琵琶湖疏水を巡る野外博物館の計画と観光まちづくり

The BIWA Canal Pilgrim
琵琶湖疏水を巡る野外博物館の計画と観光まちづくり
明治時代において、京都は東京遷都により衰退の一途を辿ることになっていた。その打開策の一つとして打ち出され
たのが、日本一の湖である琵琶湖から京都まで水を引き、水によって京都を復興させる『琵琶湖疏水計画』である。
疏水計画は様々な人々の努力により成功し、衰退の一途を辿っていた京都を京都として支えてきたのは琵琶湖疏水で
あるといっても過言ではないほど、疏水は京都にとってなくてはならない存在となっていた。
そして今日、疏水は京都でのそのあり方を変えつつある。
しかし、そのあり方では、京都を支えていた琵琶湖疏水という存在は埋もれていき、次第に人々から忘れ去られてい
くのではないだろうか。
そう思い、琵琶湖疏水の記憶を、残し、巡り、想い、受け継いでゆくための計画を提案する。
▼BACKGROUND
岡崎地域について
琵琶湖疏水について
琵琶湖疏水とは、第 3 代京都府知事となった北垣国道が、明治維新による東京遷都のため沈みきった京都に
琵琶湖疏水 水路表
活力を呼び戻すため建設された運河である。疏水の水力で新しい工場を興し、舟で物資の行き来を盛んにし
第 1 疏水 延長 19,988m ようという計画であった。
日本で初めて竪坑利用による工法を採用し、れんが、材木も直営で生産し、ほとんど人力だけで工事を行った。 勾配 1/1,000 ∼ 1/7,000
取水量 8.35 ㎥ /s
着工から 5 年後の明治 23 年 (1890) に完成し、水力発電を採用したおかげで、新しい工場が生まれ、路面電
開水路 延長 12,767m
車も走り出し,京都は活力を取り戻した。
幅員 6.20 ∼ 18.20m
松ヶ崎浄水場
疏水分線 延長 3,346m
勾配 1/150 ∼ 1/4,000
岡崎地域では、現在「岡崎活性化ビジョン」という岡崎における都市の創造性を高めるビジョンが策定されて
いる。そのなかでは、岡崎のコアゾーンに集積している多彩な地域資源を対象に、その結びつきを強めること
で、文化交流観光都市としてさらなる魅力を求めている。
開水路 延長 2,811m
高さ 1.50 ∼ 2.00m
幅員 1.80 ∼ 5.25m
( 水路閣 93mを含む )
神宮丸太町駅
哲学の道 ( 疏水分線 )
白川
泉屋博古館
京都市武道センター
堀川
松ヶ崎浄水場導水管
疏水分線
鴨川
山ノ内浄水場
疏水事務所
第3トンネル
第2トンネル
琵琶湖疏水
第 2 疏水取水口
第1疏水取水口
第 2 疏水制水門
大津分所
大津閘門・制水門
第2疏水連絡トンネル
動力
第2疏水
電力
藤尾測水所
第 1 疏水 ( 運河 )
凡例
塩小路放水口
第 1 疏水
第2疏水
疏水分線
鴨川運河
導 水 管
三ノ橋放水口
新山科浄水場導水トンネル
新山科浄水場
防火用水
舟運
灌漑
鴨川
第 2 疎水により
後に強化される
現在
宇治川
琵琶湖疏水 簡易全域図
水道水
琵琶湖疏水年表
明治 21 年 8 月 水路閣 完成
明治 23 年 1 月 蹴上インクライン 完成
明治 23 年 3 月 琵琶湖疏水 ( 第 1 疏水・大津∼鴨川、疏水分線 ) 完成
明治 24 年 5 月 蹴上発電所 完成 ( 日本最初の事業電力発電 )
明治 45 年 3 月 蹴上浄水場 完成 ( 日本最初の急速ろ過式を採用 )
昭和 23 年 11 月 蹴上インクライン 運転休止
