無 有限 無線セ 限要素 センサに 素モデル による多 ルを利用 多点同期

助成
成受付番号 第 09008 号
研究課題番
番号
(①)
※①
①~⑧を記入
入
無線セ
無
センサに
による多
多点同期
期振動計
計測と詳
詳細な
な
有限
限要素
素モデル
ルを利用
用した構
構造性能
能評価法
法の開
開発
東京大
大学大学院工
工学系研究科
科 講師 長山智則
長
概要:
造物の寿命・劣
劣化度を推定し
し効率的に維持
持管理をするた
ために,また,地震・台風な
などの大外力作
作用時
構造
の安全
全性を評価する
るために,現有
有性能把握が欠
欠かせない.近年
年のセンシング
グ技術の発展は
は目覚ましく,
,MEMS
技術を
を利用した無線
線センサにより
り構造物の挙動
動が詳細に把握
握できるように
になりつつある
る.本研究では
は助成
研究者
者らが開発して
ている無線セン
ンサシステムを
を利用して橋梁
梁の動的挙動を
を詳細に計測し
し,有限要素モ
モデル
と比較
較することで,構造特性を推
推定する方法を
を提案した.補
補強工事が行わ
われる橋梁は構
構造が変化し,それ
による
る動特性変化も
も想定されるた
ため,耐震補強
強橋梁の工事前
前後でそれぞれ
れ無線センサを
を使って詳細に
に多点
同期計
計測を行なった
た.密なセンサ
サ配置による同
同期計測を行な
なったため,固
固有振動数のみ
みならず,詳細
細モー
ド形状
状とそれらの変
変化が得られた
た.一方で,有
有限要素モデル
ルを作成し,モ
モデルと実橋梁
梁の違いを,主
主にモ
ード形
形状の観点から
ら比較した.これらが互いに
こ
に整合的となる
るようにモデル
ル更新すること
とで支承条件を
を推定
した.
キーワ
ーワード: 無線セ
線センサネット
トワーク,橋梁振
梁振動計測,構造
構造性能評価
1.背景
スマートセン
ンサは,構造物
物の合理的な維
維持管理に不可
可欠
な現況把握に
に有効と期待さ
されている.MEEMS 型センサを
を利
用した端末は
は安価で,また
た無線通信機能
能を有するため
め配
線の必要もな
ない.多点同期
期振動計測が安
安価で簡易に実
実現
する.牛田ら
ら 1)2)は高速マ
マルチホップデ
データ通信アル
ルゴ
リズムを提案
案・実装し,長
長大橋の交通振
振動を簡易にか
かつ
詳細に把握で
できることを示
示した.しかし
し,実橋梁計測
測に
あたっては桁
桁片側のみを一
一時的に計測し
しているに過ぎ
ぎず,
橋梁全体の振
振動特性の把握
握や,多点計測
測に基づいたモ
モデ
ルアップデー
ートには至って
ていない.実橋
橋梁において無
無線
多点振動計測
測のデモンスト
トレーションが
が行えるように
にな
ったが,振動
動特性や構造特
特性の把握や分
分析に利用する
るに
は至っていな
ない状況と言え
える.本研究で
では,無線同期
期振
動計測システ
テムのハードウ
ウェア,ソフト
トウェアにそれ
れぞ
れ改良を加え
えた上で,
耐震補
補強前後の橋梁
梁を密に計測
測し,
動特性変化を
を明らかにし,さらに構造特
特性を分析する
る事
3)
を目的とした
た .
2. 同期
期振動計測シ
システムの概要
要
本研究で用い
いるスマートセ
センサは MEMSIC 社が販売し
して
いる研究用無
無線センサ端末
末 Imote2(図 1))に基づくもの
ので
る.Imote2 の起
起動時作動周波
波数を 13MHzから 416MHz
ある
無
まで
で設定可能な CPPU と 32MB の SDRAM を搭載している.
線通
通信にはIEEE8002.15.4規格の
のCC2420を利用
用している.
