添付文書

**2016年 2 月改訂(第16版)
*2015年 6 月改訂
日本標準商品分類番号 874291
抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤
貯
法:気密容器・室温保存
劇 薬
(取扱い上の注意の項参照)
処方箋医薬品注)
使用期限:外箱に表示
承認番号
22000AMX00014
薬価収載
2008年 4 月
販売開始
2008年 4 月
国際誕生
2005年12月
** 効 能 追 加 2016年 2 月
(ソラフェニブトシル酸塩錠)
D1
■ 警告
本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において,が
ん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本
剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与する
こと.また,治療開始に先立ち,患者又はその家族に本
剤の有効性及び危険性を十分説明し,同意を得てから投
与すること.
■ 禁忌(次の患者には投与しないこと)
⑴本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
⑵妊婦又は妊娠している可能性のある女性[「妊婦,産婦,
授乳婦等への投与」の項参照]
⑶肝 細胞癌患者に本剤を使用する場合には,肝機能
障害の程度,局所療法の適応の有無,全身化学療
法歴等について,「臨床成績」の項の内容に準じて,
適応患者の選択を行うこと.
** 3.根治切除不能な甲状腺癌に対して
⑴臨 床試験に組み入れられた患者の病理組織型等に
ついて,「臨床成績」の項の内容を熟知し,本剤の
有効性及び安全性を十分理解した上で,適応患者
の選択を行うこと.
⑵甲 状腺未分化癌患者に対する本剤の有効性及び安
全性は確立していない.
⑶放射性ヨウ素による治療歴のない分化型甲状腺癌
患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立して
いない.
■ 組成・性状
■ 用法・用量
販売名
ネクサバール錠200mg
成分・含量
1 錠中,ソラフェニブ200mg(ソラフェニブト
シル酸塩として274.0mg)含有
通常,成人にはソラフェニブとして 1 回400mgを 1 日 2 回経
口投与する.なお,患者の状態により適宜減量する.
添加物
クロスカルメロースナトリウム,結晶セル
ロース,ヒプロメロース,ラウリル硫酸ナト
リウム,ステアリン酸マグネシウム,マクロ
ゴール4000,酸化チタン,三二酸化鉄
色・剤形
赤色のフィルムコーティング錠
用法・用量に関連する使用上の注意
⑴サ イトカイン製剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との併用
について,有効性及び安全性は確立していない.[「臨
床成績」の項参照]
⑵肝 細胞癌に対する局所療法との併用について,有効
性及び安全性は確立していない.
⑶高 脂肪食の食後に本剤を投与した場合,血漿中濃度
が低下するとの報告がある.高脂肪食摂取時には食
事の 1 時間前から食後 2 時間までの間を避けて服用
すること.[「薬物動態」の項参照]
⑷副 作用により本剤を減量,休薬又は中止する場合に
は,副作用の症状,重症度等に応じて以下の基準を
考慮すること.
外 形
(識別コード)
直径(mm)
10
厚さ(mm)
4.5
重さ(mg)
349.85
■ 効能・効果
**根治切除不能又は転移性の腎細胞癌,切除不能な肝細胞癌,
根治切除不能な甲状腺癌
効能・効果に関連する使用上の注意
1.根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対して
⑴サイトカイン製剤による治療歴のない根治切除不能
又は転移性の腎細胞癌患者に対する本剤の有効性及
び安全性は確立していない.
[「臨床成績」の項参照]
⑵本 剤の術後補助化学療法における有効性及び安全
性は確立していない.
2.切除不能な肝細胞癌に対して
⑴局所療法(経皮的エタノール注入療法,ラジオ波焼
灼療法,マイクロ波凝固療法,肝動脈塞栓療法/肝
動脈化学塞栓療法,放射線療法等)の適応となる肝
細胞癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確
立していない.
⑵肝細胞癌に対する切除及び局所療法後の補助化学療
法における本剤の有効性及び安全性は確立していない.
1)根 治切除不能又は転移性の腎細胞癌,切除不能な
肝細胞癌に対して
減量基準
用量調節段階
投与量
通常投与量
1 回400mgを 1 日 2 回経口投与
1 段階減量
1 回400mgを 1 日 1 回経口投与
2 段階減量
1 回400mgを隔日経口投与 皮膚毒性
皮膚の副作用の
グレード
発現回数
投与量の調節
グレード 1 :手足 回数問わず 本 剤 の 投 与 を 継 続 し,
の皮膚の感覚障
症状緩和のための局所
害,刺痛,痛みを
療法を考慮する.
伴わない腫脹や
紅斑,日常生活に
支障を来さない程
度の不快な症状
-1-
注)注意-医師等の処方箋により使用すること
皮膚の副作用の
グレード
発現回数
グレード 2 :手足 1 回目
の皮膚の痛みを
伴う紅斑や腫脹,
日常生活に支障を
来す不快な症状
皮膚毒性
投与量の調節
7 日以内に
改善が見ら
れない場合
あるいは
2 回目又は
3 回目
グレード 0 〜 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 1 段階
下げる.
(400mg 1 日 1 回
又は400mg隔日 1 回)
4 回目
本剤の投与を中止する.
グレード 3 :手足 1 回 目 又 は
の 皮 膚 の 湿 性 落 2 回目
屑, 潰 瘍 形 成,
水 疱 形 成, 激 し
い痛み,仕事や日
常生活が不可能
になる重度の不快
な症状
3 回目
皮膚の副作用の
グレード
本 剤 の 投 与 を 継 続 し,
症状緩和のための局所
療法を考慮する.
7 日以内に改善が見ら
れない場合は下記参照.
発現回数
グレード 1 :手足 回数問わず 本 剤 の 投 与 を 継 続 し,
の皮膚の感覚障
症状緩和のための局所
害,刺痛,痛みを
療法を考慮する.
伴わない腫脹や
紅斑,日常生活に
支障を来さない程
度の不快な症状
グレード 2 :手足 1 回目
の皮膚の痛みを
伴う紅斑や腫脹,
日常生活に支障を
来す不快な症状
グレード 0 〜 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 1 段階
下げる.
(400mg 1 日 1 回
又は400mg隔日 1 回)
本剤の投与を中止する.