昭和 52 年 5 月 蹴上インクライン 復元 ( 形態保存 ) 完了
昭和 57 年 11 月 蹴上疏水公園に田邊朔郎博士の銅像 建立
昭和 58 年 7 月 南禅寺水路閣、蹴上インクライン 京都市指定史跡登録
平成 元年 8 月 琵琶湖疏水記念館 開館
平成 8 年 8 月 第 1 疏水関連施設 12 箇所 国指定史跡登録
平成 18 年 2 月 農林水産省 琵琶湖疏水を疏水百選に選定
平成 19 年 11 月 経済産業省 近代化産業遺産に認定
田邊朔郎
(1861 年 12 月 2 日 - 1944 年 9 月 5 日)
日本の近代土木技術の礎を築いた土木工学者。
琵琶湖疏水計画における一番の功労者。
疏水の機能として貢献したうちの1つが舟運である。
舟による運搬は、京都への物資の移動に役立った。
南禅寺は明治初期に広大な寺領の大半と
13 の塔頭を失った。その寺領跡に出現
したのが南禅寺界隈庭園群である。
この別荘群の庭園は近代日本庭園の先駆
者とされる作庭家・7 代目小川治兵衛に
より作庭され、ほとんどが疏水の水を引
き込んだ回遊式池泉庭園であり、近代的
日本庭園の象徴ともいえる存在となっ
た。
庭園群
南禅寺
南禅寺水路閣
蹴上発電所
東山駅
蹴上インクライン
東山
ウェスティン都ホテル
白川
蹴上駅
蹴上浄水場
岡崎ビジョン検討対象エリア
琵琶湖疏水
岡崎の核 ( コアゾーン )
岡崎地区の問題 ( 岡崎地域活性化ビジョンより )
・情報発信が弱く,「岡崎」の知名度が低い。
・優れた景観の継承と文化・交流ゾーンとしての機能強化の
・貴重な文化遺産の継承と活用を両立させる仕組みが不十分。 ための都市計画のルールが必要。
・各施設の老朽化,機能強化への対応が必要。
・地域に人が憩い,交流し,滞留する機能が不足している。
・施設間連携が弱い。
・夜が寂しい。
・周辺地域からの人の流れや公共交通によるアクセスが弱い。 ・環境モデル都市を牽引する進取の取組が必要。
・来訪者を総合的に案内する環境が不十分。
春の特定の期間のみ、
桜ライトアップと共に
琵琶湖疏水上にて十石
舟が運航されている。
南禅寺船溜まりからス
タートし、夷川発電所
前船溜まりで折り返
し、南禅寺船溜まりへ
戻るというルートを
とっている。
景観
南禅寺界隈別荘庭園群について
野村美術館
岡崎回廊十石舟めぐり
防火用水
電力
疏水計画において、最も重要な役割を果た
した水力発電。この電力が電鉄などに使わ
れ、京都の復興に大きく貢献した。
神宮道商店街
水道水
琵琶湖
運河始点
大津市中
琵琶湖疏水 第 1 疏水 簡易全域断面図 1:50000
第一トンネル
長等山
小関越
第一シャフト
第二シャフト
滋賀県
界
京都府
諸羽トンネル
安朱
御陵
第二トンネル
舟溜
第三トンネル
日岡山
舟溜
インクライン
南禅寺
濠川
至 鴨川
新高瀬川
三条駅
三条京阪駅
( ただし、点線は暗渠である )
桂川
永観堂
京都府立図書館
みやこめっせ 京都市美術館 京都市動物園
京都国立近代美術館
琵琶湖疏水記念館
有鄰館
無鄰菴
京都観世会館
京都国際交流会館
第1トンネル
山科分所 諸羽トンネル
墨染発電所
伏見分所
伏見新放水路
伏見制水門
伏見新放水路
本線放水口
放水口
観峰美術館
京都市美術館別館
細見美術館 京都会館 岡崎グラウンド・テニスコート
岡崎公園
松ヶ崎浄水場
取水口
第6トンネル
蹴上インクライン
第5トンネル
夷川発電所
南禅寺トンネル
仁王門放水口
第4トンネル
