ICTを段階的に導入、先生‐生徒の緊密 なコミュニケーションを実現

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ICTを段階的に導入、先生­‐生徒の緊密
なコミュニケーションを実現
私立
桐蔭学園中学校・中等教育学校 中高一貫校
共学
学科: 普通科 男子部・女子部・中等教育学校
規模: 中学1学年 約500人 (2015年度)
主な進路状況: 国公立大207人、早慶上智ICU理科大454人(2015年度入試)
取り組み
● 明確な活用目的を踏まえつつ、現状にあった段階的な導入を実施
● 適切なタイミングでの先生—―生徒コミュニケーションの実現
明確な活用目的を踏まえつつ、現
状にあった段階的な導入を実施
──── タブレット以外のICT環境はどのように整備さ
れましたか。
佐藤先生 電子黒板やWi-fiの導入など、タブレット導入
前に準備を進めていました。 ICT委員会を立
──── ICTを学校に導入した背景についてお聞かせ
ち上げ、ハード面の環境(教室内のWi-­‐fi設
ください。
置、タブレットのMDMやフィルタリングなどの
佐藤先生 2014年に桐蔭学園は創立50周年を迎えま
管理体制)をどのように整えるか検討しまし
した。次の50年を見据え、「これからの社会
た。また、2014年度は新中1学年に配属さ
を生き抜く生徒たちはどういう力を持つ必要
れる可能性のある先生方を中心にタブレット
があるか?」 を改めて問い直しました。議論
や電子黒板を利用した授業実践を行い、
した結果、 「自ら考え判断し行動できる力」
2015年度の生徒1台タブレットを見据えた準
を養えるよう、「アジェンダ8(注1)」を策定し
備を行っていました。新中1学年の配属は通
ました。その一つに、情報化社会を生き抜く
常より早めに発表され、3月の1ヵ月間は先
ためのICT活用とリテラシーもあり、2015年度
生方の利用したいソフトやアプリの活用方法
の中学入学生から生徒1人が1台のタブレッ
や概要を把握し、4月からのICT活用へ向け
ト端末を持つ環境整備を行いました。
た準備を行っていただきました。
(注1)アジェンダ8(改革の8つの行動) 1
1:アクティブラーニング型の授業 5:サイエンス教育の充実 2:キャリア教育の充実 6:グローバル教育の充実 3:個人カルテを用いたTOIN個別学習支援システムの開始 7:芸術・文化教育の充実 4:ICT教育の充実
8:生徒・保護者・学校の三位一体教育の充実
──── Classiを導入したご理由をお聞かせください。
川妻先生 Classi活用の当初の目的は生徒カルテ機能
佐藤先生 タブレットに入れるソフトを検討する際に、現
にデータを蓄積し、生徒指導に利用するとい
在の教育活動に必要なものが何かを検討し
うものでした。しかし、実際に学年の先生方
ました。必要だと考えた観点は大きく3つで、
に相談すると、「まずは連絡機能として使い
1つ目はアクティブ・ラーニング型での授業
たい」というニーズが強いことがわかりました。
に活用できる、2つ目は授業外の家庭学習
Classiは色々な機能がそろっていますので、
で個別学習をサポートするe-learning、3つ
最初の段階は気軽に利用してもらい、使った
目は、授業内外の生徒の学習活動のデータ
人から便利、こういうのがほしかったという
を蓄積し、電子カルテとして利用できるとい
声が上がるように努めました。
うことでした。検討時、全ての観点を備えた
学園として利用してもらいたい教務的な機
サービスはなく、それぞれの目的に合わせ、
能に関しては、6月くらいから簡単に利用し