グレード 0 ~ 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 1 段階
下げる.
3 回目
グレード 0 ~ 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 2 段階
b
下げる.
本剤の投与を中止する.
グレード
投与継続の可否
用量調節
グレード 0 〜 2
投与継続
変更なし
グレード 3
投与継続
1 段階下げる 4 回目
グレード 4
グレード 0 〜 2 に
軽快するまで休薬 a
1 段階下げる b
グレード 3 :手足 1 回目
の皮膚の湿性落
屑, 潰 瘍 形 成,
水 疱 形 成, 激 し
い痛み,仕事や日
常 生 活 が 不 可 能 2 回目
になる重度の不快
な症状
b
a. 30日を超える休薬が必要となり,投与の継続について臨
床的に意義がないと判断された場合,投与中止とする.
b. 2 段階を超える減量が必要な場合,投与中止とする.
非血液学的毒性 a
投与継続の可否
用量調節
グレード 0 〜 2
投与継続
変更なし
グレード 3
グレード 0 〜 2 に
b
軽快するまで休薬 1 段階下げる c
グレード 4
投与中止
投与中止
3 回目
減量基準
投与量
通常投与量
1 回400mgを 1 日 2 回経口投与
1 段階減量
1 回400mgと 1 回200mgとを交互
に12時間間隔で経口投与
2 段階減量
1 回200mgを 1 日 2 回経口投与
3 段階減量
1 回200mgを 1 日 1 回経口投与
グレード 0 ~ 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 2 段階
下げる.
本剤の投与を中止する.
血液学的毒性
2)根治切除不能な甲状腺癌に対して
用量調節段階
グレード 0 ~ 1 に軽快
するまで休薬する.
本剤の投与を再開する
場合は投与量を 1 段階
下げる.
a. グレード 2 又は 3 の副作用により減量し,減量後の用
量でグレード 2 以上の副作用が少なくとも28日間認め
られない場合は,
開始時の用量に増量することができる.
b. 3 段階を超える減量が必要な場合,投与中止とする.
a. 薬物治療を行っていない嘔気/嘔吐又は下痢は除く.
b. 30日を超える休薬が必要となり,投与の継続について臨
床的に意義がないと判断された場合,投与中止とする.
c. 2 段階を超える減量が必要な場合,投与中止とする.
**
本 剤 の 投 与 を 継 続 し,
症状緩和のための局所
療法及び 1 段階減量を
考慮する.
7 日以内に改善が見ら
れない場合は下記参照.
7 日以内に
改善が見ら
れない場合
又は 2 回目
血液学的毒性
グレード
投与量の調節 a
グレード
投与継続の可否
用量調節
グレード 0 〜 2
投与継続
変更なし
グレード 3
投与継続
1 段階下げる グレード 4
グレード 0 〜 2 に
軽快するまで休薬 a
2 段階下げる b
b
a. 30日を超える休薬が必要となり,投与の継続について臨
床的に意義がないと判断された場合,投与中止とする.
b. 3 段階を超える減量が必要な場合,投与中止とする.
非血液学的毒性 a
グレード
発現回数 投与継続の可否 用量調節
グレード 0 〜 1 回数問わず
グレード 2
-2-
回数問わず
投与継続
変更なし
投与継続
1 段階下
c,
d
げる グレード
グレード 3
発現回数 投与継続の可否 用量調節
1 回目
グレード 0 ~ 2 1 段階下
c,
d
に軽快するまで げる b
休薬 7 日以内に改善
が見られない場
合は下記参照.
7 日 以 内 グレード 0 〜 2 2 段階下
に 改 善 が に軽快するまで げる c,d
見 ら れ な 休薬 b
い場合
あるいは
2 回目又は
3 回目
4 回目
グレード 4
回数問わず
グレード 0 〜 2 3 段階下
に軽快するまで げる c,d
休薬 b
投与中止
投与中止
a. 薬物治療を行っていない嘔気/嘔吐又は下痢は除く.
b. 30日を超える休薬が必要となり,投与の継続について臨
床的に意義がないと判断された場合,投与中止とする.
c. 3 段階を超える減量が必要な場合,投与中止とする.
d. グレード 2 又は 3 の副作用により減量し,減量後の用
量でグレード 2 以上の副作用が少なくとも28日間認
められない場合は,開始時の用量に増量又は 1 段階増
量することができる.
■ 使用上の注意
1.慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
⑴重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者[使用
経験がない.]
⑵高血圧症の患者[高血圧が悪化するおそれがある.]
⑶血栓塞栓症の既往のある患者[心筋虚血,心筋梗塞など
があらわれるおそれがある.]
⑷脳転移のある患者[脳出血があらわれるおそれがある.]
⑸高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
2.重要な基本的注意
⑴手足症候群,剝脱性皮膚炎,中毒性表皮壊死融解症
(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN),皮膚粘膜眼症
候群(Stevens-Johnson症候群),多形紅斑,ケラトアカ
ントーマ,皮膚有棘細胞癌があらわれることがあるの
で,必要に応じて皮膚科を受診するよう,患者に指導
すること.[「重大な副作用」の項参照]
⑵AST(GOT),ALT(GPT)の上昇を伴う肝機能障害,黄
疸,肝不全があらわれることがあるので,本剤投与中
は定期的に肝機能検査を行い,患者の状態を十分に観
察すること.
なお,主に肝細胞癌又は肝硬変のある患者において肝
性脳症が報告されているので,これらの患者に投与す
る際は,血中アンモニア値等の検査を行うとともに,
意識障害等の臨床症状を十分に観察すること.[「重大
な副作用」の項参照]
⑶急性肺障害,間質性肺炎があらわれることがあるので,
本剤の投与にあたっては,呼吸困難,発熱,咳嗽等の
臨床症状を十分に観察し,異常が認められた場合には,
速やかに胸部X線検査等を実施すること.急性肺障害,
間質性肺炎が疑われる場合には投与を中止し,副腎皮
質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと.
また,呼吸困難,発熱,咳嗽等の症状があらわれた場
合には速やかに連絡するよう患者に説明すること.
