14 横浜東部就労支援センター[PDF]

14.横浜東部就労支援センター
(1)経過
小児療育相談センターの就労支援活動は、昭和48年から地域対策室(現相談支援室)を中心に
地域巡回相談活動として行ってきました。当時、職業安定所での対応が困難な重度知的障害者約
300名を対象に就労支援活動を開始。昭和57年度からは、川崎市に拠点施設として「障害者生活
援助センター(地域作業所)」を開設し、身体、知的及び精神の3障害を対象に就労支援、家族支
援などの取組みを開始いたしました。
こうした独自の取組みが平成3年度より神奈川県・横浜市・川崎市の協調事業として「地域就
労援助センター事業」に発展し、横浜市から「横浜東部就労支援センター」を運営受託すること
になりました。
(2)相談支援の概況
1)総合相談
相談希望者とその家族、関係者、企業担当者等を対象とした相談支援件数合計は3,215件で
あり、前年度と比較して約800件増加しました(表-1)
。相談希望者・家族からの相談では、
、進路相談
就労相談(求職相談、職場不適応・就業生活上の問題の相談、離職・転職相談等)
の実施はもとより、横浜市の一次相談支援機関(地域の相談支援専門機関)として幅広い相談
を受けとめるよう努めました。新たな取り組みとして、サポート校の依頼により、発達障害を
持つ生徒に対し、在学中から企業実習・求職支援を実施しました。
「就業と生活の両面にわたる相談・支援」の増加は、直ちに就職活動に入れない状況にある
利用者、あるいは、親の高齢化や不安定な生活基盤など生活問題を抱える利用者への対応が求
められている結果と考えます。本人のみならず保護者や関係者対応を含む相談援助技法と、地
域の関係機関との連携・協働による支援が必要とされました。
表−1 相談支援内容別内訳
相談支援内容
件数(前年度)
就職に向けた支援
1,448(1,240)
職場定着に向けた相談・支援
1,573(1,052)
日常生活・社会生活に関する相談・支援
就業と生活の両面にわたる相談・支援
合 計
85( 66)
109( 59)
3,215(2,417)
2)評価・助言・訓練利用
利用者と利用者を取り巻く状況を総合的・包括的に理解するため、本人の了解を得て家族・
関係者と情報交換を行うほか、通所先がある場合は通所先に出向いて行動観察やカンファレン
スを行うなどネットワークを活用した評価を行いました。
基礎訓練を希望する利用者には、就労移行支援事業所や職業訓練等の利用援助を行い、訓練
- 97 -
先と連携して相談支援を行いました。主として就労経験の少ない利用者には、横浜市職場実習
事業を活用して就労イメージを高められるよう支援しました。チャレンジコース、ステップア
ップコースでは、精神障害者の利用が多くなっています(表-2)
。
表−2 横浜市職場実習事業実施状況 ( )内:延べ日数
実習種別
身体障害
チャレンジコース
(職場体験)
知的障害
精神障害
1人( 5日)
5人( 87日)
6人( 92日)
1人(101日)
1人(101日)
5人( 65日) 1人(5日)
14人(120日)
ステップアップコース
(職業訓練)
就労準備実習
(採用を前提とした実習)
2人(9日)
6人(41日)
発達障害
計
3)就職に向けた支援
就職に向けた支援は、1,448件行いました。
「就労支援プログラム」の通年実施のほか、
年2回
「よ
こはま障害者就職面接会」にて、延べ15人の利用者に同行支援を行いました。
「就労支援プログラム」は、就労準備支援・求職利用者のうち、就労準備や就職に向けて効
果が見込まれる利用者に導入しました(表-3)
。
表−3 就労支援プログラム実施状況
対象者
「かようかよう」
就労準備支援・
求職利用者
(週1回実施)
利用者数
(延人数)
ョンの維持を図る。
・求人情報の提供と電話による企業開拓、マッ
47回
253人
20回
36人
チングを行う。
採用面接対策
「もくもくる」
実施回数
・利用者の定期来所と就労に向けたモチベーシ
求職支援者のため
のフリースペース
プログラムの目的
・これまでの経験や日常生活を通した自己分析
求職利用者
(月1~2回実施)
を促し、履歴書記入や採用面接で活用できる
ようにする。
4)職場定着に向けた相談・支援(離職・転職支援、余暇支援を含む)
職場定着に向けた相談・支援は、離職・転職支援、
「職場定着・余暇支援プログラム」の実
施を含め1,573件行い、前年度と比べて約500件増加しました。特別支援学校・養護学校の新卒者、
就労移行支援事業所による定着支援(原則6か月以上)終了後の利用者への支援を求められた
結果と考えます。
離職・転職支援は、19人に対して行いました。離職理由のいかんにかかわらず、前職の就職
