生活者の深い理解をもとに、 お客様のマーケティング活動を全面支援

DISCUSSION
FEATURE Ⅰ メディアコミュニケーション事業の新サービス
生活者の深い理解をもとに、
お客様のマーケティング活動を全面支援
スマートフォンやタブレットPCなどの普及により、
生活者はインターネット
PROFILE
(写真中央)
株式会社インテージ
(Media, Communications
MCA事業本部
、
執行役員 本部長
& Analytics)
長崎 貴裕
インター
1987年入社。リサーチシステム開発、
ネット調査事業立ち上げなどを経て、
現職。
(写真左)
株式会社インテージ
MCA事業本部 デジタルマーケティング部 部長
上の広告や口コミサイト、
価格比較サイトなどを利用して情報を発信・共
有するようになっています。購買までのプロセスが多様化・複雑化して
いる今、
企業のマーケティング活動を支援する、
インテージのメディアコ
ミュニケーション事業における革新的なサービスとその成長性について
説明します。
長崎 スマートフォンの急速な普及や
接触と購買行動の関係を捉える
「i-SSP」
SNSの利用者数増加など、情報環境の変
(インテージシングルソースパネル)
です。
化により、生活者の購買プロセスは大きく
例えば、1人の人に対して、
テレビCMとス
変化しています。
マートフォンやPCのウェブサイトの情報
橋本 正之
例えば、テレビCMを見た後、インター
接触の履歴(ログデータ)を調べ、
クロス
1995年入社。リサーチデータからビジネスデー
ネットの口コミを調べて評価を確認して
メディアの広告効果を測定することがで
から購入するといった経験が、皆さんに
きます。
もあるのではないでしょうか。このよう
また、シングルソースでつながってい
に、情報と購買が密接かつ相互に作用し
る購買履歴データと組み合わせて、購買
ていることから、企業のマーケティング活
との相関を検証することが可能です。こ
動において、生活者の購買プロセスをよ
れは 業 界 で も 他 に 類 を 見 な い 新しい
り深く理解することが重要とされてきて
サービスです。 最大手の広告企業と組
います。
み開発したこのサービスは、データの質
タまでさまざまなデータ解析を経験。
(写真右)
株式会社インテージ
MCA事業本部 クロスメディア情報開発部 部長
田中 宏昌
広告代理店系リサーチ会社でシングルソースパ
ネルを活用したプロジェクトを担当。2014年株
式会社インテージに入社。
も非常に高く、お客様から高い評価を得
田中 インテージでは、
そういった変化に
ています。
応じた新たな価値・サービスを提供しよ
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INTAGE HOLDINGS Inc.
うとしています。 その一つが、生活者の
長崎 インテージの今までのサービスが
テレビやインターネットなどの広告・情報
企業のマーケティング部署へのサービス
であったのに対し、
「i-SSP」は広告や宣伝
タ※3、ECサイトのブラウザのデータ※3な
部などにもアプローチができるサービス
どを統合・解析し、企業のマーケティング
であることも大きなポイントですね。
活動を支援するのが「di-PiNK」です。具
体的には、顧客企業が持つデータと私た
田中 その通りです。広告市場は約6兆
ちの持つリサーチデータを統合し、生活
円といわれていて、成長の余地も非常に
者の反応やウェブ行動を見ながら、ター
大きいです。「i-SSP」は、従前とは異なる
ゲット層に対するインターネット広告の
部署や業界へ取引が広がっていますし、
出稿をプランニングすることが可能で
近い将来、企業にとって広告宣伝費をよ
す。さらに、ターゲット層への広告効果
り効率的・効果的に使うための不可欠な
を測定し、次はどうするか、
という提案も
データとして存在感を増していると思い
可能です。
ます。
※2 2012年に株 式 会 社NTTドコモと株 式 会 社イン
テージ
(現 株式会社インテージホールディングス)
長崎 企業の扱う情報量も変化していま
が共同で設立したジョイントベンチャー
※3 許諾者のみからデータを取得
リティやアドボカシー※4的な視点から明ら
かにできるとおもしろいと思います。
※4「支援」
「擁護」
「代弁」などの意味で、マーケティン
グの分野においては、顧客との強固な信頼関係を
すよね。自社サイトへのアクセス情報や
築くことを目的に、顧客の意向を最大限尊重し、顧
EC購入履歴といった生活者の行動ログ
長崎 すなわち「di-PiNK」
と
「i-SSP」は、
などのビッグデータが爆発的に増えてい
相互補完するサービスなのです。
「i-SSP」
ます。これらの情報とデータマネジメン
は、
ターゲットを理解し、
ターゲット設定が
トプラットフォーム
(DMP )を統合的に
適切か、そしてターゲットに確実に届いて
橋本 ビッグデータの収集は競争も激し
活用することが、企業のマーケティング
いるのかが解明できるサービスで、
「di-
く、データの収集自体も難しいのですが、
PDCAをより正確かつ高速に回すために
「i-SSP」のデータを活用するこ
PiNK」は、
今後はクロスプラットフォーム※5を作りた
重要です。そこで、私たちは「di-PiNK」
とにより、
適切なターゲット設定ができ、
よ
いと考えています。このプラットフォーム
