優秀な人材の確保・定着やモチベーションの向上を図るため、バート・契約

正社員登用 正
(正社員へ) (
職
限
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多
社
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登
用 処 遇 改 善 人 材 育 成 キャリアア
様 な 正 社 員 )
ップ助成金
務 勤 務 地 勤務時間
定 限
定 限
定
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吉野家グループ
事例 02
明確なランクアップ・システムと正社員への積極的な転換により、非
正社員のキャリアアップ意欲が向上。
業種
本社所在地
正社員数
(平成 27 年 5 月 1 日現
在)
非正規雇用労働者数
(平成 27 年 5 月 1 日現
在)
非正規雇用労働者の主
な仕事内容
取組のポイント
宿泊業、飲食サービス業
東京都
グローバル社員:約 890 名(男性約 840 名、女性約 50 名)
エリア社員:約 470 名(男性約 370 名、女性約 100 名)
キャスト社員:約 17,800 名(男性約 8,600 名、女性約 9,200 名)
店舗での調理・盛付・接客業務
▪ 転換試験と見習い期間を設定し、エリア社員(正社員)への転換
を積極的に実施
▪ 各ランクに求められるスキルを明確化し、個別の教育計画を策定
⇒優秀なキャスト社員を正社員として安定的に確保が可能に
▪ ランクに連動して時給も昇給
⇒キャスト社員が主体的に仕事に取り組むように
同社は、創業 100 年以上の歴史を有する牛丼事業を中核としたナショナルチェ
ーンであり、全国約 1,1801か所の店舗の運営を行っている。グループ経営理念で
ある「For the People」に基づき、店舗活動において「For the Customer」を重
視している。とりわけスピードを最も大事な価値観の 1 つとし、キャスト社員を
中心とした全従業員に、
「早く、先に、直ぐに、お待たせしない」を意識して行動
することを求めている。
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平成 27 年 4 月現在。
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様 な 正 社 員 )
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務 勤 務 地 勤務時間
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定 限
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1.取組の内容
◆毎月の転換試験と見習い期間としての副店長研修によりエリア社員への転換を
積極的に推進
【優秀な人材の確保と同一労働・同一賃金の実現のためにエリア社員への正社員
転換制度を導入】
外食産業一般の傾向として正社員を確保することが難しく、同社では以前より
キャスト社員2からグローバル社員への正社員転換を実施していた。また、当時は
キャスト社員のままで店長業務の 8 割程度を担うキャスト店長がおり、キャスト
店長には特に優秀な人材が多かったため、そのような人材をいかにして長期的に
確保していくかが課題となっていた。
そうした背景の下で、平成 19 年には勤務地を自宅からの通勤時間が 1.5 時間
程度のエリアに限定する正社員であるエリア社員を導入し、当該社員への転換制
度を開始した。同制度は、優秀なキャスト店長の正社員への転換の機会を広げる
ことに加え、店長業務を担うキャスト社員がエリア社員に転換することで正社員
との同一労働・同一賃金の実現を図ることを狙いとしたものである。エリア社員
には、グローバル社員と共通の職務等級制度を適用し、同じ職務である場合には
同額の基本給を設定している。
各雇用区分の関係
転換
転換
キャスト社員
 有期雇用
エリア社員
 無期雇用
 勤務地限定正社員
グローバル社員
 無期雇用
 無限定正社員
共通の職務等級制度
2
契約期間は 1 年(ただし最初の雇用期間は 2 か月)
。1 週間の労働時間に応じて A(週実働 30 時
間以上)、B(同 20 時間以上 30 時間未満)、C(同 20 時間未満)の 3 区分に分類。
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務 勤 務 地 勤務時間
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【副店長研修、筆記試験及び面接を経てエリア社員に】
エリア社員の転換候補者になるためには、副店長までランクアップしているこ
とが求められる。副店長のキャスト社員は、希望すれば、エリア社員である店長
への見習い期間として最大 3 か月間の副店長研修に参加することができる。この
研修は、地域ごとに副店長を集め、企業理念や企業文化、加えてスケジュール調
整を行うに当たってのスキルを教える内容となっている。また、1 か月に 1 度店
長と面談を実施し、スキル計画表を作成して自己評価・店長評価の下でスキルア
ップの状況を確認する。
この研修の期間中に、店長とエリアマネージャーからの推薦を得ることで、エ