必要なものを選んでいきました。Classiであ
てもらえる、担任がとる1日の出欠確認から
れば、3つ目の目的を果たせると考えました。
スタートしました。生徒カルテに関しては、定
Classiは、ベネッセで受験したアセスメント
期考査のデータを登録するなど、まずは指
データが6年間蓄積でき、定期考査や実力
導に使っていただけるデータの蓄積を始めて
考査、出欠状況なども蓄積することができま
います。後期の面談指導の時期を目標にお
す。真ん中に生徒がいて、その周りにいる担
いて、授業での出欠や評価の記録を取り、生
任や教科担当が個々で持っていた情報を集
徒カルテを指導で利用するといった内容での
約し、つなぎ合わせ、共有することで、生徒
勉強会も予定しています。
によりフィットした指導や学習環境を整えるこ
学園の方針や当初の目的・計画と学年の
とができると考えました。
現状をふまえ、折り合いをつけながら、活用
具体的な活用に関しては、教務部が男子
を促進していくのが私の役目ですね。
部・女子部・中等教育学校の各学年主任と
相談しながら、進めています。
classiの段階的導入案
導入
項目
▲タブレットを利用して、学習記録をつけている様子
──── Classiの活用促進をどのように行われました
か。お聞かせください。
前期前半
【4月】
・HRにて生徒連絡で活用
→校内グループで連絡事項の伝達
→コンテンツボックスの活用(配付物)
→アンケート機能の利用
・HRにて出欠入力で活用
→出欠を入力する
・教員間の連絡
→校内グループでの連絡
→メッセージによるやりとり
・カレンダー機能の活用
→学校行事
→学年行事(エクセルでのアップロード可)
【5月】連休明け=時間割流し込み完了
・授業記録を生徒連絡で活用
→校内グループで連絡事項の伝達
→アンケート機能の利用(振り返りに)
→コンテンツボックスの活用
→webテストの活用
・カレンダー機能の活用
→時間割が反映される
(課題・WEBテスト・アンケート表示)
→生徒個人予定入力
→TODOリスト
・授業記録にて欠課の入力(任意)
※写真入り座席表表示が可能
・授業記録にて授業評価の入力(任意)
→授業態度良好(数値=回数)
→授業態度不良(数値=回数)
→提出物(チェック方式)
→忘れ物(チェック方式)
・授業記録にて生徒メモを入力(任意)
・授業記録にて授業メモを入力(任意))
・生徒カルテの表示
→個人別出欠状況(年間/期毎)
→個人時間割
→アンケート回答閲覧
→WEBテスト取り組み状況
川妻先生 我が校は学年の指導に関わる先生方も多
※後期から全機能を本格的に使用していく
い(100名以上)ため、段階的に導入しなけ
れば活用が実現しません。導入へ向けた計
画を詳細に作り、学年主任の先生方と相談
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しました。
前期後半
【6月】
・成績カルテの表示(生徒用)
→出欠状況(年間/期毎)
→前期中間考査結果
→授業態度評価
・生徒カルテの表示(教員用)
→1日の出欠クラス一覧
→指定した範囲の出欠クラス一覧
→授業クラス別欠時一覧
→日別の授業評価一覧
→個人別前期中間考査結果
→個人別生徒メモ入力
・授業記録にて欠課の入力(必須)
・授業記録にて授業評価の入力(必須)
・授業記録にて生徒メモを入力(任意)
・学習記録入力(任意)
→毎日教科ごとの学習時間を入力する
→学習内容もコメント欄に入力する
→教員によるコメント入力
【7月】
・WEB版アイコンを追加
・学習記録入力(必須)
→WEB版での活動時間入力(任意)
→教員によるコメント入力(必須?)
