日立産機システム 習志野事業所 シリー ズ エコファクトリー・レポ ート 5 蒸気エネルギーの 見える化 困難な蒸気エネルギーの見える化がもたらす大きな省エネ効果 工場をエコファクトリーに変える、蒸気エネルギーロスの原因特定と定量化 日立産機システムの習志野事業所は、数々の優れた省エネ成果をあげてきたことから、 * 日立グループのエコファクトリーセレクト事業所として認定されています。 今回は、当社の主力製品である産業用モータの生産現場などで使われている 蒸気エネルギーの見える化とその省エネ取り組みをご紹介します。 東京ドーム8個分もの広大な工場内を走る蒸気配管には、実に大きなロスがひそんでいたのです。 *日立グループにおけるエコファクトリー&オフィスセレクトとは、 地球温暖化防止や資源の有効利用など環境への取り組みを評価し、高いレベルで環境に配慮し、成果をあげていると認定した事業所のことです。 07 VoltAge21 36万 ㎡の広い敷 地 内を巡る蒸 気 配 管 が 生む 、見えないエネルギーロス 蒸気は、多くの工場で使われている有 当事業所で使う蒸気の60%を使って よう各炉に個別バルブを設置。また操業 用な熱エネルギーです。習志野事業所 いる、中形モータ工場のワニス乾燥炉 に影響を与えることなく炉のウォーム でも、各種産業用モータの生産現場は の蒸気系統におけるエネルギーロスの アップ時間を4時間短縮しました。また、 もちろんのこと、従業員食堂をはじめ 実測に取り組みました。ワニス乾燥炉 2基あるボイラのうち1基が常に待機 各所で利用されています。しかし操業 とは、モータの固定子のコイルをワニス か低燃焼状態だったため、1台運転に 開始から45年を経た2007年頃には、 と呼 ば れる絶 縁 樹 脂に 浸し、それを 切り替えました。さらに一部残っていた 配管を包む保温材の劣化や蒸気利用 蒸気による間接加熱で乾燥・硬化させる 蒸気暖房や蒸気給湯の廃止、不要配 設備の稼働率の低さが目につくように 炉のことです。中形モータ工場のワニス 管を撤去するなどの取り組みで、総計 なり、エネルギーロスの実態把握が求め 乾燥炉10台がボイラと長さ約500m で年間約96,000㎥もの都市ガス使用 られるようになりました。 の 配 管 で つながれ て います 。ここに 量を削減することができました。 そもそも習志野事業所は過去に蒸気 送られてくる蒸気の流量を実測するた 設備の経年劣化が目立つ工場では蒸気 による暖房を行っていたことから配管 め配管を切断して蒸気流量計を設置し、 系統の劣化も当然進み、気づかない所 が太く、また敷地面積は東京ドームの エネルギーロスを計測したところ、夏期 でエネルギーロスが存在しているもの 建築面積8個分と広いため、長い配管 は4 3%、冬 期には半 分 以 上の5 8% です。まずはその実態を把握するため からの放熱がかなりあると見込まれて にまで達していることが判明しました。 に、正確な流路やロスの発生箇所、その いました。そこで電力会社との省エネ そこでエネルギーロスの削 減 計 画を 大きさを実測することが必要なのです。 に関する共同プロジェクトの一環とし 策定し、改善策に取り組みました。 て蒸気エネルギーの見える化に着手。 まず必要な炉だけに蒸気を供給できる 従来の蒸気配管 ワニス硬化後のモータの固定子 ワニス乾燥炉に取り付けられた個別バルブ 習 志 野 事 業 所( 千 葉 県 習 志 野 市 ) ○従業員数:850名 ○敷地面積:36万m ○建設面積:11.6万m ○緑地率:21.7% ○主な製品:産業用モータ、PMモータ、インバータ、風水力機械 (ポンプ、ファン他) 、 上下水道システム、位置情報システム 2 2 VoltAge21 08 蒸気エネルギーの見える化 3E 各系統蒸気量記録 蒸気圧力、各温度測定 蒸 気ヘッダ ワニス乾 燥 炉 集中ボイラ室 蒸気 ボイラ 3B(ポンプ工場) 3C(小形モータ工場) ワニス乾 燥 炉 ポット炉 蒸気 ボイラ ワニス乾燥炉 蒸気量測定 集中ボイラ室∼ワニス乾燥炉蒸気配管(約500m) 2C 給湯・調理 2B(中形モータ工場) 化成処理 ワニス乾 燥 炉 食堂 取り組み概要 事業所で使う蒸気の60%を占める中形モータ工場のワニス乾燥炉 を対象に蒸気エネルギー実測を実施。ワニス乾燥炉手前の蒸気 配管を切断し蒸気流量計を設置しました。また乾燥炉から排出される ドレンをドラム缶に溜め水量を測定しました。 