リア社員への転換試験を受験することができる。転換試験に関する情報は、各店
舗に書面や社内メール等で通知しており、各店長が該当する従業員に連絡してい
る。店長がキャスト社員の適性を判断し、転換を薦めるケースも多い。転換試験
は、筆記試験(適性検査)と営業部長及びエリア管轄執行役員との面接であり、
これを経てエリア社員への転換可否が判断される。
【毎月転換試験を実施、年間約 40 名がエリア社員へと転換】
同社では毎月、キャスト社員からエリア社員への転換試験を行っており、年間
40 名前後がエリア社員へと転換している。転換する従業員は 20~50 代と幅広い
年齢層にわたり、女性が 3 割程度である。
なお、エリア社員制度導入後は、キャスト社員からグローバル社員への転換は
認めていない。グローバル社員になるためには、エリア社員に転換し、所定の研
修や社内資格試験に合格し、監督職へ配転される必要がある。キャスト社員から
エリア社員を経てグローバル社員になった例もある。
◆段階的にスキルを身につけるための
「CRS(キャスト・ランクアップ・システム)
」
を導入し、個別に教育計画を策定
【キャスト社員のランクごとに必要とされるスキルを明文化した CRS(キャス
ト・ランクアップ・システム)を導入】
同社では、主にキャスト社員が店舗でのオペレーションを担っているため、キ
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定 限
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ャスト社員への教育を重視している。キャスト社員が入社時から段階的にスキル
を身につけられるよう、ランクごとに求められるスキルを明文化した CRS(キャ
スト・ランクアップ・システム)を導入している。同システムでは、キャスト社
員のランクを技能及び職能に応じて 9 つに分類しており、それぞれに求められる
スキルを設定したランク表を作成している。
【ランク表を参考に店長がキャスト社員個別の教育計画を策定】
店長は、キャスト社員の店舗配属時に、上述のランク表を参考にし、キャスト
社員個別の教育計画を策定する。策定に当たっては、店長とキャスト社員本人と
の話し合いを通じ、本人の希望や勤務時間の特性(例えば、昼食時間帯であれば
接客中心、深夜時間帯であれば調理中心等)を考慮している。また、教育計画策
定後は、店長とエリアマネージャーが毎月の面談時に教育計画の進捗状況を確認
し、必要に応じて修正を行っていく。
【自己評価と店長からの評価によってランクの昇格が決定】
キャスト社員には、個別の目標を記載したシートを配布している。CRS によっ
て明確な評価基準があるため、キャスト社員は「次のランクに進むには何が足り
ないか」を把握し、スキルアップに向けて取り組むことができる。キャスト社員
は、配布されたシートに沿って毎月自己評価を行い、店長との面談に臨む。面談
後、店長は目標の達成状況を判断し、達成度に応じてランクの昇格を決定すると
ともに、その後の教育指導の方針を決定する。
キャスト社員のランクと求められるスキルの関係
フロア TR
求
め
ら
れ
る
ス
キ
ル
シフト
リーダー
サポーター
パートナー
S パートナー
アテンド
S アテンド
ランク
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S サポーター
リーダー
ストア
リーダー
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◆ランクと連動した時給の設定
同社では、ランクと時給額が連動している。ランクが上がると、数十円程度時
給が上がる仕組みとなっている。また、
「アテンド」以上のランクのキャスト社員
で、フロアトレーナー(以下フロア TR)に認定されると時給が 20 円上がる。CRS
の全ての単位を取得すると時給額が最大 150 円プラスされる。
時給が上がるということはスキルが上がることの対価であり、ひいては店の生
産性が高まるものと判断されるため、同社では積極的に時給を上げていきたいと
考えている。店舗ごとに年間並びに月間でランクアップを目標とするキャスト社
員を個別に取り上げ、上述の教育計画に盛り込んで、キャスト社員の能力開発に
取り組んでいる。
ランク別にみたパートナー時と比較した時給の変化
フロア TR +20 円
時
給
の
変
化
130 円
90 円
70 円
50 円
S パートナー
パートナー
10 円
20 円
アテンド
30 円
S アテンド
30 円
シフト
リーダー
ストア
リーダー
リーダー
S サポーター
サポーター
ランク
2.効果と課題、今後の運用方針
◆積極的な正社員転換により、優秀なキャスト社員を店長として安定確保するこ
とが可能に
「労働力を確保するためには、労働者のニーズに合った制度を導入することが
必要である」という考えからエリア社員制度を導入したことで、優秀なキャスト
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社員の多くを安定的に確保できるようになった。また、エリア社員は勤務してい
る店舗の地域特性等を熟知していることが多いため、
「地域のための店舗づくりを
しよう」との意識が強い。そのような従
業員を安定的に確保した結果として、QCS
(質、サービス、清潔さ)が向上し、売
上げにも好影響を与えている。更に、昇