蹴上発電所
仁王門制水門
第1・第 2 疏水合流点
合流トンネル
蹴上浄水場
白川放水路
冷泉放水口
夷川発電所
建設当時
琵琶湖
分線放水口
平安神宮
十石舟運航ルート ( 途中乗降不可 )
無鄰菴
一般公開されている庭園
別荘庭園群の中で唯一一般公開されている無鄰菴庭園。南禅寺界隈庭園別荘群を含
・無鄰菴…京都市
む植治の庭に関する説明などが展示されている。
・旧上田秋成邸…料庭 八千代 ( 利用者には公開 )
・旧寺村助右衛門邸…料理旅館・料亭 菊水 ( 利用者には公開 )
その他 ( 現在の所有者、使用法など )
・洛翠…日本調剤 ( 研修保養所 )
・清流亭…大松株式会社 (web 公開 )
・野村碧雲荘…野村證券
・有芳園…住友グループ
7 代目小川治兵衛
・智水庵…個人所有
近代日本庭園の先駆者とされる作庭
家、庭師。通称・植治 ( 屋号)。
庭園群はすべて植治によって作庭され
ている。
・真々庵…鳥居茶屋 ( 夏期のみ川床料理営業 )
(1860 年 5 月 25 日 - 1933 年 12 月 2 日)
・織宝苑…真如苑 ( 流響院に改名、春・秋の数日間のみ一般公開 )
・對龍山荘…ニトリホールディングス ( ゲストハウス )
・何有荘…ラリー・エリソン ( 個人所有 )
・怡園…不明
▼SITE
▼PROBLEM
敷地は京都府京都市左京区、岡崎地域の南禅寺界隈である。
計画範囲であるこの周辺には、疏水に関する様々な要素が点在して
いる。水路閣、船溜まり、インクライン、ねじりまんぽ、発電所、
田邊朔郎像、ポンプ場、庭園群、放水路といった疏水にとって重要
な役割を果たした、または今も果たしているものが存在している。
しかし、あくまで点在しておりそれぞれの結びつきは薄く、視認で
きないものも多い状況にある。
岡崎地域は、平安遷都 1100 年を記念して創建された平安神
宮や京都市動物園、京都国立近代美術館など多くの観光施
設が集積しており、今後さらなる観光化を行おうとしてい
る地域である。
疏水においても、有名な南禅寺水路閣や当時重要な役割を
担った船溜やインクライン、疏水の水を引いた庭園群など、
疏水に関する様々な情報が点在しているような場所である。
また、疏水竣工 100 年を記念して平成元年に建設された琵
琶湖疏水記念館もある。
南禅寺界隈の疏水の水系は、蹴上船溜系・発電所取入口系・扇ダム
系の 3 つに分かれている。
疏水分線・扇ダム放水路・船溜以外はほぼ暗渠か細い側溝であり、
管理事務所ですらしっかりとした位置はわからない状況である。
生活用水として送られている第 2 疏水はほぼすべてが暗渠である。
計画範囲の決定に関しては、この一帯の疏水要素と通りが
境界になることとする。
①
②
③
④
⑤
扇ダム放水路。
扇ダム放水地点。
インクライン下端。
疏水の水は急流で、立ち入る 多くの庭園はこのダムから直 雑草が乱暴に生えている。
理由がないためほとんど人は 接放水されている。
いない。
船溜まりの噴水。
疏水分線沿いの細道。
碧雲荘沿いの道。
電力ではなく高低差による水 閑静で、疏水であろう水が引 周辺住民や観光客の抜け道の
圧で噴き上がるため、昼夜問 かれている。
ようになっている。
わず動いている。
⑧
怡園
②
流響院
清流亭
野村碧雲荘
③
聴松院
南禅寺三門
旧上田秋成邸
⑧
⑨
対龍山荘
旧寺村助右衛門邸
金地院
⑩
真乗院
南陽院
⑮
⑭
排水処理施設
⑰
企業のみ
南禅寺!
みやこめっせ!
田邊朔郎…?
