広々とした緑地帯、歩行者専用道路、修復の整った中世の街並み、 バランスの取れた経済発展など。アラバ県の県都は、ヨーロッパ の中でも生活水準の高い都市の一つに選ばれています。 ビトリア ガステイス 「こ の町には魅惑的な雰囲気がある。お伽噺に出て くる、クリスタルの釣鐘の下に納まった町の雰 囲気だ。きらきらときらめいて、瞬く間に大事な知らせ を旅人に伝える...」 小説家イグナシオ・アルデコアがこう記した、ビトリア - ガステイスの不思議な魅力を見つけるのは、あなたで す。ここバスク自治州都の生活水準の高さが国内でも指 折りのものであることは、客観なデータが証明していま す。緑地帯、歩行者専用道路、市民向け設備の高い質な ど古い中世の街は、類まれな住み良い街になっています。 人口一人当たりの緑地帯が 20 平方メートル。ビトリア ガステイスは、自然空間の割合が国内で最高、またヨーロッ パでも有数の街です。 公園が 40、木が 8 万本、潅木が 20 万本。統計値は、ま さにこの州都が植物園のような都市であることを表して います。マロニエ、プラタナス、シナノキ、トネリコな ど見なれた品種の木が、新大聖堂の近くにある巨大なセ コイヤやカスティーリョ・デ・オシオ通りを飾るイチョ ウ並木、日本イボタノキといった外来種の木と共存して います。 一番有名な公園は、市の中心にあるフロリダ公園です。 工事の着工は 1820 年、現在でも 19 世紀のフランス庭園 が見事に保存されています。 40 フロリダ公園から始まる 3 キロの散歩道は、バスク・ロ マネスク芸術の至宝サンプルデンシオ教会堂のあるアル メンティア草地まで並木で結ばれています。 市内の公園の中で特に見事なのは、昔の家畜用牧草地が 19 世紀に公園に改造された、プラド公園です。 フディメンディ公園は、旧ユダヤ人墓地 ( 追放までビトリ アの発展に貢献したユダヤ人社会への追悼として建てら れた石碑 ) の上にあります。18 ヘクタールの敷地を持つ フアン・デ・ アリアガ公園は、市内最大の公園です。円 形競技場やスポーツ施設を備える湖のほかユダヤ教のサ ンフアン礼拝所があり、その敷地では、当時のアラバ運 営組織である、アリアガ組合の会合が開かれていました。 アリスナバラ、モリヌエボ、サンマルティンといった市 内各地区の公園はもちろん、サルブルア、オラリス、ア ルメンティア、サバルガナなどの公園から成る市を取り 囲む「緑の輪」によって、ビトリア - ガステイスでは居な がらにして自然を満喫することができます。 強固な広場から商業の街へ ビトリア - ガステイスには、緑の空間がたっぷりあるだ けでなく、石の色調もふんだんに備えています。つまり、 1997 年に指定された中世の歴史的建造物群を、バスク県 都の中でももっともよい状態で保存しているのです。 1181 年、ナバラ賢王サンチョ 6 世はナバラ王国の防衛の ためヌエバ・ビトリアの町の建設を決心しました。そのと きすでに、アラバ平原の小高い丘の上にガステイスという 名の小村が存在していたのです。わずかに道路 3 本と城壁 で作られた中世の町は、まもなくカスティーリャ王国の包 囲攻撃を受け 1220 年に降伏を余儀なくされます。 その後の火災を経て町の復興と拡張が行われ、東に向け て新しい コレリア=革紐屋通り、エレリア=鍛冶屋通り、 サパテリア=靴屋通り という 3 本の道が敷かれ、数十年 後、西向きに新しい道、 クチリェリア=刃物屋通り、ピ ントレリア=塗装屋通り、フデリア=ユダヤ人街通り の3 本が設けられました。 道の名前から、強固な広場の性質が、様々な手工芸品の 売買で商業の街へと変換を遂げていった経緯がうかがわ れます。手工芸の工房所有者の繁栄を通じ、 質素な家から、 やがて貴族の館や豪邸も建っていきました。 楕円を描く旧市街の道を散策すると、コルドン邸、アン ダ塔、ポルタロンなど、所狭しと並ぶ中世の美しい建物 を見ることができます。エスコリアサ - エスキベル邸、ビ リャスソ邸、ベンダーニャ邸、モンテエルモソ邸など、 ルネッサンス式の館も数多くあります。これらの建物は、 はるか昔の建築スタイルを保ちつつ、現代の技術のお陰 で生き延びており、ほとんどの建物は、博物館や市民セ ンターになっています。 ワインの皮袋などの手工芸品工房の再生や若者向けのタ ベルナの急増で、旧市街の復興が、建築面だけに留まら ないことがうかがわれます。 4 つの教会 旧市街にそびえ立つ 4 つの塔は、サンタマリア大聖堂ま たは旧カテドラル(荘厳なゴシック式要塞教会。見事な 修復作業のお陰で、観光ルートから外してはならないス ポットとなっています) 、同時代に建てられたサンペドロ 教会、アラバで唯一サロン式の構造を持つサンビセンテ 教会、サンミゲル教区教会の 4 つの教会のものです。サ ンミゲル教区教会の中には、市の守護聖人のビルヘン・ ブランカがまつられており、ここの教区組合が、ロサリオ・ デ・ロス・ファローレスの行列を取り仕切っています。 