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産婦人科腹腔鏡手術について
腹腔鏡手術は、1cm~3cm程度の腹部の創から腹腔鏡というカメラ
システムを使って腹腔内を観察しつつ、専用の手術器具を用いて操作
をする手術方法です。開腹手術では10cm程度からの創が必要ですが、
傷が小さい分だけ術後の疼痛が少なく日常生活への復帰が早くできる
傾向があります。産婦人科領域では1990年代から急速に普及し、
多くの技術的進歩を経て、今では婦人科疾患の多くに対して開腹手術
にかわり適応できるようになりました。
腹腔鏡手術は、1cm~3cm程度の腹部の創から腹腔鏡というカメ
ラシステムを使って腹腔内を観察しつつ、専用の手術器具を用い
て操作をする手術方法です。開腹手術では10cm程度からの創が
必要ですが、傷が小さい分だけ術後の疼痛が少なく日常生活への
復帰が早くできる傾向があります。産婦人科領域では1990年代
から急速に普及し、多くの技術的進歩を経て、今では婦人科疾患
の多くに対して開腹手術にかわり適応できるようになりました。
1.腹腔鏡手術とは
2.腹腔鏡手術の対象
3.腹腔鏡手術と開腹手術の違い
4. 腹腔鏡手術の合併症
5. 当院での産婦人科腹腔鏡手術の特徴
1.腹腔鏡手術とは?
腹腔鏡手術は全身麻酔で行います。まず、臍部を1cm程度
切開し、そこから炭酸ガスを注入してスペースを作り出しま
す(炭酸ガス気腹)。その後に臍部から腹腔鏡のカメラを入
れておなかの中を観察します。ここから更に1~4cm程度の
いくつかの創を追加して、手術操作に移行します。
産婦人科の腹腔鏡手術では手術の前に診断がはっきりして
いない事もたびたびあります。もともと腹腔鏡はお腹の中を
観察する道具として開発されたので、小さい傷で腹腔内の観
察が可能です。診断がはっきりしていない場合は最低2つの
創で診断をつけることができます(診断的腹腔鏡)。
産婦人科の腹腔鏡手術では必ず腹腔内の観察を経て診断を
確認してから、手術操作に移行します。この観察の時点で強
固な癒着などにより腹腔鏡手術の続行が不可能と判断した場
合には開腹手術に手術を変更することもあります。
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産婦人科
2.腹腔鏡手術の対象
当院では、悪性腫瘍の治療は行っておりませんので良性の
産婦人科疾患に対象を限定させていただいております。
異所性妊娠(子宮外妊娠)の診断目的の観察から、子宮・卵
巣の各種良性疾患に対しての手術が可能です。
病気の部位と名称
子宮
卵管
卵巣
骨盤
代表的な手術方法
子宮筋腫
子宮全摘術
腟上部切断術(子宮亜全摘術)
子宮筋腫核出術
子宮腺筋症
子宮全摘術
腟上部切断術(子宮亜全摘術)
子宮内膜症病巣除去術
子宮内膜増殖症
子宮全摘術
子宮頸部異形成
拡大子宮全摘術
卵管妊娠
子宮外妊娠病巣除去術
卵管切除術
卵管留水症/留血症
卵管切除術
卵管開口/形成術
卵管膿瘍
卵管切除術
骨盤内洗浄ドレナージ
卵巣のう腫・卵巣腫瘍
卵巣のう腫/腫瘍摘出術
付属器切除術
子宮内膜症
のう腫摘出術
子宮内膜症病巣除去術
癒着剥離術
骨盤性器脱
仙骨腟固定術(準備中)
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3. 腹腔鏡手術と開腹手術の違い
腹腔鏡手術
開腹手術
3cm程度まで4つ程度の創
10cm~14cmの創1つ
創部(例)
術後疼痛
比較的軽微
(鎮痛剤で対応可能)
強い
(硬膜外麻酔の併用が必要)
術後回復
術前の状態までに数日~2週間
術前の状態までに1週間~1ヶ月
QOL
開腹手術に比べて良好
個人差が非常に大きい
適応
安全を担保するため限界有り
基本的にすべての症例
合併症
炭酸ガス気腹による特有の合併症 開腹に伴う消化管運動障害
術中負荷
体位と気腹による循環負荷あり
血栓塞栓症のリスク増大
手術操作
良好な視野
骨盤深部などは視野確保が困難
操作には特に習熟が必要
操作は容易~困難までさまざま
他臓器損傷には対応困難の可能性
手術変更