疏水遺構の存在は知られていても、疏水との関
係性は以外と知られていない。
庭園群はほとんどが企業所有で非公開で
ある。また、敷地は塀で囲まれているため、
一般には見ることができない。
3 過度な観光客密度による道路混雑
4 疏水網の視認のしにくさ
⑬
南禅寺敷地内には観光バス駐車場やタクシー乗
この一帯には、疏水ネットワークが張り
り場が中心にあるため、車両交通が多い。しかし、 巡らされている。しかし、暗渠や側溝が
道路幅が狭いため、混雑を起こしやすい。
多く、疏水として視認しづらい。
疏水竣工 100 年を記念して平成
元年に建設された琵琶湖疏水記
念館。
建設当時の測量図面や機具など
が展示されており、2009 年には
リニューアルオープンとして、
展示品が増量している。
しかし、疏水博物館としてはもっ
たいない状況となっている。
⑮
⑯
正因庵
⑫
南禅寺水路閣
南禅院
⑪
インクライン滑車静態保存。 南禅寺プール跡の入り口。
水路閣から山へ続く水路。
たまに訪れる人々がいるが、 舟が上に乗っており、当時の 現在は地下に排水処理施設が
建設されており、そこそこの
状態で残されている。
片側は崖で危ないところと
広範囲が閉鎖されている。
なっている。
⑰
⑱
⑲
1 敷地へのアクセスのしづらさ
2 親水性の薄さ
何有荘
智水庵
ウェスティン都ホテル
水路閣!
南禅寺
⑬
天授庵
平安神宮!
琵琶湖疏水記念館
⑭
池
インクライン…?
水路閣から北上した場所。
南禅寺水路閣。疏水としても 上から覗く水路閣。
レンガ造のトンネルへ続いて 南禅寺としても名所であり、 しかし、覗ける場所は狭く危
ないところとなっている。
いる。
多くの観光客が集まる。
牧護庵
⑦
琵琶湖疏水…?
⑩
扇ダム
旧帰雲院
⑥
⑫
2 庭園群の閉鎖性
インクラインのレール。
昔はこの上に舟を載せた滑車
が走っていた。
⑤
帰雲院
南禅寺船溜
琵琶湖疏水記念館
無鄰菴
⑪
④
①
⑨
⑦
庭園間の道。
南禅寺敷地内のタクシー乗り 南禅寺敷地内の道。
このようにほぼすべての庭園 場。付近に観光バス駐車場も 多くの人々で賑わっており、
や寺院は塀に囲まれている。 あり、車両交通が激しい。
紅葉時などはさらに賑わう。
洛翠
真々庵
⑥
1 疏水の認識力の低さ
⑯
インクライン下を通る『ねじ 蹴上発電所への放水のための 水路閣から山沿いを通り発電
りまんぽ』というトンネル。 導水管。当時のまま残されて 所へ疏水は続いている。
いる。
⑱
⑳
⑲
⑳
記念館へ立ち入る場合、回り道をするか、
整備不足の道を通る必要があるため、アク
セスがしづらくなっている。
発電用取入口
蹴上疏水公園
蹴上疏水公園の広場から見え 広場にある疏水の設計者・
る風景。平安神宮の鳥居など 田邊朔郎の銅像。
岡崎の街が見渡せる。
蹴上浄水場
蹴上疏水公園の一部。
噴水 (?) があるが、今は動い
ていない様子。
蹴上船溜
ポンプ場
3 建物の閉鎖感
疏水との間には柵があり、水との関わり方
ほとんどないと言える。記念館の水との関
わりはほぼ噴水のみである。
4 展示物の集中
壁!
インクライン上端にあるもう 疏水を浄水場へ運ぶための旧
第 2 疏水の合流洗堰。
ポンプ場。閉鎖されており、
冬季に第 2 疏水が休止し、第 一つの滑車。
近づくことはできない。
1 疏水のみになるときオー
バーフローする。
記念館はそこそこの高さを持っており、か
つファサードはほぼ壁であるため、閉鎖的
で通過性もない。
展示物がここへ集中していることで、あた
りへ散在している疏水要素を拾いづらく
なっている。
▼LAYER
計画範囲の現状を様々なレイヤーに分け、この地の現状を把握する。
このレイヤー分けにより、この地には非常に多くのコンテクストがあることがわかる。この多数のコンテクストを活かしながら計画・設計を行っていく。
コンタ
オープンスペース
計画範囲
1m
垣根
駐車場
計画範囲
塀
生垣
森・林・木
南禅寺界隈別荘庭園群
計画範囲
疏水
駐車場
大型用駐車
住宅・学校施設
計画範囲
庭園
疏水関連施設敷地
疏水関連施設
暗渠
開渠
道路
計画範囲
計画範囲
疏水関連
計画範囲
計画範囲