サンミゲル教会に隣接して、段々になった柱廊が続く一 連の建物の集合ロスアルキーリョスがあります。これは、 旧市街と、拡張前に美しいスペイン広場から始まったネ オクラシック様式の新開発部との高低差を、見事に解決 した創意に富んだ建築例です。 新開発部の中心は、ビルヘンブランカ広場、ポスタス通り、 ダト通りで、目を見張る彫刻がいくつかあります。いず れも歩行者天国で、商業活動と人の往来が活発なところ です。ビルヘン・ブランカ広場では、セレドンと呼ばれ るおなじみの主人公の降下で始まる 8 月の守護聖人のお 41 ビトリア - ガステイス ビトリア - ガステイス の旧市街は、大きな楕 円型で、美しい中世の 塔やルネッサンス様式 の豪邸がひしめいてい ます。 祭りがおこなわれるところです。その他ビトリアの カレンダーの中で重要なものとして、4 月のサンプ ルデンシオ、7 月の国際ジャズフェスティバルや演 劇とビデオのフェスティバルなどがあります。 ミュージアム都市 市内にふんだんにある文化センターや市民センター、 数々の博物館を語ることなしに、この街の文化は語 れません。ビトリア - ガステイスは、文化面では先 駆者的存在なのです。おそらく一番個性的なのは、 ベンダーニャ邸の中にあるフルニエル・トランプ博 物館でしょう。この博物館には、あらゆる時代と題 材のトランプ 2 万種類以上のコレクションが納めら れています。考古学博物館 (ゴベオ邸)では、先史時 代やローマ化の時代、中世初期のアラバを垣間見る ことができます。 着工に 20 世紀の 60 年間を費やした新カテドラル内 にある宗教芸術教区博物館では、アラバの宗教的遺 産の数々をお楽しみください。自然科学博物館(ドー ニャ・オチャンダの塔)では、鉱物や化石のコレクショ ンが見ものです。 アフリア - エネアに隣接する武器博物館では、武器 や鎧兜の徹底的なコレクションが納められています。 すぐ近くには、美しい庭や部屋のあるアウグスティ 邸の中に展示された絵画博物館があり、バスク風俗 写生主義や現代美術のセクションがあります。 42 旧市街の近くには、バスク現代美術センター、アル ティウムがあります。ビトリアの博物館群に最近加 えられたこのセンターは、1万 3千平方メートルの敷 地を持ち、現代美術の非の打ち所のないコレクショ ンがテーマ別に展示されている他、さまざまな活動 や企画展も行われています。 エウスカディの首都 前述最後の 2つの博物館は、 フライ・フランシスコ・デ・ ビトリア通りにあります。この通りには、他の豪邸 と並んで、スイス人建築家のアルフレッド・ベシュ リンが設計したバスク風大邸宅バスク自治政府レエ ンダカリ (大統領)公邸アフリア - エネア邸がありま す。1980年、ビトリア - ガステイスをバスク自治州 の首都にする決定は、市にとって大きな転換期とな りました。ビトリア市は、近郊のラクアへと拡張を 続け、そこにバスク自治政府関連のさまざまな建物 が建設されました。アフリア - エネア邸の改造の他、 フロリダ公園の隣にあった古い高校が改造され、バ スク自治議会場が建設されました。 ビトリア - ガステイスは、 バスク自治州の首都であり、 またアラバ県の人口の 4 分の 3 以上を吸収する県都 でもあります。バランスの取れた経済発展と生活の 質の向上は、20 世紀を通じて促進されてきましたが、 特に20世紀後半の数十年間に顕著で、この落ち着い た感じの良い商業と行政の都市、歩行者に優しい都 市に人口集中の現象が起こりました。 ビトリアガステイス 歩行者の街 歩いて ... 落ち着いた街、ビトリア 神学校寄宿舎の階段を登 いるベンダーニャ邸に着 ビルヘン ブランカ広場へ ガステイスの徒歩観光の ると、左手に ボラトキ きます。サンフランシス 降りて、今度は歩行者天 ス タ ー ト は、 中 心 の ビ と呼ばれるボーリングの コ・ザビエル寄宿舎を下 国の新市街へ入ります。 ルヘン ブランカ広場か 遊び場ブルリェリア広場 ると現代美術博物館アル ポスタス通りからは、優 ら。ここは、セレドンが があります。ここは、古 ティウムに出ます。 美なネオクラシック調の 登場して開幕されるお祭 い建造物に囲まれた魅力 りの期間だけ、街の中心 的なスポットです。 現在は考古学博物 館 で、 も と 鉄 砲 鍛 冶 屋 の ゴ ベ オ 邸、 レンガと木の造り が中世の味わいを になるわけではありませ クチリェリア通りに戻っ てカサ・デル・コルドン (紐邸)に出ます。この中 世の塔の館の扉には、見 スペイン広場が見えます。 広場の敷地は完璧な正方 形になっており、北翼に は市庁舎があります。 事な飾り紐の浮き彫りが 郵便局の建物を目にしな 残っています。 