40年前の決断 高校野球予選の扱い

40年前の決断
高校野球予選の扱い
■新編集講座 ウェブ版
毎日新聞社
第33号
2015/8/1
技術本部長(元・大阪本社編集制作センター室長)
三宅 直人
全国高校野球選手権(朝日新聞社、日本高野連主催、毎日新聞社後援)は 6 日開幕します。6 月下旬から7月末にかけ、
朝刊スポーツ面には連日、地方大会の結果が掲載されました。でも、ちょうど40年前にある決断が下されるまでは、
事情は違いました。予選の紙面扱いはもっとあっさりしていたのです。「決断」前後の紙面扱いの違いを見ましょう。
■ 見出しは2段、記事 20 行
右図は 41 年前の 1974 年 7 月 23 日の
朝刊スポーツ面です(東京本社版、以下同)。
トップのプロ野球オールスターに「長島
3ランむなし」とか「ツキ呼んだ福本」
という見出しがあるのも感慨深いですが
(※)、驚くのは、高校野球予選の扱いの
小さいこと。紙面の片隅、見出しは 2 段、
記事は記録を合わせ 20 行ほどです。
前文を読むと、センバツで準優勝した
池田(徳島)が予選敗退したとか、前年
1974 年7月 23 日
夏出場の藤沢商(神奈川)や静岡(静岡)
朝刊スポーツ面
がやはり予選で敗れたとか、要点は押さ
えてあるのですが、何と言っても記録の量が少ないのです。
※
長島は巨人の、福本は阪急(現オリックス)の選手・・・という注は蛇足?
■ 記録は準々決勝から
当時、夏の高校野球で「1 県 1 校」は神奈川や大阪など大都市圏に限られ、
その他の地域は、奈良と和歌山で「紀和大会」を開くなど地区大会(1次
予選)を開き代表校を決めていました(全国 34 代表;東京と北海道は各 2 校)。
毎日新聞は、1次予選のある県は地区大会出場校が決まる試合を、その
他の県と地区予選は準々決勝以上を、スポーツ面に掲載していました(準決
勝まで棒スコア<1-0 の形>、出場校が決まる決勝戦はイニングスコア)
。
予選も終盤になるとスポーツ面に載るゲームが増えるわけで、実際、右
図のように「南北北海道まず名乗り」
(7 月 25 日)、
「34 代表、勢ぞろい」
(8 月 3 日)あたりは、それなりの扱いになってきています。
一方、7 月の前半、つまり予選の1~3回戦あたりは様相を異にしていま
した。冒頭に引用した 7 月 23 日の記事以前、実は毎日新聞のスポーツ面に
高校野球予選の記事は載っていません(もちろん地域面には各県予選の結果は
載っています)
。ちなみに主催者の朝日新聞は、全都道府県の予選を1回戦か
らスポーツ面に掲載しており、毎日新聞とは好対照でした。
㊧
7
4
年
7
月
2
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日
㊦
7
4
年
8
月
3
日
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
■ 75 年に扱いが一変
75
年
7
月
21
日
翌 75 年になると、状況は一変します。毎日新聞でも全
都道府県の 1 回戦からの予選結果をスポーツ面に掲載す
るようになったのです。右図の 7 月 21 日紙面の場合、試
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
合数がピークのこともあり、紙面の半分を高校野球の予
選結果が占めています(私の世代だと、大相撲の「平幕・
金剛が初賜杯」の見出しに目が行ってしまいますが)。
右図㊦には、同じ 75 年の予選後半のスポーツ面紙面を
掲載しました。
「甲子園へ初名乗り」
(7 月 26 日)は4段
見出しで写真付き、一挙に多数の出場校が決まった日の
紙面(7 月 30 日)は、出場校名を列挙と、前年よりも、
紙面の作り方が派手になった印象です。参考に今年の紙
面も掲載しまたが、全体の雰囲気はよく似ています。
■ 読者の声に押され
この 75 年は、地区割りが変更され、出
場校は前年から4増え 38 になりました。
なぜこの時に基準が変わったのでしょう。
先輩に話を聞いたことがあります。「以
前は『春は毎日、夏は朝日』という主催者
意識が強かったが、都会在住者の『郷土の
予選成績を知りたい』という声もあり、全
㊧
75
年
7
月
26
日
㊨
75
年
7
月
30
日
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
試合掲載を決めたのだと思う」「もうちょ
㊦15 年7月 27 日 朝刊スポーツ面
っと言えば、販売現場の要望に後押しされ
たのではないか」とのことでした。こうし
た事情は、サッカー熱の高まりで扱いが
徐々に大きくなったサッカーW杯と似て
います(新編集講座ウェブ版第7号参照)。
高校野球は、1 県 1 校制(東京と北海道
は 2 校)になった 79 年が節目で、以降は
「郷土色が強まった」とも「レベルが下が
った」とも言われますが、毎日の紙面は 75
年が分水嶺(ぶんすいれい)になっています。
■ やはり気になる郷土勢
私の場合でいうと、現在は東京都内に
住んでいますが、出身の大阪府や、初
任地の栃木県の様子が気になります。
■ あおりを食ったタイガース
ちなみに 75 年は雨が多く、高校野球は
全予選掲載は重宝しています。
計 5 日間順延になりました。あおりを受けたのが甲子園を本拠地とするプロ野
球・阪神タイガースです。8 月 23 日に甲子園で予定されていた対ヤクルト戦
は高校野球決勝のため中止になりました(右図)
。ところがその 23 日も雨が降
り、高校野球決勝は翌 24 日に再順延。24 日に設定されていた阪神対ヤクルト
のダブルヘッダー(最近はあまり聞かないですね)は中止になったのでした。
朝
刊
ス
ポ
ー
ツ
面
75
年
8
月
23
日