から離職に至る過程で得たものを次のステップに前向きに活かせるような支援に努めました。
「職場定着・余暇支援プログラム」は、職場定着利用者(主として知的障害)のうち職場定
着に向けて効果が見込まれる利用者に導入しました(表-4)
。
- 98 -
表−4 職場定着・余暇支援プログラム実施状況
対象者
実施回数
プログラムの目的
利用者数
(延人数)
主として知的 ・定期的に職場や家庭の状況をモニタリングす
「金曜グループ」
障害を持つ職
(月1回実施)
9回
る。
46人
場定着利用者 ・利用者同士の交流や情報交換を図る。
5)関係機関・事業所等との連携・協働
横浜市就労支援センター連絡会議への出席(定例会4回、臨時会2回)のほか、神奈川県・横
浜市を圏域として開かれる保健・医療・福祉・教育・労働にまたがる関連会議に出席し、多機
関協働による支援展開のためのネットワークの構築・維持・強化に努めました。近隣地域では、
神奈川区自立支援協議会(定例会6回、分科会6回)
、鶴見区自立支援協議会(定例会5回)のほ
か、第1回神奈川区一次相談支援機関連絡会(年1回)にも出席しました(図-1)
。
職場定着支援段階にある利用者については、地域活動ホーム、生活支援センター等地域生活
に密着した社会資源と並行して事業所とのネットワークも構築し、就業生活上何らかの課題が
生じた場合、速やかに課題に介入できるような協働体制の運用に努めました。
図−1 横浜東部就労支援ネットワーク連携機関
横浜東部就労
ネットワーク
連携機関
小児療育
相談センター
青い鳥
・就労支援関連情報の共有化
会議出席
ケースカンファレンス
勉強会講師派遣
・事例検討会等
神奈川区・鶴見区自立支援協議会
神奈川区一次相談支援機関連絡会
ケースカンファレンス
ケースカンファレンス
川崎南部
就労援助
センター
情報交換
川崎市発達
相談支援
センター
横浜東部
就労支援
センター
会議出席・定例訪問
ジョブコーチ支援
横浜市、各区
福祉保健センター
地域活動ホーム、
生活支援センター、就労
移行A型・B型、医療機
関、ケアプラザ等
事業所等
チーム支援
企業開拓
情報交換
港南区
生活支援
センター
ケースカンファレンス
企業実習開拓支援
会議出席
特別支援学校、養護学校
サポート校、能力開発校等
- 99 -
横浜・川崎
ハローワーク
横浜市就労支援センター連絡会
ナカポツセンター連絡会議
6)事業所等に対する支援
事業所等に対しては、雇い入れ相談をはじめ、各種制度の紹介、障害者への対応方法等の相
談に応じました。平成25年度は、事業所等から直接雇い入れ相談を受けることが著しく増加し、
電話による問い合わせ・相談が19社、来所・事業所訪問による相談も18社にのぼりました。
職場定着支援の過程で事業所に対して踏み込んだ調整が必要な場合、ジョブコーチの導入や、
より専門的な機関と連携するなどして問題解決に向け重点的に支援しました。ジョブコーチ、
カンファレンス、定例会議出席のため、316件の事業所訪問を行いました。
7)啓発活動
啓発活動では、「家族のための勉強会」
、
「個別相談による企業支援セミナー」に職員を派遣
しました。平成25年度は、「家族のための勉強会」参加者のフォローアップグループを新たに
立ち上げ、教育から雇用・福祉への移行を支援する目的で情報提供やグループワークを行いま
した。一般の中学・高校・大学等に在籍している生徒や引きこもり状況にある子どもを持つ保
護者の多くは、障害者雇用や福祉サービスに関する情報が極めて不足しているため、子どもの
進路・就職の見通しのための判断材料を提供することで保護者の不安に対応するよう努めまし
た(表-5)
。
表−5 啓発活動実施状況
主催
「家族のための勉強会」
講師派遣
「個別相談による企業支
援セミナー」
相談担当者派遣
「すいすいいこう会」
家族支援グループの運営
テーマ・内容
小児療育相談セン 「就労支援の現場スタッフに聞く―
ター
就労情報と今からできること」
横浜市・川崎市健
障害者雇用を検討している企業に対
康福祉局(共催)
する講演と個別相談会
横浜東部就労支援
センター
実施回数
参加者数
2回
19人
1回
4社7人
2回
9人
「家族のための勉強会」に参加した
家族(希望者)に対するフォローア
ップグループ
8)社会貢献・情報公開
社会貢献としては、近隣地域の親の会の依頼に応じて保護者を対象とした勉強会(1回・参
加者7人)
、地域子育て支援拠点の依頼に応じて保護者・スタッフを対象とした勉強会(1回・
参加者6人)
を開催しました。また、企業出身ボランティアを通年で受け入れました(1人・23回)
。
平成25年度には、横浜市障害者就労支援会議及び横浜市健康福祉局障害企画課就労支援係に
