平成 27 年 7 月 9 日発行 図書新聞 図書館サポート同好会作成 夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦 舞台は京都。大学生である「私」が、クラブの後輩である「黒髪の乙女」に一人身を焦がし、彼女という城の外堀を埋めるべくあ らゆる手段を講じてなるべく彼女の目に留まろうと画策するお話である。冴えない男子大学生と無邪気な後輩女子大生の二人の視点 から交互に語られており、一途というよりある意味ストーカーじみている「私」と、それに気づかず京都の街を彷徨う後輩との間に 起こった、ある夜の奇妙な出来事から物語は始まる。 この本の特徴としては、やはり独特の世界観と個性的な言い回しにあるだろう。ところどころにファンタジー的要素が織り交ざって おり(主に妄想力猛々しい男子大学生視点でそれが顕著である) 、読者の好みが分かれるところではあるが、作者が創り出す繊細微妙 な物語を享受できる人にとってはおすすめの本である。また、物語の舞台である京都が好きな人にとっても、この作者の他作品も含 めておすすめの本になるだろう。 とっぴんぱらりの風太郎 万城目学 豊臣から徳川へと天下が移る大阪夏の陣、冬の陣前後の京、大坂が舞台となっている長編小説。風太郎は厳しいことで知られる柘 植屋敷の数少ない生き残りだがあまり腕のよくない忍者であった。伊賀で過ごしていたが、共に組んだ黒弓のヘマのせいで伊賀を追 い出されることとなる。こののち京都でろくに働きもせず暮らしていたが、不思議なひょうたんと出会ったことで様々なことに巻き 込まれ、想像もつかない結末を迎える。 2014 年本屋大賞 5 位の長編小説で 750 ページほどあり非常に分厚いく重たいが、テンポよく次々と出来事が起こるので飽きること はないだろう。私も首が痛くなるのを忘れてほとんど一気に読んでしまった。歴史好き、忍者好きの読者は必見ではないだろうか。 本屋大賞にノミネートされた作品はどれも読みやすく誰でも楽しめる作品が多いので、これだけではなく他の作品もぜひ読んでほし い。 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。1 巻 渡航 『青春とは嘘であり、悪である。 青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。 彼らは青春の二文字(ふたもじ)の前ならばどんな一般的な解釈も、社会通念もねじ曲げてみせる。 彼らにかかれば嘘も秘密も罪科(ざいか)も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。 仮に失敗することが青春の証であるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。 しかし、彼らはそれを認めないだろう。 すべては彼らのご都合主義でしかないのだ。 結論を言おう。 青春を楽しむ愚か者ども、砕け散れ。』(1 巻冒頭の作文を一部引用改訂) この作文のテーマ、実は「高校一年間を振り返って」なのですが、いかに主人公がひねくれているか、というのがわかるのではな いかと思います。ですがこのひねくれた感性が悩みを持つ生徒に斜めすぎる解決をもたらすのです。また主人公だけでなく登場す るキャラクターたちは個性的な人ばかりで必ずお気に入りのキャラクターが見つかるでしょう! ソロモンの指環-行動動物学入門 コンラート・ローレンツ コンラート・ローレンツという方の名前をご存知でしょうか。 生物を学んだことのある人は知っているかもしれません。 アヒルなどで有名な刷り込みを発見した人です。彼はハイイロガンを雛から育て、この反応を発見しました。 彼の家はめちゃくちゃです。鳥が飛び交い、犬が走り回り、庭にはたくさんの生き物たちが好き勝手に暮らしています。彼も また、隣人が行き交うなかで自身の家の庭でハイイロガンにキスしたり、周囲からは奇異な目で見られます。 少し、いやかなり変わった人ですが、動物への愛は誰よりも深いです。 