図 1 MEMSIC 社製
製 Imote2
助成研究者は,
助
これらハード
ドウェア上に,イリノイ大
学が
が中心となり開
開発が進む計測
測用オープンソ
ソフトウェア
ISHM
MP4)を組み込み
み,また独自に
に開発を進めて
ているマルチ
ホッ
ップ通信,デー
ータ収集プログ
グラムを実装し
した.経路作
成に
には AODV プロトコル,同期に
には FTSP プロ
ロトコルをそ
れぞ
ぞれカスタマイ
イズしている.3 成分加速度
度を計測後、
基地
地局に高速マル
ルチホップ転送
送する仕組みで
である.加速
度計
計測には STMicrroelectornics 社 LIS344 を搭載したセ
を
ンサ
サボードを使用
用しており,0.2mg 程度の振
振動まで捉え
られ
れる性能である
る.
Im
mote2 自体は研
研究開発用端末
末であり,必ず
ずしも屋外で
の使
使用を想定した
たハードウェア
アではない.そ
そこでプラス
助成
成受付番号 第 09008 号
研究課題番
番号 (①)
※①
①~⑧を記入
入
チックケース
ス,
アンテナ,
ア
アンテナ用延長
長同軸ケーブル
ル,
ソーラーパネ
ネル式充電池を
を利用して図 2 のような計測
測端
末を用意した
た.無線センサ
サではアンテナ
ナを端末に直接
接接
続するケース
スが多いが,橋
橋梁では多数の
の部材や車両な
など
により見通し
しの効かない場
場所に端末を設
設置することが
が多
いと考えられ
れる.そこで,同軸ケーブル
ルを介してアン
ンテ
ナの設置位置
置に自由度を持
持たせる設計に
にしている.
図 4 センサ設
設置位置
4.計測振動特
4
特性
図 2 Imoote2 設置状況
まず
ず,計測精度を
を分解能の観点
点から有線加速
速度計と比較
し評
評価した.振動
動レベルが小さ
さい場合は計測
測信号がノイ
ズに
に埋もれるが,車両走行時の
の 5mg 程度の加
加速度応答は
有線
線センサと無線
線センサの計測
測値がほぼ一致
致する事が確
認さ
された(図 5)
.図 6 に示すよ
ようにパワース
スペクトルを
比較
較すると卓越周
周波数の近傍で
では有線・無線
線加速度計の
値が
が互いに一致し
している事がわ
わかる.鉛直方
方向は 6 次モ
ード
ドまで,橋軸直
直角方向では 5 次モードまで
での振動モー
ドが
が推定できた.
有
有線加速度計は
は imote2 設置
置位置に合わ
せて
て計 6 台設置し
しているが,こ
これら 6 点の計
計測結果から
求め
めたモード形は
は,
無線計測のモ
モード形に一致
致している.
3. 対象
象橋梁と計測
測
8
CV373
imote2
6
a c c e le ra tio n (m g)
4
2
0
-2
-4
-6
-8
293.5
294
2994.5
295
time(sec))
図 5 鉛直方向加
加速度時刻歴
pe
p c tru mパワースペクトル
de n sity fu n c(gal
tio2n/Hz)
(gal 2 / H z)
岩手県内国道
道 45 号線に架
架かる逆ランガ
ガー橋の槇木沢
沢橋
(図 3)におい
いて耐震補強として,アーチ
チリブや垂直材
材、
下横構に当て
て板補強がなさ
された.本耐震
震補強の前後に
にお
いて,
路面とア
アーチリブ上に計48個のimmote2を設置し
し、
交通振動を詳
詳細に計測し(図 4),モード
ド振動数,モー
ード
形など動特性
性の観点から耐
耐震補強前後の
の変化を調べた
た.
サンプリング
グ周波数は 50HHz,1 回あたり
り計測時間は 6 分
である.計測
測日にはそれぞ
ぞれセンサ設置
置に 1 時間余り
り,
計測に 4 時間
間程,
撤去に 1 時間弱を要し
時
ている. なお
お,
Imote2 の計測
測加速度と比較
較する目的で,有線サーボ型
型加
速度計(東京
京測振 CV373)を計 6 台橋面
面上に設置して
てい
る.
10
0
10
-2
10
-4
10
-6
CV373
imote2
-8
10 10
0
5
10
15
frequencyy(Hz)
20
25
図 6 鉛直方向加速度パ
鉛
パワースペクトル
ル
図 3 槇木沢橋外観
槇
実計
計測による補強
強前後での比較
較では,橋軸直
直角方向の固
有振
振動数の増加,鉛直方向では
は固有振動数の
の減少が確認
出来
来た(表1)
.前者は耐震補強
前
強による剛性の
の増加,後者
助成受付番号 第 09008 号 研究課題番号 (①)
※①~⑧を記入
は,重量増化に起因していると推測される.また,橋軸
直角方向・鉛直方向それぞれでモード形状を比較したと
ころ,
推定誤差もあるものの有意な変化を確認出来た
(図
7)
.