開腹手術への変更の可能性あり
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なし
産婦人科
基本的に腹腔鏡手術では、患者さん本人が自覚できる創部の痛み
や見た目、術後の回復などは開腹手術に比べて良好です。また、手
術操作自体はカメラと気腹による良好な視野で行われ、手術道具も
繊細な操作が可能であることから、臓器への侵襲は開腹手術と比較
して軽微です。
一方で、手術中の身体負荷の増大や、手術操作自体の困難さ等に
よる手術時間の延長、腹腔鏡特有の合併症の存在などにより、開腹
手術に比べて低侵襲であるとは言えません。
手術の適応については、これらを総合的に判断して腹腔鏡と開腹
手術を選択します。
4.腹腔鏡手術の合併症
手術内容は、基本的に開腹手術で行っていることを腹腔鏡の観察
下で、専用の器具を用いて行っています。よって、開腹手術で起こ
りうる周辺他臓器/血管損傷や術後出血、腸閉塞、感染、血栓塞栓
症は同様に発生する可能性があります。
一方、腹腔鏡手術では手術操作を行うスペースを確保するため、
炭酸ガスを用いた気腹を行います。気腹により消化管が圧排され、
細かい出血が抑制されるなどの利点もありますが、特有の合併症の
原因にもなります。
比較的高頻度に認められるものには、腹腔内の残存炭酸ガスによ
る術後の一時的な腹痛があります。これは、早期離床と鎮痛剤を使
用して数日程度で回復します。
気腫は、腹腔以外の部位にガスが流入、貯留するもので、代表的
なものに躯幹部の皮下気腫があります。適正な気腹圧以上で高頻度
に生じ、特に高齢者では注意が必要です。気腫の程度と部位によっ
ては慎重な管理を要することもあります。
最も重篤な合併症に、炭酸ガス塞栓症があります。腹腔鏡手術の
気腹中には、下大静脈に炭酸ガスの小さな気胞が生じていることが
知られています。
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肥満症例、長時間手術などのハイリスク症例では、循環障害を
起こすような気胞を生じることがあり、この気胞を塞栓物とした
肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞を生じる事があります。血栓塞栓症と
の鑑別が困難であり、多くの場合ショック状態となることから高
度に集学的な管理が必要となります。
これらの合併症は開腹手術では発症することのないもので、術
中は全身管理を担当する麻酔科医と密接なコミュニケーションを
とりつつ手術を行う必要があります。
5. 当院での腹腔鏡手術の特徴
術前にMRIなどの画像検査を十分に行い、合併症の発生リス
クなどを十分検討した上で、腹腔鏡手術の適応を決定します。安
全に手術を施行するため、子宮内膜症症例や子宮筋腫の手術に関
腹腔鏡手術は、1cm~3cm程度の腹部の創から腹腔鏡というカメ
しては、術前ホルモン療法も、手術までの一環として積極的に行
ラシステムを使って腹腔内を観察しつつ、専用の手術器具を用
います。
いて操作をする手術方法です。開腹手術では10cm程度からの創
手術は日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医および日本内視鏡
が必要ですが、傷が小さい分だけ術後の疼痛が少なく日常生活
外科学会技術認定医(産婦人科領域)を中心に手術を行っており
への復帰が早くできる傾向があります。産婦人科領域では199
ます。
0年代から急速に普及し、多くの技術的進歩を経て、今では婦人
腹腔鏡手術では術後癒着の発生は少ないとされていますが、発
科疾患の多くに対して開腹手術にかわり適応できるようになりま
生を低減させるために、臓器温存手術においては全例癒着防止剤
した。
を使用しています。
また、創部は術後の整容性とQOLを最大限に考慮して、創の
緊張を低減する真皮縫合と、テープもしくは皮膚接着剤での創固
定を取り入れています。術後翌日からシャワー浴可能としており
ます。
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