PDF版 - 東京都

別紙
諮問第955号~第957号
答
1
申
審査会の結論
別表に掲げる本件開示請求1に対し、その存否を明らかにしないで開示請求を拒否し
た決定及び同表に掲げる本件開示請求2及び3に対し、不存在を理由として非開示とし
た決定は、いずれも妥当である。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った別表に掲げる本件開示請求1から
3に対し、東京都教育委員会が平成27年6月26日付け及び同年7月14日付けで行った
各非開示決定について、その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
ア
本件開示請求1である「都立○○高校教員○○、○○に対するクレーム・要望に
ついて、東京都教育庁指導企画課が受信した文書、及び東京都教育庁指導企画課が
都立○○高校に送付した文書(対象期間:2015年6月1日から6月12日まで)」に
ついて、当該高校教員に対するクレーム・要望を知ることができれば、同校におい
て問題ある教員の行動をより具体的に把握でき、問題ある教員が生徒に対する不当
な行為を抑止する対処方法について事故発生前に検討できる。また、東京都の都民
の声のサイトでは、クレーム・要望について、個人が特定できないよう配慮し概要
が公開されている。教員に対するクレーム・要望が存在するかを把握することは、
教員による醜い体罰、いじめ、ネグレクトから生徒が自分を守る、又は、保護者が
- 1 -
生徒(子)を守る上で重要な情報であり、存否応答拒否は条例1条の趣旨に反する。
開示の可否に当たっては、行政サービスを提供する公務員(教員を含む。)の権利
権益と、公務員による行政サービスを受ける側の権利権益のどちらを優先させるか
の問題であり、その両者のバランスを考慮されたい。都政に対しクレーム・要望を
提出する者は、基本的には提出したクレーム・要望に対し都政がどのような措置を
実行したかを知りたく、個人が特定できない前提で公開を望むものである。
イ
本件開示請求2である「2015年○月○日都立○○高校が実施した遠足に係る内容
について東京都西部学校経営支援センター経営支援室○○が都立○○高校校長○○
または副校長○○に対して事情聴取(ヒアリング)を行った記録」について、都立
○○高校では、校長は全日制時間帯に勤務し、定時制時間帯ではほぼ常時不在とい
う定時制軽視の状態を継続しており、当該校長は定時制の学校経営にはほとんど関
与せず、定時制の学校経営、定時制教員に対する指導については、全く行き届いて
いない。そのような状況で、○○高校で遠足が実施され、現地での教員2名の看過
できない行動について、校長・副校長に早急の改善を求めたところ、副校長より「改
善の必要なし」の趣旨のメールが異議申立人宛て送信された。副校長からの当該回
答メールでは、
「西部学校経営支援センターとの協議を行っていた…」とあり、協議
のための共有材料として、請求文書は存在するため、隠ぺいせず開示しなければな
らない。
ウ
本件開示請求3である「2015年○月○日に都立○○高校が実施した1年生の遠足
に係る内容について、校長○○または副校長○○が教員○○及び教員○○に対して
行った事情聴取(ヒアリング)の記録」について、○○高校で実施された遠足にお
ける教員2名の看過できない行動について、校長・副校長に早急の改善を求めたが、
校長・副校長はメール回答や電話での会話において、
「指摘された教員の行動につい
ては適正な行動であり、改善の必要なし」と主張している。校長・副校長の当該主
張の根拠として教員に対する事情聴取(ヒアリング)の記録が存在するはずで、結
論の意思決定プロセス、根拠や背景を明らかにしたい。
- 2 -
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり
である。
(1)本件開示請求1について
本件開示請求1は、特定の教員に対するクレーム・要望及びその対応に関する文書
の開示を求めるもので、当該開示請求に係る公文書の存否を答えることは、当該教員
に対するクレーム・要望があったか否かという事実を明らかにすることと同様の結果
を生ずる。特定の教員に対するクレーム・要望があったか否かという事実については、
当該教員の信用や名誉に関する個人情報であり、公にすることにより、個人の権利利
益を害するおそれがあるものである。
また、本件開示請求1においては、学校及び教員を特定した形で請求がなされてお
り、当該教員に対するクレーム・要望があったという事実の有無を明らかにすること
により、仮に当該事実があった場合、他の情報と照合することで、クレーム・要望を
行った特定の個人が識別されるおそれがあるものである。
以上により、当該開示請求に係る公文書の存否を答えることは、条例7条2号の非
開示情報を明らかにすることとなる。
さらに、クレーム・要望は、主に都政に反映されることを目的として送付されるも