よる「有識者ヒアリング及び事業検査(推進会議委員3名による有識者ヒアリング、就労支援
係職員による平成24年度補助金検査)」を受けました。その結果、支援実践の質・量について
は一定の評価を得ましたが、一部のマニュアルの未整備について作成を促されました。
- 100 -
(3)利用者の概況
1)利用者数と推移
平成25年度の利用者は277人で、新規登録者は134人、
前年度からの継続利用者は143人でした。
新規登録者は、前年度より30人以上増加しました。新規就労者は52人で、前年度より10人増加
しました(表-6)。
新規登録者の増加傾向が続いているため、
継続利用者については1年の期間で支援を見直し、
安定している利用者は当面支援終了として、その分を新規登録者の対応に充てました。
表−6 利用者数の推移
年度
新規登録者
継続利用者
新規就労者
就労者総数
H21
74
212
44
176
H22
116
235
49
174
H23
116
194
38
174
H24
101
152
42
178
H25
134
143
52
173
2)新規登録者の紹介経路
新規登録者の紹介経路別内訳では、「特別支援学校(養護学校)
」が最も多く、前年度と比べ
て10件以上増加しました。次いで、「本人直接」
、
「区福祉保健センター等の行政機関」
、
「ハロ
ーワーク」の順になっており、「本人直接」の件数が顕著に増加しています(表-7)
。
表−7 新規登録者の紹介経路別内訳
紹 介 経 路
人数(前年度)
15( 11)
ハローワーク
地域障害者職業センター
1(
特別支援学校(養護学校)
%
11.2%
1)
0.7%
26( 15)
19.4%
就労移行支援事業所
8(
5)
6.0%
上記以外の福祉サービス事業所
8( 12)
6.0%
区福祉保健センター等の行政機関
23( 26)
17.2%
医 療 機 関
12( 11)
9.0%
企業(特例、ふれあいショップ含む)
2(
0)
1.5%
相談支援を主とする事業所
4(
0)
3.0%
本 人 直 接
25(
8)
18.7%
そ の 他
10( 12)
7.5%
134(101)
100%
合 計
- 101 -
3)利用者の障害別・年代別内訳
利用者の障害別内訳では、新規登録者・継続利用者ともに知的障害が最も多く、これは特別
支援学校(養護学校)新卒生の登録増加によるものです。新規登録者については、前年度同様
精神障害が3割強を占め、発達障害と合わせると4割強となりました(表-8)
。利用者の年代別
内訳では、新規登録者・継続利用者ともに、20代、30代、40代の順に多くなっています(表-9)
。
表−8 利用者の障害別内訳
新規登録者
継続利用者
合 計
身体障害
17(18)
6(20)
23(38)
A1
0( 1)
0( 1)
0( 2)
的
A2
2( 0)
3( 1)
5( 1)
障
B1
16(11)
38(38)
54(49)
B2
41(28)
73(62)
114(90)
精神障害
46(32)
18(18)
64(50)
発達障害
11( 9)
5(10)
16(19)
その他
1( 2)
0( 2)
1( 4)
合 計
134(101)
143(152)
知
害
277(253)
表−9 利用者の年代別内訳
新規登録者
継続利用者
合 計
10代
21
7
28
20代
45
62
107
30代
30
34
64
40代
26
26
52
50代
8
13
21
60代以上
4
1
5
134
143
277
4)就労者の業務種類と定着状況
就労者173人の業務種類別内訳では、
「清掃・メンテナンス等」が最も多く、
次いで「事務」
「工
、
場等作業」、
「飲食店業務」の順になっていますが、
「事務」
「工場等作業」が増加傾向にありま
す(表-10)。就労者の定着年数別内訳では、約6割強は1年以上定着しています(表-11)
。
- 102 -
表−11 就労者の定着年数別内訳
表−10 就労者の業務種類別内訳
業 務 種 類
人数(前年度)
年数
人数
事 務
37( 32)
1年未満
50
清掃・メンテナンス等
49( 52)
1年以上
40
0)
3年以上
34
飲食店業務
14( 23)
5年以上
21
工場等作業
25( 15)
7年以上
22
販売・品出し等
12( 25)
10年以上
6
クリーニング等
3(
接客等サービス
5(
3)
運 送・配 送
6(
7)
コンピューター関連
1(
0)
印 刷・製 本
0(
0)
梱 包・検 品
11( 12)
営 業
0(
0)
そ の 他
10(
9)
合 計
173(178)
- 103 -
合 計
173