座 談 会 - 裁判所

家裁調査官養成課程生の
座 談 会
先輩たちはどんな経験を経て,どんな想いで家裁調査官を目指したのか。
そして今,どんな未来を描いているのか。
2016年春に家裁調査官へ任官する3人に話してもらいました。
志 村
健
千葉家庭裁判所
家庭裁判所調査官補
新 貝 友 美
長谷川 雅 史
さいたま家庭裁判所
家庭裁判所調査官補
大阪家庭裁判所堺支部
家庭裁判所調査官補
みなさん,家庭裁判所調査官を目指したきっかけは何ですか?
長谷川さん 私は,大学卒業後は,生活保護制度に関わるケースワーカーとして就職しま
した。しかし,生活保護を受けている方の中で,家庭環境に恵まれていれば今の状況を招
かなかったのではないかと思えるケースが複数あり,家庭環境の重要性に思いをめぐらすうち
に,家裁調査官になりたいと思いました。
志村さん 仕事をしながら採用試験に挑戦していますが,大変ではなかったですか。
長谷川さん 前職にもやりがいを感じていたのですが,大学2年の時に,家裁調査官の本を読んで感銘を受けていましたので,家族
全体にアプローチできる家裁調査官になりたい気持ちの方が強く,大変ではありましたがクリアできました。
志村さん 私は,法学部出身ですが,在学中は家裁調査官のことは知りませんでし
た。大学卒業後,学習塾の講師になり,集団生活に適応できない子どもたちに関わ
る機会がありましたが,適応できない主な原因は家庭の問題のようであり,家庭に介
入しないと根本的に問題が解決しないように思いました。そんな中,家裁調査官に
なった大学の後輩から,仕事内容を聞く機会があり,まさに自分がやりたい仕事だと
思いました。その後,心理学の勉強を始めて家裁調査官を目指しました。
新貝さん 志村さんは,法学部出身とお聞きしていたので,心理学で受験したのは意外です。私は,大学2年生の時の就職セミナーで
家裁調査官を知りました。現職の家裁調査官から仕事内容を説明され,様々な悩みを抱えた方が,良い方向に変わっていくきっかけに自
分が立ち会いたいという思いから,家裁調査官を志しました。
志村さん 新貝さんは,大学での専攻が心理学ですよね。様々な心理職がある中で,家裁調査官を選
択した理由は何ですか。
新貝さん 最初,家裁調査官は少年事件に関わるイメージが強かったのですが,よく調べていくうちに,家
事事件にも関与することが分かり,他の心理職よりも活動場面が幅広いことに魅力を感じました。
志村さんも心理学を勉強して受験されたとのことですが,何が魅力でしたか。
志村さん 裁判所ならではの特色でしょうか。家裁調査官は,少年や当事者らの人生の節目に立ち会い
ますが,その少年や当事者らが再スタートする際の方向付けに関わることができる仕事だと思います。責任
重大ですが,それがやりがいだと思いました。
裁判所職員採用試験に向けて努力したことは何ですか?
志村さん 家裁調査官の採用試験では,記述式の問題が多いので,答案を書く練習を繰
り返しました。また,週に6日間働いていましたので,出題科目ごとに重点が分かりやすい教
材を選んで,通勤中や就寝前に読むなどし,効率的に学習する工夫をしました。
長谷川さん 私も仕事をしていましたから,答案を書く練習時間はあまり取れず,専門的な
用語の説明を頭の中でイメージするという訓練を繰り返しました。
新貝さん 私は,記述式の問題の対策として,大学の講義のレジュメを活用しながら,自分
なりの理解をまとめて書く作業を繰り返しました。それから,家裁調査官の採用試験は人物
試験も大事だと言われていましたので,裁判所の刊行物を読み,今,家裁ではどんなことが
トピックスになっているのかチェックしました。
長谷川さん 人物試験も大事ですよね。私は社会人になってからの挑戦でしたので,なぜ今
家裁調査官になりたいのか,動機をきちんと説明できるようにしました。
志村さん 家裁調査官の採用試験は,総合職の採用試験でもあるので,それを意識し,事務局に勤務することも想定して自分には何
ができるかを考えて臨みました。家裁調査官の採用試験には政策論文試験もありましたが,どんな準備をされましたか。
新貝さん 市販の論文の対策本等を参照し,話題になっているトピックスを頭に入れるようにし
ました。あとは,様々な時事問題等に対して自分の意見を持つようにも意識していました。
長谷川さん これといった準備をした記憶はありません。大学でも度々レポート作成の課題が出
ていましたので,説得力のある文章の書き方が身についていたのかもしれません。今考えると,
大学の授業をきちんと受けておくことが大切ではないかと思います。
研修カリキュラムについて教えてください!
