「ひるおび!」「あさイチ」にみる

11月号
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知っておきたいニュースの深層
第7回 「ひるおび!」
「あさイチ」
にみる、
消費者に評価され続けるコツ
民放各局の情報番組の中で圧倒的な強さをみせているTBS系情報番組「ひるおび!」やNHKの
「あさイ
チ」では、各局でワイドショーの視聴率争いが激化する中で、
番組作りにこれまでとは違った工夫を行い、
安定した高い視聴率を獲得しています。
「地道に、誠実に、
信頼感の積み重ね」
の番組作り
TBS系情報番組「ひるおび!」は、2012年10月以来、丸3年にわたり同時間帯での「ヒルナンデス!」
「ワイド!スクランブル」
「バイキング」など他局の番組を抑え、首位の視聴率を獲得しています。
2015年
9月の月間平均視聴率(2部、午前11時55分~午後1時52分)でも7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地
区)を記録しました。
「ひるおび!」の松添美徳プロデューサーに、番組作りのポイントをインタビューし
た記事の中では、
消費者に評価され続けるコツが語られていました。
「ひるおび!」では、その日扱ういくつかのテーマに合わせて、専門家を招き、MCとレギュラーコメン
テーターとの議論をしています。他の番組では、
ジャンルによってはMCとレギュラーコメンテーター陣
で進めてしまうことも多い中、専門家を招いて丁寧に視聴者へ情報を伝えていこうという地道な積み重
ねをしていることによって、視聴者は安心して番組をみることができ、番組への信頼性も増しています。
また、司会の恵 俊彰さんが視聴者レベルに合わせた疑問や質問を専門家にどんどんぶつけていくスタイ
ルで番組が進んでいくために、専門家側も
「あれこれ話せるのでいろいろな材料を用意していきたくな
る」と語る人もいるようです。この結果、他局の番組と比べると、
番組が伝える情報に厚みが増してきてい
ます。
番組作りに関して松添氏は、
「うちは『独占スクープ!』みたいなでかい当たりを狙わないんですよ。細
かくヒットをつなげてランナーを送って。そういう積み重ねをしています」
とコメントしています。
「地道
に、誠実に、信頼感の積み重ね」の番組作りは、大きな当たりを狙わず、旬のテーマをどのような切り口で
並べて、きちんと専門家の意見も添えて提供する。この番組作りのコンセプトは、視聴者である一般消費
※1
者から長い間評価されるヒットビジネスにも通じるものではないでしょうか。
NHK「あさイチ」の高視聴率を支えるのも、
徹底した顧客主義
「ひるおび!」と同様に、朝の情報番組で高い視聴率を獲得しているのが、NHKの「あさイチ」です。
「朝
ドラの後に視聴率が大きく下がるのは仕方がない」
というのがこれまでの不文律で、
民放各局の朝の情報
番組が
「事件・事故・芸能ゴシップ」を中心に扱うのに対し、NHKらしい上質な生活情報番組はかなわな
いと信じられていました。
NHKでは、番組改編で朝の情報番組を「あさイチ」にした時に、ある決断をしました。それは「上質な番
組作り」は守りつつ、徹底した顧客主義を導入し、NHK離れが進んでいた主婦、とくに40代女性にター
ゲットを絞った戦略を立てました。
まず、
女性が受け入れやすい「和風な顔立ち」
の有働由美子アナウンサーを起用。
さらに最近では有名に
なった
「朝ドラ受け」といわれる徹底した連動を導入し、出演者をゲストに呼ぶようにしました。そして、
「オンナの股関節ケア」
「我慢の限界! 夫との会話」など「40代女性目線のトピックで構成した特集」で女
※2
性視聴者の囲い込みに成功しています。
局アナを有効に活用したわかりやすいプレゼンテーション
さらにこの2つの情報番組では、局アナを有効に活用しています。
ボード解説やフリップによるプレゼ
ンテーションに、多くの局アナを積極的に導入し、MCや司会者との積極的なかけ合いを通じて、視聴者
にわかりやすく情報提供をしています。このあたりも、
視聴者目線でわかりやすい情報番組を目指してい
る姿勢が汲み取れます。
消費者に愛される製品・サービスを開発するコツは、このようなテレビ番組からも読み取れます。モノ
があふれ、どの企業からも一定以上のレベルのサービスが受けられる現代において、
ムダなものやわかり
にくいもの、信頼性の低いものを選ぶ消費者はいません。
「地道に、誠実に、信頼感の積み重ね」と
「徹底し
た顧客主義」は、この2つの情報番組がコンセプトとしたキーワード。さらに大きな当たりを求めてばか
りではダメだということを、安定した視聴率=評価を得られている「ひるおび!」と「あさイチ」は教えて
くれています。
【出典】
※1 日刊スポーツ でかい当たり狙わず「ひるおび!」
丸3年首位の秘密
http://www.nikkansports.com/entertainment/column/umeda/news/1545256.html
※2 東洋経済ONLINE “NHK顔”の勝利? 「あさイチ」独走のワケ
http://toyokeizai.net/articles/-/39717
(PLAN G 大坪 和博)