がらそのままポスタス通 残す旧宿屋ポルタ クチリェリア通りを右に ロ ン、 ア ン ダ の 塔 曲 が る と、13世 紀 か ら な ど、 こ れ ら は い 19世紀までの、さまざま ず れ も 15 世 紀 と な時代の魅力を散りばめ 16 世紀の古い建物 たサンビセンテ教会があ です。 ります。 りを進むと、近代的なフ エロス広場に出ます。 ここから来た道をちょっ と戻ってもう一本の歩行 ダトに因んだ道に入りま しょう。ここはビトリア のショッピング街と人の テイスで一番小高い 往来の中心、そこに置か 場 所、 サ ン タ マ リ ア れた彫刻の数々にも目を 大 聖堂( 旧 カ テ ド ラ 奪われるでしょう。 ル)があり、ゴシック フロリダ通りへ曲がって 式の 3 重の戸口には しばらく行くと、フロリ エレリア通りを通って左 聖書の話からの装飾 ダ公園の端にたどり着き 手の旧市街に入ります。 が、 ふ ん だ ん に あ し ます。ここからアルメン この通りにはアラバエス らわれています。 ティア教会堂までは、3 教会、バルコニーの美し い家々の立ち並ぶ広場に は、ビトリアの闘いの記 念碑が建っています。 キベル邸と見事なゴシッ ます。 ルティネス通りには、 ロ教区教会があります。 ラセンダ通りという樹齢 エスコリアサ - エスキ さらに先へ進むと、ドー ベル邸やモンテエル ニャ・オチャンダの尖塔 モソ邸といったルネッサ が見えてきます。狭間胸 ンス式の美しい豪邸が立 壁が頂きを飾るこの塔の ち並んでいます。エスク 下には、ビトリアの街の エラス通りを通り、サン 数々の博物館の一つであ タアナ寄宿舎の階段を下 る自然科学博物館が入っ ると、現在はフルニエル・ ています。 トランプ博物館となって どっしりしたパラシオ・ デ・ビーリャ・スソの脇 の階段を下り、広々とし たマチェテ広場に 出ます。この広場 の建物の反対側に は ア ー チ が 施 さ れ、 アルキーリョスと呼 ばれるこの地区を一 望にできます。 El Portalón 5 Catedral de Santa María Museo Fournier de Naipes Torre de Doña Otxanda de l sia Igle Migue San Palacio de Alava Esquível PLAZA DE LA VIRGEN CATEDRAL NUEVA BLANCA Parque de La Florida そのままアルキーリョ Artium Palacio de Escoriaza Esquível 7 14 Casa del Cordón Plaza d el Mach ete Ayunta miento 8 Plaza de los Fueros 6 4 1 Museo de Bellas Artes 9 12 10 Museo de la Armería Ajuria-Enea 可視 サンミゲル教会の誇るビ トリアの守護聖人ビルヘン・ブラ ンカの彩られた優しい姿は、そ の名と同じ広場から目にするこ とができます。 キロの散歩道が伸びてい フライサカリアス・マ ク式ポルチコのサンペド 完璧 建築の専門家に、こう称 えられているのは、旧市街と新 市街間の高低差を目立たなくす るために、18世紀の建築家が講 じた対策です。 者専用道路エドワルド・ す ぐ 近 く に は、 ガ ス ん。奥にサンミゲル教区 オリジナル フルニエル博物館 には、世界中から集められた 14 世紀から今日に至るまでのトラ ンプのコレクションが納められ ています。 100 年以上の木の立ち並 ぶ並木道と、豪邸に囲ま れたフライ フランシス コ・デ・ビトリアを少し 散歩しましょう。豪邸の 並びにはさまざまな時代 の武器が展示され た 武 器 博 物 館 や、 バスク自治州レン ダカリ邸のアフリ ア - エネア邸、 絵 画美術館などがあ スを進んでいくと、戸 ります。 口の 2 つのアーチ 気持ちのよいフロ の間にあるビルヘ リダ公園に戻って ン・ ブ ラ ン カ 像 宗教芸術博物館の の大きさで有名 あるネオゴシック なサンミゲル教 様式の新大聖堂(マ 会に出ます。ま リア インマクラー た、バロック式 ダ 大 聖 堂 )ま で の祭壇背後装飾 ぶらぶら散歩す も一見の価値が るのもよいで あります。 抽象的 チリィーダとペーニャ・ ガンチェギが設計したフエロス 広場の外観。御影石の段々とエ リ キ ロ ラ ック( バ ス ク 独 自 の ス ポーツ)用スポットのくぼみが、 抽象的です。 しょう。 調和 アウグスティ邸にある絵 画博物館。建物と庭園のすばら しさとバスクアカデミーの作品、 近代彫刻、スペイン絵画 (17 世 紀と 18 世紀)が美しく調和して います。 ロマンチック フロリダ公園に は、 池、 塚、 木 々、 音 楽 堂 が、 19世紀から変わらず共存してい ます。 43
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