[「重
大な副作用」の項参照]
⑷血圧の上昇が認められることがあるので,本剤投与中
は定期的に血圧測定を行うことが望ましい.高血圧が
あらわれた場合には,降圧剤の投与など適切な処置を
行うこと.重症,持続性あるいは通常の降圧治療でコ
ントロールできない高血圧があらわれた場合には,投
与の中止を考慮すること.[「重大な副作用」の項参照]
⑸白血球減少,好中球減少,リンパ球減少,血小板減少,
貧血があらわれることがあるので,定期的に白血球分
画を含む血液学的検査を行うなど,患者の状態を十分
に観察し,感染症,出血傾向等の発現に留意すること.
[「重大な副作用」の項参照]
⑹血清アミラーゼや血清リパーゼの上昇があらわれるこ
とがあるので,本剤投与中は定期的に膵酵素を含む血
液検査を行い,腹痛等の膵炎を示唆する症状が認めら
れた場合や膵酵素上昇が持続する場合には画像診断等
を行うこと.[「重大な副作用」の項参照]
⑺創傷治癒を遅らせる可能性があるので,手術時は投与
を中断することが望ましい.手術後の投与再開は患者
の状態に応じて判断すること.
⑻甲状腺癌患者に投与する際は,定期的に血清カルシウ
ム濃度を測定すること.
⑼甲状腺癌患者に投与する際は,定期的に甲状腺刺激ホ
ルモン濃度を測定すること.
3.相互作用
In vitro 試験において,本剤は薬物代謝酵素チトクローム
P450 3A4(CYP3A4)による酸化的代謝とグルクロン酸転
移酵素
(UGT1A9)
によるグルクロン酸抱合により代謝され
ることが示されているので,本酵素の活性に影響を及ぼす
薬剤と併用する場合には,注意して投与すること.また,
in vitro 試験で,本剤のUGT1A1,UGT1A9,CYP2B6,
CYP2C9及びCYP2C8に対する阻害活性が示されており,
これらの酵素により代謝される他の薬剤の血中濃度を上
昇させる可能性がある.
併用注意(併用に注意すること)
-3-
臨床症状・
措置方法
機序・
危険因子
イリノテカン
イリノテカン及
びその活性代謝
物であるSN-38の
AUCが そ れ ぞ れ
26〜42%及び67〜
120%増加すると
の報告がある1).
本剤はUGT1A1
によるグルクロ
ン酸抱合を阻害
することにより,
SN-38の代謝を
阻害し,血中濃
度を上昇させる
可能性がある.
ドキソルビシン
ドキソルビシンの
AUCが21%増 加
したとの報告があ
る2).
機序不明
CYP3A4誘導薬
(リファンピシ
ン,フェノバル
ビタール,フェ
ニトイン,カル
バマゼピン,デ
キサメタゾン
等)及びセイヨ
ウオトギリソウ
(セント・ジョー
ン ズ・ ワ ート )
含有食品
リファンピシンと
の併用により本剤
の A U C が 3 7%減
少したとの報告が
ある3).
CYP3A4誘導薬等
の併用により本剤
の血漿中濃度が低
下する可能性があ
る.
In vitro 試験に
おいて,本剤は
CYP3A4によっ
て代謝されるこ
とが示唆されて
いる.
薬剤名等
薬剤名等
ワルファリン
臨床症状・
措置方法
機序・
危険因子
ワルファリンを 機序不明
併用した症例に
お い て, 出 血 又
はプロトロン
ビン時間の延長
(INR値 の 上 昇 )
の 報 告 が ある4).
本剤とワルファ
リンを併用する
場 合 に は, 定 期
的にプロトロン
ビン時間又は
INRの モ ニ タ リ
ングを行うこと.
ドセタキセル
ドセタキセルの
AUCが36〜80%
増加したとの報
告がある5).
機序不明
パクリタキセ
ル/カルボプラ
チン
パクリタキセル 機序不明
及びカルボプラ
チンとの併用に
より本剤のAUC
が 4 7%増 加 し,
パクリタキセル
及びその活性代
謝物である6-OH
パクリタキセル
のAUCがそれぞ
れ29%及 び50%
増加したとの報
告がある.
カペシタビン
カペシタビン及
びその活性代謝
物であるフルオ
ロウラシルの
AUCがそれぞれ
50%及 び52%増
加したとの報告
がある.
機序不明
フラジオマイ
シン(経口剤:
国内未発売)
フラジオマイシ
ンとの併用によ
り本剤のAUCが
54%低 下 し た と
の 報 告 が あ る 6).
抗生物質との併
用により本剤の
血漿中濃度が低
下する可能性が
ある.
フラジオマイ
シンの腸内細
菌叢への影響
に よ り, 本 剤
の腸肝循環が
抑制される.
4.副作用
7)
**腎細胞癌患者を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験 ,肝細
8)
胞癌患者を対象とした国内第Ⅰ相臨床試験 ,分化型甲
状腺癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験9)並び
に甲状腺未分化癌及び甲状腺髄様癌患者を対象とした
国内第Ⅱ相臨床試験10)において,370例(日本人175例を
含む)中359例(97.0%)に副作用が認められた.主な副
作用の発現例数(発現率)は,手足症候群250例(67.6%),
脱毛202例(54.6%),下痢190例(51.4%),発疹・皮膚落
屑166例(44.9%),疼痛(口内疼痛,腹痛,骨痛,頭痛
及 び が ん 疼 痛 を 含 む )126例(34.1%), 高 血 圧126例
(34.1%),疲労116例(31.4%),体重減少95例(25.7%),
-4-
リパーゼ上昇87例(23.5%),口内炎(口内乾燥及び舌
痛を含む)85例(23.0%),食欲不振83例(22.4%),アミ
ラーゼ上昇65例(17.6%),瘙痒63例(17.0%),悪心46例
(12.4%),ALT(GPT)上昇39例(10.5%)等であった.
(甲状腺癌効能追加承認時)
⑴重大な副作用
1)手足症候群
(10%以上)
,剝脱性皮膚炎
( 1 〜10%未
満)
:手足症候群,剝脱性皮膚炎があらわれること
があるので,皮膚症状があらわれた場合には対症
療法,減量,休薬又は投与の中止を考慮すること.
