機械要素設計製図「平歯車減速機の設計製図」 機械航空工学科 機械工学コース 1. 歯車概論 1.1 序論 歯車は,動力伝達と変速装置として重要な機械要素である.ベルトやチェーンなどの他 の伝動要素に比べて,加工組立に精度が必要なこと,高速での騒音,高価格などの短所も あるが,①コンバクトな設計ができる,②確実に回転を伝える,③回転方向の多様な組合 せに適用できる様々な形式がある,④大動力伝達・高速回転が可能である,などの利点を もっており,多くの機械で使用されている.代表的な歯車の形式として,平歯車,はすば 歯車,かさ歯車,ウォームギア,ラックなどがある(教科書の図表を参照) . 歯車の歯の形にはいくつかの種類があるが,最も多く使用されているのはインボリュー ト曲線である.これは,連続的な等達回転運動を確実に伝達でき,加工が比較的簡単で, 軸間距離の多少の変化があってもなめらかに回転を伝える,などの多くの長所をもってい る.インボリュート前車は各国で規格化されており.日本では歯車の寸法については JIS(日 本規格協会)あるいは JGMA(日本歯車工業会) ,強度計算については JGMA や JSME(日 本機械学会)の式に従った設計を行うことが多い. 教科書に,歯車各部の名称が示かれている.また,資料 JISB0121-1988 に,歯車に関す る記号が規定されている. 1.2 インボリュート歯形 歯車の歯形は,機構学的条件として「連続的な等速回転運動を確実に伝達すること」を 満たさなければならない.この条件を満たすためには, 「一対の歯形の任意の位置における 接触点にたてた共通法線が,各速度比によって決まる不動の点(ピッチ点)を通る」こと が必要である.これを満足する歯形曲線のうち,共通法線(作用線)が一本の直線となる のがインボリュート曲線である.インボリュート曲線は,円(基礎円という)に巻き付け た糸を展開したときに,糸の先端が描く軌跡に等しく,糸の先端の位置を角度 θ,σ で表し たとき,これらの関係はインボリュート関数 θ = invσ ( ≡ tanσ - σ)で記述される(図 1) .ピッ チ点でピッチ円に接する直線に対する作用線の角度 α を圧力角と呼び,歯車のピッチ円半 径 r としたとき,基礎円の半径 rj は,rb = cosα となる. インボリュート歯車が角速度 ω で回転するとき,相手歯車との接触点は作用線上を速度 rbω で移動する.図 2 に示すように,駆動歯車と被動歯車の接触点の作用線上での移動速度 は同じでなければならないので,それぞれの歯車を添字 1,2 で表すと,rb1ω1=rb2ω2 より回転 速度比は, 2 rb1 r1 z1 1 1 rb 2 r2 z 2 u (1) 1 図 1 インボリュート歯形 図 2 インボリュート歯車のかみ合い となる.zl,z2 は歯数,u は歯数比である.ピッチ円上での歯の間隔を円ピッチ p,基礎円上 での歯の間隔を法線ピッチ pb と呼び,これらの関係は, pb 2rb 2r cos p cos z z (2) となる. 1.3 標準歯車 インボリュート曲線では圧力角 α が一定なので,片方の歯車の半径を無限大にしたラッ クでは,歯形は直線となる.言い換えれば,ラック歯形を刃形にした工具を用いれば,イ ンボリュート歯車を創成することができる.JISB1701-2009 では,歯車の歯形を標準化する ために,歯切りの基礎となる基準ラックを規定している. 基準ラックでは,基準圧力角 α = 20°とし,歯厚がピッチの半分となる位置に基礎ピッ チ線を設け,基準ピッチ p = πm,歯末のたけ ha = m,歯元のたけ hf ≥ 1.25 m としている. ここで m はモジュール(単位 mm)で,歯の大きさを定める重要な値であり,標準値が定 められている. 基準ラックとかみ合い,基準ピッチ円が接する歯車を標準歯車と呼ぶ(教科書図 10.6 参 2 照) .そのピッチ円直径 d(mm)は, d pz mz (3) となる.標準歯車同士の中心距離 a(mm)は, a r1 r2 ( d1 d 2 ) (z z ) m 1 2 2 2 (4) である. JIS B1721-1973 に,標準寸法歯車として,モジュール m=1.5 - 6 mm の範囲の一般用平歯車 の形状が定められている.JIS B1702-2009 には,歯車の歯形寸法の許容誤差を規定してお り,誤差の値により 9 つの精度等級が設けられている. 1.4 歯車のかみ合い [1] バックラッシ 歯車の加工や組立ての際に生じる寸法誤差や,運転時の歯の変形に対応するために,か み合う歯の間には遊びが必要である.かみ合いピッチ円上の円弧の長さで表したすき間を 円周方向バックラッシ j,歯面間の最短距離で表したものを法線方向バックラッシ jn という (教科書図 10.2 参照).バックラッシの値は,歯の寸法誤差と中心距離の許容差を考慮して 決める.JIS B 1703-1976 に歯車の精度等級ごとに円周方向バックラッシの最大,最小値が 規定されている.バックラッシは,中心距離をわずかに大きくする,あるいは歯厚をわず かに小さくすることによって取られるが,前者ではかみ合い圧力角が変わる. [2] かみ合い率 かみ合い率 ε とは,同時に何組の歯がかみ合ってるかを表すもので,作用線上のかみ合い の長さ(教科書図 10.2 参照)を法線ピッチで除した値である.すなわち, ra21 rb21 ra22 rb22 a sin pb (5) となる.ra1,ra2 は歯先円半径である.ε を N(整数部)+ n(小数部)のように分けたとき, かみ合い長さの中央部(N - n)pb の間は N 組の歯がかみ合い,かみ合いの初めと終わりの npb の間は N + 1 枚の歯がかみ合う. [3] 歯形修整とクラウニング 運転中の歯車で,歯が荷重によってたわみ,その歯先が隣の歯の歯元に食い込むと大き な衝撃荷重が加わり都合が悪い.そのため,しばしば被動歯車の歯先,あるいは駆動歯車 3 の歯元を逃がす加工を施す.これを歯形修整という.一方,軸の平行度誤差やねじれによ って生ずる歯の片当たりを防ぐために,歯すじ方向の修整も行われる.