【夏期研修期間】
・夏期研修課題配付
→コンテンツボックスの活用
・WEB版での学習記録入力(必須)
→活動時間入力(必須)
→教員によるコメント入力(必須
・生徒カルテによる学習状況の表示
(日・週・月・期毎で表示切替)
→学習時間の比率(教科)
→学習時間の推移
→活動時間
→合計学習時間
→達成度(時間・内容満足度)
→学習内容と学習時間
→学習以外の活動
→生徒とのやりとり=生徒へのメッセージ入力
▲前期の導入計画書
適切なタイミングでの先生—―生徒
のコミュニケーションの実現
大橋先生 我が校では中学1年生からレッスン制を取り
入れていることもあり、各授業担当者ごとに
考査範囲を提示します。紙で配布する先生
もいれば、黒板で提示する先生もいらっしゃ
──── 学年では具体的にどのように利用されていま
いましたが、校内グループで配信するように
しました。
すか。
大橋先生 1学期は校内グループ機能、1日の出欠確
認機能、学習記録機能の3つを主に利用し
ました。
校内グループ機能に関しては、学年全体の
グループ・クラスグループ・教科ごとのグ
ループ・落し物お知らせ用グループの主に4
かなり重宝しているのは、落し物グループ
です。以前、落し物は口頭で各HR担任が生
徒に伝えていましたが、そのころよりも確実
に引き取りに来る生徒が増えました。拾った
先生がグループに落し物の画像をアップし
て、投稿するというスタイルにしています。
つを運用しています。
通常はHRの連絡に利用していますが、夏
休みなど生徒が学校に来ない時期に連絡で
きるのはとても便利でした。学園でも情報を
発信するWebツールがありますが、送信者
は学年主任のみで担任からは送れないもの
なので、校内グループで手軽に生徒へ連絡
をとれる良さを実感しています。
▲落し物グループの投稿内容
生徒の声
・連絡事項をいつでも手元で確認できるので、忘れるこ
とも少なくなりました。
・先生から来た投稿はみんな楽しみにしていて、「いい
ね!」を誰が一番早く押せるかという競争もしてますよ。 大橋先生 学習記録機能に関しては、夏休み前の2週
間は全員入力ということで試してもらいまし
た。夏休みには任意で記録してもらいました
が、毎日Classiを開く習慣のある生徒は入力
▲夏休みに配信した校内グループの投稿内容
していましたが、何も記録しない生徒もいる
状態でした。
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大橋先生 1日の出欠確認機能に関しては、各担任の
先生方に協力いただいて記録してもらって
大橋先生 後期に関しては、毎日SHRなどで開いて、記
録してもらうよう学年としてやっていきたいと
考えています。
もともと、学校全体で紙を利用した学習
カードというものを配布し、回収したカードの
学習時間を先生方が入力、コメントをつけて
返していたので、その代替という考え方で学
年としてはやっていく方針です。
生徒カルテに関しては、蓄積されるデータ
います。入力した内容が即時反映されるの
はとても良いと思います。学年の出欠や遅
刻の状況などもすぐに一覧で把握できます。
他学年はこれまで通り、黒板に各担任が記
録して集約しているので、中1も足並みをそ
ろえ、旧来の記録方法は残しています。い
ずれ解消されることですが、移行期の今は
両方をやらなければならないという煩雑さも
抱えています。
をチェックするなど、後期の活用に備えて準
備しています。
▲出欠記録した状況を一覧にした画面
▲学習記録の画面
生徒の声
・記録することで、学習内容の教科バランスが確認でき
るのがよかったです。
・コメントを書くと、先生がコメント返してくれるので励み
になります。 4
ICTを通じ、先生­‐生徒が緊密なコミュニケーションができている
■ 中学に入学して間もない生徒たちに、「自ら判断し行動できる力」を養うための場として、学校をとらえてもら
成
果
うためには、まず先生方や同級生と信頼関係を築き、「よし、ここで頑張ろう!」という気持ちになってもらうこ
とが重要です。
■ Classiを導入することで、時間・場所(学校‐家など)を越え、指導や声掛けを出来るようになり、これまで
以上に先生同士や先生‐生徒間で緊密なコミュニケーションを実現できるようになりました。
お話をお伺いした先生方 ■ 直近では生徒カルテ機能を活かして、当初の目的で
あった「生徒一人一人を全員の先生で把握し、指導す
る」体制を作りたいと考えています。先生各人は生徒
を一生懸命指導し、見守っています。それぞれが持つ
今
後
入試広報部長 佐藤 透先生 情報を生徒カルテに蓄積し、日々の指導に還元して
いきたいと思います。
向
■ アクティブラーニング型授業も並行して実践していま
すが、生徒の成果物や活動の評価に関して蓄積して
教務主任 川妻 篤史先生 いきたいと考えています。その記録が、生徒一人一人
の6年間の成長の履歴(ポートフォリオ)になります。三
位一体の入試改革の方向性も踏まえながら、進めて
いきたいと考えています。
中1男子部学年主任 大橋 一仁先生 5