2)中 毒 性 表 皮 壊 死 融 解 症(T o x i c E p i d e r m a l
Necrolysis:TEN),皮膚粘膜眼症候群(StevensJohnson症候群)
( 頻度不明),多形紅斑
( 1 ~10%
未満)
:中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,
多形紅斑があらわれることがあるので,観察を十
分に行い,異常が認められた場合には投与を中止
し,適切な処置を行うこと.
3)ケラトアカントーマ,皮膚有棘細胞癌( 1 ~10%未
満):ケラトアカントーマ,皮膚有棘細胞癌があら
われることがあるので,観察を十分に行い,異常
が認められた場合には投与を中止し,適切な処置
を行うこと.
4)出血
(消化管出血,気道出血,脳出血,口腔内出血,
鼻出血,爪床出血,血腫,腫瘍出血)
(10%以上)
:
消化管出血,気道出血,脳出血,腫瘍出血等の重篤
な出血があらわれることがあり,死亡に至る例が報
告されている.本剤投与中は観察を十分に行い,重
篤な出血が認められた場合には投与を中止し,適切
な処置を行うこと.
5)劇症肝炎(頻度不明),肝機能障害・黄疸( 1 ~10%
未満),肝不全
(頻度不明),肝性脳症
(頻度不明):
劇症肝炎,AST(GOT),ALT(GPT)の上昇を伴う
肝機能障害,黄疸,肝不全,肝性脳症があらわれ
ることがあるので,観察を十分に行い,異常が認
められた場合には本剤を減量,休薬又は投与中止
し,適切な処置を行うこと.なお,肝性脳症は主
に肝細胞癌又は肝硬変のある患者において報告さ
れているので,これらの患者に投与する際は,意
識障害等の臨床症状を十分に観察すること.
6)急性肺障害,間質性肺炎
(頻度不明):急性肺障害,
間質性肺炎があらわれることがあるので,呼吸困
難,発熱,咳嗽等の臨床症状を十分に観察し,異
常が認められた場合には速やかに胸部X線検査等
を実施すること.急性肺障害,間質性肺炎が疑わ
れた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤
の投与等の適切な処置を行うこと.
7)高血圧クリーゼ(0.1〜 1 %未満):高血圧クリーゼ
があらわれることがあるので,血圧の推移等に十
分注意しながら投与すること.高血圧クリーゼが
あらわれた場合は,投与を中止し,適切な処置を
行うこと.
**8)可逆性後白質脳症症候群(0.1〜 1 %未満):可逆性
後白質脳症症候群があらわれることがあるので,
観察を十分に行い,可逆性後白質脳症症候群が疑
われた場合は,本剤の投与を中止し,血圧のコン
トロール,抗痙攣薬の投与等の適切な処置を行う
こと.
9)心 筋虚血・心筋梗塞( 1 〜10%未満):心筋虚血・
心筋梗塞があらわれることがあり,死亡に至る例
が報告されているので,観察を十分に行い,異常
が認められた場合には投与を中止し,適切な処置
を行うこと.
10)う っ血性心不全( 1 〜10%未満):うっ血性心不全
があらわれることがあり,死亡に至る例が報告さ
れているので,観察を十分に行い,異常が認められ
た場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
11)消 化管穿孔(0.1〜 1 %未満),消化管潰瘍(頻度不
明):消化管穿孔,消化管潰瘍があらわれることが
あり,消化管穿孔により死亡に至る例が報告され
ているので,消化管穿孔,消化管潰瘍が疑われた
場合には,本剤の投与を中止するなど,適切な処
置を行うこと.
12)出血性腸炎,虚血性腸炎(頻度不明):出血性腸炎,
虚血性腸炎等の重篤な腸炎があらわれることがあ
るので,観察を十分に行い,激しい腹痛・下痢・
血便等の症状があらわれた場合には投与を中止し,
適切な処置を行うこと.
13)白 血球減少,好中球減少,リンパ球減少,血小板
減少,貧血(頻度不明):白血球減少,好中球減少,
リンパ球減少,血小板減少,貧血があらわれるこ
とがあるので,観察を十分に行い,異常が認めら
れた場合には本剤を減量,休薬又は投与中止し,
適切な処置を行うこと.
14)膵炎
(0.1〜 1 %未満):膵炎があらわれることがあ
るので,観察を十分に行い,腹痛等の膵炎を示唆
する症状が認められた場合や膵酵素上昇が持続す
る場合には,本剤を休薬又は投与中止し,適切な
処置を行うこと.
15)腎 不全
(頻度不明):腎不全があらわれることがあ
るので,観察を十分に行い,異常が認められた場
合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
16)ネ フローゼ症候群,蛋白尿(頻度不明):ネフロー
ゼ症候群,蛋白尿があらわれることがあるので,
観察を十分に行い,異常が認められた場合には投
与を中止するなど,適切な処置を行うこと.
17)低ナトリウム血症
(頻度不明)
:意識障害,全身倦怠
感,嘔吐等を伴う低ナトリウム血症があらわれる
ことがあるので,観察を十分に行い,異常が認め
られた場合には投与を中止するなど,適切な処置
を行うこと.
18)ショック,アナフィラキシー(頻度不明)
:ショック,
アナフィラキシー(呼吸困難,血管浮腫,発疹,血
圧低下等)があらわれることがあるので,観察を十
分に行い,異常が認められた場合には,本剤の投
与を中止し,適切な処置を行うこと.
19)横 紋筋融解症
(頻度不明):横紋筋融解症があらわ
れることがあるので,観察を十分に行い,筋肉痛,
脱力感,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビ
ン上昇等が認められた場合には,投与を中止し,
適切な処置を行うこと.また,横紋筋融解症によ
る急性腎不全の発症に注意すること.
20)低 カルシウム血症( 1 ~10%未満):低カルシウム
血症があらわれることがあるので,観察を十分に
行い,異常が認められた場合には,血清カルシウ
ム濃度を確認し,カルシウム剤やビタミンD製剤
の投与等の適切な処置を行うこと.また必要に応
じて,減量,休薬又は投与中止を考慮すること.
⑵その他の副作用
次のような副作用が認められた場合には,必要に応
じ,減量,休薬又は投与中止等の適切な処置を行う
こと.
