GC注入口ライナーの選択方法:

アプリケーションノート
GC注入口ライナーの選択方法:
注入口の種類による選択方法
By Scott Adams
注入法によって最適なライナーを選択
•スプリット注入
•スプリットレス注入
•直接注入
•気体注入
•PTV 注入
ガスクロマトグラフィー(GC)において、試料は最初に装置の注入口を通過します。注入口の主な役割は、分
析のために試料をGCカラムに導入することです。試料には色々な種類があり、例えば液体であったり気体で
あったり、また分析対象が高濃度の試料であったり、極微量成分であったりします。GC注入口ライナーの選
択は非常に重要で、分析の対象成分が分解や吸着することなく、決められた試料量を効率よく確実にカラムに
導入することが大切な要素となります。
ガスクロマトグラフィーでは色々な種類の注入口ライナーが市販されていますが、それらは色々な点で異なりま
す。例えば幾何学的な形状とデザイン、容積、ライナーの材質(ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、金属)、不活
性化処理、充填剤の有無などの点です。試料が異なれば(液体または気体)使用するライナーも異なり、また注
入法 (スプリット、スプリットレス、オンカラムまたは直接) も異なります。GC注入口で使用するライナーの選
択は非常に簡素化されていて、GCのユーザーは注入法によって使用するライナーを決めることができます。
スプリット注入
スプリット注入は、試料の濃度が比較的高い場合、もしくは高感度の分析が必要ではない場合に使用します。
注入法の名前の通り、試料は注入口で分割されて適量の試料がGCカラムに入ります。スプリット注入では注
入口のキャリアーガスの流量は大きく、一定量のキャリアーガス(試料)がカラムに入り、また一定量のキャリ
アーガス(試料)がスプリットベントに排出されます。注入口全体の流量とカラム流量の比をスプリット比と言
います。少量の試料をカラムに導入するスプリット注入法では、試料の負荷量が少ないためカラムの寿命が長
くなります。
スプリット注入では注入口に大量のキャリアーガスが流れるので、試料が注入口に留まる時間はごく僅かで
す。効率・再現性良く試料の一部を分析用カラムに導入するには、注入口で試料を瞬時に気化させキャリアー
ガスと混合させることが必要です。Restekでは、試料の気化と混合を効率よく行うために、2種類のスプリッ
ト注入用ライナーを提供しています。1つはSky® Precision®というウール入りのライナーです(図 1)。この
ライナーには不活性化されたガラスウールが入っていて、ライナー内部の窪みによりガラスウールはライナー
の中で常に一定の位置に保たれています。ウールがあるため表面積が増加し、試料の気化と混合が効率よく行
われ、またウールによってシリンジニードルがワイプされるので再現性がよくなります。Sky®注入口ライ
ナーのウールは内部に入れられた状態で不活性化されるので、非常に不活性なライナーを製作することがで
き、スプリット注入法による多くのアプリケーションで大変有用です。
Pure Chromatography
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Figure 1: Sky® プレシジョンライナー ウール入りAgilent® GC用
ウールがあることで試料が分解したり吸着したりするようなことがあれば、スプリット注入でSky®シクロラ
イナー(図 2)が適切な選択です。このライナーにはウールが入っていません。その代わりライナーの下部1/3
が螺旋状の細いガラス管になっていて内部の表面積が大きく、これによって試料の気化が促進され、試料を混
合するための渦流が生成されます。Sky® Precision®ライナーと同様に、Sky® サイクロライナーにはSky® 不
活性化処理がなされていて、非常に不活性な試料導入と混合が行われます。
Figure 2: Sky® サイクロライナー Agilent® GC用.
スプリットレス注入
スプリットレス注入は、試料中に存在する分析対象の化合物の濃度が低い場合に用いられます。スプリットレ
ス注入の場合、試料注入時はスプリットベントを閉じ、注入口からのすべての流量が一定の時間カラムに直接
導入され、この時間をパージバルブ時間と呼んでいます。一定時間の後スプリットベントが開き、気化した溶
媒を含むすべての成分がスプリットベントバルブから排出されます。スプリットレス注入の場合、注入された
試料の99%がカラムに導入されます。
スプリット注入と同様に、スプリットレス注入でも2種類のライナーを提供しています。1つはウール入りの
Sky®シングルテーパー型のライナー(図 3)です。ライナーの底部にあるシングルテーパーは、金属でできた注
入口のシール部分に試料がなるべく接触しないようにするためのもので、カラム先端に試料が直接濃縮される
ようになっています。注入された試料はウールに捕捉され、そこから試料の気化が始まります。またウール
は、不揮発性の”汚れた”成分をトラップし、高価なカラムの汚染を防ぐ役目もしています。Sky®ライナーで
は、ウールはライナーに入った状態で不活性化されていて非常に不活性なので、試料中の微量成分の分析でよ
く使われています。たいていのスプリットレス分析で、このライナーは適しています。
Figure 3: Sky® シングルテイパー ウール入り Agilent® GC用.