これをクラウニン グという. [4] 歯形の干渉 インボリュート曲線は基礎円の内部には存在しないため,作用線が基礎円内に入るよう なかみ合い状態にすると,相手歯車が歯元に食い込み,正常な運転ができない.これを切 下げと呼ぶ.圧力角 α = 20°の標準歯車では,理論限界歯数 z = 17.1 以下で切下げが生じるの で,歯数を 18 以上(実用上は 14 以上)にする必要がある.理論限界歯数以下の歯数を用 いる必要があるときは,転位歯車を用いる. 1.5 転位歯車 転位歯車とは,基準ラックの基準ピッチ線と基準ピッチ円が接しない状態で創成した歯 車である(教科書図 10.7 参照) .転位歯車を用いる目的としては,上述の切下げ防止のほか, 中心距離の調整,一対の歯車の強度のバランスをとる,歯車間のかみ合い率や滑り率を調 整する,などがある. 1.6 平歯車の強度設計 [1] 円歯車の損傷 歯車を設計する際に強度上考慮しなければならない歯車の損傷は,曲げモーメントによ る歯の折損と,歯面に生ずる様々な表面損傷である.後者は,ピッチングやフレーキング などの疲労損傷のほか,面の塑性変形,摩耗,焼付き(スコーリング)などがある.通常 は,歯の折損に対する曲げ強度と表面損傷に対する歯面の強度についての計算が行われる が,場合によっては焼付きの限界条件や歯面間に形成される油膜厚さなどを考慮に入れた 設計も必要となる.以下では,曲げ強さと歯面強さに関する JGMA の式を用いる. [2] 円周力 動力伝達の際に歯に加わる力は,かみ合い中に時々刻々変化するが,その代表としてピ ッチ円上の円周力 Ft(N)にすると, Ft P P 60 v dn (6) となる.ただし,P は伝達動力(W),v はピッチ円上の周達(m/s),n は回転数(rpm)である. [3] 歯の曲げ強さの計算式(JGMA 401-01) 歯の曲げ強さの評価は,上記の円周力が歯の先端に加わったときに歯の根元付近で生ず る最大曲げ応力を,歯を片持ち梁とみなして計算するルイスの式が基本になっている.歯 を曲げる力を F(N),最大曲げ応力 σF(Pa)を生ずる位置の歯の厚さ s,その位置から測った F の腕の長さ hf,前幅 b としたとき σF = 6Fhf/bs2 である.F と Ft の関係や,s,hf などは歯の 4 形によって異なるので,JGMA ではこれらをまとめて歯形係数 YF(別紙表 4.3)で表して簡略 化した次の式を用いる. F Ft YF mb (7) この応力が許容曲げ応力 σFmin より小さくなるようにすればよい.ただし,この σFmin は負荷 の繰り返し数を 107 以上を想定した許容応力であり,繰り返し数がそれ以下の場合には,許 容値は大きめになるので,その場合は寿命係数 KL を σFmin に乗じる(別紙表 3.5) .さらに安 全率 SF( > 1.2)とすると,応力の許容値は KLσFmin/SF となる. 一方,円周力 Ft については,実際の歯車では,(i)トルク変動や衝撃などの外的要因によ って瞬間値はこれより大きいこと,(ii)加工精度,歯形修整の有無などに起因する動的な効 果,(iii)複数の歯に力が分配されていること,を考慮に入れた補正を行い,それぞれ過負荷 係数 Ko,動荷重係数 Kv,荷重分配係数 Yε( = 1/ε)を乗じた YεK0KvFt が 1 対の歯に働く円周力 であると考える(別紙表 3.6,3.7 参照) , 以上のように補正した許容応力と円周力を用いて式(7)より,曲げ強さの計算式は次のよ うになる. Ft FF lim F lim mb K L 1 YF Y K O KV S F (8) または, FY Y K K K L F lim F t F O V SF mb (9) なお歯幅が異なる場合は,広い方の歯幅を bw,狭い方を bs とすると,bw - bs ≤ m のときはそ れぞれの歯幅をそのまま計算上の歯幅とし,bw - bs ≤ m のときは bw に対しては bs + m を計算 上の歯幅とし,bs はそのまま使用する. [4] 歯面強さの計算式(JGMA 402-01) 前面の接触に対する強度は,ピッチ点における最大接触応力を用いて評価する.ヘルツ の理論によれば,長さ b の 2 つの円筒面が荷重 Fn で接触したときに生ずる最大接触応力 σH(Pa)は, H Fn E ' b 2 (10) 5 図 3 歯の曲げ強さの計算 図 4 2 つの円筒の接触 ここで,等価縦弾性率 E’と等価曲率半径 ρ は, 2 1 12 1 22 E' E1 E2 1 1 1 1 2 (11) (12) ただし,E1,E2 と,ν1 と ν2 はそれぞれの歯車材料の縦弾性率とポアソン比,ρ1 と ρ2 は曲率 半径である.上式を歯面間の接触に適用すると,歯車のピッチ点での曲率半径は ρ1=r1sinα, ρ2=r2sinα であるから,上式を歯数比 u を用いて整理すると次のようになる. ここで,等価縦弾性係数 E’と等価曲率半径 ρ は, 2 1 12 1 22 E' E1 E2 1 1 1 1 2 (11) (12) ただし,E1, E2 と ν1, ν2 はそれぞれの歯車材料の縦弾性係数とポアソン比,ρ1, ρ2 は曲率半径 である.上式を歯面間の接触に適用すると,歯車のピッチ点での曲率半径は ρ1 = r1sinα,ρ2 = r2sinα であるから,上式を歯数比を用いて整理すると次のようになる. 1 2 u 1 d1 s i n u (13) 一方,荷重は Fn = Ft/cosα であるので,以上より式(10)の接触応力は, 6 2 E ' Ft u 1 s i 2n d1b u H (14) これが接触許容応力 σHmin より小さくなるように設計する.ただし歯幅 b は,両歯車の歯幅 が異なる場合は狭い方の歯幅 bs を有効歯幅として用いる.歯幅両端で歯面を逃がすための 歯形面取りを施す場合は,歯幅からそれに相当する寸法を差し引いたものの中で狭い方を 有効歯幅とする. この許容接触応力については,潤滑状態の違いによる効果を考慮に入れるために,潤滑 油係数 ZL,粗さ係数 ZR,潤滑速度係数 ZV による補正(図 3.4, 3.5, 3.6)及び寿命係数 KHL(表 3.9) ,安全率 SH(>1.15)を用いて,応力の許容値は KHLZLZRZVσHmin/SH となる.