10%以上
過敏症
1 〜10%
未満
0.1〜 1 %
未満
頻度
不明
過敏性反応
(皮膚反応
及び蕁麻疹
を含む)
血 液
プロトロンビ
ン時間延長,
INR上昇
皮 膚 脱毛,発 潮紅,痤瘡,湿疹
疹・皮膚 過角化
落屑,瘙
痒,皮膚
乾燥,紅
斑
精 神
神経系
末梢感覚神
経障害,浮
動性めまい,
うつ,耳鳴
筋・ 関節痛
骨格系
筋痛,筋痙
縮
呼吸器
嗄声,鼻漏
循環器 高血圧
白血球破
砕性血管
炎
QT延長
消化器 下痢,リ 消 化 不 良,胃炎
パーゼ上 嚥 下 障 害,
昇,口内 胃食道逆流
炎( 口 内 性疾患
乾燥及び
舌痛を含
む ), 食
欲 不 振,
アミラー
ゼ 上 昇,
悪心,便
秘,嘔吐
肝 臓 ALT
(GPT)AST
(GOT)胆 囊 炎,胆 LDH上昇
上昇
上 昇,Al-P 管炎
上昇,ビリ
ルビン上昇
その他 疼 痛( 口 浮腫,味覚 脱 水, 甲 状 放射線照
内 疼 痛,異常,粘膜 腺機能亢進,射リコー
腹痛,骨 の炎症,低 高 カ リ ウ ム ル反応
痛,頭痛 カリウム血 血 症, 女 性
及びがん 症,インフ 化乳房
疼痛を含 ルエンザ様
む ), 疲 症状,無力
労,体重 症,甲状腺
減少,感 機 能 低 下,
染,発熱,勃 起 不 全,
低リン酸 毛包炎
血症
5.高齢者への投与
本剤の臨床試験成績から,高齢者に対する用量調節の
必要性を示唆する所見はみられていない.しかし,一
般に高齢者では生理機能が低下していることが多いの
で,患者の状態を観察しながら慎重に投与すること.
6.妊婦,産婦,授乳婦等への投与
⑴妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与し
ないこと.また妊娠可能な女性に対しては,投与中
及び投与中止後少なくとも 2 週間は有効な避妊を行
-5-
うよう指導すること.[動物実験(ラット,ウサギ)で
ヒトの臨床用量を下回る用量で胚・胎児毒性及び催
奇形作用が報告されている11,12).]
⑵授乳中の女性への投与は避けること.やむを得ず投与
する場合には授乳を中止させること.
[動物実験
(ラッ
ト,経口)
で乳汁中へ移行することが報告されている.
]
7.小児等への投与
低出生体重児,新生児,乳児,幼児又は小児に対する
安全性は確立していない.[小児等に対する使用経験が
ない.動物実験で成長段階の若齢イヌに骨及び歯への
影響が報告されている13).]
8.過量投与
国外臨床試験において投与された最高用量は,800mg 1
日 2 回である.この際に観察された副作用は主として
下痢と皮膚障害であった.過量投与が疑われた場合に
は,投与を中止し,症状に応じ適切な処置を行うこと.
9.適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出
して服用するよう指導すること.[PTPシートの誤飲に
より,硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し,更には穿孔を
起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが
報告されている.]
10.その他の注意
反復投与毒性試験の病理組織学的検査で,ラット及び
イヌにおいて精細管変性及び精巣上体の精子減少等,
ラットにおいて黄体の中心壊死,卵胞の成熟抑制等が
認められており,生殖機能及び受胎能に障害を及ぼす
可能性が示唆されている14〜16).
■ 薬物動態
1.血中濃度17)
⑴日本人固形癌患者に本剤400mgを単回投与した際の血漿中濃度
日 本人固形癌患者 6 例に本剤400mgを単回経口投与した際
の血漿中濃度は,投与 8 時間後に最高血漿中濃度(Cmax)
1.21mg/Lに達した.消失半減期(t1/2)は25.5時間であり,血漿
中濃度時間曲線下面積(AUC)は35.4mg・h/Lであった.
日本人固形癌患者に本剤400mgを単回経口投与した際の血漿中
濃度推移(n= 6 ,幾何平均値/幾何標準偏差,片対数表示)
日本人固形癌患者に本剤400mgを単回投与した際の薬物動態学的
パラメータ[n= 6 ,幾何平均値(幾何標準偏差)]
投与量
400mg
AUC0-∞
Cmax
tmax
t1/2
(mg・h/L) (mg/L)
(h)
(h)
35.4
1.21
8
25.5
(3.50)
(3.57) [3〜24] (1.47)
※
CL/f
(L/h)
11.3
(3.50)
※:中央値[範囲]
tmax:最高血漿中濃度到達時間 CL/f:全身クリアランス
⑵日本人固形癌患者に本剤400mgを 1 日 2 回反復投与した際の血
漿中濃度
日本人固形癌患者 6 例に本剤400mgを 1 日 2 回反復投与した
際,投与開始後10日後には定常状態に達した.定常状態に
おける血漿中濃度推移は平坦であり,一定の濃度を維持し
ていた.反復投与開始から14日後のCmax及びAUCは,そ
れぞれ,4.9mg/L及び36.7mg・h/Lであった.
日本人固形癌患者に本剤400mgを1日2 回反復投与した際の血漿中
濃度推移(n= 6 ,幾何平均値/幾何標準偏差,片対数表示)
日 本人固形癌患者に本剤400mgを 1 日 2 回反復投与した際の
薬物動態学的パラメータ[n= 6 ,幾何平均値(幾何標準偏差)]
投与量
400mg
AUC0-12
(mg・h/L)
36.7
(1.92)
Cmax
(mg/L)
4.9
(1.96)
2.食事の影響(外国人における成績)18)
健康成人15例に,高脂肪食(約900〜1000kcal,脂肪含量50〜
60%)摂取直後,中脂肪食(約700kcal,脂肪含量30%)摂取直
後及び空腹時に本剤400mgを単回経口投与した場合,中脂肪食
後に投与した際のAUCは,空腹時と比較し14%増加し,高脂
肪食後に投与した際は29%低下した.
