第2篇 取引の安全確保 > 瑕疵担保責任【集合研修 事前課題】 > 瑕疵

2015/7/13
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ようこそ!(受講番号 T140246K) 北山てすとさん
第2篇 取引の安全確保 > 瑕疵担保責任【集合研修 事前課題】 > 瑕疵担保責任変更特約の有
効性
売主の瑕疵担保責任の内容を変更する特約の有効性
事例
宅建業者が売主で一般の個人が買主となる一戸建住宅の売買契約において、売主は瑕疵担保責任を2年間負うが、その内
容は修補義務だけという特約は有効か。法人間の売買や宅建業者間の売買においては、どうか。
【事実関係】
T社は、売主が宅建業者で買主が一般の個人の場合の一戸建住宅の売買を媒介するが、売主から、瑕疵担保責任の内容に
ついて、次のような特約を定めるよう依頼された。
「この契約における売主の瑕疵担保責任は、売主が買主に対し、物件の引渡しから2年間負うものとするが、その内容につい
ては、売主は修補責任のみを負い、損害賠償責任は負わず、買主はこの契約を解除することができない。」
※写真はイメージです。
質問1
この特約は、売主宅建業者が、物件の引渡しから2年間瑕疵担保責任を負うことになっているので、宅建業法上も有効で
あると思うが、どうか。
結論1
そのような特約は、宅建業法第40条※1の規定により無効とされる。
質問2
売主の瑕疵担保責任の内容について、民法が定めている瑕疵担保責任の内容と異なる内容を定めることは、①法人間
の売買や宅建業者間の売買においても問題となるか。
②売主が宅建業者以外の法人で買主が一般の個人の場合の売買では、どうか。
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結論2
①法人間の売買であっても、宅建業者が売主となり宅建業者以外の法人が買主となる売買の場合には、売主の瑕
疵担保責任について、民法の規定と異なる特約を定めるときは、宅建業法第40条の規定が適用されるので、【結論
1】と同様に無効になる。
それ以外の法人間の売買および宅建業者間の売買であれば、問題となることはない。
②しかし、売主が一般の法人で買主が一般の個人である場合には、その契約は、「消費者契約」ということになる。
消費者契約法第8条第1項第5号との関連で、売主が全く瑕疵担保責任を負わないという特約は無効とされるが、売
主が代替物を提供するとか、修補責任を負うということであれば、同条第2項第1号の規定により、その特約は無効
とはならない。
民法が定めている瑕疵担保責任の内容は、買主は売主に対し、常に損害賠償の請求をすることができ、その瑕疵
のために売買の目的を達することができないときは、売買契約を解除して、損害賠償の請求をすることができると
いうものである(民法第570条、第566条※2)。したがって、本事例の特約は、その責任を負う期間を2年とする部分
を除いては、買主の権利を制限するものとなり、民法に規定するものより買主に不利となる特約になるので、宅建
業法第40条の規定により、無効になる。 また、宅建業者が売主となる場合以外の取引では、売主が法人で買主が
一般の個人の場合には、消費者契約法が適用されるので、売主が全く責任を負わないという場合にはその特約は
無効になる(同法第8条第1項第5号※3)。ただしその瑕疵に対し、売主が瑕疵のない物をもってこれに代える責任
またはその瑕疵を修補する責任を負っている場合には、その特約は無効とはならないので(同条第2項第1号)、本
件のように売主が修補責任を負う場合には、特に問題にはならない。
質問3
「売主が物件の引渡しから2年間瑕疵担保責任を負う」となっているが、買主がその2年の間に瑕疵を発見し、その2年の
間に損害賠償等の請求もしなければならないということか。
結論3
特約の中に、「引渡しから2年以内に発見された瑕疵であれば、2年経過後においても損害賠償請求等ができる」な
どの約定が定められていない限り、買主は、物件の引渡しから2年以内に瑕疵を発見し、その2年以内に損害賠償
等の請求もしなければならない(【参照判例】※4参照)。
本件の「売主は物件の引渡しから2年間責任を負う」という特約は、当事者が、宅建業法第40条第1項※1に規定され
ている「民法第570条において準用する同法第566条第3項※2に規定する期間」について特約を定めたものである。し
たがって、その特約の内容は、民法第566条第3項※2に規定する「買主が事実を知った時から1年以内に損害賠償等
の請求をしなければならない」という期間について、「引渡しから2年間だけ責任を負う」という内容に変更する特約をし
たことになる。買主は、その引渡しから2年の間に、損害賠償等の請求もしなければならない。
本事例の留意点
質問の特約は、民法の規定より買主に不利な特約であるため、強行規定である宅建業法第40条の規定により、たと
え買主が納得したとしても無効である。この場合、注意しなければいけないのは、無効の結果、民法で認められている
損害賠償請求等の権利行使ができるが、その権利行使期間について「引渡しから2年間」はそのまま生きるということ
ではないことである。すなわち、そのような特約は、そもそも無効であるから(業法第40条2項)、瑕疵担保に関する取
り決めはなかったことになり、結局民法の規定に立ち戻り、責任期間も「買主が事実を知った(瑕疵を発見した)時から
1年間」となり、売主業者の責任は長期化することになる。
なお、宅建業法第40条が適用されないのは、宅建業者間取引の場合だけであるので(同法第78条第2項)、たとえ買
主が法人でも、宅建業者でなければ同条が適用される。
また、法人が売主で買主が消費者(居住用のものとして取得する個人)の場合の瑕疵担保責任については、回答にあ
るとおり、売主の全部免責条項は無効とする旨の規定が、消費者契約法第8条第1項第5号にある。
宅地建物取引業法第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限)
① 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関
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し、民法(明治29年法律第89号)第570条において準用する同法第566条第3項に規定する期間についてその目的物の引渡し
の日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 ② 前項
の規定に反する特約は、無効とする。
民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
① 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、
そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約
の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
② 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について
登記をした賃貸借があった場合について準用する。
③ 前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならな
い。
消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
① 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一~四(略)
五 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請
負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費
者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
② 前項第5号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は適用しない。
一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこ
れに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二(略)
最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁
本条(民法第566条)3項に定める1年の期間制限は除斥期間であり、民法570条による瑕疵担保責任としての損害賠償請求
権を保存するには、裁判上で権利行使する必要はないが、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害
賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要
がある。
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