というDMPサービスを2014年にスター
り効果的な広告施策を可能にするサービ
から得られる生活者の商品・デジタルコン
トしました。
スということです。
テンツなどの購買履歴や決済情報、
SNS
※1
グデータや自社サイトのログデータなどを一元管
ランの最適化を実現するためのプラットフォーム
法のこと
での発信履歴など膨大なデータを基に、
※1 インターネットを通してサーバーに蓄積されるビッ
理、解析し、企業の広告配信などのアクションプ
客本位で接する、信頼を軸としたマーケティング手
広告の効果や効率をさらに上げることが
長崎 このようにインテージでは、生活
できると思います。
者の変化を捉えるサービスや、
メーカー
※5 複数のメディアのプラットフォームを共通して利用
すること
橋本 インテージのパネル調査による
をはじめとする顧 客 のマーケティング
データ、
「i-SSP」のシングルソースデー
PDCAを全面的に支援できるサービスが
タ、
ドコモ・インサイトマーケティング
整いつつあると思いますが、それぞれ今
長崎 生活者の購買行動と企業マーケ
後の展望をお願いします。
ティングのPDCA。この両面をサポート
※2
が扱う5,000万を超えるドコモ回線契約
者データ※3、各企業が保有する顧客デー
できるのはインテージだけです。成長で
田中 2014年は広告代理店、テレビ局を
きる明確な強みがあり、かつ生活者の意
はじめとした媒体社、そして、購買履歴デー
識の変化でビジネスチャンスは広がって
タを活用して消費財メーカーを中心に展開
い ま す。 本 日ご 紹 介した ような、
「di-
してきましたが、今後は耐久財メーカーや
PiNK」と「i-SSP」をはじめとした今までに
サービス業の顧客に対しても、商品やサー
ない新たな領域のサービスを、対象企業
ビスを知ってから購入に至るまでの購買プ
を広げてアプローチしていきます。イン
ロセスを広告接触との組み合わせの中で
テージグループではこの分野を
“メディア
解析できるようにしたいですね。また、テ
コミュニケーション事業”
と位置付け、
さら
レビCMとインターネット広告の効果的な
なるビジネスの拡張により、
グループの
組み合わせや企業のファンになって購入し
成長に寄与していきたいと考えていま
たり、購入量が増えたりする経緯をロイヤ
す。ぜひご期待ください。
ANNUAL REPORT 2015
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DISCUSSION
FEATURE Ⅱ ヘルスケア事業の新サービス
“患者(生活者)起点”
の新たな
インテージグループは、
昨今の医療環境の変化に対応すべく、
各事業会社のサービス領域の垣根にとらわれな
い、
新しいサービスの提供を目指しています。今回は、
株式会社アンテリオ、
株式会社アスクレップ、
株式会社医
療情報総合研究所のメンバーが、
ヘルスケア事業の今後の展開や可能性について語りました。
仁司 皆さん、今後のインテージグルー
大 橋 医 療 情 報 総 合 研 究 所( 以 下、略
製造販売後調査においてリーディングポ
プヘルスケア事業の展開を語るにあた
称:JMIRI(ジェイミリ))
は東京大学発の
ジションを確立しています。
り、各社がどのような独自性や優位性が
ベンチャーとして2005年に設立されま
あるか話していきたいと思います。
した。全国の調剤薬局チェーンから医療
まず、
アンテリオは、
医療用医薬品をメ
用医薬品の処方箋データを集め、分析情
インに医師の処方実態や患者の服薬利
報を製薬企業のマーケティング・医薬品
た各社ですが、今後の環境変化を捉える
用実態を調べ、製薬企業の開発・販売に
開発分野や研究機関に提供しています。
と、
グループが一体となってより大きな価
値を創出していくことが必要です。昨年
おける戦略策定に役立つ情報を提供し
ています。 創業事業としてSDI(全国一
仁司 JMIRIが持つ処方箋データという
インテージグループではヘルスケア事業
般用医薬品パネル調査)を行っていたイ
factと、アンテリオが持つ「なぜ、そういう
処方がされたか」というWhyのデータを
ビジョンとして「そして、患者起点の次世
ンテージに2007年グループインし、医
薬品・医療機器専門のマーケティングリ
かけ合わせることで、起こっている事象の
というスローガンを定めました。グルー
サーチ会社で国内最大規模の会社とな
理由を説明できるようになります。
プが有機的に連携することで、
この機会
矢作 アスクレップは、
医薬品開発におけ
時田 私は長く製薬企業でそのSDIパネ
代ヘルスケアマーケティングを切り拓く」
を確実に成長へとつなげていきたいと考
りました。
えています。
る臨床試験やその後の検証調査などの
ル調査のデータを使っていましたが、ほ
データを集め、医薬品の有効性や安全性
大 橋 環 境 変 化 の 大きな 傾 向 の 一 つ
とんどの製薬企業が監査のデータとして
を解析しています。医薬品開発において
は、患者自らが情報収集するという動き
使用しており、信頼性は極めて高いとい
は外せないプロセスをサポートしており、
です。そして、医療機関や国だけがデー
えます。
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仁司 このようにそれぞれの強みを持っ
INTAGE HOLDINGS Inc.
