破砕性土の個別要素法シミュレーション

破砕性土の個別要素法シミュレーション
キーワード:個別要素法,破砕性土,拘束圧依存性
山口大学工学部
正会員
Cambridge University
○中田幸男
M. D. Bolton
まえがき
1.
個別要素法解析は、実際の粒状土の微視的力学特性を定量的に捕らえることが可能であるという観点から多くの研究
者に用いられ、成果が得られている(例えば、Coundall and Struck, 1979, Rothenburg and Bathurst, 1992, Thornton, 2000)。
しかし、現状の解析の多くは、粒子破砕のような粒子の塑性変形を取り入れたものとなっておらず、本来の地盤材料と
はある意味異なる材料に対して研究の労力が注がれているといえる。ここでは、個別要素法を用いた破砕性土のシミュ
レーションの開発および検討を行い、定性的かつ巨視的に破砕性土の降伏特性や非排水せん断特性などの力学特性、特
にその拘束圧依存性を表現できることを示している。
表1
個別要素法を用いた破砕性土のモデル化
2.
計算に用いたパラメーター
Diameter of agglomerate
1.0 mm
Diamet er of sphere
0.2 mm
Density of sphere
2650 kg/m3
Maximum number of spheres in an agglomerate
57
球要素のかたまりとして、土粒子を表現するために、いくつか
Maximum number of bonds in an agglomerate
228
の球要素間に結合強度を与えている。この結合強度は、引張力
Normal and shear bond strength
4N
およびせん断力に対して有効に作用し、その限界をいずれかが
Normal and shear stiffness of each sphere
4 x10 6 N/m
超えて以降は、その作用を失う。さらに、結合強度を与えられ
Frictional coefficient of sphere
0.5
ていない球要素間には、すべりモデルが適用される。これは球
Percentage of spheres removed at random
20%
本研究でもちいる個別要素法は、基本的には従来多くの研究
者が用いているものと同様である。球要素は、接点に有限な剛
性を有し、要素同士のわずかな重なりを許すことによって、法
線方向の荷重及びせん断力に対して線形弾性変形を示す。また、
要素間の接点でのせん断力に、クーロン規準に基づいて限界を
与えるもので、限界を超えた接点ではすべりが生じることを表
すものである。表1に、計算に用いたパラメーターを示してい
る。
上述したように、ここでは土粒子を球要素のかたまりとして
表現している。このかたまりに属する球要素は、初期に重なり
を0にするためや、出来るかぎりかたまり内に間隙を作らない
ために、規則的かつ球形に配列された。その後、土粒子が本来
(49,154)
(46,144)
(42,137)
図1 モデル化された破砕性土粒子(球要素のかたまり)
有している形状や強度の不均一性を表すために、球要素に 80%
の存在確率が与えられた。コンピューターの計算時間の関係で、1かたま
り最大 57 要素、228 接点(=228 結合強度)となるように設定し、平均で
は 45.7 要素、146.4 接点となった。図1に代表的な粒子を示している。こ
のような形で設定したパラメーターによって、結果として実際の砂の単粒
子強度特性と類似の傾向を与えることが可能であることを確認している
(Nakata, et al., 2002)。
3.
モデル化された破砕性土の力学特性
上述した破砕性土粒子としての球要素のかたまりに対する通常の等方
圧縮試験や三軸試験などの力学試験をシミュレーションするために、複数
作成し集合体化させた。このときの様子は図2に示すとおりである。初期
の直方体は1辺 6.66mm であり、389 個のかたまりが配置された。この後、
図2
モデル化された破砕性土の集合体
供試体は 10kPa に達するまで、0.01m/sec の速度で6つの壁を内側に移動す
ることで等方圧縮させた。6つの壁は、球要素の 0.1 倍の剛性をもつスムーズなものとした。この等方圧縮時点での、
球要素の体積から求めた間隙比は、およそ 2.1 であった。
Simulation of distinct element method for crushable soil
Nakata.Y. (Yamaguchi Univ.)