ワニス乾燥炉 ドレン量測定 蒸気の 実 測 結 果 [夏期データ] 100% 100% 80% 92% 73% [冬期データ] 有効投入 エネルギー (57%) 64% 60% 夏期計測 夏期理論値 0% ボイラ ヘッダ ドレン 0% 有効投入 エネルギー (42 %) 49% 冬期計測 冬期理論値 20% 7% 炉手前 69% ボイラ ヘッダ 7% 炉手前 ドレン 都市ガス燃焼によりワニス乾燥炉へ供給されていた熱エネルギーの有効利用率は夏期57%、冬期42%であること が判明。特に冬期の配管ロスは理論値より20%も悪化していました。 蒸気監視モニタ 蒸 気の省エネ事 例 120 92% 40% 20% 140 100% 80% 60% 40% (℃) 160 100% 蒸気の 省 エネまとめ 始業 ↓ [ウォームアップ時間短縮] [主な問題点] ボイラ 設定温度 100 80 配管 4時間短縮 2台のうち1台は 常に待機状態 熱ロス 30%∼40% [対策] 蒸気エネルギー ロス対策の実施 ボイラ 常時1台運転 配管 ボイラ分散・ 配管短縮 60 40 20 0 20時 日曜日 22時 従 来 短縮後 月曜日 0時 2時 4時 6時 8時(時刻) 休日明けの、ウォームアップ開始時刻を遅らせること により、蒸気供給を約4時間短縮しました。 09 VoltAge21 乾燥炉 未使用の炉 乾燥炉 ウォームアップ時間 都市ガス 約206,000m3 削減 乾燥炉 炉に個別バルブ 乾燥炉 ウォームアップ時間 4時間短縮 日立産機システム 習志野事業所 シリー ズ エコファクトリー・レポ ート 5 ワ ニ ス 乾 燥 炉 の さらな る 省 エ ネ で 、生 産 ライン の 作 業 環 境 も 改 善 ワニス乾 燥 炉での省エネの取り組み 開 発に取り組み 、2 0 1 2 年には 生 産 は75%削減、 ランニングコストも72% は 、流 量 管 理 だ け で は ありませ ん 。 ラインに導 入 。この装 置により、従 来 削 減 することができました 。さらに、 2008年からは、IH(誘導加熱)により 一連の工程で3日かかっていたリード 工 程 の自動化による作業者の負担軽 固 定 子の鉄 心自体を発 熱させること タイムが3時間に短縮できたうえ、一次 減や作業環境の改善にも貢献すること でワニスを乾 燥 ・ 硬 化 できる装 置 の エネルギーは73%削減、CO 2 排出量 ができました。 蒸 気 エ ネ ル ギ ー の 見 える 化とともに 推 進 す る 、工 場 全 体 の 省 エ ネ 習志野事業所では、蒸気エネルギーの 配管から細く短い配管としロスを削減 により、 都市ガス年間約110,000㎥、 実測をした結果、 とくに工場間をつなぐ しました。従来、集中ボイラ室から遠い 水 道 年 間 2 , 4 0 0㎥の 使 用 量を削 減 蒸 気 配 管は 太く長 いうえ、保 温 材 の 工場のワニス乾燥などに使った蒸気は することができました。 劣化が進んでいることからロスが大き エネルギーを失って高温のお湯(ドレン) 習志野事業所の蒸気エネルギーの見 く、根本的な対策が必要であることが になりそのまま捨てられていました。 える化からスタートした省エネの成果 判明しました。 それを、ボイラの分散配置によりドレン は、想像以上でした。今後は、さらなる まず集中ボイラ室からもっとも離れて を回収、ふたたびボイラに給水し、再 蒸気エネルギーの効率化を追求して いる中形モータ工場については、 ワニス 利用するようにしました。 この取り組み いきたいと考えています。 乾 燥 炉 で の 取り 組 み に 加 え て 、約 500mに及ぶ蒸気供給を止めるため、 ワニス乾燥炉の近くに新たなボイラを 設 置しました 。また 、ボイラとワニス 乾燥炉をつなぐ蒸気配管は、太く長い 蒸気エネルギ ー の 見える化 の 取り組みと省エネ効果( 年 間 ) 蒸気エネルギーの 見える化 蒸気配管を細く短い配管に交換し、ロスを削減(上から2番目の配管) 次回は、シリーズ 6 2,100 万円 削減 分散ボイラの軟水装置、 ドレンタンク CO2削減量 462トン 集中ボイラ室 インバータ化と高効率モータの取り組みを特集します VoltAge21 10
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