オープンスペース
10m
樹木
道路体系
計画範囲
住宅
別荘
学校施設
疏水池
南禅寺関連
この地のレイヤーを重ねる
料亭・商店
計画範囲
南禅寺・別院塔頭
南禅寺敷地
南禅寺関連施設
計画範囲
開渠
疏水池
旅館・宿坊
歴史遺産
暗渠
計画範囲
料亭・商店
計画範囲
国宝
計画範囲
暗渠
重要文化財
史跡
名勝
計画範囲
旅館・宿坊
▼DEVELOPMENT
疏水施設の集中している3つの地点を中心に、暗渠になっている疏水
DESIGN PROCESS
を表に出しつつ、その 3 点を結んでいく。その範囲に博物館分棟や遊
歩道、休憩所といったレイヤーを新たに重ねていくことで、現状の疏
塀
水施設を活かしつつ、この地一帯を博物館化する。
また、計画範囲内の車両交通をほぼ廃止し、歩行を基本とする。一部、
インクラインや舟を通すことで区間移動をしやすくする。
疏水
その上で、計画範囲内を開発・改修・維持の 3 種類に分類し、それぞ
れ設計を行っていく。
庭園群
1.既存レイヤーを重ねる
開発 塀
庭園群
2.その上に
開発レイヤーを重ねる
設計
南禅寺
疏水
南禅寺
住宅
改修
3.その上に設計を重ねる
維持
住宅
開発
改修
料亭
料亭
疏水
開発
計画範囲
山間部の疏水が通っている部分、
南禅寺プール跡、記念館の敷地
を主に開発していく。今ある記
念館は取り壊すこととする。
記念館部分は野外博物館のゲー
ト的役割、山間部は疏水沿いの
崖の危険性の軽減、プール跡は
車を一点に集中させるために開
発していく。
暗渠をもとに新たに開渠を増や
していく。その開渠がこの野外
博物館の道しるべとなる。
計画範囲
現開渠
新開渠
開発する範囲
取り壊す建物
改修
開発レイヤーを重ねる
新歴史遺産
計画範囲
改修範囲
現観光用駐車場、旧ポンプ場付
近、扇ダム前を現状を活かしな
がら改修する。
特に現駐車場は駐車場としての
機能をなくし、博物館の中心に
あたるため、建築も建てていく
こととする。他2箇所はエッジ
となる部分なため、境界として
の改修も視野に入れていく。
計画範囲
世界遺産
現在登録されている歴史遺産に、
さらに今後歴史遺産に登録され
るであろう場所を選定していく。
特に、疏水に関しては岡崎地域
的にも世界遺産登録を視野に入
れている。
重要文化財
名勝
伝建地区
維持
交通
計画範囲内の交通を整備する。
車両交通は住宅圏以外ほぼ廃止
する。また、春の数週間のみ行
われている十石舟を春のみでな
く定期的に動かし、新たに引い
た疏水の上を走らせる。そして、
インクラインを再起動させ、船
溜まり間の交通に加える。
基本的な疏水施設は現状維持し、
今の良さを見せていくこととす
る。
また、住宅や店舗、南禅寺関連
施設も維持し、今のまちの良さ
も残していく。
計画範囲
現状維持
計画範囲
車
インクライン
舟
▼PROPOSAL
AREA MAPPING
計画範囲内をエリア分けし、マスタープランとして分かりやすく表現する。
開発レイヤーと既存レイヤー、3 つのコンセプトを基に、エリアを分けていき、マスタープランを作成する。
それにより、この博物館を一つのまちとして設計していく。
庭園エリア
1疏水要素の拡散
・庭園期間限定公開
・石畳遊歩道
MASTER PLAN
・休憩所
ゲートエリア
博物館
集中していた情報をこの地に散らし、実物を見ながら疏水を感じられ
るようにする。これにより、疏水に対する視覚的情報を色濃く伝える。
・広場
・船乗り場
・屋外展示
情報館
待合・乗り場
住宅・商店エリア
広場
中央エリア
広場 ( 改修 )
庭園・寺院エリア
・庭園期間限定公開
・水路による遊歩道
広場 ( 既存 )
疏水
疏水 ( 開発 )
旅館 ( 既存 )
公園エリア
料亭・店舗
・現状維持 ( 疏水公園、疏水施設 )
別荘庭園
南禅寺
・博物館
・観光用駐車場
疏水施設
料亭・旅館
新博物館エリア
駐車エリア
疏水 ( 既存 )
3交通整備
・水路による遊歩道
・船乗り場
・インフォメーションセンター
・公園
休憩所
この地に暗渠や側溝として広がる疏水網を開渠や石畳、建築により表
へ出し、疏水網を可視化する。博物館内の疏水による結びつきを強める。