もし試料中の化合物がウールで分解もしくは吸着される場合、ウールなしのSky®シングルテーパー
(図 4)がお勧めです。前にも述べたように、ライナー底部のシングルテーパーにより、注入口の金
属製シールと試料中の化合物との接触を最小限にすることで、試料を直接分析用カラムに導入する
ようになっています。Sky®不活性化は、微量分析に非常に効果的な手法になっています。
Figure 4: Sky® シングルテイパー ウール無 Agilent® GC用
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直接注入
直接注入は、一般的に試料中の化合物濃度が低い場合に用いられ、試料とウールまたは注入口底部の金属製シールと
の接触がないので、基本的に分解や吸着などによる化合物の損失を防ぐことができます。直接注入法では試料は高温
の注入口に注入され、試料全体が気化しGCカラムに導入されます。この場合、GCカラムは注入口ライナーに直接
シールされて取り付けられています。
Sky® Uniliner®注入口ライナーは、注入口底部での接続が、内部で”プレス-フィット型”になるようにデザインされ
ていて、GCカラムはライナーでシールされ、注入口底部にある金属製シールと試料は接触することなくカラムに導
入されます。Sky® Uniliner®注入口ライナーには、2つの製品があります。1つは小さな穴がライナー上部に開いた
もの(図 5)で、もうひとつはライナーの底部に小さな穴が開いたものですが、ライナーの上でカラムがシールされて
います(図 6)。目的とする化合物が難揮発性成分の場合、または溶媒ピークのテーリングにより影響を受ける場合、
ライナーの底部に小さな穴が開いたSky® Uniliner®注入口ライナーを選択してください。
また水溶性試料の場合や目的とする成分が溶媒ピークのテーリングから離れている場合は、小さな穴がライナー上部
に開いたものを選択してください。
Figure 5: Sky® ユニライナー 上部穴ありAgilent® GC用
Figure 6: Sky® ユニライナー 下部穴ありAgilent® GC用
気体注入
気体試料の注入は、液体試料の注入とは基本的に異なります。液体試料の場合、試料は注入口で気化されカラムに導
入されますが、気体試料の場合は、注入口は試料を効率よくカラムに導入するために使用されます。
気体試料で使用される注入口ライナーは小さい内径(ID)のもので、できるだけ試料のバンド幅を狭くしてカラムに導
入します。気体試料の場合、内径1.0mmのSky®ストレートライナーの使用が最適です。(図 7)
Figure 7: Sky® ストレートライナー (1 mm) Agilent® GC用
昇温気化注入法(PTV)
PTV注入法では、試料は注入口の温度が低い状態で注入されます。その後注入口は昇温され、まずカラムに溶媒が入
ります。さらに注入口の昇温を続けると分析対象の化合物が気化し、カラムに導入されます。.
多くのメーカーがPTV注入口とライナーを供給していますが、注入口の形状により様々な形のライナーがあります。
ほとんどのPTV用ライナーは内径が細く、ライナーの内部にバッフルやくびれがあります。これらのバッフルやくび
れにより、注入口内部の表面積は大きくなり、それにより試料は注入口内部に留まりやすくなり、注入口温度を昇温
により上げていくに従って、注入口の温度上昇が試料の気化につながります。どのようなメーカーのPTV注入口用ラ
イナーでも、Sky®不活性化した小さな内径で少なくとも1つのバッフルまたはくびれがあるものを選択してくださ
い。
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まとめ
色々なライナーが市販されていますが、どのような種類のライナーを選択したらよいでしょうか?たいていの
場合、どのようなGC注入口ライナーを使用するかは、注入法によって簡単に分かります。スプリットまたは
スプリットレス注入では、2つのタイプの注入口ライナーがあります。1つはウール入りで、もうひとつはウー
ルなしのものです。ウール入りライナーは、それほど高感度の分析を必要としない試料で用います。Sky® 注
入口ライナーは、ライナーの内部でウールを不活性化処理しているので、安心してウール入りのライナーを使
用できます。たいていの場合、ウール入りのSky®注入口シングルテーパーのライナーをスプリットレス注入
で、またウール入りのSky® Precision®ライナーをスプリット注入で用いることで、よい結果を得ることが
できます。試料が非常に分解しやすい場合はまれなケースですが、ウールなしのライナーを用います。
直接注入では、穴の開いたライナーを使用する必要があります。直接注入法のアプリケーションでは、上部に
穴の開いたものが適切でしょう。気体試料の場合は、内径の小さいSky®注入口を使用することで、注入され
た試料のバンド幅を縮めることを推奨します。そしてPTV注入法では内径の小さいライナーを使用しますが、
バッフル/くびれがあり注入口の形状に合ったものを使用します。RestekのSky®注入口ライナーは、ここで
述べた種々の注入法に対応したものがラインナップとして揃っています。
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