第 34 回 山形県造形教育研究協議会・米沢大会 いのち輝け こころに響く造形教育 〜豊かなつながりの中で⽣まれる「」〜 研 究 紀 要 主 共 催 催 後 主 援 管 山形県造形教育連盟 社団法人山形県私立幼稚園協会 山形県小学校教育研究会 山形県中学校教育研究会 山形県高等学校教育研究会 山形県教育委員会 米沢市教育委員会 山形県造形教育連盟米沢地区 目 1 次 第 34 回山形県造形教育研究協議会・米沢大会を終えて ……………………………1 実行委員長 棚村 正 2 幼稚園・小学校低学年部会 ………………………………………………………… 2 「みんなちがって みんないい ~自然からイメージを広げ、生き生き表現する~」 米 沢 幼 稚 園 増茂由里子 「こんなふうにも描けるんだ ~絵を描く活動を通して、新たな自分に気づく児童を目指して~」 米沢市立上郷小学校 今田いく子 「日常の素材の大変身 」 米沢市立万世小学校 渡部 恵子 3 小学校高学年・中学校部会 ………………………………………………………………6 「身近な場所をいつもと違う空間に 」 米沢市立万世小学校 西山 徹 「“アートするこころ”を育てる ~中学校美術科における博学連携の取り組みについて~」 米沢市立第二中学校 飯島 広美 「米沢焼鳴洲窯から学ぶ、土の魅力 4 研究協議会を終えて 」 米沢市立第三中学校 発智 由紀 ……………………………………………………………………11 実行委員会研究部長 渡邊 晃司 第34回山形県造形教育研究協議会・米沢大会を終えて 実行委員長 米沢市立窪田小学校 棚 村 正 第34回山形県造形教育研究協議会・米沢大会の開催にあたり、県内各地から100名を超える幼・ 保・小・中学校の先生方の参加をいただきましたことに感謝申し上げます。 本大会は、県の新テーマによる研究の初年度にあたることから、 「いのち輝け こころに響く造形教育」 を地区のテーマとして掲げました。また、造形活動の主体者である子どもの側に立ち、より“能動的な 造形活動”を追究するというのは、これまで積み上げてきた米沢の研究を今後さらに発展させていくた めの方向性と同じであると考えました。そこで県の新テーマに米沢の研究の新しい視点を加えて主題を 設定しました。県の協議会としての本大会を導くテーマとして、流れや方向性が明確となり、今後の研 究の確かな第一歩となったのではないでしょうか。 どんな研究であっても必ずキーワードがあります。本大会では“つながり”でした。日常とのつなが り、地域とのつながり、本物とのつながりが豊かなつながりになるという点については各部会でたくさ んふれていただき、深めてもいただきました。一方、 「 (アートマーク) 」は、研究の視点としては ~豊かなつながりの中で生まれる「 」~、目指す子ども像では~「 」あふれる子ども~として 登場するなど、研究の共有イメージとなりました。また、成果として、実際の子ども達への指導の中で も大いに役立ったと聞いております。 「 (アートマーク) 」は、大会のシンボルとしての役割を果 たしてくれたものと思います。今後の研究や実践の中での活用推進を期待しているところです。 市内幼保小中から200余点の出品による作品展を開催し、米沢の造形活動の一端をご覧いただくこ とができました。米沢では、小中学校の造形展は長く実施していますが、幼保園児の作品と一緒に小中 学生の作品を見ることができる機会はほとんどなく、地元の我々にとっても貴重な研修の場となり、う れしい限りでした。今後このような機会をもっともっと設けられたらと思っています。 幼稚園・保育園・小学校低学年と小学校高学年・中学校の2つで行った分科会では、それぞれ3つの 実践を発表しました。どれもテーマに沿って指導の重点を明確にした実践であったと自負しております。 