なお,上記図中, 調質歯車には焼入れ焼戻し歯車及び焼きならし歯車を合む.また.粗さ係数を求める際の 平均粗さ Rmaxm (μm)は,それぞれの歯面粗さ Rmax1,Rmax2 より, Rm Rm am x Rm 2 1a x a2 3x 100 a (15) から計算する.ここで,a は歯車間の中心間距離(mm)である. 十 一方,円周力についても曲げ強度のときと同じように,過負荷係数,動荷重係数,およ び歯車の支持方法による歯の当たりの違いを補正するための歯すじ荷重分布係数 KHβ, (表 3.11)を用いて,KHβKOKvFt が一対の歯に働く円周力であると考える. 補正した許容応力と円周力を用いて,式(14)より歯面強さの計算式は結局次のようになる. Ft FH min H2 lim d1bu sin 2 ( K HL Z L Z R ZV ) 2 1 u 1 2E' K O KV K H S H2 (16) または, K HL Z L Z R Z V H lim 2 E ' K O KV K H Ft u 1 H SH sin 2 d1b u (17) [5] 同歯車材料 一般の鉄鋼歯車では炭素鋼 S45C などを焼入れ・焼戻しの調質処理を施して用い,やや高 級な歯車では,用途に応じて合金鋼の使用や高周波焼入れ,浸炭焼入れが行われる.別紙 表 3.10, 3.12~18, 3.23 に各種材料の機械的性質を示す. 1.7 歯車の工作と測定 [1] 歯車の工作方法 7 歯車は,基準ラックを刃形に,したラック工具や円筒に基準ラック状の刃をつる巻状に設 けたホブを用いて歯切りされる.さらに,シェービングカッタを用いた仕上げや,研削仕 上げ,ラッピング,ホーニングなどが行われる.これらによって工作された歯面の精度等 級はおおむね,切削加工で 4~8,シェービング仕上げで 1~5,加工後焼入れを行うとそれ ぞれ 6~8,4~8 となり,さらに研削仕上げを行えば 0~4 程度となる(別紙表 22.2) . [2] 歯厚の測定 歯厚の測定方法としては,教科書 9-2-2 に示されているように,弦歯厚法,またぎ歯厚法, オーバピン法などがある.図面においては,これらを表に記して歯の寸法を表示する. 1.8 参考文献 1. 日本規格協会編: JIS ハンドブック機械要素. 2. 仙波正荘: 新版歯車伝動機構設計のポイント,日本規格協会. 3. 上野拓: 歯車工学,共立出版. 4. 兼田・山本: 基礎機械設計工学,理工学杜. 5. 中里為成: 歯車のおはなし,日本規格協会. 8 表 3.6 動荷重係数 KV JIS B 1702 の 歯車精度等級 歯形 非修正 修正 基準ピッチ円上の周速 v 1 以下 1 を超え 3 以下 3 を超え 5 以下 5 を超え 8 以下 8 を超え 12 以下 12 を超え 18 以下 18 を超え 25 以下 - 1 - - 1.0 1.0 1.1 1.2 1.3 1 2 - 1.0 1.05 1.1 1.2 1.3 1.5 2 3 1.0 1.1 1.15 1.2 1.3 1.5 - 3 4 1.0 1.2 1.3 1.4 1.5 - - 4 - 1.0 1.3 1.4 1.5 - - - 5 - 1.1 1.4 1.5 - - - - 6 - 1.2 1.5 - - - - - 表 3.7 過負荷係数 KO 原動機側からの衝撃 被動機側からの衝撃 均一負荷 (U) 中程度の衝撃 (M) はげしい衝撃 (H) 均一負荷 (電動機,タービン 油圧モータなど) 1.0 1.25 1.75 軽度の衝撃 (多気筒機関) 1.25 1.5 2.0 中程度の衝撃 (単気筒機関) 1.5 1.75 2.25 表 3.8 動荷重係数 KV 被動機械名 負荷分類 旧別 被動機械名 負荷分類 旧別 被動機械名 負荷分類 旧別 かきまぜ機 M エレベータ U 石油精製機械 M 送風機 U 押出機 U 製紙機械 M 酒造及び蒸留装置 U ファン(扇風機) U 製材機械 H 車両 M ファン(工業用) M ポンプ M クラリファイヤ U 供給機 M ゴム機械(中負荷) M 選別機 M 供給機(往復動) H ゴム機械(重負荷) H 窯業機械(中負荷) M 食品機械 M 水処理機械(軽負荷) U 窯業機械(重負荷) H ハンマミル H 水処理機械(中負荷) M 圧縮機 M ホイスト M スクリーン(流体) U コンベヤ(均一負荷) U 工作機械(主駆動) M スクリーン(砂利) M コンベヤ(不均一負荷または重負荷) M 工作機械(補助駆動) U 製糖機械 M クレーン U 金属加工機械 H 繊維機械 M クラッシャ H 回転ミル M 製鉄機械(熱間圧延) H しゅんせつ船(中負荷) M タンブラ H 製鉄機械(冷間圧延) U しゅせんせつ船(重負荷) H ミキサ M 9 表 3.5 寿命係数 KL 繰返し回数 硬さ 1,2 HB120-220 硬さ 2 HB221 以上 浸炭歯車 窒化歯車 104 以下 1.4 1.5 1.5 105 前後 1.2 1.4 1.5 106 前後 1.1 1.1 1.1 107 以上 1.0 1.0 1.0 不詳の場合 1.0 1.0 1.0 注 1 鋳鋼歯車はこの欄を使う 注 2 高周波焼入歯車は心部の硬さである. 表 3.9 寿命係数 KHL 繰返し回数 KHL 104 以下 1.5 105 前後 1.3 106 前後 1.15 107 以上 1.0 不詳の場合 1.0 表 3.11 歯すじ荷重分布係数 KHβ 歯車の支持方法 両側支持 b/d1 両軸受に対称 一方の軸受に近い 軸のこわさ大 一方の軸受に近い 軸のこわさ小 片持ち支持 1.0 1.0 1.1 1.2 0.4 1.0 1.1 1.3 1.45 0.6 1.05 1.2 1.5 1.65 0.8 1.1 1.3 1.7 1.85 1.0 1.2 1.45 1.85 2.0 1.2 1.3 1.6 2.0 2.15 1.4 1.4 1.8 2.1 - 1.6 1.5 2.05 2.2 - 1.8 1.8 - - - 2.0 2.1 - - - 0.2 備考 1 b は円筒歯車では有効歯幅にとる.やまば歯車では実歯幅と中央部にある 工具の逃げ溝の幅を含めた歯幅方向の長さとする. 