リスクアペタイトに沿った効果的なコンダクトリスク管理 有限責任監査法人 トーマツ リスク管理戦略センター 大山 剛 2015年6月 本資料の意見に関する部分は筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではありません。 本資料は信頼できると判断した資料・データ等により作成いたしましたが、その正確性及び完全性に ついて保証するものではありません。参考にいたしました資料やそこに記載されていた数値等につき ましては、その合理性や妥当性についてのレビューは一切行っておりません。 本資料中に記載された意見や予測は作成時点のものであり、今後新たな情報等が得られた場合には 予告なく変更される可能性があります。 コンダクトリスクとは何か コンダクトリスクの定義 コンダクトリスクに係る「明確な」定義は、当局・業界の間でもまだ確立されていないのが現状 (英国──定義を明確化しているわけではない) 企業の行動が、顧客に対し、不満足な結果(poor outcome)をもたらすリスク 出典:“Retail Conduct Risk Outlook" (FSA, 2011/2) 金融機関が公正かつ合理的であるべきとの期待を充足することは、組織運営の中心であり、「コンダクト」即ち、金融機関の顧客対応方法、企業間行動、市場における 行動を通じて表面化する。 出典:"Journey to the FCA" (FSA, 2012/10) (欧州──オペリスクのサブカテゴリーとして正式に定義) 「コンダクトリスク」とは、金融サービスの提供における不備や意図的不正行為から生じ、金融機関の利益や自己資本に影響を及ぼす現状及び将来のリスク。 出典:"Consultation Paper-Draft Guidelines for common procedures and methodologies for the supervisory review and evaluation process under Article 107 (3) of Directive 2013/36/EU" (EBA, 2014/7) (グローバル──正式な定義は示されてない) 2008年金融危機の重要な教訓として、風評リスクが大幅に過小評価されていた。この点を踏まえ、業務上の行動や金融商品の顧客適合性(いかなるタイプの金融商品 をいかなる顧客に提供するか)をより重視。 出典:"Thematic Review on Risk Governance" (FSB, 2013/2) (米国/日本──正式な定義は示されてない) 2 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. コンダクトリスクはなぜ注目されるようになったのか コンダクトリスクがクローズアップされてきた背景 金融機関の不適切な行動に伴う損失事故が急増 • 住宅ローンの差し押さえやMBSの誤販売(米国) • 返済補償保険の誤販売(英国) • AML(米国) • Libor操作(欧米) • 為替レート操作(欧米) 監督当局や社会一般の金融機関行動を見る目が厳しくなるに従い、同行動の「不適切さ」に係る目線も大きく変化している(単 に既存のルールを守るという「狭義のコンプライアンス」では十分ではなくなってきた) 従来型のリスク管理による対応が困難 3 • リスクの定義が曖昧(結果としての事象よりは、事故が生じた要因や過程を重視) • オペリスク、コンプラリスク、レピュテーショナルリスク等、様々な顔を持つ © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 当局の関心は次第にリテールからホールセール市場にシフトする傾向 当局が注目するコンダクトリスクの最近の傾向 当初はリテール市場における、顧客に対する公正でない商行為に注目 • 主なドライバーは、顧客と金融機関間の情報の非対称性 • 販売顧客に対する不適切な商品の販売や不適切な販売方法が問われるケースが多かった • 問題の背景には、収益改善圧力を背景としたアグレッシブなインセンティブ体系やリスク文化が存在 最近では、リテール市場から、ホールセール市場における、顧客やカウンターパーティに対する公正でない商行為までスコープ が拡大 4 • 主なドライバーは、顧客と金融機関間の情報の非対称性に加え、市場の構造(寡占構造)や技術革新等にも及ぶ傾向 • 顧客には、機関投資家や中小金融機関も含まれる • 市場における「公正な競争」を阻害する行為が大きな問題となりつつある © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 欧州当局(EBA)は注目するコンダクトリスクを網羅的に提示している EBAが注目するコンダクトリスクのタイプ a. リテール及びホールセール市場における金融商品の不適切販売 b. リテール顧客向け抱き合わせ販売(顧客にとって不要である、銀行のパッケージ口座やアドオン商品等の販売)の推進 c. 