どちらの分科会においてもグループ毎に活発な話し合いや実践交流が行われ、多くのご意見とご指導を いただくことができました。米沢地区の研究と実践の背中を押してくださるようなあたたかい励ましを たくさん頂戴し、さらに能動的に造形活動推進をと意を強くしています。 本大会運営にあたっては、人員や経費の動向を鑑み、大会HPを開設し、スムーズな情報発信と事務 諸手続きの簡素化を図りました。会員並びに関係部署のご尽力により、滞りなく会を進めることができ ました。担当された皆様のご理解とご協力に感謝申し上げます。 最後になりましたが、本大会のために実践を重ね、発表してくださった増茂由里子先生(米沢幼稚園)、 今田いく子先生(上郷小学校)、渡部恵子先生(万世小学校)、西山徹先生(万世小学校)、飯島広美先生 (第2中学校)、発智由紀先生(第3中学校)に改めて御礼申し上げます。また、ご指導・ご助言をいた だきました齋籐学先生(山形大学地域教育文化学部准教授)、渡邉斉先生(南陽市立荻小学校校長)並び に、ご支援いただきました関係各位に心より御礼申し上げます。 幼稚園・保育園・小学校低学年部会記録 「みんなちがって みんないい ~自然からイメージを広げ、生き生き表現する~」 米 沢 幼 稚 園 増茂 由里子 「こんなふうにも描けるんだ ~絵を描く活動を通して、新たな自分に気づく児童を目指して~」 米沢市立上郷小学校 今田 いく子 米沢市立万世小学校 「日常の素材の大変身 」 渡 部 恵 子 1 グループでの話し合いより ○米沢幼稚園 増茂由里子教諭の実践「みんなちがって みんないい!」について ・イチョウの木の生命力を感じさせるさまざまな取り組み(銀杏の話、木の歴史、五感を使った活動等 本物との出会い)が表現に活かされていた。 ・五感すべてを使って感じたことは、素直に絵に表現でき るのだと感じた。 ・一本のイチョウの木を描いたものが、見事にみんな違っ ていてみんな輝いていた。 ・絵の具は「そのままの色で使わない」という指導がよい。 色に味が出ていてどの作品も素敵だった。 ・この幼稚園では、絵の具を使った活動が年長児で5回目 とのことだったが、他園から来る児童の中には小学校に 上がって初めて絵の具を使うという子もいる。一年生で の絵の具の学習の導入時のために幼保小の連携が必要だ。 ・教材研究(教材について授業者がよく知り楽しむ)の大切さを改めて考えさせられた。 ・造形遊びを通して「命の教育」が行われていると感じた。 (小さい草花も大きな樹も命があるというこ とを絵画を通して学んでいる。) ○米沢市立上郷小学校浅川分校 今田いく子教諭の実践「こんなふうにも描けるんだ!」について ・牛の絵が生き生きしていてよかった。本物との出会いと地域とのよい関わりがあって生まれたものだ と思った。 ・本物を見たり関わったりする時間をたっぷりとっている のがよかった。 ・かわいい・かっこいい顔ではないグロテスクな顔がおも しろかった。作品に個性が出てくる。 ・一つの課題だと同じ絵になりがちだが、視点を変える声 掛けや題材設定の仕方が重要ということを今回教えても らった。 ・それぞれの発達段階での気づきを見つけ認めてあげるこ とができれば異年齢での活動もおもしろいと思った。 ・異学年集団のつながり(関係)作りを造形遊びでチャレンジしてみたいと思った。 ・最初の実践の反省を次に生かしているところがすばらしかった。 ・一日目は牛の観察のみで終わってしまった子を見守っていた先生はすごい。 ○米沢市立万世小学校 渡部恵子教諭の実践「日常の素材の大変身!」について ・ダンボールは素敵なブロック。教える側が考える以上に楽しい活動になる。ダンボールに色を塗って 使ったらもっとおもしろくなりそう。 ・「雨の日はクミクミックスで遊んでいい」の声掛けが造形遊びの日常化につながっている。 ・不便さを体感させた後の技能士さんの演示が効果的だった。子どもたちのやってみたい思いが高まっ たと思う。 ・「いいとこたんけんたい」での友だち同士の認め合いが 達成感となり次の活動への意欲につながっている。早い 段階で一回この時間を設けているところがよかった。 ・「一人一作品」が当たり前でなくてよい。大きな紙にグル ープで描くことで友だちの発想等に触れることができる。 ・共同制作は自分と他との折り合いのつけ方が難しく、そ れゆえ学びとなり心の成長が期待できる。個人の評価を どう行うかは課題。 ・「わからないものはオブジェと言おう。」この声掛けで子どもたちは安心感を持ち、ダイナミックなも のを作れるようになったと思う。 2 「日常」「地域」「本物」の3つのつながりについての実践や考え <実践例> ・地域のお祭りで見た「おしし様」をダンボールで作ってごっこ遊びをした。 ・ダンボールで「等身大の自分」を作った。 ・さまざまな合科的指導を行っている。(体育と。生活科と。社会科と。) 水遊び⇒絵に表す 田畑での栽培活動⇒絵に表す、野菜スタンプ サクランボ狩り+試食⇒絵に表す 消防署・警察署の見学⇒絵に表す 園で飼育している動物⇒絵や立体に表す ・6年生の造形活動で学校のウッドデッキを変身させ る活動を実践した。他学年の子がたくさん見に来て くれたし、でき上がったその空間を味わい楽しむこ とができてよかった。 <3つのつながりについての考え> ・造形遊びのゲストティーチャーとして技能士さんに師範してもらうことを実践してみたい。 ・学校に子どもたちに人気の大きなトチの木がある。明日からでもその木に興味を持たせ触れさせたい。 ・造形活動で学校と地域をつなげるよう、おたよりで発信したり子どもたちの作品を地区文化祭に出展 したりして地域の方も一緒に「アート」について考えるきっかけとなるような場を作っていきたい。 ・子どもたちは、直接体験をすることで発見や感動をし、造形活動に意欲を持つのではないかと思うの で、できるだけたくさん直接体験ができる機会を取り入れていきたい。 ・牛乳パック・新聞紙・ドングリ(自然材)などを使った活動は3つとのつながりを感じられる。 ・日常見慣れているものの変化(四季による違いなど)を作品にしてみるのもおもしろいのではないか。 3 感想・意見交流 ・本物との出会い(発見や感動のある体験)が、より強い動機づけになることを改めて学んだ。また、 そのような体験をもとにしてできた作品からは、エネルギーを感じる。 ・どの実践発表もすばらしいものだった。特に「本物」との出会いは子どもたちの感性にはたらきかけ るものだと感じた。 ・共同制作では心の成長をも図れることがわかった。色の具合で友だちと折り合いをつけていたことが うかがわれた。 ・共同制作をさせてみたいが、うまくいくか心配。 4 指導・助言 ~南陽市立荻小学校長 渡邉 斉先生より~ 今日の発表はどれも、そのときの題材だけではなく年間を通しての造形活動の中にある子どもたち の姿であり実践であったと感じた。私からは、 「明日の授業づくりのために」というテーマで話をした い。 ①米沢幼稚園 増茂先生の実践について 樹齢450年の大銀杏を描く活動、これは、黒いクレヨンで形をとってその後水彩絵の具で色を塗 っていくという方法で全員に描かせていた。その中でテーマの『みんなちがってみんないい』をどう 実現させるのかが課題だった。方法としては全員同じ流れになっているが、その中でいかに、自己選 択・自己決定の場面をつくれるか、どれだけ試行錯誤する場面をつくれるかがポイントだ。そのため に、銀杏の擬人化、銀杏の歴史、触ったりする体験…等、生き物としての銀杏の存在を五感を通して 確かめさせていた。