備考 2 無負荷のときの歯当りは良好でなくてはいけない. 備考 3 遊び歯車や大歯車と 2 箇所でかみあう小歯車(中間歯車)には適用でき ない. 10 表 4.3 歯形係数 YF(圧力角 α = 20°,標準歯車) 歯数 z 12 歯形係数 YF 3.47 歯数 z 28 歯形係数 YF 2.57 13 3.33 30 2.53 14 3.22 34 2.47 15 3.12 38 2.42 16 3.03 43 2.37 17 2.96 50 2.33 18 2.90 60 2.28 19 2.85 75 2.23 20 2.80 100 2.18 21 2.76 150 2.13 22 2.73 300 2.10 24 2.67 ラック 2.06 26 2.62 図 3.4 潤滑油係数 図 3.5 潤滑油係数 図 3.6 潤滑速度係数 11 表 22.2 用途ごとの歯車の精度 等級 0 1 2 3 4 5 6 7 8 検査用親歯車 計測機器用歯車 高速減速機用歯車 増速機用歯車 航空機用歯車 映画機械用歯車 印刷機械用歯車 鉄道車両用歯車 工作機械用歯車 写真機用歯車 自動車用歯車 歯車式ポンプ用歯車 変速機用歯車 圧延機用歯車 汎用減速機用歯車 巻上機用歯車 起重機用歯車 製紙機械用歯車 粉砕機用大型歯車 農機具用歯車 織維機械用歯車 回転及び旋回用大型歯車 カムワルツ用歯車 手動用歯車 内歯車(大型を除く) 大型内歯車 表 22.3 仕上げ方法による歯車の精度 等級 シェービング切削 非焼入れ シェービング切削 焼入 0 1 2 3 4 5 6 7 8 研削 12 表 22.4 中心距離の許容差 ±fa (単位:μm) 歯車の精度等級 1,2 3,4 5,6 7,8 9,10 11,12 1/2 × IT4 1/2 × IT6 1/2 × IT7 1/2 × IT8 1/2 × IT9 1/2 × IT11 中心距離 (mm) fa を超え 以下 6 10 18 30 50 80 120 180 250 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500 3150 10 18 30 50 80 120 180 250 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500 3150 4000 2 2 3 4 4 5 6 7 8 9 10 11 12 14 16 20 23 28 34 41 4 6 6 8 10 11 12 14 16 18 20 22 25 28 33 39 46 55 68 82 8 9 10 12 15 18 20 23 26 28 32 35 40 45 52 62 75 88 105 130 11 14 16 20 23 27 32 36 40 44 48 55 62 70 82 98 115 140 165 205 18 22 26 31 37 44 50 58 65 70 78 88 100 115 130 155 185 220 270 330 45 55 65 80 95 110 125 145 160 180 200 220 250 280 330 390 460 550 675 825 13 表 3.23 荷重と材料および熱処理方法 荷重 軽荷重 衝撃荷重か小 さく,摩耗も 少ないもの やや耐摩耗性 を必要とする もの 中程度の強さ と耐摩耗性を 必要とするも の 材料記号 S35C - 45C S15CK S35C - 45C SCM415 SCr415 熱処理方法 調質(焼入れ及び焼戻し) 浸炭,焼入れ,焼戻し(硬化層 0.2 - 0.4 mm くらい) 調質後浅い高周波焼入れ,歯先の表面硬さ HRC48 - 56 くらい (1) 浸炭,焼入れ,焼戻し (硬化層 0.6 - 1.0 mm くらい) 中荷重 S40C - 45C 疲れ強さを必 要とするもの 高荷重 SCM435 SCM440 調質後高周波焼入れ(2).硬化層をいくぶん深めとし,歯底焼 入れを施す.歯先の表面硬さ HRC48 - 56 くらい(1). 調質後変化処理,ガス軟変化,タフトライドなどを施す. 耐衝撃性を特 に必要とする もの SNC815 SNCM420 SNCM81S 浸炭,焼入れ,焼戻し、表面硬さ HRC58 - 64 くらい. 耐摩耗性を要 するもの SCM420 SCM421 SCM822 浸炭,焼入れ,焼戻し,表面硬さ HRC62 以上とする. 耐摩耗性及び 疲れ強さを嬰 するもの S45C S48C 耐焼付き性を 要する場合 特殊の場合 調質後高周波焼入れ(2),歯底部分まで焼入れを施す.歯先の 表面硬き HRC56 - 60 くらい(1). 窒化鋼 調質後室化処理を施す. 合金鋼 SCM 435, 13 Cr 調質後室化処理を施す. 耐食性を要す る場合 オーステナイ ト,フェライト, 耐食性以外に必要な性質をあわせて考慮し,最適な熱処理を マルテンサイト 選ぶ. 系ステンレス鋼 耐熱性を要す る場合 Fe-Cr-Ni 合金 最適な熱処理を 施す. 注(1) 歯底に近い歯面では,これより HRC5 - 10 くらい低い. 注(2) MG 式(モータゼネレータ式)で周波数の低い方法か望ましい.そして, 比較的大形の歯車には特にこの方法が適当である、 14 表 3.10 材料定数係数 ZM 歯 材料 記号 車 相手歯車 縦弾性係数 (GPa) ポアソン比 下注 参照 記号 構造用 鋼 下注 参照 206 60.6 (190.3) SC 201 60.2 (189.3) 球状黒 鉛鋳鉄 FCD 173 57.9 (182.3) ねずみ 鋳鉄 FC 118 鋳鋼 SC 201 球状属 鉛鋳鉄 FCD 173 57.6 (181.4) ねずみ 鋳鉄 FC 118 51.5 (161.6) 球状黒 齢鋳鉄 FCD 173 ねずみ 鋳鉄 FC 118 50.0 (157.1) ねずみ 鋳鉄 FC 118 45.8 (143.9) 206 0.3 鋳鋼 球状黒 鉛鋳鉄 ねずみ 鋳鉄 SC FCD FC ポアソン比 材料定数 係数 ZM (kgf/mm2)0.5 (N/mm2)0.5 材料 鋳鋼 構造用 鋼 縦弾性係数 (GPa) 201 51.7 (162.2) 59.9 (188.3) 