業務遂行上の利益相反 d. 金融機関による利益拡大目的の金利指標、FXレート等の金融商品・指標の不正操作 e. 契約中の金融商品の変更や金融サービス提供業者の乗り換えを妨げるような行為・ルール等 f. 販売チャネル設計の不備(報酬体系が不適切である場合に利益相反が生じる可能性) g. 金融商品に係る契約の自動更新や解約に伴う不利益 h. 顧客からの苦情に係る不公正な処理 出典:"Consultation Paper-Draft Guidelines for common procedures and methodologies for the supervisory review and evaluation process under Article 107 (3) of Directive 2013/36/EU" (EBA, 2014/7) 5 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 英国当局(FCA)の関心は市場競争や技術格差にまで及ぶ FCAが注目するコンダクトリスクのタイプ(デロイトの見方) 商品のガバナンス • FCAは、リテール事業の取扱いに依拠したアプローチを備え、商品のライフサイクルの各段階で良好な顧客成果(customer outcome)および市場の一体性を推進する金融機関に引き続き注目 透明性および競争 • FCAによるホールセール市場に関する戦略的レビュー • 特に資産運用セクターなどにおける課金構造への注視の強化 情報の非対称性 • 例えば、専門知識の格差や複雑性、不十分な開示が原因で、取引において一方の当事者が相手方よりも著しく豊富な知識を持つ場 合をFCAは懸念 利益相反および インセンティブ • • • • 行動バイアス • FCAの戦略の中心部分。FCAは行動バイアスへの傾斜に対する警戒を怠らないようにするとみられる • これまでの作業はリテール市場が中心だったが、幾つかの要素はホールセール市場にも当てはまるものである ベンチマークの操作 • LIBOR不正操作事件に関連する訴訟と法執行が継続することになっており、世界の規制当局は、外国為替市場の不正疑惑に関する 調査の最終段階にあると思われる • トレーダーによるベンチマークのコントロール 顧客資産 • FCAは顧客資産の運用やカストディ業務に係る制度の抜本的変更を検討中 技術 • アルゴリズム取引や高頻度取引など、技術の発展に伴うリスクへの注視 • 非効率的なシステムや統制につながる旧式のITインフラ 6 FCAは、インセンティブが良好な顧客成果と整合していることの確保に注力 投資銀行業務における利益相反や情報の流れに対する統制をレビュー中 金融機関の仲介的役割(agency role)に対する注視の強化 取引手数料の用途および最良執行のレビュー © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 金融庁もコンダクトリスクへの関心を強めている(1/2) 金融庁が注目するコンダクトリスクのタイプ 「顧客ニーズに応える経営:一般に金融商品・サービスの提供に当たっては、供給者(金融機関)と需要者(顧客)との間に情報 量の格差があること等から、短期的な収益の確保・拡大のため、顧客の利益にそぐわない営業が行われうる。優越的地位の 濫用防止・利益相反管理等の経営管理態勢が機能しているか、手数料や系列関係にとらわれることなく顧客のニーズや利益 に真に適う金融商品・サービスが提供されているか、等について、検証を行っていく。」 顧客ニーズ等を踏まえた適切な商品・サービスの提供 • 顧客の知識・経験・財産の状況等に応じて、適切な商品説明や販売後のフォローアップを行っているか。 • 販売商品の選定に当たり、販売手数料や系列関係等にとらわれることなく、顧客のニーズや利益に真に適う商品が提供される 態勢を構築しているか。 • 顧客の利益を重視した営業の推進に向けた経営目標の設定や業績評価の手法について検討・実施しているか。 