その中で子どもたちはそれぞれに銀杏のイメージを作り上げ描いていたのではな いだろうか。 「ナンバーワンよりオンリーワン」をねらったことは人間形成の上でも造形活動において も本当に大事なところだった。 ②上郷小学校 浅川分校 今田先生の実践について 今年度で閉校をむかえる分校での実践は、1~3年生の複数学年にわたる児童20名に指導すると いう難しさをかかえながらの挑戦である。その中で「日常・本物・地域」との出会いをよくとらえ、 学校の特色が生かされた実践であった。 印象に残ったのは、今田先生が話題にしてくださった「先生、これでいいですか。」という子どもた ちの言葉だ。「先生、これでいいですか。」というセリフは教室からなくしたい。先生が基準なのでは なく「『ぼくが』『わたしが』どうしたいか」が大事。手順通りレールの上を走るような指導は指導の 入り口であって、児童のゴールではない。子どもたちがどんな作品をつくりたいかという選択・決定、 あるいは試行錯誤の要素がないといけない。今田先生は、先にやった一つ目の実践をふり返り、反省 と改善点を生かしながら次の実践を行った。その姿勢が本当に大事なのである。 ③万世小学校 渡部先生の実践について 今日紹介してくださったどの実践も、先生は 最初に参考作品を示していた。参考作品は学習 を方向づける大切な要素である。だから、初め に何点見せるか、あるいはどこまでの段階のも のを見せるか、どのように提示するかをよく考 えることが重要だ。同様に、題材名も非常に重 要である。「クミクミックス」「線であいさつ、 色でお話」は子どもたちの想像をかきたてるも のでよかった。題材名は、教科書通りでなくて よい。材料や技法が教科書と同じであっても題材名は目の前にいる子どもたちに訴えることばで考え たいものである。 中に技術員さんが登場しているが、安全面の指導にたいへん重要な役割を果たしている。安全面の 指導は確実に押さえておかなくてはならない。そのためには、指導者自身がまずやってみること。そ うすると子どもたちの困る場面が想像でき支援のあり方を考えることができる。常に「子ども目線」 で考えることを忘れないでほしい。 ④全体を通して 図画工作科の学習は、自らの力を伸ばし、共に学びながらも力をつけていくものである。試行錯誤 の要素を授業の中に組み込むことによって子どもたちは力をつけていく。具体的には、時間だけは見 通しとしてしっかり示したうえで授業の要素(テーマ・材料・用具等)のいずれかを任せるのである。 そのような中で子どもが考えたことを認め・励まし・元気づける授業がたくさんできたらいい。そん な授業が繰り返されれば(自らの力を伸ばすことのできる)図工がずっと好きでいられるだろう。 米沢の今回の授業づくりの方向性はすべて子どもからスタートしている。私も今日は「子どもから スタートしましょう」ということでこの話をさせてもらっている。全体研究発表では「もっと自分を 表現したいという思いを前面に出して造形活動に取り組む子ども」 「がってしない子ども」をめざして いるという話があった。その二つを実現するためには、子ども一人ひとりの表現が認められることが 大事だ。そして、自分が試行錯誤した結果に満足だという気持ちを持たせること、それを繰り返すこ とに尽きる。そうすることで子どもたちは感受性が育ち感性豊かになっていくと思うので、みなさん には今日学んだことをぜひ明日からの授業に取り入れていただけたらと思う。 小学校高学年・中学校部会 米沢市立万世小学校 「身近な場所をいつもと違う空間に 」 西山 徹 「“アートするこころ”を育てる ~中学校美術科における博学連携の取り組みについて~」 米沢市立第二中学校 飯島 広美 米沢市立第三中学校 「米沢焼鳴洲窯から学ぶ、土の魅力 」 発智 由紀 質疑・応答 <西山教諭> ◇以前も万世小の造形遊びの発表を聞いたことがあるが、代々続けているのか。 ⇒ 準備室があり、過去の資料などを学校全体で共有している。 ◇展示期間はどれくらいか。 ⇒ 次の日まで。全校児童に宣伝している。 ◇自然素材だけでなく、色水などを使ったのはなぜか。 ⇒ 夏に行ったので葉の色は緑しかなかった。 児童から「色をつけてもいいか」などの声が上がった。 ◇6年生でなぜ造形遊びなのか。 ⇒ 1年生から造形遊びを積み重ねてきた。 その時々の技術の習得で作品が変化する。1年生 は素材を生かす造形遊びで、集める、並べる、形 をまねるなど。6年生は各学年で習得した、切る、 結ぶなどの技術を生かして造る造形遊びの集大成。 <飯島教諭> ◇博学連携はどのようにやっているのか。 ⇒ 展覧会を見せたい、こんなことをやってみたいが 何かよい資料はないかなど指導のためのヒントをも らっている。高校では芸術の授業は選択制であり、 中学校が美術に触れる最後の機会になる生徒もいる ので、中学校3年間のうちにできるだけ本物に触れ、 力をつけて卒業させたい。また、造ることは苦手で も見ることはだれでも楽しめるし、美術が好きにな って欲しいと考えている。鑑賞の授業をすることで、 生徒の身の回りの物の見方、価値観が変わってきたと感じる。 <発智教諭> ◇発想が面白い、どう指導したのか。 ⇒ 作品例を紹介しすぎない。ものまねになってもダメなので資料は少なくした。 「シンプルがいい」 など、生徒の発想で1人が始めると広がっていく。 ◇焼いてもらう予算はいくらくらいか。 ⇒ 600円と消費税。 ◇外部の先生に来ていただく回数は。⇒ 授業を変更し、1日に3クラスの授業。 ◇思いを引き出すための工夫は。 ⇒ 1 誰に作る、どんな場面で使う、毎日使うならなど考えさせながら進めている。 グループでの話し合いより(「なるほど」「すごいな」「わたしだったらこうする」) <小・高学年> ・子どもたちに作りたいイメージを持たせ、作りたいけどできない必要感から技術に出会わせている。 必要感が学びのチャンス。技術員さんを活用したことがすごいアイデアだ。身近にいる技術を持つ人 に気付くきっかけ。(道具の使い方と本物の技術) ・校地内の自然そのものを教材化することがすごい発想。光や風、葉のささやきを聞きながら、いつも 過している場所を“作品”として考えさせることがすごい。他学年との交流もでき、「やってみたい」 という気持ちが広がっていて素晴らしい。遊びの中で試行錯誤すること、正に造形活動の原点。 ・半日で一気に活動する計画や、学校の授業として取り組まなければならない状況がすごい。 ・グループ活動・共同制作では、共通イメージを持つことは困難を感じるが、図工という教科枠を超え て、発想を出し合い、話し合い、折り合いをつけている。 ・ 「考えさせる」ことを前面にし、表現したいものにより近づけるために「説明する力」が育ち「ものの 見方」が広がる。どんな材料、用具、色、その場で調達するなど、材料を見つけてくる目がアート。 見通しを持つ思考を高める。豊かな生活につながる。 ・「いのち」につながる。6年生として、「色水」を使ったことに疑問。環境への配慮も必要では。自然 との調和や効果、アースカラーの良さに気付かせたい。 ・評価はどうするか。取り組んでいく中でイメージが変わっていったプロセス、思いつきやひらめき、 使った技術などを記録し、振り返りで残しておく手立てを用意しておきたい。 「全員のアイデアを入れ よう」など声がけすると、一人一人の達成感も満たされる。季節とのかかわりも工夫できるか。 <中学校> ・博学連携の効果(影響)の大きさには本当に驚いた。 きちんとしたテーマ、作品への構想、つけたい力等もし っかり持って連携していてすごい。本物に触れ合うこと で、本当の「 」が生まれる。 ・学区の特性を生かし、作者に迫る教材研究から他ではな かなか行うことのできない展開ですごい。 ・地域とのつながりを考えた教材開発、系統的に学ぶ計画。 (米沢焼、鑑賞)地域文化へ関心が持てる。 ・地域の伝統工芸を鑑賞することで自分も挑戦してみたい と思う「 」がより強くなる。プロを講師に招くことで、 本物の作品・技術に触れているだけでなく、制作の工程を知ることができる。日常でない体験が意欲 や緊張感を生む。また、 「本物」に触れることで大きな感動や創造力の芽が生まれる。 ・油粘土での試作が制作のイメージをさらに広げている。また、様々な技法・加飾の仕方を提示するこ とで、具体的にイメージすることができる。<どこまで認めるか、ゆがみ、偶然の美> ・釉薬をかける→色の変化、面白みのあるところを授業で実施しているのがよい。 ・地元愛の育成。 ・地域の人材を上手に活用する。それが地域の財産になる。作者の近親者の話で、アートが身近に。 ・次の題材のつながりを考えている。(箸置き→箸、焼き物→ランチョンマット) ・家で使うものを作ることで、使用する楽しさを味わい美術の授業でやったことがしっかり残っていく。 作品を持ち帰り家族でも話をすることで、親子で美術に触れる機 会になる。 ・鑑賞する作品について、限られた授業時数の中で、もっと視野を 広げてこれだけは見せたいという他の作品はないのか。世界は 広い、偏りすぎは危険。学年に応じた視点があるのはよい。 ・施釉体験より発想をもっと重視したい。 ・地域との連携を続けていくことで子供たちにどんな変化がある のか(あったのか)を知りたい。 2 「日常」「地域」「本物」の3つのつながりについての実践(・)や考え(◆) <日常> ・身近なものを集めて○○に見えるもの。 ・お名前ワッペン作り(保育の実習と合わせて)。 ・中1:箸づくり、中2:写真立てに漆塗りの加飾、中3:ランプシェード作り。 ・日常の何げない風景のある一点をクローズアップ。気になる、見ていると愛おしくなる物をドライ ポイントで描く。 ・地域に出かけて行う写生大会。(熊野大社・吉野川) ・「アートにふれよう」の実践。美術館、美術番組、街中のアートなど。 ・日用品の形・使いやすさに目を向け「ユニバーサルデザイン」のアイデアを考えさせた。 ・日常生活を盛り上げるポスター、似顔絵、卒業記念品など、全員展示をしている。 ・小5で電動のこぎりを使ったパズル作りをしている。作ったもので十分に遊ぶ時間を確保し、A3 クリアフォルダなど飾れる工夫もしている。 ・海での取り組み。テトラポットや壁に絵を描く。 ・人物画(自画像)でポーズや構図の学習で「人との向き合い方」をヒントに工夫させる。 ・昔の先輩方が残した作品との出会い。今の自分が使う校舎のスケッチ。(安らぎ、愛情) ・中3の最後に図工美術で習ったことをこの先人生にどう生かすかを考えさせる。(生き方と美術) <地域> ・中3で地域の和菓子屋の方の講話を聞く。生徒のオリジナル和菓子のスケッチへの感想をもらう。 ・地域の自然の良さ、見える風景の光と風による変化を描く。蔵王百景など。 ・しめ縄保存会の方から「なわない」を教えていただいた。大きなしめ縄を作る様子の見学。(総合) ・地域の土で焼く。陶芸の授業では成形から施釉まで行っている。 (10数年取り組んでいる) ・本物の人、深山和紙、陶芸を取材しビデオで紹介をしている。 ・新庄東山焼 ・「~を守る○○かかし」校内かかし祭り。 ・中3で教室をデザインする。 ・特産品など、美しさに目を向け発想を広げる題材。中2で特産物(果物)のパッケージデザイン。 ・蚕の飼育→小3でまゆ細工を、小6では外部講師を招き卒業コサージュ作りを。(地域への愛着) ・小3で学校林の枝や木材を使って見立て遊びをしている。立体の質感や形の面白さを味わわせる。 ・酒田市本間美術館のワークショップ「本間焼」の絵付け体験に参加。土門拳記念館との連携。 ・県美展巡回展の鑑賞。全校生が市のスクールバスで移動。感想、好きな絵ベスト5を選ぶ。 ・最上学童展。児童・生徒の作品を一堂に展示し審査し賞をつける。今年で66回になる。 <本物> ・美術部で美術館などへ見学、作家と交流。 ・博物館の学芸員さん、作品の出前授業。 ・実物をつかった鑑賞。教員研修を行って身近な 作家の開拓し、教材化を探っている。 ・上杉博物館の洛中洛外図屏風や特別展示の作品を 活用した連携授業。博物館から準備していただい た、ポイント入りワークシートの活用。 ・高畠町の彫刻家:引地氏の制作活動、鈴木実氏の 作品。 ・郷土の画家の作品、展示を通して発見していくよさにふれる。長井市には、県内でも珍しい塑像だ けの長沼孝三彫塑館があり、数年に一回活用している。(生徒の驚き) ・新庄歴史センター、奥山峰石(人間国宝)や近岡善次郎の作品。 ◆素材の吟味こそが本物選びに。博学から学んだことを生活で使えるものにする。 ◆自分が観て感動した気持ちを家族や多くの人に伝えたいと思わせる。本物ってすごい ◆教師自身が地域を知ることが大切。地域の人材など。本物は地域に必ずあるので仕組んでみたい。 ◆地域の素材や講師の方とのつながりが、子どもたちの成長につながっていく。 ◆共同で楽しむことで「おっ 」 、見方が変わる。生徒の作品も本物! ◆「日常」=子どもの「生活」、「地域」=子どもの生活の「場」、この二つが子供にとって当たり前 のことから「 」に変える「スイッチ」が「本物」に出会う体験だと思う。教師がこの3つの視 点を理解し、ねらいに合わせてつないでいくかが大事。 ◆日常とのつながり、美術や図工をやる意味や自分たちとのかかわりについてもっと取り上げる。 ◆試行錯誤する課題提示が大切。他教科の学びの課題解決につながる共感力を育てている。 3 感想・意見交流 ・話し合いの中でグルーピングをしていくと、文字通り「つながり」を実感でき、参考になった。 ・3名の方々の実践発表を聞いてパワーをいただいた。地域の先生方と交流し、日頃の実践の話もで き実のあるものになった。 4 指導・助言 ~山形大学地域教育文化学部 齋藤 学 准教授より~ 昨年度までの「豊かな創造的活動をもとに、学びを つなげる造形教育」から新しく「いのち輝け こころ に響く造形教育」と研究テーマが変わった。字面だけ 見ると変化がわからないが、サブテーマ【豊かなつな がりの中で生まれる「 」】を入れたことで上手に つなげていただいた。昨年度までは指導要領にのっと った「コミュニケーション力、活用・応用力」など、 教員の立場での指導法の研究が強い6年間であったが、 今年度からは今まで積み上げてきたものを生かし、子 どもの立場に立った指導法の研究にシフトしていくこ とを目指している。これからの6年間に向けたよい発表であった。 大学生を例にとると、真面目に課題に取り組んでいるが、やったことをこれからどうしたいのかが見 えてこない。本当の情報、感動を求めているのか、心に刺さっている物があるのか探りづらいのが現状 である。このことからも、棚村先生の言葉にもあるように、 「感情」と「理性」を調和させながら育てて いくことが大切である。世代や校種を超えて考え、手掛かりをもとに課題を解決していくことが必要で ある。 造形活動は一日にして成らず。積み重ねや繰り返しが日常につながる。学校全体で題材の共有化を図 りいろいろな材料でいろいろな場面で度々行うことで、日常と行ったり来たりすることができる。万世 小の発表は6年間のつながりがあるからこそできた実践である。また、造形遊びに技能士さんが入るこ とで本物の技術に触れ、豊かな経験を積み重ねている。カリキュラムのつながりが日常につながる。 