0.3 55.5 (175.1) 173 118 15 表 3.12 表面硬化しない歯車 HV 引張強さ 下限 (MPa) 126 136 147 157 167 178 189 200 210 221 231 242 252 263 167 178 189 200 210 221 ,231 242 252 263 273 284 295 305 316 327 337 347 358 369 231 242 252 263 273 284 295 305 316 327 337 347 358 369 380 391 402 413 424 363 412 451 480 539 588 382 412 441 470 500 539 568 598 627 666 696 725 755 794 500 539 568 598 627 666 696 725 755 794 823 853 882 911 951 980 1009 1039 1078 1107 696 725 755 794 823 853 882 911 951 980 1009 1039 1078 1107 1147 1186 1235 1274 1323 歯面の硬さ 材料(矢印は参考) SC37 SC42 SC46 SC49 SCC3 鋳 鋼 構 造 用 炭 素 鋼 焼 き な ら し 構 造 用 炭 素 鋼 焼 戻 し 構 造 用 炭 素 鋼 焼 入 焼 戻 し HB S25C S35C S43C S48C S53C S58C S53C S58C S35C S43C S48C SMn443 SNC836 SCM435 SCM440 SNCM439 120 130 140 150 160 170 180 190 200 210 220 230 240 250 160 170 180 190 200 210 220 230 240 250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350 220 230 240 250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350 360 370 380 390 400 σFlim (MPa) 102 118 129 139 155 169 135 145 155 162 172 180 186 191 196 201 206 211 216 221 178 190 198 206 216 225 230 235 240 245 250 255 255 260 0 0 0 0 0 0 245 255 270 279 289 304 314 323 333 343 358 368 382 392 402 0 0 0 0 σHlim (MPa) 333 343 353 363 382 392 407 417 431 441 456 466 480 490 505 515 529 539 554 564 500 515 529 544 559 573 588 598 613 627 642 657 671 686 696 711 725 740 755 769 686 701 715 730 745 760 774 794 809 823 838 853 867 882 902 916 931 946 960 16 表 3.13 高周波焼入れ歯車 高周波焼入前の 熱処理条件 材料(矢印は参考) S43C 構 造 用 炭 素 鋼 構 造 用 合 金 鋼 S48C S43C S48C SMn 443 SCM 440 SCM 435 SNC 836 SNC M43 9 焼きならし 焼入れ焼戻し すべて焼入れ 焼き戻し 心部硬さ HV 歯面硬さ(1) HV 160 167 550 以上 180 189 220 231 211 240 2S2 216 200 210 210 221 230 220 231 235 230 242 240 240 252 245 250 263 230 242 240 252 274 250 263 284 260 273 294 270 284 304 280 295 314 290 305 323 300 316 333 310 327 343 320 337 550 以上 480’ 500 520 540 560 580 600 以上 500 520 540 560 焼入れ焼戻し 580 600 S20 640 660 680 以上 500 520 構 造 用 合 金 鋼 541 SMn443 SCM435 SCM440 SNC836 SNCM439 560 焼入れ焼戻し 225 265 358 460 S43C S48C 206 245 550 以上 440 構 造 用 炭 素 鋼 σHlim (MPa) 206 420 焼きならし σFlim (MPa)(1) HB 580 600 620 640 660 68C 以上 755 784 804 833 853 882 902 916 931 941 941 970 990 1009 1029 1044 1054 1063 1068 1073 1068 1098 1127 1147 1166 1186 1205 1215 1225 1235 17 表 3.14 浸炭焼入れ歯車 材料(矢印は参考) 機 械 構 造 用 炭 素 鋼 有効浸炭深さ 心部硬さ(1) HB HV 140 150 160 170 180 190 147 157 167 178 189 200 比較的浅い場合 (A) 220 230 240 250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350 360 370 SNC41 5 SCM42 0 SNCM4 20 機 械 構 造 用 合 金 鋼 SNC81 5 比較的浅い場合 (A) SCM415 SCM420 SNC415 SNC815 SNCM420 比較的浅い場合 (B 以上) σFlim (MPa)(1) σHlim (MPa) 178 192 206 216 225 235 580 600 620 640 660 680 700 720 740 760 780 800 S15C S15CK SCM41 5 歯面の硬さ HV 231 242 252 263 273 284 295 305 316 327 337 347 358 369 380 390 1127 1147 1156 1166 1176 1176 1176 1166 1156 1147 1127 1107 333 353 372 382 402 417 431 441 451 461 470 480 490 500 505 510 580 600 620 640 660 680 700 720 746 760 780 800 580 600 620 640 660 680 700 720 740 760 780 800 1284 1313 1343 1352 1352 1352 1352 1343 1333 1313 1294 1274 1529 1568 1607 1627 1627 1627 1607 1578 1548 1509 1470 1431 18 表 3.16 窒化歯車(1) 心部硬さ 歯面硬さ HV 材料 窒化鋼 SACM645 など 650 以上 窒化鋼以外の 構造用合金鋼 650 以上 σFlim (MPa) HB HV 220 231 314 240 252 343 260 273 372 280 295 402 300 316 431 220 231 294 240 252 323 260 273 353 280 295 372 300 316 392 320 337 412 340 358 431 360 380 451 表 3.17 窒化歯車(2) 材料 歯面硬さ(参考) HV 窒化鋼 SACM645 など 650 以上 σFlim (MPa) 一般の場合 特に長時間窒化処理をした場合 1176 1274 - 1372 表 3.18 窒化歯車(3) σFlim (MPa) 窒化時間 (h) 材料 10 以下 980 1078 1176 2 4 6 構造用炭素鋼 および合金鋼 相対曲率半径 mm 10 - 20 882 980 1078 20 以上 784 882 980 注(1) 歯面強さの向上のための適切な浸炭深さと,表面硬さの歯車に適用する.ただし,浸 炭層か極端に薄い例外的な場合については表面硬化しない焼入れ,焼戻し歯車の σFlim を使 う. 注(2) 有効浸炭深さの比較的浅い場合とは,表 3.15 のA程度の場合をいい,比較的深い場合 とは,表 3.15 の B 程度以上の場合をいう.有効浸炭深さは,HV550 の硬さまでの深さとす る.なお,研削歯車においては研削後の深さとする. 表 3.15 有効浸炭深さ 単位(mm) モジュール 浸炭深さ A B 1.5 0.2 0.3 2 0.2 0.3 3 0.3 0.5 4 0.4 0.7 5 0.5 0.8 6 0.6 0.9 8 0.7 1.1 10 0.9 1.4 15 1.2 2.0 20 1.5 2.5 25 1.8 3.0 備考 特に大歯車どうしのかみあいにおいては,歯面の面圧による歯内部の最大せん断応 力の発生点が深く,浸炭効果が及ばぬこともあるので,このような場合は歯面強さ計算式 の安全率 SF または信親度係数 CR を普通より大きめに取るように注意する. 19 2. 軸と軸受 2.1 軸 [1] 軸の寸法 機械の回転軸に用いられる軸の寸法は,なるべく JIS で規定されている値を用いることが 望ましい.JISB0901 は軸の直径を,JISB0903 は軸端の寸法を標準数に基づいて規定してい る(教科書 8-1-1). [2] 軸と歯車の接合 軸に歯車やプーリ,軸受などの回転部品を接続するときには,軸と回転部品の軸心を一 致させて,軸が空回りせずにトルクを伝えるようにしなければならない.キー,ピン,止 めねじ,スプラインのほかテーパ軸を用いる方法もある. 一般用平歯車の場合は通常,平行キーを用いる.各歯車についてのキー溝の寸法は,穴 の寸法と共に JISB1721 に定められている.また,キーに関する一般的な規格は,JISB1301 で詳細に定められている(教科書 8-2-1 参照). [3] 軸の強度 回転軸の強度設計では,軸材料の静的強度に基づく計算と軸の剛性に基づく計算が行わ れる.前者は,軸のねじりモーメント(+曲げモーメント,軸方向力)に対する最大応力を 評価するものであり,後者は軸のたわみ(ねじりモーメントのときはたわみ角)を評価す るものである.また,軸の危険速度を考慮に入れた計算も行われる.以下では,軸にねじ りモーメントだけが加わる場合の静的強度に関する計算方法について以下に説明する. (i) 動力とトルク 回転軸が P(W)の動力を回転数 n(rpm)にて伝達しているときに,軸に加わるトルク(ねじり モーメント)T(Nm)は, T P (2n / 60) (18) である. (ii) トルクとせん断応力 直径 D の中実軸にトルク T が作用するときに生ずるせん断応力 τ(Pa)は軸の外周で最大と なり,T と τ の関係は, T D 3 16 (19) 20 である.したがって,軸材料の許容せん断応力を τa とすれば,許容トルク Tlim(Nm)は, Tlim D 3 a 16 (20) キー溝付きの軸の場合は,溝の底部での応力集中を考慮しなければならない.キー付き の軸の許容応力とキーなしの軸の許容応力の比 γ は次の簡便式によって評価できる. 1 (0.2bk 1.1t k ) D (21) ここで, bk と tk はそれぞれキー溝の幅と深さである.したがって,キー溝付きの軸の場合は, 上式の許容応力を γτa とすればよい.キーを考慮した際の許容トルク Tlim は以下のようにな る. Tlim D 3 a 16 (22) トルクから軸径 D を求めるときは,まず γ を 1 として式(22)よりおおざっぱに D を計算 し,それより大きな D を規格表から選び γ を考慮して再度式(22)を用い,許容トルクを計算 するとよい. [4] 軸の材料 軸の材料としては,炭素鋼(S25C~S50C)が一般的であるが,高速回転軸では SNC,SCM などの合金鋼を機械加工後熱処理したものが使用される場合もある. 2.2 転がり軸受 [1] 深溝玉軸受 回転軸を支持する転がり軸受には様々な種類があり,用途に応じて使い分ける(教科書 8-1) .