南禅寺エリア
・現状維持 ( 住宅、商店 )
美術館 ( 既存 )
2疏水網の可視化
学校エリア
南禅寺建築
南禅寺エリア
+
交通
船
インクライン
観光用車両と歩行者により混雑を起こしやすかった交通を、車両を一
点に集中させ、博物館内を歩行者専用にすることで混雑を解消する。
そこに船による交通を追加し、巡ることに幅を持たせる。
ポンプ場・インクラインエリア
車
・船乗り場
プロムナード
現状維持建築
街区
▼SOFTWARE PLANNING
企業・個人のみの所有であったため、維持管理
庭園ダイアグラム
ほぼ非公開である庭園群を期間限定公開として公開していく。
のために非公開であった庭園を限定的に公開す
季節毎に設定していき、観光客が特に多くなるサクラの季節と紅葉の季節には短期間のみ全ての庭園を公開する。
公開する庭園は、あくまで展示物として公開し、他の機能を持たさない。
企業・個人
+
期間限定
公開
企業・個人
のみ
庭園公開スケジュール
公開スケジュールの決定に関しては、無鄰菴、八千代、菊水に関しては現状通り、年中公開する。
上記のとおりサクラと紅葉の季節には全ての庭園を公開し、その他の時期は現在の限定公開時期やサクラの分布などか
1∼2月
ら決定していく。ただし、何有荘、智水庵に関しては個人所有のため、全庭園の公開時期以外は公開しないものとする。
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
3月
サクラの季節
ることで一般にも知ることができ、かつ維持管
理する期間も確保することができる。
また、公開時期をそれぞれずらすことで、その
時期毎に巡り方を変えることができる。
4月
5月
全庭園
12 月
無鄰菴
八千代
菊水
清流亭
對龍山荘
洛翠
清流亭
野村碧雲荘
對龍山荘
6∼8月
9∼ 10 月
野村碧雲荘
清流亭
洛翠
野村碧雲荘
清流亭
洛翠
流響院
怡園
野村碧雲荘
流響院
怡園
11 月
紅葉の季節
12 月
流響院
真々庵
怡園
何有荘
智水庵
全庭園
野村碧雲荘
清流亭
洛翠
野村碧雲荘
流響院
野村碧雲荘
清流亭
流響院
對龍山荘
清流亭
對龍山荘
▼HARDWARE PLANNING
A. 疏水記念館跡広場
この地一帯を博物館化するために、分棟型博物館、休憩所、広場を設計し、点在させ
ていく。それを開発レイヤーにおいて、開発、改修に設定した 6 か所を設計していく。
また、遊歩道、水路の計画も行っていく。
今ある記念館を取り壊し、船乗り場
1F PLAN 1:500
模型写
怡園
流響院
清流亭
洛翠
野村碧雲荘
D. 扇ダム前休憩所
真々庵
南禅寺船溜
A. 疏水記念館跡広場
無鄰菴
池
旧上田秋成邸
( 舟乗り降り+
C. 中央疏水公園
D. 扇ダム前休憩所
場と広場を設計する。
扇ダム前の急流放水路に沿って休憩所となるウッドデッキ
Design Concept
A-A SECTION 1:300
3種類の大きさのデッキで構成する。
それぞれに役割を持たせる。
配置は山に登るにつれて密度を濃くする。
B1F PLAN 1:500
Boarding Point 1
3,000
2,000
2,000
Waiting Room
1. 道としての足場
Open Space
5,000
3,000
2. 立って休む
5,000
3. 座って休む
Design Concept
写
A
博物館のゲート的な役割を持たせるために建物は建てず、
シンボル的に屋根のみかける。
記念館としての記憶は残していくために、屋根のデザイン
に記念館のデザインを残し、地下はコンバージョンにする。
A
+全体像 )
A
A
Rest P
B. 旧九条山ポンプ場前船溜まり
旧九条山ポンプ場付近に船着き場とその屋根を設計する。
扇ダム
舟ルート
Scale 1:500
インクライン
インクライン
↓
船着き場
↓
合流トンネル前
↓
ポンプ場
↓
船着き場
↓
インクライン
船着き場
A
Design Concept
屋根を山に溶け込ませる。
Boarding Point 2
青→既存要素
A
E. 南禅寺プール跡駐車場
