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税理士法人古田土会計
平成27年3月1日発行 第16号
~社長の悩み 自社株式の承継に光~
社長の重要な仕事の一つに、後継者を指名し、育てることがあります。そして、然るべきときにバトンタッチし、
後継に託します。事業承継です。
中小企業経営者の多くは、事業承継問題で悩んでいます。「後継者がいない」「力不足だ」「承継する株式
の評価と税負担が問題だ」など、その中身は十人十色です。
税務の領域でいえば、相続が発生した際に、換金性の乏しい同族会社の株式についても、一定のルール
に基づき評価額が計算されます。そして相続税が計算され、原則として、相続開始後10ヶ月以内に現金で納税
することとなります。
国側も、この相続税負担が中小企業の事業承継に大きな障害となっていることを理解しており、これを解決
したいという趣旨で、『事業承継税制』が平成20年度税制改正にて決定し、運用されてきました。
そして、平成25年度税制改正で抜本的な見直しがなされて、一部先行して適用開始していますが、今年の1月
から本格的にこの改正が適用開始となりました。
ちなみに、旧制度は使い勝手が悪く、平成24年9月現在で全国で適用件数が549件という低水準の実績でした。
これを改善すべく今回の改正です。今号のTAX NEWSでは、旧制度との対比で、改正の一部をご紹介いたします。
『事業承継税制』:非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度
旧制度
改正後の制度
制度の内容
中小企業の後継者が現経営者から会社の株式を承継する際の、相続税・贈与税の納税
猶予(相続税80%、贈与税100%猶予)の制度。あくまで『猶予』ではありますが、一定の場
合には、その後免除が受けられます。
事前確認の廃止
制度適用前に、経済産業大臣の「事前確
事前確認を受けていなくても、制度利用が
認」を受ける必要があった。言い換えると、
可能に。相続等の事後に認定を受けます。
相続という突発的事象に対応ができていな
(H25.4より適用開始)
かった。
親族外承継の対象化
後継者は、現経営者の親族に限定してい
た。
親族外の後継者を対象化した。引き受け手
が拡大した。
雇用8割維持の要件 『雇用の8割維持を5年間毎年維持』すること 雇用の8割以上を『5年間の平均』で評価す
の緩和
が求められていた。
る。景気の変動に一定の配慮をした。
要件を満たさなく
なった際の取扱い
納税猶予された税額に、猶予された期間に 利子税率を引下げ、承継5年超で5年間の
対応する利子税を合わせて納付。
利子税を免除。
役員退任要件緩和
(贈与時の取扱い)
現経営者は、贈与時に役員を退任
贈与時に代表者退任を要件に。有給役員と
して残留が可能。
出典:中小企業庁HP「事業承継税制が使いやすくなります」
私見ですが、上記のように要件が緩和されたといっても、適用要件が細かく、制度利用に際してのハードルは
いまだ高いことは否めません。場当たり的な制度適用は控え、事前に要件を吟味し、場合によっては要件を
満たすように改善し、適用を検討することが肝要です。
ただ、政府は中小企業の円滑な承継を課題とし続けています。今後更なる改正が入るものと期待します。
※事業承継税制の適用検討にあたっては、事前に我々にご相談ください。