最も代表的な軸受である深溝王軸受は,アキシアル荷重(軸方向)とラジアル荷重(半 径方向)を同時に受けることができ,最も広く用いられている.軸受の主要寸法は JIS など で規定されている. [2] 転がり軸受の強度 転がり軸受の選択における強度評価は,疲労強度と永久変形に対する強度について行わ れる. (i) 疲労強度 疲労強度は,転走面や玉め表面の疲れ損傷(フレーキング)が発生するまで 21 の寿命によって評価する.ある負荷荷重 PB のもとで 90%の軸受がフレーキングを起こさず に回転できる寿命(定格寿命)L10 は,基本動定格荷重 Cr,と指数 p によって次のように表 される. L10 ( Cr p ) 10 6 PB (23) 基本動定格荷重 Cr とは,定格寿命が 106 となるような軸受荷重であり,PB は動等価荷重と 呼ばれラジアル荷重 Fr と軸方向荷重 Fa が共に作用する場合, PB XFr YFa (24) で与えられる.係数 X と Y は軸受カタログに掲載されている.ラジアル荷重のみの時は, PB=Fr とすればよい.指数 p の値は,王軸受の場合 3,ころ軸受の場合 10/3 とする. 実際には上式によって求められた定格寿命に,信頼度係数,材料係数,使用条件係数を かけて補正を行う(以下省略) . (ii) 永久変形 寿命を短く設定すれば動等価荷重はいくらでも大きくとれるが,玉と転走面 の接触による塑性変形を生じて,円滑な回転が維持できなくなる.この永久変形の限界を 与える静荷重を基本静定格荷重 Cr0 と呼び,静等価荷重 PB0 がこれを越えないようにしなけ ればならない. [3] 歯車伝動のときの動等価荷重 歯車の種類によって計算方法が異なるが,平衡車の場合はラジアル荷重のみなので簡単 である.平歯車のかみ合いで前面に働ぐラジアル方向の力 Fr’は,円周力 Ft とすると, Fr ' Ft t a n (25) で与えられる.したがって Fr’と Ft の合力 Ftcosα とのつり合いから,支持軸受でのラジアル 荷重を求めればよい.図に示すような両側支持の場合,軸受 A,B でのラジアル荷重 FτA,FrB は,歯車中心から各軸受までの距離を LA,LB とすると, FA Ft LB LA LB c os FB Ft LA LA LB c os (26) となる. 22 [4] 軸と軸受のはめあい 通常,軸受内外輪のうち静止しているほうをすきまばめ,回転するほうをしまりばめと する.つまり,内輪が回転する場合は,内輪と軸の間をしまりばめとする. 23 3. 平歯車減速機の設計 3.1 概要 平歯車を用いた 2 段減速の減速機を設計する.与えられた仕様に対して (i) 2 対の標準寸法平歯車の選定 (ii) 3 本の軸の設計と,支持軸受の選定 (iii) 組立図の製図(寸法のいくつかは製図の段階で決められる) 3.2 設計仕様 (1) 伝達動力 P(kW) (2) 原動機回転数 nl(rpm) (3) 減速比 UT(±5%) (4) 負荷分類: U(均一負荷)または M(中程度の衝撃) 3.3 設計項目 (I) 歯車 1,2: モジュール ml 歯数 z1, z2 歯幅 b1, b2 種類(A 形,B 形,C 形) 歯車 3, 4: モジュール m3 歯数 z3, z4 歯幅 b3, b4 種類(A 形,B 形,C 形) 以上は,歯車の呼び(IB4-50NI などの記号で記される歯車の型番)で表される. (II) 軸受 A-F それぞれの呼び番号: 内径 dA, dB,....., 幅 BA, BB,...など (III) 軸 1-3 の寸法: 各部の直径 D1, D1A, D2B, DIN など 3.4 設計目標と制約条件 [1] 目標 (1) 歯車 1,2 の歯数比 ul,歯車 3,4 の歯数比 u3 を,トータルの減速比 uT = u1u3 が目標値の±5% に入るように設計する. (2) 強度上許容できる範間内で,軽量化,あるいは小容積化をはかる.歯数比 ul と u3 の組 合せ,用いる歯車のモジュールと歯数によって大きさと重量は変わるので,いくつか可能 な組み合わせを候補として求め,その中から最適な組み合わせを選ぶ. 24 [2] 重要な制約条件 (1) すべての歯車が,曲げ強さ,及び歯面強さの条件を満たしていなければならない. (2) 軸の歯車取付け部の径(例えば D1)は JIS B 1721 の標準寸法平歯車の穴径によって定ま り,軸受取付け部の径(例えば D1A)は軸受の内径によって定まるが,これらは強度上必要 最小径よりも大きくなければならず,また加工・組立上この順に大きくなければならない. 例えば入力軸では, D1 D1 A DIN Dm 1i n とする.ここで Dmin1 は必要最小径,Din は原動機からの回転を入力する軸端径である.中間 軸,出力軸についても同様の考え方で軸径を決める. (3) ピッチ円上の周速 v < 8 m/s とする.特に,入力軸は回転速度が高いため,歯車 1,2 の 選定は注意が必要である. (4) 歯車の摩耗が特定の歯だけに起こらないようにできるだけ一対の歯車の歯数には大き な公約数をもたないようにするのが望ましい.例えば 20/40 などの組合せは避ける. (5) 2 つの大歯車(特に歯車 2)が他の軸と干渉しないように(ぶつからないように)注意す る. (6) 軸受は,NSK 深溝玉軸受のカタログから,6000 番台を用いる. [3] その他の共通事項 以下については,全員共通とする. (1) 歯車は JIS B 1721 の標準寸法平歯車 (2) 歯車の精度等級は JIS 4 級 (3) 歯形修整はなし (4) 歯車の材料は原則として S45C 焼入れ焼戻し材(σFmin=245 MPa,σHmin=627 MPa) . (5) 加工方法はホブ切りで,歯面の表面粗さはそれぞれ Rmax = 7 μm. (6) 歯形面取りは,m = 1.5 の場合 C0.1,m = 2~3 で C0.25,m = 4~6 で C0.5 とする.