ダイオードの動作と選択

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第 12 章
確実にそして高効率に
スイッチング動作させるために
ダイオードの動作と選択
浅井 紳哉
トランスを使う電源においては簡単に電流と電圧で選択していたダイオードも,
スイッチング電源では多くのパラメータを考慮して選ばなくては問題を引き起こ
します.ここでは特性の各要素がどのような影響を持つかを学びます.〈編集部〉
パワー・ダイオードは,小信号用ダイオードに比べ
て扱う電力が比較的大きいため,回路の動作をよく理
解し,素子を適切に使用しないと,故障しやすく信頼
性の低いシステムを作ることになります.最近は特に
スッチング電源などの高速スイッチング回路用途が多
く,サージ電圧や逆電流などによる素子破壊にも気を
付けなければなりません.そのためにも,回路やデバ
イスの特性をよく理解する必要があります.
本章では,順方向電流が数∼数十 A 以上のパワー
回路用ダイオードの使い方の基礎を,実際の応用回路
を示しながら解説します.
パワー・ダイオードとは
パワー・ダイオードは,0.5 A 程度以上の大きな電
流を整流する目的で使用する素子です.一般に RF 信
号などを整流するダイオードのことを検波ダイオード
と呼ぶので,整流用ダイオードはパワー回路用と考え
てよいと思います.
■ 3種類に分類できる
● 一般整流用ダイオード
主に商用周波数
(50/60 Hz)を整流する回路に使い
ます.比較的安価です.逆電圧は 100 ∼ 1500 V 程度で,
逆回復時間は 30 μ∼ 100 μs 程度です.逆回復時間が
遅いため,高速スイッチング回路に使用すると大きな
逆電流が流れ,発熱したり破損したりします.また,
大きな逆電流によりノイズを発生します.
● 高速整流用ダイオード
Fast
Recovery
Diode
フ ァスト・リ カバリ・ダ イオード(以下,FRD)と
も言います.主にスイッチング電源などの高速スイッ
チング回路に使います.逆電圧は 100 ∼ 1500 V 程度,
逆回復時間は 0.5 μ∼ 3 μs 程度です.さらに逆回復時
間の短い超高速整流用ダイオード
(Super Fast
Recovery Diode:SFRD)も あ り, 逆 電 圧 は 400 ∼
1000 V 程度,逆回復時間は 100 n ∼ 300 ns 程度です.
超高速整流用ダイオードをもっと高速にし,順電圧
Low
Loss
を小さくした高効率ダイオードもあり,
「ロー・ロス・
Diode
ダイオード」
(LLD)と呼ばれています.逆電圧は 200
∼ 600 V 程度,逆回復時間は 35 n ∼ 100 ns 程度です.
以下,高速整流用 / 超高速整流用 / 高効率ダイオー
ドは,すべて高速整流用ダイオードとして扱います.
Schottky Barrier
Diode ● ショットキー・バリア・ダイオード
以下,SBD と呼びます.金属と半導体の接合による
整流性を利用したダイオードで,ショットキー氏が提
唱しました.多数キャリア素子のため,原理的には逆
回復時間がなく,高速なスイッチングが得意です.主
な用途はスイッチング電源などの 2 次側整流回路です.
パワー・ダイオードの中で最も順電圧が小さく,逆回
復時間が短いため,高速スイッチング回路によく使わ
れます.ただし,逆電圧が 30 ∼ 90 V 程度とあまり高
くないため,低電圧の整流回路での使用が中心です.
■ パッケージと内部接続
写真 1 に示すように,リード・タイプ,表面実装タ
イプ,自立タイプ,モジュール・タイプがあります.
パッケージの名称は,JEDEC(米国業界団体の規格)
や EIAJ
(日本電子機械工業会規格)などのほかに,各
メーカ独自の寸法や呼び方があります.DO−× × や
TO−××が JEDEC で,SC−××が EIAJ の名称です
が,TO−3P は JEDEC には存在せず,EIAJ の SC−65
となります.また,DO−15 と SC−39 は同じものです.
ダイオードに限らず半導体のパッケージ名称は非常に
複雑です.
図 1 に示すように,内部回路は単体のもののほかに
ブリッジ接続やセンタ・タップ接続のものもあります.
必ず最大定格以下で使う
ダイオードに限らず部品を選ぶときに,データシー
必ず最大定格以下で使う
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