志村さん 約2年間の研修のうち,配属庁での実務修習や研修所での合同研修それぞれが連動していて,良く整えられたシステムだと思
います。
新貝さん 最初の頃は,配属庁と研修所を行ったり来たりするので大変だなと思っていたのですが,例えば予修期の配属庁で疑問に感じた
ことを,その後の前期合同研修で解消できるようになっているなど,研修の順序が計算されていると感じました。また,理論と実践のバランス
も良いと思います。私は,心理学部出身で,法律の理解に苦労もありますが,配属庁での実務経験を経た現在では,より実務に即した
形で法律を理解すべきことを実感し,後期合同研修で法律を勉強するモチベーションがあがりました。研修所の図書館は,法律関係の文
献が充実していて助かります。
長谷川さん 私は,実務修習を経験する前後では,学童期の子どもがどのような発達状況にあるのかという理
解が大きく変わりました。小学生でも,両親が争っていることを自分なりに把握して,様々な感情を抱いているこ
とが分かり,胸が痛みました。家裁調査官は,こうした子どもに会って話を聴き,子どもの気持ちをくみ取り,裁
判所の手続に反映する役割を担っていますが,現実を知って視野が広がるとともに,責任の重さを痛感させられ
ました。
志村さん 私は,実務修習では,少年が非行に至ったメカニズムをどこまで理解できるのかが問われているように
感じました。そのためには,家裁調査官は冷静に事件について分析するとともに,少年の
心情に寄り添う気持ちが必要な仕事であると改めて思いました。
新貝さん 実務修習中では,現場の主任家裁調査官をはじめ先輩家裁調査官の皆さんが,
私たちの質問に嫌な顔ひとつせず対応してくださり,気軽に質問できる職場環境でした。そして,
調査報告書を作成した時など,ただ,修正を求められるだけではなく,なぜその記載が適切で
ないのか,常に理由を考えさせられる指導を受けました。
志村さん 私も,調査報告書について指導を受けた際に,同じ経験をしました。私は,自分が腑に落ちるまで質問をする方ですが,現場
の先輩家裁調査官はどんなに忙しくても,その場で受け答えしてくれました。人を育てようとする意識が高いのだと思います。
長谷川さん 後期合同研修になってからは,教材事例を用いた班別演習や面接技法演習が充実していますよね。これらの演習は討議が
中心になっていますが,同期の発言を聞くと,実務修習を経て格段にレベルアップしていることを感じます。自分も研さんを積まなければなら
ないと刺激を受けています。
志村さん そうですね。同期は,それぞれバックボーンの違う人たちの集まりですが,良い家裁調査官になりたいという同じ志を抱いており,
このような同期との切磋琢磨は何ものにも代えがたいものと思います。私は,特に,面接技法演習に魅力を感じています。面接技法演習
は,同期と討議した上でのロールプレイを繰り返して進行していきますが,それを通して,自分の面接の癖に気付いたり,より良い対応につ
いて考えさせられたりしています。
新貝さん 演習も魅力的なカリキュラムですが,様々な分野の第一人者である講師から講義を受
けられるのも研修所ならではと思います。さらに,そうした講師の専門的な知見を家裁調査官の実
務にどのように活かしていくかということを考えることができるのがすばらしいと思います。大学の先生か
らの講義のほか,法律は裁判官出身の教官,調査実務は現場経験豊富な家裁調査官出身の
教官から指導していただけるので,非常に分かりやすく,贅沢な態勢だと感じています。
今後の抱負や受験者へのメッセージをお願いします!
長谷川さん 私は,当事者や少年が困難に直面している時期に,その人の人生を左右しかねない重要な局面で関わるのが家裁調査官
であると思っています。魅力も大きいですが責任も大きい。そんな局面に,自分が関わることにより,当事者等が問題解決のきっかけをつか
むことの手助けになればありがたいと思っています。
新貝さん 私は,家裁に来てこの人と話せて良かった,自分が変わるきっかけになったと思ってもらえるような家裁調査官になりたいと思いま
す。当事者からも学ばせてもらえ,人間として仕事を通じて成長し続けられる職業だと思います。
興味のある方は採用試験にチャレンジしてもらいたいと思います。
志村さん 私も,当事者や少年自身がもともと持っている解決しようとする力
を引き出すというところで,家裁調査官の仕事にやりがいを感じています。学ぶ
機会は豊富に用意されていますので,やる気さえあれば,家裁調査官として
必要な知見や技法を習得することができます。多くの皆さんが家裁調査官を目
指してくださることを期待しています。