した がって,歯面強さの計算では,それぞれ歯幅から 0.2 mm,0.5 mm,l mm を減じた値を有対 幅とする. (7)使用潤滑油粘度は 220 cSt (8)安全率は,SF=1.2,SH=1.2 とする (9)寿命は,歯車,軸受とも.107 以上とする (10)バックラッシは両歯車に等分に振り分ける (11)歯車の軸への締結,及び動力の入出力部には平行キーを用いる. (12)軸の材料は S45C 焼きならし材とし,許容せん断応力 τa = 39 MPa とする. (13)応力の計算で用いる補正孫数で,表にない値は補間によって推定する. (14)歯すじ荷重分布係数 KHβ を求める際,「一方の軸受に近い.軸のこわさ大]の場合をと る. 25 3.5 設計計算手順 ① 必要数小径の計算 仮の減速比をもとに入力軸と出力軸の必要最小径 Dmin1 と Dmin3 を計算する. ② キーの選定 求めた軸径より,キーの大きさからキーがない場合との許容応力の比 γ を求め,キーを考 慮した場合にねじり応力が許容応力 γτa を下回っているがチェックする.もし,ねじり応力 が許容応力を超えた場合には,軸径を大きくして再度その軸径に合ったキーを選定した上 で γ を求める. ③ 歯車の選定 歯車の組合せを仮定し,設計計算シートの内容にしたがって,周速.円周力,曲げ強さ の許容目周力,前面強さの許容円周力などの計算を行って,強度条件を満足する歯車の組 合せの候補を探す. ④ 軸受の選定 上の歯車に見合う寸法の軸受を探す.このとき,軸受の強度計算を行う必要はないが, 軸受の内径は必ず軸端径より大きい値にする. ⑤ 試行錯誤 3.4 節に挙げた制約条件と設計目標を満たす適切な歯車の組合せが見つかるまで,(i)~(iii) を繰返し行う. ⑥ 設計値のチェック 設計値が決まったら,歯車,軸受,軸径,キーなどの諸値を設計計算シートに記入し, チェックプログラムによる確認を受ける. ⑦ 設計値の決定 最終的に決定した設対価を設計計算シートに記入し,製図にとりかかる. 26 3.6 製図で必要な寸法について 製図にとりかかる前に,以下についてひと通り確認しておくこと. [1] 規格あるいはカタログの値 (1) 歯車の諸寸法は JIS B 1721 の標準寸法平歯車の値を用い,軸受の諸寸法は,NSK の単 列深溝玉軸受のカタログの値を用いる. (2) 入力軸の入力側と出力軸の出力軸の軸端は,JIS B 0903(教科書 p.122 表 8.2)の短軸端 を採用し,キー溝を設ける.キーは JIS B 1301(教科書 p.129 表 8.14)の寸法を用いる.な お歯車取付部のキーは,JIS B 1721 で指定されたキーを用いる. [2] 歯車の配置と軸の軸方向の寸法など (1) 歯車を軸方向に固定するために軸には段を設け,もう一方はスペーサリングで押さえ る.軸の段差は 2.5 mm 以上(直径で 5 mm 以上)とり,幅は 6 mm 以上とする.スペーサ リングの歯車と接する部分の肉厚は 2.5 mm 以上(直径で 5 mm 以上)とり,幅は 6 mm 以 上とする. (2) 軸受と軸の軸方向位置を固定するために,軸には段をつける(NSK のカタログに掲載 された値の範囲内) . (3) 中間軸では,2 つの歯車を並べて配置してよい.ただし,いずれかは B 形(ないし C 形) でなければならない.歯車が両方とも A 形の場合は,間にスペーサリングを入れる. (4) 軸受と歯車(あるいは(1)で述べた段)の間の軸方向すき間は最低 15 mm とる. (5) 両端の軸受の外側端面間の距離は 3 本の軸とも同一とする. (6) 入力軸と出力軸の軸端部の開始位置は軸受の外側端面から 25 mm のところとする. (7) 歯車取付部のキー溝は,エンドミルで加工することとし.幅は JIS B 1721 に掲載された 値に従う.キー溝の長さは.キー溝が軸の歯車取付郎の両端からそれぞれ 3 mm 程度内側に くるように決める.キーは両丸を用いる(なお今回はこの部分のキーの強度計算は行わな い) . [3] 同寸法公差 (1) 中心距離 a(mm)の寸法公差は,JGMA 113-01 によれば,精度等級 4 の歯車では寸法差 H8,公差 25Wc と定められている.ただし, Wc 0.45(a)1 / 3 0.001a (μm) すなわち,寸法許容差は 0 から 25Wc となる. (2) 歯車と軸のはめあい:穴基準の中間ばめとし,許容差は歯車の穴を H7,軸を m6 とする. (3) 歯車取付部の平行キーの許容差は,並級 N9 とする. (4) 軸と軸受のはめあい:2.2[4]で述べたようにしまりばめとし,穴基準で軸の寸法許容差は P6 とする. (5) 軸方向の寸法許容差は各自考えてみよ. [4] 角の丸み及び面取り 27 (1) 角の丸み及び面取りは,歯車や軸受がらみの部分は規格とカタログを参照し,その他の 部分は例図などを参考にして任意に決める. (2) 歯車の歯の面取りは,一般に目安として m = 1.5 の場合 0.08 - 0.025 mm,m = 2 - 3 で 0.15 - 0.40 mm,m = 4~6 で 0.25 - 0.75 の範囲とする.また,歯形面取りは歯先面取りよりも大 きめにとる.なお今回は,歯形面取りは 3.4[3]の(6)に従うこととする. [5] 仕上げ方法と面の肌 仕上げ方法と面の肌は,例図などを参考にして任意に決める. 3.7 製図課題 ① 計画図(A1 方眼紙) ② 部品図 → 出力軸のみ(A2 方眼紙) ③ 組立図(A1 トレース紙) 注意点: (1) 計画図は,まず元図を方眼紙上にかき,そのあとトレース図(トレーシングペーパー) を仕上げる.部品図は,トレースしなくてよい. (2) 用紙のサイズは,計画図が A1,部品図は A2 とする.尺度は,原則 1:1 とする. (3) 組立図の歯車は略記法で図示する(教科書参照).正面図に歯車,軸,軸受,スペーサ などを含め,側面図にはかみ合う歯車のみをかく. (4) 軸受の製図法は,教科書 p.148,NSK カダログ参照 (5) 組立図では部品に番号をつけ,組立図の右下の表題の上に部品表をかく. 3.8 最終提出物 ① 計画図(A1 方眼紙) ② 部品図(A2 方眼紙,出力軸のみ) ③ 組立図(A1 トレース紙) ④ 設計計算書 28
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