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眼科スタッフが知っておきたいトピックス
色覚異常と就職
鎌尾知行
かまお・ともゆき
*
愛媛大学医学部眼科学教室 助教
*〒 791-0295 愛媛県東温市志津川
筆者は、眼科ケア 2014 年冬季増刊『スタッフのハテナ 50 にお答えします! 子どもの目の検査と病気』に
て、就職と色覚異常について執筆しました。その 3 章「子どもの目の病気で知っておきたい 10 項目」内、「⑤
色覚異常の子どもの日常生活での注意点は? 遺伝するの?」のなかで、誤解を招く表現がありましたので訂
正します。
■一部の職業に残る色覚による採用制限
■
就職は色覚異常の程度により異なりますが、航空関係(パイロット、管制官、整備士など)
、動力車操縦者
(電車の運転士など)、自衛官、水先人などで制限があること、警察官は制限がなくなっていること……(略)
上記増刊にて、筆者はこのように記載しました。これでは警察官の採用に色覚異常の制限がなく、色覚異
常があっても警察官に就職できるという誤解を招く可能性があります。実際には、以前よりも色覚異常の制
限が緩和されているものの、現在も採用制限が存在します。
色覚異常の就職に関する制限については、2001 年には厚生労働省が労働安全衛生規則を一部改正して、雇
入時健康診断における色覚検査を廃止し、就職に際して根拠のない制限を行わないよう通達がなされました。
この改正により色覚異常者の就職に際しての制限は大幅に緩和されましたが、完全に撤廃されたわけではな
く、現在も採用制限が一部の職業にあります(表)。なぜなら、この改正には注意書きとして、「各事業所が
必要性に基づいて自主的に色覚検査を実施することを禁止するわけではない」と記載されているためです。
この改正後、警察官や自衛官などでは各種委員会を立ち上げて対応を検討し、その結果、警察官の場合は
全都道府県でパネル D-15 による判定が導入されました。そしてパネル D-15 で「フェイル」と判定された場合
は、成績が優秀であっても不採用となります。
■採用制限の根拠
■
この制限の根拠として、証言能力が挙げられています。犯人が着用していた衣服などの色情報の信頼性が
低い場合、証拠として採用されない可能性があるからです。2014 年度の愛媛県の警察官の募集要項を紹介する
と、第二次試験の身体精密検査で「弁色力に関して職務遂行に支障がないこと」と規定されています。この色
覚に関する条件は都道府県により多少文言が異なる場合があるため、担当部署に確認を取る必要があります。
54(558)眼科ケア 2015 vol.17 no.6
表 色覚による採用基準(文献 1 より転載許可を得て改変)
職種・資格
採用基準
航空機乗務員
色覚に異常のない者(石原色覚検査表、実際にはアノマロスコープで確認)
航空管制官
色覚に異常のない者(石原色覚検査表)
海技士(航海)
色盲または強度の色弱でないこと(石原色覚検査表、パネル D-15)
小型船舶操縦士
夜間において船舶の灯火の色を識別できること
設備限定がなされた操縦免許では、日の出から日没までの間において航路標識の彩
色を識別できると認められること
機関部船員
色覚と経験に応じた制限事項あり(石原色覚検査表、パネル D-15、独自の確認表)
海上保安官
職務遂行に支障のない程度の者(石原色覚検査表、パネル D-15)
海上保安官(航空) 色覚に異常のない者
動力車操縦者
色覚に異常のない者(おおむね石原色覚検査表)
警察官
職務遂行に支障のない程度の者(おおむね石原色覚検査表、二次検査ではおおむね
パネル D-15)
皇宮護衛官
職務遂行に支障のない程度の者(石原色覚検査表、アノマロスコープ)
入国警備官
職務遂行に支障のない程度の者
自衛官(航空以外) 色盲または強度の色弱でない者(石原色覚検査表、パネル D-15)
自衛官(航空)
色覚に異常のない者
消防官
赤色、青色及び黄色の色彩の識別ができること
(用語はおおむね原文のまま)
一般業種についても、雇用後に色覚異常が問題となることがあります。雇用側が採用時に制限をせず、採
用後に色覚検査を行って配属を決定したり、色を用いた識別措置については色以外の情報を付加するように
したりして、職場の環境改善を図るといった対応をとる企業が存在する一方で、いったん緩和した制限を再
び強化している企業も存在します。そのため一般企業においても必ず事前に確認しなければなりません。ま
た、一部に残る採用制限も年々変化しているため、つねに情報を収集しておく必要があります。
* * * * *
以上、色覚異常と就職についての現状を紹介しました。色覚異常に関しては就職時だけでなくさまざまな
場面で思わぬ不利益を受けることがあります。それには色覚異常に対する知識不足が大きくかかわっていま
す。つまり色覚異常に関して正しい知識を社会が共有することが大切であり、そのために眼科医療従事者は
非常に重要な役割を担っています。
引用・参考文献
1)
中村かおる.色覚異常の生活指導.日本の眼科.83,2012,588-92.
眼科ケア 2015 vol.17 no.6(559)55