ので、その目的以外に公開されることを前提に送付されるものではない。そのため、
クレーム・要望があったか否かという事実を明らかにすることにより、公開を希望し
ない都民が意見や苦情を出しづらくなるおそれがある。その結果、東京都における広
聴事務に支障を来し、ひいては都政全般の事務事業が適正に行われなくなるおそれが
あり、条例7条6号の非開示情報に該当する。
以上により、当該開示請求に係る公文書の存否を答えることは、条例7条6号の非
開示情報を明らかにすることとなる。
よって、条例10条に基づき存否を明らかにせず開示請求を拒否するものである。
(2)本件開示請求2について
2015年○月○日都立○○高校が実施した遠足及び○○高校教員に係る内容で、教育
庁指導部指導企画課組織端末宛て送信されたメールに関する事実確認のため、東京都
- 3 -
西部学校経営支援センター経営支援室○○は、○○高校校長から聞き取りを行ったが、
全て口頭により実施しており、文書による記録は作成していない。また、同校長に対
し、口頭で指導を行ったが、文書による記録は作成していない。
以上により、本件開示請求2に係る公文書は作成及び取得していないことから、非
開示決定を行ったものである。
(3)本件開示請求3について
2015年○月○日に都立○○高校が実施した遠足に係る内容について、○○高校副校
長が○○、○○両教員に対し報告を求めたことは事実であるが、口頭でのやり取りで
あり、その際の記録等も作成していない。
以上のことから、本件開示請求3に係る公文書は作成しておらず存在しないため、
非開示決定としたものである。
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
平成27年
月
日
審
議
経
過
9月18日
諮問(諮問第955号~第957号)
平成27年10月27日
新規概要説明(第163回第一部会)
実施機関から理由説明書収受
平成27年12月17日
(諮問第955号~第957号)
平成27年12月25日
実施機関から説明聴取(第165回第一部会)
異議申立人から意見書収受
平成28年
1月
4日
(諮問第955号~第957号)
平成28年
1月28日
審議(第166回第一部会)
- 4 -
(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように
判断する。
ア
審議の併合について
諮問第955号から957号については、異議申立人が同一であること及び異議
申立ての趣旨が関連するものであることから、審査会は、これらを併合して審議す
ることとした。
イ
本件請求文書について
本件異議申立てに係る請求文書は、別表に掲げる本件請求文書1から3である。
実施機関は、本件請求文書1の存否を答えることは条例7条2号及び6号に規定す
る非開示情報を開示することとなるとして、条例10条の規定に基づき、その存否を
明らかにしないで本件開示請求1を拒否した。
また、本件請求文書2については作成及び取得しておらず存在しないとして、本
件請求文書3については作成しておらず存在しないとして、それぞれ非開示決定を
行った。
ウ
教職員に関するクレーム・要望について
教育庁及びその事業所の業務の執行又は当該業務に関する職員の行為について
の苦情又は要望が都民等から寄せられた場合、「東京都教育庁における苦情等の取
扱いに関する要綱」
(平成8年9月27日8教総情第105号)第3に基づき、その処理
は、原則として、苦情等の内容に関わる業務を担当する課又はこれに相当する事業
所(以下「担当課所」という。)が行い、担当課所は、その処理に当たって必要な場
合は、当該担当課所の上位の組織又は総務部教育情報課(以下「教育情報課」とい
う。)の関与の下に、これを行うものとしている。
また、各都立学校においては、教育情報課とともに、学校の実態に応じた機動的
できめ細かな支援を行っていくことを目的として設置された各学校経営支援セン
ターが関与し、苦情等を処理する場合がある。
- 5 -
エ
条例の定めについて
条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する
情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ
とにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定
の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を
害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書
において、「イ
法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすること
が予定されている情報」、「ロ
人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、