進して活躍したいというキャスト社員の
思いを実現することができるため、キャ
スト社員が仕事に積極的に取り組むよう
になっている。
同社は店舗運営の大部分をキャスト戦力に頼っていることもあり、キャスト社
員を大切にすることに重きを置いている。3 年以上のキャスト社員であれば社員
旅行にも参加することができる。本部社員の多くがキャスト社員からキャリアア
ップした者であることもあり、キャスト社員からエリア社員への転換が当たり前
に、非常にスムーズに行われている。
◆女性活用を目指して職場環境の改善や短時間正社員制度の導入を検討
同社では、女性のキャスト社員が増加していることを受けて(以前は男性:女
性が 9:1 であったが、現在は 5:5)
、女性が働きやすい職場環境づくりを目指して
いる。具体的には、
「吉野家女子会」という名称の下で女性店長が集まって改善点
を話し合ったり、各店舗のキャスト社員を対象にアンケートを実施している。ま
た、時間制約のある女性の正社員に対する教育を効率的に行うために、e ラーニ
ングの導入も検討している。
更に、同社では、子育て中の女性を主な対象とした短時間正社員制度の導入も
検討している。現在も運用上では短時間勤務を認めているが、運用のみの場合、
周囲の従業員が不公平感を抱く可能性もある。短時間勤務制度を制度として導入
することで、周囲の従業員の理解が得られるのではないかと期待している。
上記の取組を含め、平成 27 年度中を目途に女性が働きやすい職場づくりに向
けたプロジェクトの方針概要をとりまとめ、取組を進めていく予定である。
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3.活躍する従業員の声
年代
勤続年数
キャリアアップの過
程
30 代
性別
男性
13 年
キャスト社員として 7 年間勤務後、グローバル社
員に転換、店長として勤務。キャスト社員とのコ
ミュニケーションを活発化させ、キャスト社員の
仕事に対する意欲を維持。
吉野家営業部
店長 高橋講平氏
◆人材育成に携わりたいとの思いから入社 7 年目にグローバル社員へと転換
接客業に興味があり、大学 1 年生の夏に自宅近くの店舗でアルバイトをはじめ
たことが入社のきっかけである。アルバイト開始後 7 年目には、現在のストアリ
ーダーと同等のランクまで昇格しており、店長から正社員への転換を薦められた。
お客様との接客のみならず、後輩の指導にも興味があり、店長として人材育成に
携わりたいと考え、正社員転換を決意した。当時はエリア社員制度がなかったた
め、全国転勤の可能性のあるグローバル社員に転換したが、転勤に対する不安よ
りも、自身のキャリアアップに対する期待の方が大きかった。
◆密なコミュニケーションを通して、キャスト社員が積極的に仕事に取り組める
環境を整備
グローバル社員に転換後は、2 か月間の研修を行い、現在まで東京都内や神奈
川県内の 12 店舗で店長として勤務している。店長になったことで「自分の店の
従業員は自分が守らなくてはならない」という新たな責任感が生まれたという。
店長業務を行う中で、自身の勤務時間外に勤務しているキャスト社員に店長と
しての思いを伝えることに苦労した
こともあった。このような問題は、店
長自ら「引継ノート」に積極的に記入
を行ったり、SNS のグループを作成す
るなど、キャスト社員と店長とが気軽
に意見を交換できるような環境を整
えることで解決していったという。
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現在では上記の取組に加え、同社の「With You カード」という制度を積極的に
利用するよう心がけている。このカードは、従業員同士で「がんばったね」
、
「あ
りがとう」という思いを伝えるための小さなカードで、各店舗に常備されている。
これらのカードの活用を促すことで、従業員同士のコミュニケーションが活発に
なるとともに、仕事に対しても積極的に取り組むようになっている。
◆将来はキャスト社員や正社員の教育に携わる「エリアマネージャー」への昇格
が目標
店長の 1 つ上の職位である「エリアマネージャー」になり、キャスト社員への
教育に加えて、正社員への教育にも携わることを目標としている。エリアマネー
ジャーになるためには店長として意見を積極的に発信していくことが求められ
ているため、会社の方針として決められたことを行うだけではなく、現状の改善
に向けて積極的に意見を発信するよう心がけている。
◆活発なランクアップのためには手続の簡素化、深夜勤務のキャスト社員を考慮
したシフト作りが必要
キャスト社員がランクアップするためには、店長がキャスト社員を評価し、そ
の結果を fax で営業部に送信後、電子申請が必要である。このように、ランクア
ップのために、いくつものステップを踏まなければならないことから、ランクア
ップを躊躇する店長もいるのではないかと懸念している。したがって、この手続
方法がより簡素化すれば、更に多くのキャスト社員がランクアップできるだろう
と期待する。
また、深夜勤務が多いキャスト社員は、ランクアップしたくても店長と直接コ
ミュニケーションをとる機会が少ないため、店長もランクアップの可否を判断し
づらい。そのような教育計画を考慮したシフトを組むことが店長にも求められて
いる。
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