言葉や文化の壁を越えて人々の心をつかむ、 グローバル・パブリックスピーキング 1 2 アメリカの人気コメディアンのジェリー・サインフェルドはこう言った。 「世界の人々が 恐れることの1位は、 パブリックスピーキング、 2位が、 「死ぬこと」 。死ぬことが2番目とい うことは、人はお葬式に行った時、弔辞を述べるくらいなら棺おけに入っていたほうが マシだと思っているということである。死よりも恐いパブリックスピーキング、 外国語で はなおさらではないだろうか。 しかしパブリックスピーキングは、 習得できる 「スキル」 であ り、 第二言語 (ノンネイティブ) であることは、 実はアドバンテージなのだ。 パブリックスピーキングの極意は、聞いている相手がたったひとり、 もしくは何百人 でも、聞いている人の心を掴めるかどうかが重要。 どの言語を使う場合でも、 パブリ ックスピーキングのスキルの上達に重点を置くことで、今の言語力のままで格段に 伝わりやすいスピーチをすることが可能になる。 それが 「グローバル・パブリックスピー キング」 なのである。 Q.1 アメリカでも礼儀は大事。 オープニングで主催者へお礼をするべき? NO! 聴衆は、開始7秒で話し手の印象を決め、30秒で話を聞きたいかどうかを 判断する。最初から主催者や協賛社の名前を並べ立ててお礼を述べては、聴 衆は眠気に襲われてしまう。礼儀正しいつもりが、聴衆に対しては 「非礼」 になっ てしまうのである。 3 4 スピーチは、 文字とは異なり、 聴衆の耳から耳へと素通りするものである。惹きつけ られる何かがなくては、伝えたいメッセージも伝わらない。難しい言葉で長々と説明を 続けると、開始30秒で聴衆は飽きてしまい、心が離れてしまうのである。重要なメッセ ージであればあるほど、簡単な言葉と短い文章で、 ゆっくりと小学生にも理解できる ように伝える必要がある。 この 「簡単な言葉」、 「短い文章」、 「ゆっくり話す」 というの は、実はノンネイティブの得意技ではないだろうか。 「英語力に自信がないからスピー チはできない」 と思わずに、 それこそがアドバンテージだと思えばよい。 以下に、 アメリカ人相手にパブリックスピーキングを行う場合の、 日本人が陥りが ちな誤解をQ&A形式でいくつか紹介する。 Q.2 アメリカ人に見劣りしないよう、ボディーラ ンゲージは大げさにしたほうが良い? NO! 不必要なボディーランゲージは、スピーチの妨げになり、動きに目が行って しまって、伝えたいメッセージが伝わらない。メッセージを第一に考え、意味のあ る動きに絞り込むことが重要。ストーリーや情景に合わせ、 目線と動線をお芝居 のように緻密に組み立てるようにする。 Q.3 自己主張の強いアメリカ文化では、存分に 自己アピールをするべき? NO! 自分の成功話ばかりするのは間違いである。自己主張が強いアメリカ文化では、 スピーチが 「自分にとってどんなメリットがあるのか」 を考えながら聞いている。 自分自 身や提案する商品、 サービスのすばらしさだけに重点を置いて話すというのは、 単な る自己中心的な内容になってしまう。 それよりも 「聞き手の視点」 に立ってスピーチを することが大切である。 Q.4 沢山の質問に備えてQ&Aは最後に持って くるのが良い構成? NO! しかし、ほとんどのプレゼンテーションは、Q&A で終了しているのが現状だ。 と くにアメリカ人は質問が多いため、 スピーチの途中で質問されると構成が崩れてしま うと思いがちだ。確かにそうなのだが、Q&Aでプレゼンテーションを終えると、他人の コメントや的外れな質問があった場合、 それが聴衆の心に残ったままスピーチが終わ ってしまうことになる。 スピーチは聞き手に大切なメッセージを届けるため行うものだ。 さらにそのメッセージが、 会場を後にした翌日、 1ヵ月後、 数年後と聴衆の心に強く残ら なければ、 大成功とは言えない。 ほかにもさまざまな誤解、 落とし穴、 それらに対する解決手法やコツがたくさんあります。 みなさんもグローバル・パブリックスピーキングの達人になりませんか? 【筆者プロフィール】 リップシャッツ信元夏代 アスパイア・インテリジェンス代表 ブレイクスルー・スピーキング代表 早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は 「異文化コミュニケーションとビジネス」 。 NYU にてMBA 取得。2004 年に事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリ ジェンス社設立。2013 年、2014 年春季トーストマスターズインターナショナルの国際ス ピーチコンテストで日本人初の地区大会優勝 2 連覇を果す。2014 年 9月ブレイクスルー・ スピーキング設立。日本人のためのグローバルパブリックスピーキングの E-learningプロ グラムを中心に、 個人コーチングセッション、 企業内研修等を行う。 <www.btspeaking.com 446
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