教員側にも児童生徒の経験を知るために校種を超えたつながりが必要。ワークショップでのつながり の必要性も見えてくる。 造形遊びが日常に、見たものをもとに日常の美に、作ったものを家で使ってみたい、自分が使ってい る物はどうだろうなど、米沢地区が目標とした新しい研究テーマ「日常・地域・本物」の3つが上手に 重なる事例の発表であり、これからの5年間につながるものでした。 図工の始まりは、近代化が進みその技術を伝える場がなくなったことに危機感を感じたフィンランド で、学校で物作りを教えたことから始まった。冬の長いフィンランドでは各家庭で物作り(手工芸)が 代々受け継がれてきた。先人の知恵を受け継いでいくことが大切であり、造形遊びが目指すものは変わ っていない。日本にもこの動きは伝わったが、富国強兵の時代で生産性を重視したものであった。 現在の日本には、4KTVや手術で使う16KTV、3Dコピーなどの高度な技術がある。これらの 技術をコピーすることは簡単である。しかし、作り手の思いや文化の背景があるのは本物だけである。 現代に残る日本の智の結晶を次の世代にどう伝えていくのか、これが図工・美術教育の使命である。 研究協議会を終えて 実行委員会研究部長 米沢市立第七中学校 渡邊 晃司 この度は、お忙しい中たくさんの先生方に米沢大会に参加していただきありがとうございました。ま た、たくさんのご意見ご感想を頂戴できたことにも感謝申し上げます。 今回の米沢大会は、山形県造形教育のテーマが変わった1年目の協議会でした。いろいろなことがな かなか見えず・進まずで戸惑いや不安ばかりでしたが、この協議会で、大きな成果を得ることができま した。 米沢では、目指す子どもの姿を「 (アートマーク)あふれる子ども」と設定し、 「日常」 「地域」 「本 物」の 3 つのつながりを研究の柱として取り組んできました。 参加していただいた先生方から、 「 (アートマーク)に思いや願いが込めてあり、とてもよかった」 「子どもにもわかりやすい」「3つのつながりになるほどと思いました」「3つのつながりを求めていく 視点が、子どもの思いや発想、作り出す力につながっていて素晴らしいと思った」…というご意見ご感 想をいただきました。 たくさんの声が、自分たちの研究や取り組みの自信となり今後の励みとしていきたいと思いました。 また実践発表や展示作品を通して、「大きな刺激をうけました」「造形が身近で素敵なものなのだとおう ちの方や地域の方に広げていきたい」 「どの地区でも改めて実践できるものだった」など、皆様方のこれ からの造形活動につながるようなものを発信できたのではないかと感じることもできました。 また、今回は分科会をワークショップ形式で行いました。短い時間でしたが、校種や地域、経験とい った様々異なる先生方でのグループで、実のある情報交換や実践交流ができたのではないかと思います。 最後に、助言者の先生方、アドバイスしていただいた先生方、素晴らしい実践を発表していただいた 先生方、運営にご協力していただきました皆様方に感謝申しあげます。特に助言者の渡邉斉先生、齋藤 学先生におかれましては、お忙しい中にも関わらず、事前の発表の打ち合わせに参加していただき、た くさんのアドバイスをいただきました。そのアドバイスは、私たちの自信となり、まさしく「 (ア ートマーク) 」あふれる研究大会へとつなげることができました。本当にありがとうございました。 この協議会で得た成果と課題を大切にし、これからも豊かなつながりの中で造形活動を通し、 「 (ア ートマーク) 」がたくさん生まれる活動や、 「(アートマーク)」あふれる子ども達を育てていきたいと 思います。
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