3.腎機能障害を伴う被験者における薬物動態(外国人における成
績)19)
軽 度 の 腎 機 能 障 害( ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス(Ccr)50〜
80mL/min),中等度の腎機能障害(Ccr30〜<50mL/min)及び,
重度の腎機能障害(Ccr<30mL/min)を有する被験者に,本剤
400mgを経口投与した場合,腎機能低下による本剤の薬物動態
への影響は見られなかった.なお,腎透析を受けている患者
における検討は行っていない.
4.肝機能障害を伴う固形癌患者における薬物動態8)
日本人固形癌患者において,軽度の肝機能障害(Child-Pugh分
類A)患者 6 例及び中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)患
者 6 例に本剤400mgを 1 日 2 回経口投与した場合,本剤のAUC
は,それぞれ,33.47mg・h/L及び29.45mg・h/Lであり,肝機能障
害のない固形癌患者と比較し,それぞれ 9 %及び20%減少し
た.なお,重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)患者での検討
は行っていない.
5.代謝17,20,21)
マスバランス試験の結果, 8 種の代謝物が同定され,うち 5
種が血漿中に検出された.日本人固形癌患者に本剤を 1 日 2
回反復投与した際,定常状態における未変化体AUCが占める
割合は,総AUCに対して約74〜90%であった.血漿中主代謝
物(ピリジン基のN-酸化体)の定常状態におけるAUCは総AUC
の約 6 〜12%であった.
6.排泄(外国人における成績)21)
健康成人 4 例に14C標識ソラフェニブ100mgを溶液にて単回経
口投与した場合,投与14日目までに糞中に77%,尿中に19%
が回収され合計96%が排泄された.糞中には未変化体として
50.7%が,カルボン酸体として19.1%が排泄された.尿中には
ソラフェニブのグルクロン酸抱合体が14.8%,ピリジン基のN酸化体のグルクロン酸抱合体が2.7%排泄された.
7.薬物間相互作用(in vitro 試験及び外国人における成績)
本剤はCYP3A4及びUGT1A9により代謝されるが,健康成人
16例に,ケトコナゾール(400mg)を 1 日 1 回 7 日間反復投与中
に,本剤50mgを単回経口投与した際のAUCに変化は認められ
なかった22).
本剤はCYP2C19,2D6及び3A4をKi値17,22及び29μMで阻害
したが23,24),それぞれのプローブ基質であるミダゾラム,デキ
ストロメトルファン及びオメプラゾールを本剤400mg 1 日 2 回
-6-
28日間反復投与時に併用しても,これら薬物の曝露量に変化
は認められなかった25).
本剤はCYP2C9をKi値 7 〜 8μMで阻害したが23,24),CYP2C9の
基質であるワルファリンを併用投与した患者のPT-INRの最大
変化率は,プラセボ群を超えるものではなかった4).
本剤は,CYP2B6及びCYP2C8をKi値 5 〜 6μM及び 1 〜 2μM
で阻害した23,24,26,27).
本剤の血中薬物動態に対する腸肝循環の寄与を評価するため,
健康成人にフラジオマイシンを 5 日間反復経口投与して腸内
細菌叢を死滅させたのち,本剤を経口投与したところ,本剤
のAUCが54%減少した6).フラジオマイシン以外の抗生物質と
の相互作用については検討していない.
8.蛋白結合率
本剤は血漿蛋白と高い結合能を示し,ヒト血漿蛋白結合率は
99.5%であった.主にアルブミンと結合し,その他にα-グロ
ブリン,β-グロブリン及び低比重リポ蛋白(LDL)にも結合し
た28,29).
9.QT間隔に対する影響(外国人における成績)
固形癌患者31例に本剤400mgを 1 日 2 回28日間経口投与し,
QT間隔延長の評価を行った.本剤の最高血中濃度到達時に
おける,QTcF間隔のベースラインからの変化の平均値(±標
準偏差)は,9.0(±18.0)msecであった.陽性対照として使用
したモキシフロキサシン(400mg)の投与 2 時間後における,
QTcF間隔のベースラインからの変化の平均値
(±標準偏差)
は,
4.9(±13.7)msecであった.なお,QTcFが500msecを超えた
例はなかった.
■ 臨床成績
<根治切除不能又は転移性の腎細胞癌>
1.国内第Ⅱ相臨床試験データ
第 Ⅱ 相 臨 床 試 験 7)は サ イ ト カ イ ン 製 剤( イ ン タ ー フ ェ ロ ン
α,インターフェロンγ,インターロイキン2)及び腎摘出の
治療歴のある切除不能又は転移性腎細胞癌患者を対象とし,
RECISTによる奏効率を有効性の主要評価項目として実施し
た.本試験における有効性評価対象例129例のうち,組織型分
類では淡明細胞癌が112例(86.8%)であり,Motzerリスク分類
では低リスク患者が52例(40.3%),中等度リスク患者が77例
(59.7%)であった.腫瘍評価判定委員会により16例が奏効と判
定された(奏効率:12.4%[95%信頼区間:7.3〜19.4%]).
2.海外第Ⅲ相臨床試験データ
全身投与による治療 1 レジメン(インターフェロンα,イン
ターロイキン2等)の治療歴がある切除不能又は転移性腎細胞
癌患者を対象として,プラセボ対照,無作為化,二重盲検に
より,全生存期間(OS)を主要評価項目,無増悪生存期間(PFS),
奏効率等を副次的評価項目とする第Ⅲ相臨床試験30)が実施さ
れた.有効性評価対象となったのは,769例(ソラフェニブ群
384例,プラセボ群385例)であり,組織型分類では,ソラフェ
ニブ群377例(98.2%),プラセボ群380例(98.7%)が淡明細胞癌
であった.Motzerリスク分類では,ソラフェニブ群の200例
(52.1%),プラセボ群の194例(50.4%)が低リスク患者であり,
他は中等度リスク患者であった.有効性評価対象例において,
PFSの中央値はプラセボ群で84日,ソラフェニブ群で168日
であった.PFSに関する解析はMotzerリスク分類及び国によ
る層別Log-rank検定により行い,その結果,ソラフェニブの
PFSに対する効果は有意であった(p<0.000001).ハザード比
(ソラフェニブ/プラセボ)は0.51(95%信頼区間:0.43〜0.60)で
あった.また,OSについて,イベント(死亡)数が220にて中間
解析を行った結果,層別Log-rank検定のp値は0.015であり,中
間解析の有意水準として設定された0.0005には至らなかったも
のの,ハザード比(ソラフェニブ/プラセボ)は0.71(95%信頼区
間:0.54〜0.94)であり,ソラフェニブ群ではプラセボ群に比
して39%の延長を示した.