表1
FEM と計測から推定された固有振動数(Hz)
FEM
実測
補強前 補強後 変化(%)補強前 補強後 変化(%)
鉛直 1 次 1.459 1.385 -5.07
1.44
1.44
0
鉛直 2 次 1.566 1.448 -7.53
1.57
1.51
-3.82
橋直 1 次 0.923 1.026
11.2
0.93
1.03
10.8
橋直 2 次 1.616 1.669
3.3
1.58
1.66
5.1
補修前
補修後
補修前FEM
補修後FEM
補修前FEM改良後
補修後FEM改良後
1
0.8
0.6
モード振幅比
0.4
ったことが考えられる.
6.FEM アップデート
実測に比べ補強後 FEM の鉛直振動数が低い事から実構
造物の剛性が高いと考えられる.ここでは FEM と実橋梁
の違いを,支承における境界条件の違いに起因するもの
と考え,様々な境界条件のもとで再解析した.特に,モ
ード形の変化が,
実計測と FEM とで整合的であるように,
境界条件を分析した.その結果,宮古側脚下部の支承の
回転のみ固定として場合に,固有振動数は計測値に近づ
き(表 2)
,モード形状の詳細変化も一部再現できた(図
4)
.
表 2 モデル更新後の固有振動数
補強後
FEM 改良前
FEM 改良後
実測
鉛直 1 次
鉛直 2 次
1.385
1.402
1.44
1.448
1.5326
1.51
0.2
0
7.まとめ
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1
0
50
100
150
200
250
距離(m)
図 7 鉛直 1 次モード形 (計測値と FEM 解析値)
5.FEM と計測データの比較
設計図面を元に対象橋梁を耐震補強前後で有限要素解
析し,モード特性の観点から計測値と比較した.図 4 は
有限要素モデル上に計測ノードの位置を示したものであ
る.橋軸直角方向は振動数とモード形状およびそれらの
変化が実測データとほぼ整合的である事を確認した.一
方で,鉛直方向では重量増加により実測同様,FE M にお
いても固有振動数が低下したが,FEM において振動数低
下がより顕著であった(表1)
.また,モード形の変化で
は実測と FEM で定量的に一致する変化と一致しないもの
が確認できた.例えば,鉛直1次モードは,左端(宮古
側)からの距離 70-100m 付近のモード形が耐震補強後に
右側(久慈側)に移動しているが,FEM でもこの移動が
確認された.一方で,130-170m 付近のモード形の移動は
FEM でのみ確認された.なお,これらモード形の変化は
密に計測を行ったために観測ができた変化と言える.仮
に計測点数が数点の場合は,モード形ピークの橋軸方向
への移動と鉛直方向の変化を明確に区別できない,とい
スマートセンサを利用して、実橋梁を耐震補強前後で
密に振動計測し,振動挙動を詳細に把握した.さらに,
計測値と FEM と比較することで違いを明らかにし,振動
数に加えて詳細モード形も基準としてモデルアップデー
トを試みた.FEM のより詳細な検討と計測誤差の分析が
必要であるものの,密な計測を利用することで,構造物
のより精緻なモデル化ができることを示した.
謝辞 本計測は,東北地方整備局・三陸国道事務所のご
厚意により実施することができました.ここに,感謝の
意を表します.
参考文献
1)牛田満士: スマートセンサを用いた多点同期振動計測のため
のマルチホップ通信システムの開発と橋梁での実測,東京大
学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士論文,(2009.3)
2)Nagayama, T. and Spencer, Jr., B. F.: Structural health monitoring
using smart sensors. Newmark Structural Engineering Laboratory
Report Series 001 http://hdl.handle.net/2142/3521, 2007
漆島亮彦,長山智則,藤野陽三,宮下剛,吉岡勉,家入正隆:
スマートセンサによる橋梁振動の多点計測と詳細分析~耐
震補強前後の比較を通して~,第 66 回土木学会年次学術講演
会講演集,2011
3)Illinois Structural Health Monitoring Project http://shm.cs.uiuc.edu/