この本の中では刷り込みのはなしだけでなく、オオカミやコクマルガラスなど様々な動物とのエピソードが綴られています。 特に、彼が動物たちと心を通わせるような場面は感動しました。 行動動物学入門というだけあって、科学的な内容も含まれていますが少しも小難しい本ではありません。 動物たちと寝食を共にして、真摯に動物と向き合ってきた彼の生き物への愛情をこめて書いたものだと思います。 動物が好きな人、子供の頃にファーブル昆虫記や福音館書店のずかんシリーズ(特に自然図鑑や飼育栽培図鑑)などを読んで いた人にはぜひ読んでもらいたいし、また、これまで動物とかかわりが少なかったり、苦手な人にもオススメしたいです。 この本を読んでくれた人が少しでもローレンツの動物への愛を感じ、同じように動物を愛してほしいと思います。 金の空想科学読本 柳田理科雄 感動と爆笑に満ちた理系の本」―そうして大人気シリーズとなったのが、この『空想科学読本』です。 やなぎた もともとは作者、柳 田 り か お 理科雄(←本名です)氏が学習塾を運営するために執筆されたのですが、自然科学の面白さと人間 の想像力の豊かさを堪能できる良書となっています。 そして、今回ついに、シリーズ1~9までの全239本の中から、読者の人気投票によって選ばれた上位25作品がこの一 冊に! 『キノコを食べて巨大化するマリオ。そんなこと可能?』 『サザエさんが飛び込む山小屋は、なぜ伸び縮みするのか?』 『ドラえもんのタケコプターで、本当に空が飛べるのか?』 など、読むと思わず笑ってしまう「空想科学」が盛りだくさん! 「読書をより楽しみたい」、 「科学的なものを読んでみたい」という方にオススメです!(^^)! あかんべえ 宮部みゆき おりんの両親が開いた料理屋「ふね屋」の宴会に、どこからともなく抜身の刀が現れた。成仏できずに「ふね屋」に いるお化け、おどろ髪の仕業だった。しかし、客に見えるのは暴れる刀だけ。お化けの姿が見えるのはおりんただ一人。 騒動の噂は深川(ふかがわ)一帯を駆け巡る。しかし、これでは終わらなかった。なんとお化けはおどろ髪だけではな かったのである。 なぜおりんにだけお化けが見えるのか、なぜ「ふね屋」にはお化けが集まってくるのか、読めば読むほどのめり込ん でしまうその内容。怖くて、面白くて、可愛い物語のラスト 100 ページは涙なしには語れない! 2015 年 4 月 11 日に公開された「ソロモンの偽証」の原作者。ストーリー・テラー宮部みゆきがその技を遺憾なく発 揮した、最高の時代サスペンス・ファンタジー! さぁ、あなたも宮部みゆきワールドに足を踏み入れてみませんか? 巨鯨の海 伊東潤 江戸時代、紀伊半島の漁村、太地ではみなが団結し、村に富をもたらす鯨の捕獲を続けてきた。海へ出て捕鯨を行 う沖合衆、引き上げられた鯨を解体する納屋衆、老人や女子供たちなど、それぞれに役割を持っていた。死と隣り合 わせの漁で重要な仲間との信頼関係のため、村には掟があった。 村の外から来た、鯨に銛を打ち込む刀刺の仁吉と、その背中を追う少年、音松。病気の母の為に、盗みをはたらく 末吉。耳が聞こえない喜平次と、その幼馴染みの与一。鯨の血に見た幻影を追って殺人を犯す菊太夫。捕鯨という、 自分の生き方に苦悩する太臓。明治を迎え、薄れゆく捕鯨の伝統の中で生きた弥惣平。 厳しい掟が存在した、閉鎖的な村の中での人と人とのつながり、鯨との戦いが、迫力のある文章により表現されて いく。 今日、捕鯨問題が話題となっている。 『巨鯨の海』の全編を通じて日本の捕鯨の歴史が分かる。また、その伝統の変 化に興味を持つことができるかもしれない。 図書館サポート同好会よりごあいさつ こんにちは!図書館サポート同好会はできたてホヤホヤの同 好会です。図書館をもっと魅力のある場所にしよう!読書の 楽しみを広く知ってもらおう! そんな気持ちをもった学生 たちが集まってくれました。初めての活動の成果がこの新聞で す。みな、一生懸命書いてくれました。ご紹介した本に興味を もってくだされば嬉しいです。 部員募集中! くわしく知りたい方は図書課長の高本まで。 図書館サポート同好会 顧問 高本孝子
© Copyright 2024 ExpyDoc