、教育効果を評価で きるシステムを構築する。 • 積極的なメディア活用(ツールとしてのメディア)を教育現場で普及させるためのプログラ ムを開発し、拡充する。 • 具体的な取組みを実施し、家庭における教育力の向上を目指す(例:メディア教育指導 者養成の徹底)。 • ピア・サポートを充実させる(例:スマートフォン等の使い方に関する倉敷子ども宣言) • 身構えずに気軽に利用できる支援プログラムとして、専門家による研修を受けた生徒が 専門家の助言や指導をいつでも受けられる状態で同級生や後輩を支援する協力システ ムを確立する • 自助プロジェクトをサポートし、寄り添い支援を提供する総合相談窓口を設置する • 依存症支援および青少年支援における(アウトリーチ型)訪問・通所支援をプロフェッショ ナル化し、専門支援機関における専門性の高い指導者による支援を拡充する 展望:日独における今後の課題 • 日本で学んだ内容およびドイツ団としての提案を、それぞれ の青少年育成分野において具体的に発展させ、実行し、定 着させることを制度化する • 日独への提案を具体的かつ持続可能な対策へと昇華させる こと • 日独青少年指導者セミナーの参加者が、上述のプロセスに 参画できること 12
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