上場株式等の譲渡所得等を申告する場合の社会保障制度への影響 平成

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平成 27 年 8 月 10 日
No.509
上場株式等の譲渡所得等を申告する場合の社会保障制度への影響
平成 27 年 8 月より介護サービスを利用した際の負担割合について、所得基準が設けられ、一定の負担能力がある場合には、
自己負担が 1 割から 2 割に引き上げられることとなりました。
例えば、証券会社等を通じた上場株式等の譲渡で生じた損失は、確定申告をすることにより、翌年以後 3 年間にわたって繰越
すことができ、繰越した損失は、翌年以後の株式等の譲渡益及び上場株式等に係る配当所得と確定申告により通算することで、
源泉徴収された所得税等の税金の還付を受けることができます。
しかし、確定申告を行うことで保険料の負担が増える等の影響があり、税金の還付を受けられた後に驚かれることがあります。
そこで、上場株式等の譲渡損失の繰越控除を行うことにより、どのような影響があるのか確認してみたいと思います。
1.国民健康保険、後期高齢者医療保険及び介護保険の各保険料への影響
国民健康保険については、被保険者の「所得」に各市区町村が定める保険料率を乗じて保険料を算出する仕組みとなっていま
す。国民健康保険料算出時の「所得」とは、国民健康保険法施行令において「地方税法に規定する総所得金額等から 33 万円を
控除した金額」と定められています。後期高齢者医療保険については、高齢者の医療の確保に関する法律施行令において「基礎
控除後の総所得金額等に…所得割率を乗じて得た額」と定められています。
次に、介護保険料については、国民健康保険とは違い、被保険者の「所得」区分に応じて保険料が決まる仕組みとなっていま
す(本人が市町村民税非課税の場合には、同一世帯に市町村民税の課税者がいる場合といない場合で保険料が異なります。
)
。介
護保険料算出時の「所得」とは、介護保険法施行令において、
「合計所得金額」と定められています。
以上のように、国民健康保険や後期高齢者医療保険では「総所得金額等」
、介護保険では「合計所得金額」で保険料が決まる
ことになります。下表のとおり「合計所得金額」が上場株式等の譲渡損失等の繰越控除前の金額であるのに対して、
「総所得金
額等」は上場株式等の譲渡損失等の繰越控除後の金額ですので、繰越控除をされるときは所得税等が発生していない場合でも、
介護保険料が増える可能性があることに留意する必要があります。
また、繰越控除後に所得が生じる場合には、国民健康保険も当然増えることになりますので、確定申告により繰越控除をされ
る際にはご注意ください。
区分
内容
次の金額を合計した金額をいいます。
総所得金額
①事業所得、不動産所得、利子所得、給与所得、総合課税の配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
②総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の 2 分の 1 の金額
上記の総所得金額に、次の金額を合計した金額をいいます。
合計所得金額
①退職所得金額
②山林所得金額
③分離課税として申告した株式の譲渡所得や配当所得・土地等の譲渡所得等(特別控除適用前)
総所得金額等
上記の合計所得金額から上場株式等に係る譲渡損失等の繰越控除を適用した後の金額をいいます。
2.医療費の窓口負担及び介護サービスの利用者負担への影響
上記の保険料へ影響以外にも、確定申告により収入及び所得が追加されたことで、
「70 歳以上の方の医療費の自己負担割合」
が現役並み所得者と同様に 3 割になってしまう場合もあります。
また、介護保険の利用者負担割合はこれまで一律 1 割でしたが、平成 27 年 8 月から合計所得金額が一定以上の負担能力の
ある方については、下表のとおり自己負担が 2 割に増えることになります。
要件
負担割合
下記以外の場合
本人の合計所得金額
要介護認定を
同一世帯の第 1 号被保険者(本人含む) 単身の場合は 280 万円未満
が 165 万円以上
受けている
の年金収入+その他の合計所得金額
2 人以上の場合は 346 万円未満
第 1 号被保険者
本人の合計所得金額が 160 万円未満
2割
1割
以上のとおり、上場株式等の譲渡損失の繰越控除をされる際には、税金以外の保険料や窓口負担にも影響があることに留意し
て行う必要があります。
(担当:松井 佑介)