M. D. Bolton. (Cambridge Univ.)
70
Percentage of broken bonds
Deviatoric stress (MPa)
30
80MPa
25
20
40MPa
20MPa
15
10
10MPa
5
0
60
80MPa
50
40MPa
40
30
20
20MPa
10
10MPa
0
0
0.1
0.2
Deviatoric strain
0.3
0.4
図3(a) 定体積三軸圧縮過程における応力ひずみ関係
0
0.1
0.2
Deviatoric strain
0.3
0.4
図3(b) 定体積三軸圧縮過程における結合接点の消失割合と
30
2.3
25
2.1
1.9
20
Void ratio
Deviatoric stress (MPa)
ひずみの関係
15
10
1.7
1.5
1.3
1.1
5
0.9
0
0.7
0
20
40
60
80
Mean stress (MPa)
図3(c) 定体積三軸圧縮過程における応力経路
100
0.1
1
10
Mean stress (MPa)
100
図4 モデル化された破砕性土の限界状態
この後、上下の境界面の変位速度が 1.0m/sec となるように等方圧縮および、所定の拘束圧に達した後の三軸圧縮試験
が行われた。解析では、随時その時点での状態を保存できるため、再計算や、新たな試験の実施が、一から供試体を作
成することなく可能となる。図3は、定体積圧縮試験の結果について示したもので、図 (a)に応力とひずみの関係、図(b)
に応力と、初期に結合強度を有している接点数に対する失った接点の割合の関係、図(c)に有効応力経路を示している。
これらの図から、せん断初期に粒子破砕を起こさず、p’の変化が起こらない粒状体弾性変形の領域が認められること、
10MPa や 20MPa の結果では、擬似変相状態や変相状態の挙動が認められ、せん断後半では明確な正のダイレタンシー
増分の発生が認められること、一方 40MPa や 80MPa の結果では、せん断中おおむね負のダイレタンシー挙動のみを示
していること、などがわかる。加えて、図4は、等方圧縮、側圧一定および定体積圧縮試験結果について間隙比と logp’
との関係を示している。この図から個別要素法によりモデル化された材料についても、実際の破砕性土と同様( Been and
Jefferies, 1985, Yasufuku, et al., 1991, Coop and Lee,1992, Nakata, et al, 1999)、限界状態線が等方圧縮曲線から左に平行移動
した位置に存在していることがわかる。
参考文献
Been, K. and Jefferies, M. G. (1985) : A state parameter for sands. Géotechnique, Vol.35, No.2, pp.99-112.
Cundall, P. A. and Strack, O. D. L. (1979) : A discrete numerical model for granular assemblies, Géotechnique, Vol.29, No.1, pp.47-65.
Coop, M. R. and Lee, I. K. (1993):The behaviour of granular soils at elevated stresses. Predictive soil mechanics, Proceeding of the Wroth
Memorial Symposium (eds. G.T. Houlsby and A.N. Schofield), pp186-198. Thomas Telford, London.
Nakata, Y., Hyde, A. F. L., Hyodo, M. and Murata, H.(1999) : A probabilistic approach to sand particle crushing in the triaxial test , Géotechnique,
Vol.49, No.5, pp.567-583.
Nakata, Y., Cheng, Y. P., Bolton, M. D.(2002) : DEM simulation of crushable soil, Géotechnique (submitted)
Rothenburg, L. and Bathurst, R.J. (1992) : Micromechanical features of granular assemblies with planar elliptical particles, Géotechnique, Vol.42,
No.1, pp.79-95.
Thornton, C. (2000): Numerical simulations of deviatoric shear deformation of granular media. Géotechnique, Vol.50, No. 1, pp.43-53.
Yasufuku, N., Murata, H. and Hyodo, M. (1991) : Yield characteristics of anisotropically consolidated sand under low and high stresses, Soils and
Foundations, Vol.31, No.1, pp.95-109.