<切除不能な肝細胞癌>
1.承認時までの海外第Ⅲ相臨床試験データ
全身化学療法歴のない切除又は局所療法(経皮的エタノール注
入療法,ラジオ波焼灼療法,マイクロ波凝固療法,肝動脈塞
栓療法/肝動脈化学塞栓療法,放射線療法等)が適用されない,
Child-Pugh分類Aの肝細胞癌患者を対象として,プラセボ対
照,無作為化,二重盲検により,OS等を主要評価項目,TTP
(time to progression)等を副次評価項目とする第Ⅲ相臨床試
験31)が実施された.有効性評価対象となったのは,602例(ソ
ラフェニブ群299例,プラセボ群303例)であった.OSの中央
値はプラセボ群241日,ソラフェニブ群324日であり,プラセ
ボ群と比較しソラフェニブ群で有意なOSの延長が認められた
(p=0.000583).ハザード比(ソラフェニブ/プラセボ)は0.6931
(95%信頼区間:0.5549〜0.8658)であった.
2.市販後の日韓共同第Ⅲ相臨床試験データ
根治的治療不能の進行性肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療
法(TACE)を施行し,治療効果(腫瘍壊死効果25%以上又は腫
瘍縮小率25%以上)が認められた,Child-Pugh分類Aの肝細胞
癌患者を対象として,プラセボ対照,無作為化,二重盲検に
より,TTPを主要評価項目,OSを副次評価項目とする第Ⅲ相
臨床試験32)が実施された.有効性評価対象となったのは,458
例(ソラフェニブ群229例,プラセボ群229例)であり,日本人
患者387例(ソラフェニブ群196例,プラセボ群191例)が含まれ
た.TTPの中央値はプラセボ群3.7ヵ月,ソラフェニブ群5.4ヵ月
であり,プラセボ群と比較しソラフェニブ群で有意なTTPの
延長は認められなかった(p=0.252).ハザード比(ソラフェニ
ブ/プラセボ)は0.87(95%信頼区間:0.70~1.09)であった.
3.市販後の国際共同第Ⅲ相臨床試験データ
外科的切除術又は局所療法(ラジオ波焼灼療法又は経皮的エタ
ノール注入療法)による根治的治療施行後に完全奏効が得ら
れた,Child-Pugh分類A又はB( 7 点以下)の肝細胞癌患者を
対象とした術後補助化学療法として,プラセボ対照,無作為
化,二重盲検により,無再発生存期間(RFS)を主要評価項目,
TTR,OSを副次評価項目とする第Ⅲ相臨床試験33)が実施され
た.有効性評価対象となったのは,1114例(ソラフェニブ群
556例,プラセボ群558例)であり,日本人患者149例(ソラフェ
ニブ群72例,プラセボ群77例)が含まれた.RFSの中央値はプ
ラセボ群33.8ヵ月,ソラフェニブ群33.4ヵ月であり,プラセボ
群と比較しソラフェニブ群で有意なRFSの延長は認められな
かった(p=0.26).ハザード比(ソラフェニブ/プラセボ)は0.940
(95%信頼区間:0.780~1.134)であった.
**<根治切除不能な甲状腺癌>
1.国際共同第Ⅲ相臨床試験データ
本試験への組入れ前14ヵ月以内に病勢進行が確認された局所
進行又は転移性の分化型甲状腺癌(乳頭癌,濾胞癌,Hürthle
細胞癌,及び低分化癌),未分化癌又は髄様癌の所見が認めら
れない甲状腺癌の特殊型の患者で,かつ放射性ヨウ素治療抵
抗性(標的病変にヨウ素の取り込みが認められない,放射性
ヨウ素治療後も標的病変における病勢進行が認められる,又
は累積線量で22.2Gbq(600mCi)以上の放射性ヨウ素治療を受
けている)の患者を対象として,プラセボ対照,無作為化,二
重盲検により,PFSを主要評価項目,OS,TTP等を副次評価
項目とする第Ⅲ相臨床試験9)を実施した.なお,適切な局所
治療がなされていない気管,気管支,又は食道への出血の危
険性を伴う腫瘍の浸潤を認める患者は除外された.有効性評
価対象となったのは,417例(ソラフェニブ群207例,プラセボ
群210例)であり,日本人患者22例(ソラフェニブ群12例,プラ
セボ群10例)が含まれた.PFSの中央値はプラセボ群で175日,
ソラフェニブ群で329日であり,プラセボ群と比較しソラフェ
ニブ群で有意なPFSの延長が認められた(p<0.0001).ハザー
ド比(ソラフェニブ/プラセボ)は0.587(95%信頼区間:0.454~
0.758)であった.
2.国内第Ⅱ相臨床試験データ
根治切除不能な甲状腺未分化癌,又は局所進行若しくは転移
性の甲状腺髄様癌患者を対象として,安全性評価を主目的と
した第Ⅱ相臨床試験10)を実施した.有効性評価対象となった
のは,それぞれ10例及び 8 例であり,治験担当医師による
RECISTに基づく奏効率は,それぞれ 0 %及び25.0%
(95%信頼
区間:3.2~65.1%)であった.
-7-
■ 薬効薬理
6)Lettieri, J. et al.:バイエル薬品社内資料[フラジオマイシン(ネ
オマイシン)との相互作用](2008)
1.抗腫瘍効果
7)
中島圭子他:バイエル薬品社内資料[腎細胞癌患者を対象とした
本剤は腎細胞癌細胞株(RENCA,786-O)及び肝細胞癌細胞株
第Ⅱ相臨床試験](2007)
(PLC/PRF/5)を移植したマウスにおいて腫瘍の増殖を抑制した.