公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ
当該個人が公務員等…であ
る場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報の
うち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当す
る情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨
規定している。
条例7条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しく
は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることによ
り、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす
おそれがあるもの」を非開示情報として規定している。
条例10条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否
かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公
文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定
している。
オ
本件請求文書1の存否応答拒否の妥当性について
本件請求文書1は、特定の学校における特定の教職員を名指しし、当該教職員に
対するクレーム・要望について教育庁指導部指導企画課が収受した文書等であり、
その存否を答えることにより、当該教職員に対するクレーム・要望があったか否か
という事実(以下「本件存否情報」という。)が明らかになるものであると認めら
れる。
そこで、本件存否情報が条例7条2号に規定する非開示情報に該当するか否かに
ついて検討すると、当該情報は特定の教職員の信用や名誉に関係する個人情報であ
- 6 -
り、個人に関する情報で特定の個人を識別することができることから、同号本文に
該当する。
さらに、本件存否情報は、その内容及び性質から同号ただし書イ、ロ及びハのい
ずれにも該当しない。
したがって、本件請求文書1の存否を答えるだけで、条例7条2号に規定する非
開示情報を開示することとなるため、同条6号該当性を判断するまでもなく、条例
10条に基づき本件開示請求1を拒否した実施機関の決定は、妥当である。
カ
本件請求文書2及び3に係る不存在の妥当性について
本件請求文書2について審査会が実施機関に確認したところ、教育庁指導部指導
企画課組織端末に送付された2015年○月○日に都立○○高校が実施した遠足及び
○○高校教員についてのメールに関し、東京都西部学校経営支援センター経営支援
室○○は、○○高校校長から事実確認のための聞き取りを行い、同校長に対し指導
を行ったが、全て口頭で実施しており、いずれも文書による記録は作成していない
とのことである。
また、本件請求文書3について審査会が実施機関に確認したところ、2015年○月
○日に都立○○高校が実施した遠足の状況について、○○高校副校長が○○、○○
両教員に対し報告を求めたことは事実であるが、口頭によるやり取りであり、その
際の記録等も作成していないとのことである。
さらに、審査会が実施機関に対して改めて本件請求文書2及び3の探索を依頼し
たところ、実施機関において当該各請求文書を保有していないことが確認できた。
以上のことを踏まえると、本件請求文書2及び3について存在しないとする実施
機関の説明に不自然・不合理な点は認められず、他にその存在を認めるに足りる事
情も見当たらないことから、実施機関が本件請求文書2及び3について、不存在を
理由として非開示とした決定は、妥当である。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
秋山
收、浅田
登美子、神橋
一彦、隅田
- 7 -
憲平
別表
本件
本件開示請求
決定内容
諮問番号
請求文書
都立○○高校教員○○、○○に
対するクレーム・要望について、
東京都教育庁指導企画課が受信し
非開示決定
1
た文書、及び、東京都教育庁指導
同左
第955号
(存否応答拒否)
企画課が都立○○高校に送付した
文書(対象期間:2015年6月1日
から6月12日まで)
2015年○月○日都立○○高校が
実施した遠足に係る内容について
東京都西部学校経営支援センター
非開示決定
2
経営支援室○○が都立○○高校校
同左
第956号
(不存在)
長○○または副校長○○に対して
事情聴取(ヒアリング)を行った
記録
2015年○月○日に都立○○高校
が実施した1年生の遠足に係る内
容について、校長○○または副校
非開示決定
3
同左
長○○が教員○○及び教員○○に
第957号
(不存在)
対して行った事情聴取(ヒアリン
グ)の記録
- 8 -