広大な敷地を持つ南禅寺プール跡 ( 現排水処理施設 ) に駐車場
赤→設計要素
A
第 1・第 2 疏水合流点
インクラインから、舟をポン
プ場前まで引き込む。これに
より今まであまり近づけな
かったポンプ場を目の前で見
ることができる。
SITE PLAN 1:500
ポンプ場
船溜まり
第 3 トンネル
インク
の通路
インク
A
現排水処理施設との隔絶のため、疏水で囲う。
Parking
南禅寺水路閣
対龍山荘
旧寺村助右衛門邸
F. 山間疏水ミュージアム
南禅寺プール跡
何有荘
智水庵
E. 南禅寺プール跡駐車場
発電用取入口
蹴上疏水公園
SITE PLAN 1:1000
蹴上船溜
B. 旧九条山ポンプ場前船溜まり
ポンプ場
View Point 7
B
Scale 1:500
B
A-A SECTION 1:300
View Point 1‐山の自然と疏水‐
山間部の自然と疏水を見る。もう片側には壁と屋根を立て、
視線を疏水と山を同時に見られるように向ける。
C. 中央疏水公園
中央の観光用駐車場であったところに船乗り場とインフォメーションセンターを
設計する。そして、既存の休憩所・店舗を含めこの一帯を公園化する。
Design Concept
周辺の建物は箱と道から成り立っているものが多い。
ここにもそのボリューム感を活かしつつ、外観はモダン的にしていく。
Boarding Point 3
EV
A
Information
周辺のボリューム感
+
モダン感
A
SITE PLAN 1:500
B-B SECTION 1:200
A-A SECTION 1:300
A-A SECTION 1:200
F. 山間疏水ミュージアム
山間部の疏水が流れているところにミュージアムを設計する。
ここでは通常の疏水に関する展示品の他に、疏水の水自体を様々な視点から見ることのできる展示品とする。
水路閣も展示品の一部として見立てる。
キを設計する。
Design Concept
疏水の水を様々な視点から見ながら歩ける仕組みを作る。
景色とともに見たり、水自体を操作したりしながらパターンを作っていく。
水路閣もまた、そのパターンの一部となる。
View Point 6‐トンネルと疏水‐
今ある疏水のトンネルを見る空間を作る。
ここまで来て疏水が山のなかを流れていることが分かる。
G-G SECTION 1:200
Outdoor Gallery‐疏水水路閣‐
水路閣をこのミュージアムに組み込む。水路閣も展示品に見立
てることで、疏水ミュージアムとしての意義を強める。
Place
G
Gallery 3
View Point 6
場を設計する。
F
Outdoor Gallery
(Waterway Structure)
View Point 5
クラインの下部を掘り、駐車場へ
路を確保する。
クラインを高架的な扱いとする。
Gallery 2
F
A-A SECTION 1:500
View Point 5‐疏水博物館‐
B-B SECTION 1:500
ここではスラブを張り出す。それにより計画する疏水博物館全
体を見渡せる空間になる。今ある樹木は切り開く。
G
駐車場の歩行者出口用には、南禅寺
プールの柱の名残があり、その部分
がゲートとなる。
E
View Point 4
E
F-F SECTION 1:200
View Point 4‐ガラスと外部と疏水‐
D
View Point 3
D
この空間は内部的に扱い、壁と屋根で囲いつつ、疏水と外部へ
視線を向ける。外の景色と疏水を同時に感じることができる。
C
View Point 2
C
E-E SECTION 1:200
View Point 3‐滝と疏水‐
疏水を滝のように下に流し、そこへ水溜りと広場を設ける。
疏水を感じながら休める空間となる。
SITE PLAN 1:500
B
View Point 1
B
A
D-D SECTION 1:200
View Point 2‐アーチと疏水‐
水路閣のようなアーチの中を見ながら、ガラスを張った疏水の
上を歩く。アーチをくぐりながら疏水の上を歩ける空間となる。
Gallery 1
A
C-C SECTION 1:200