長期エネルギー需給見通し策定案に対する意見を提出しましょう。 長期エネルギー需給見通し策定案に対する意見を提出しましょう。 長期エネルギー需給見通し案に対する意見募集が 6 月 2 日~7 月 1 日まで行われています。 見通し案は、①原発の再稼働やリプレース(建て替え)、新増設を見込み、②再生可能エネ ルギーの導入を低く抑え、③石炭火力を重要な電源として有効活用する、④そして 2030 年 の温室効果ガスの削減は 2013 年度比 26%削減としています。 見通し案は、脱原発や温暖化防止に背を向けるものであり、とても容認できるものでは ありません。 多くの方が意見を提出することを訴えます。 長期エネルギー需給見通し案、意見提出方法など http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620215004&Mode=0 または「長期エネルギー需給見通し パブリックコメント」と検索してもでてきます。 ポイント 1 「原発再稼働、60 「原発再稼働、 年延長運転、リプレース・新増設が前提」 年延長運転、リプレース・新増設が前提」 見通し案は、2030 年の電源構成で原発は 20~22%としているが、設置許可済みの大間、 島根3号機、東通が仮に稼働しても電源構成に占める原子力発電の比率は 2030 年時点で 15% 程度にしかならない。つまり、運転期間を 60 年に延長、リプレース、新増設がないと 2030 年時点での 20~22%は実現できない。 見通し案の 2030 年の電源構成 出典 : 長期エネルギー需給見通し小委員会資料より 原子力発電の見通し 出典 : 長期エネルギー需給見通し小委員会資料より 原子力発電は「原発依存度は可能な限り低減させる」としながらも「安全性の確保を全 てに優先し、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認め られた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」とし、そして 2030 年 の電源構成に占める原子力発電は 20~22%としている。 震災前には 54 基あった原子力発電所は、福島第一原発の 1~6 号機に続き、「原則 40 年 の運転期間ルール」により老朽化した美浜 1 号機と 2 号機、敦賀 1 号機、玄海 1 号機、島 根 1 号機の廃炉が決まっている。「原則 40 年の運転ルール」を適用すれば原子力発電所の 設備容量は 2030 年時点での現在の約半分、2040 年頃には2割程度になる。設置許可済みの 大間、島根3号機、東通が仮に稼働しても電源構成に占める原子力発電の比率は 2030 年時 点で 15%程度しかない。つまり原子力発電で 20~22%を供給するためには、40 年を超えて 運転させる、さらに新増設か建替え(リプレース)が必要になる。 見通し案は、今だ収束の目処もたたない福島原発事故、12 万人を超える被災者、原発廃 止の世論を直視せず、再稼働ありきの計画になっている。 ポイント2「再生可能エネルギー導入が低い」 ポイント2「再生可能エネルギー導入が低い」 エネルギーミックスでは、2030 年の再生可能エネルギー発電量は 22~24%としている。 再生可能エネルギー発電を増やすことは、世界のすう勢です。水力発電以外の再生可能 エネルギー電力は、1990 年~2013 年にデンマークは3%から 46%、ポルトガルは3%から 31%、スペインは1%未満から 26%、ドイツは1%未満から 21%に急増させた。さらにド イツは再生可能エネルギーの導入割合を 2020 年までに 35%、2030 年までに 50%、2040 年 までに 65%、2050 年までに 80%にするという目標をもっている。現在、日本は水力発電が 約8%あるが、水力以外の再生可能エネルギー電力割合は約5%でしかない。 エネルギーミックスが議論されている4月3日に環境省は再生可能エネルギーの導入見 込量について3つの対策・施策レベルに分けて試算結果を公表した。それによると、現行 ですでに取り組まれ、あるいは想定されている対策・施策を継続することを想定した低位 ケースで 2030 年の再生可能エネルギー比率は約 24%、合理的な誘導策を講じた中位ケース では約 31%、最大限に促進した高位ケースでは約 35%に達するとしている。 エネルギーミックスが示した 22~24%は、環境省試算の低位ケースの 24%でしかなく、 再生可能エネルギーの導入を積極的にすすめるものとはなっていない。 ポイント3「 ポイント3「CO2 削減に逆行する石炭火力」 エネルギーミックスは、石炭火力は 26%とし、非効率な石炭火力発電の抑制に向けた取 組等火力発電の効率化を図り、環境負荷の低減と両立しながら、その有効活用を推進する、 としている。 委員会の資料では 2013 年の石炭火力の設備容量は 2335 万 kW ある。経年老朽化により順 次廃炉されていくが、気候ネットワークの調べでは新たに 46 基 2331 万 kW の建設計画があ り、石炭火力の新増設が相次いで行われる可能性がある。つまりエネルギーミックスは石 炭火力を減らすのではなく、増加させる計画となっている。 石炭火力は最新鋭であっても CO2 排出係数が非常に大きく、LNG 火力の2倍以上になる。石 炭火力は縮小、順次廃止すべきである。 発電方式別の発電効率、CO2 排出原単位 出典 : 長期エネルギー需給見通し小委員会資料より ポイント4「 ポイント4「再生可能エネルギーを最大限受入、ベースロード電源 再生可能エネルギーを最大限受入、ベースロード電源とすべき ベースロード電源とすべき」 とすべき」 エネルギーミックスは、ベースロード電源比率は 56%程度となる、としている。しかし欧 米では、ベースロード電源という概念は変わりつつあり、ベースロード電源比率を下げる 計画を持っている。背景には、CO2 排出量の多い石炭火力発電所を減らすこと、エネルギー 自給率の向上などがある。また、太陽光、風力などの拡大を前提として、それを系統的に 安定的に取り込むことで、再生可能エネルギー電源をベースロード電源とする電力システ ムの構築がめざされている。 欧米のベースロード電源比率の推移 出典 : 長期エネルギー需給見通し小委員会・高村ゆかりさんの資料より ポイント5「基準年をかえ、削減目標を高く見せている」 ポイント5「基準年をかえ、削減目標を高く見せている」 温室効果ガスの削減目標は、欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標を掲げ世界をリード する、としてエネルギー起源 CO2 排出量は、2013 年比 21.9%削減としている。これを基に、 他の温室効果ガスの削減量や吸収対策等を加え、2030 年の削減目標は 2013 年比 26%削減 としている。 しかし、この目標は 1990 年比で見た場合 18.0%削減でしかなく、EU40%削減、アメリカ 14~16%(2025 年)削減と比べて、 「欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標を掲げ世界をリー ドする」ものとは到底言えない。 基準年を都合のいいようにずらし、削減目標を大きく見せることは、真摯に削減に取り 組む姿勢とは言えず、国際交渉で日本の信用をますます失墜させる。 図5 主要国の約束草案との比較 出典 : 産業構造審議会 約束草案検討ワーキンググループ中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会合同会合(第 7 回)‐配布資料より
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