タを持つという情報の不均衡を誰かが
PROFILE
(写真左より)
株式会社アンテリオ
株式会社医療情報
株式会社インテージ
株式会社アスクレップ
代表取締役社長
総合研究所
ホールディングス
代表取締役社長
仁司 与志矢
ティー・エム マーケティン
グ株式会社
(現 株式会社
アンテリオ )の 創 立メン
バーの一人。2007年に同
社代表取締役社長に就任。
(略称:JMIRI
(ジェイミリ)
)
代表取締役社長
大橋 青史
理事
時田 悟
矢作 友一
製薬会社でMR、
企業戦
IR、
製薬会社を経て、
2004年
略室長を歴任。2008年に
株式会社アスクレップ入
外資経営コンサルティン
に株式会社インテージに
グ会社、
医学系大学院非
(全国一般用医
入社。SDI
常勤講師を経て、
2009年
同社代表取
社。2014年、
薬品パネル調査)
の部門で
締役社長に就任。
に同社代表取締役社長に
SDIインデックスマ ネ ー
就任。
ジャーを務める。株式会社
アンテリオ、
株式会社医療
情報総合研究所 取締役。
マーケティングモデルの確立
解消していく必要があります。患者・生
患者にカウンセリングをすることもできる
活者への平等な情報提供が進めば、自分
ようになります。
の病気にはどんな処方があり、
どんな治
大橋 インテージグループのヘルスケア
3社が連携すれば製薬企業の治療薬領域
についてさまざまな支援ができると思い
療が有効かをインターネットなどを通し
仁司 日本が超高齢化社会を迎えようと
て理解し、自らが質の高い意思決定を行
している中、増大する医療費、介護費の適
うことも可能となります。そこで、重要と
正化にはOTC※の領域を広げる必要があ
矢作 そうですね。我々が持っているも
なってくるの は、医 療 機 関や 国 が 持 つ
ります。これに伴って、医療用医薬品から
のをパッケージ化し、
製薬企業と良いパー
データを患者起点のデータや情報に変
OTCへのスイッチも避けて通れない領域
トナーシップを築いていきたいですね。
換して、患者・生活者や患者起点を志向
です。例えば、医療用医薬品だった湿布
ます。
する民間企業の意思決定をサポートする
や鼻炎の治療薬がOTCに切り替わってい
時田 私は長年、
コンシューマー・ヘルス
ことです。
ます。これは、
インテージグループにとっ
ケアに携わってきたので、仁司さんの言
て大きなビジネスチャンスであり、医療用
う患者起点で市場をずっと見てきました。
仁司 患者自身が意思決定をするように
医薬品とOTC双方のマーケットを知って
これをグループ内で共有し、
よりアグレッ
なり、患者や生活者の考え方や、なぜそう
いることは大きな強みになります。
シブなグループにできればと思います。
考えるのかを精緻な分析によって把握す
※ 医師による処方箋を必要とせずに薬局やドラッグスト
ることができれば、医 療 施 設 などへ の
アで購入できる医薬品のこと。市販薬、家庭用医薬
コンサルティングも可能になると考えて
品、大衆薬とも呼ばれる
います。
仁司 医療ニーズは残念ながら、永遠に
存在します。医療費の抑制という意味で
は、中国でも20年後には同じ問題を抱え
時田 さらに、
OTCへのスイッチが進展
るでしょう。 我々のノウハウは今後海外
矢作 今後は薬の安全性についても、患
すれば、製薬企業に製品がどのくらい売
でも展開できます。市場環境が変われば、
者や医師が幅広い使用例を客観的デー
れるのかを予測できる仕組みを作って提
必ずお客様のビジネスモデルも変化しま
タとして検証・判断するようになることが
案することもできますね。また、今後はド
す。多様な変化の中で、
導き手として情報
想定されます。 例えば、我々が出資した
ラッグストアや調剤薬局にJMIRIデータの
(インテリジェンス)
を武器にし、お客様の
株式会社京都コンステラ・テクノロジー
フィードバックもできるかもしれません。
ビジネスを成功に導くような存在になっ
ズでは、副作用情報をデータベース化し
ていきたいですね。
ており、インテージの持つドラッグストア
のチャネルにおいてこうしたデータベー
仁司 最後に、今後の意気込みをお聞か
スの検索情報を用いることで、薬剤師が
せください。
ANNUAL REPORT 2015
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