8)Furuse, J. et al.:Cancer Sci., 99(1),159(2008)
さらに,k-ras 又はb-raf の変異を有するヒト由来腫瘍の他,EGFR
等の増殖因子受容体を過剰発現している腫瘍の担癌マウスにおい
9)Molnar I. et al.:バイエル薬品社内資料[甲状腺癌患者を対象と
ても,腫瘍増殖を抑制した.
した第Ⅲ相臨床試験](2013)
2.作用機序34〜36)
**10)塚田克也他:バイエル薬品社内資料[甲状腺未分化癌及び甲状腺
In vitro 試験において,本剤は腫瘍進行に関与するC-Raf,正常型
髄様癌患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験](2015)
及び変異型B-Rafキナーゼ活性,並びにFLT-3,c-KITなどの受容
11)Klaus, A. M. et al.:バイエル薬品社内資料[ラットにおける生殖
体チロシンキナーゼ活性を阻害した.さらに,本剤は腫瘍血管新
発生毒性試験](2004)
生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体,血小板由来成長
12)Langewische, F. W. et al.:バイエル薬品社内資料
[ウサギにお
因子(PDGF)受容体などのチロシンキナーゼ活性を阻害した.
ける生殖発生毒性試験](2004)
In vivo 試験では,本剤は腎細胞癌及び肝細胞癌細胞株を用いた担
13)Ruf, J. et al.:バイエル薬品社内資料[イヌにおける反復投与毒
癌マウスにおいて,腫瘍組織中の血管新生を抑制した.また,肝
性試験](2000)
細胞癌細胞株を用いた担癌マウスでは,腫瘍細胞のERKリン酸化
14)Renhof, M. et al.:バイエル薬品社内資料[ラットにおける反復
を抑制し,アポトーシスを誘導した.
投与毒性試験](2000)
15)Wahle, B. S.:バイエル薬品社内資料[ラットにおける反復投与
■ 有効成分に関する理化学的知見
毒性試験](2003)
構造式:
16)Wetzig, H. et al.:バイエル薬品社内資料[イヌにおける反復投与
毒性試験](2004)
17)中島圭子他:バイエル薬品社内資料[薬物動態](2006)
18)S mith, W. B.:バイエル薬品社内資料[食事の影響(外国人)]
(2003)
一般名:ソラフェニブトシル酸塩(Sorafenib Tosilate)JAN
19)
Mazzu, A. et al.:バイエル薬品社内資料[腎機能障害のある被験
(Sorafenib)INN
者における薬物動態(外国人)](2006)
化学名:4{4- [3-(4-Chloro-3-trifluoromethylphenyl)ureido]
20)中島圭子他:バイエル薬品社内資料[薬物動態](2006)
phenoxy}
-N 2-methylpyridine-2-carboxamide mono
21)Christensen, O. et al.:バイエル薬品社内資料
[薬物動態
(外国人)
]
(4-methylbenzenesulfonate)
(2005)
分子式:C21H16ClF3N4O3・C7H8O3S
22)Lathia, C. et al.:Cancer Chemother. Pharmacol., 57(5), 685
分子量:637.03
(2006)
融 点:223〜231℃
性 状:本品は白色〜わずかに黄褐色を帯びた白色の粉末である.
23)S tresser, D. M.:バイエル薬品社内資料[薬物間相互作用(in
本 品はジメチルスルホキシド又はN ,
N -ジメチルホルムア
vitro )](2000)
ミドに溶けやすく,メタノール又はエタノール(99.5)に溶
24)Radtke, M.:バイエル薬品社内資料[薬物間相互作用(in vitro )]
けにくく,水にほとんど溶けない.
(2004)
分配係数:本品はオクタノール/水及びオクタノール/リン酸塩緩衝
25)Lathia, C. et al.:バイエル薬品社内資料[薬物間相互作用(外国
液にほとんど溶けないため,分配係数を測定することはで
人)](2005)
きなかった.
26)Radtke, M.:バイエル薬品社内資料[薬物間相互作用(in vitro )]
(2000)
■ 取扱い上の注意
27)Radtke, M.:バイエル薬品社内資料[薬物間相互作用(in vitro )]
アルミ袋の開封後は吸湿により製剤の溶出性が低下することがある
(2005)
ので,湿気を避けて保存すること.
28)Kohlsdorfer, C. et al.:バイエル薬品社内資料[蛋白結合](2004)
29)Kohlsdorfer, C.:バイエル薬品社内資料[蛋白結合](2004)
*■ 承認条件
30)Escudier, B. et al.:N. Engl. J. Med., 356, 125(2007)
**医薬品リスク管理計画を策定の上,適切に実施すること.
31)Llovet, J. M. et al.:N. Engl. J. Med., 359, 378(2008)
**<根治切除不能な甲状腺癌>
32)Kudo, M. et al.:Eur. J. Cancer, 47, 2117(2011)
国内での治験症例が極めて限られていることから,製造販売後,
33)Gerold, M. et al.:バイエル薬品社内資料[肝細胞癌患者を対象と
一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は,全症例を
した市販後の国際共同第Ⅲ相臨床試験](2014)
対象に使用成績調査を実施することにより,本剤使用患者の背景情
34)Wilhelm, S. et al.:Cancer Research, 64, 7099(2004)
報を把握するとともに,本剤の安全性及び有効性に関するデータを
35)Chang, Y. S. et al.:Cancer Chemother. Pharmacol., 59(5), 561
早期に収集し,本剤の適正使用に必要な措置を講じること.
(2007)
36)Liu, L. et al.:Cancer Research, 66, 11851(2006)
34〜36)
■ 包 装
錠剤 PTP包装 56錠(28錠×2)
■ 文献請求先
主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求下さい.
■ 主要文献
1)Mross, K. et al.:Eur. J. Cancer, 43, 55(2007)
2)Christensen, O. et al.:バイエル薬品社内資料[ドキソルビシン
との相互作用](2007)
3)Lettieri, J. et al.:バイエル薬品社内資料[リファンピシンとの相
互作用](2006)
4)Anderson, S. et al.:バイエル薬品社内資料[ワルファリンとの相
互作用](2007)
5)Christensen, O. et al.:バイエル薬品社内資料[ドセタキセルと
の相互作用](2005)
バイエル薬品株式会社・メディカルインフォメーション
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