銀信証の連携状況等に見合った利益相反管理、優越的地位の濫用の防止、顧客情報管理態勢等が構築されているか 住宅ローン、消費者ローン、その他の融資サービス等について、顧客のニーズや経済状況等の実態に応じた提供が行われる よう、適切な顧客説明や審査等を行う態勢が整備されているか 出典:「平成26事務年度金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」(金融庁、2014/9) 7 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 金融庁もコンダクトリスクへの関心を強めている(2/2) 金融庁が注目するコンダクトリスクのタイプ 顧客からの相談・苦情等について、原因分析、社内における情報共有、再発防止策の策定・周知、その実施状況のフォロー アップ等が、経営陣も関与する形で行われ、その後の商品・サービスの開発やリスク管理態勢の向上につなげられる態勢が整 備されているか 金融ADR 制度について、迅速な紛争解決のために必要な情報開示や、ADRに係る説明・紹介が適切に行われているか グループで提供しているカストディー業務については、資産運用業務を支える重要な業務であることを踏まえ、適切なサービス 提供のための態勢整備が行われているか 業務の継続性の確保(システムの安定稼働、業務継続体制の整備等) 情報セキュリティ管理の徹底 サービスの不正利用の防止(インターネットバンキング不正送金への対応、サイバー攻撃への対応、AML、反社対応等) 出典:「平成26事務年度金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」(金融庁、2014/9) 8 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 新しいリスク管理概念の中心には、常にコンダクトリスクがある(1/2) コンダクトリスクの位置付け リスク文化との関係 • 不公正な行為の背景には、不適切なリスク文化があるとの考え方 • 健全なリスク文化の醸成こそが、コンダクトリスクを抑制する上で有効 〔参考〕問題は金融機関の文化に起因し、その文化は主に当該金融機関のリーダーシップにより形成される。 出典:"Enhancing Financial Stability by Improving Culture in the Financial Services Industry " (William C. Dudley, President and Chief Executive Officer, Federal Reserve Bank of New York, 2014/10) ビジネスモデルとの関係 • 不適切なビジネスモデルが、結果として不公正な取引をもたらしているとの考え方 〔参考〕当局として、特定の類型のコンダクトではなく、戦略、ビジネスモデルやプラクティスの変化に着目する方向 出典:”Conduct risk definition a challenge, says OCC” (Risk.net, 2014/6) • 9 ビジネスモデルを見直すことが、コンダクトリスクを抑制する上で有効 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 新しいリスク管理概念の中心には、常にコンダクトリスクがある(2/2) コンダクトリスクの位置付け リスク・アペタイトとの関係 • リスクアペタイト・ステートメントにおいては、定量化の比較的困難な風評リスクやコンダクトリスクも取り扱われるべき。 • 実効的なリスクアペタイト・ステートメントにおいては、リテール及びホールセール市場における風評リスク等のコンダクトリス クを含め、一定のタイプのリスクをとる又は回避する動機が定性的表現により明示され、当該リスクに係る何らかの限度や 指標(例.非定量的手法)が設定されるべき。 • 取締役会は、実際のリスク・プロファイルやリスクリミット(コンダクトリスクの定性的測定を含む)につき、定期的にレビューや モニタリングを実施すべき。 出典:"Principles for An Effective Risk Appetite Framework" (FSB, 2013/11) オペレーショナル・リスクとの関係 • 当局が金融機関の評価を行う際、オペレーショナル・リスクの一区分であるコンダクトリスク等については、殆どの金融機関 に関連する一般的性質があり、金融機関の健全性に影響を及ぼす可能性があるため、特に留意すべき。 出典:"Consultation Paper-Draft Guidelines for common procedures and methodologies for the supervisory review and evaluation process under Article 107 (3) of Directive 2013/36/EU" (EBA, 2014/7) 10 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. コンダクトリスクを捉える手法には様々なものがある(1/2) コンダクトリスクの捕捉方法 コンダクトリスクのスコアリング手法 • コンダクト関連事象を頻繁に発生させる要素(顧客の知識や理解度、金融商品の複雑性、金融機関職員の研修レベル等)に 基づき、業務や金融商品を順位付け。 原則となる金融商品提供の承認基準に基づくモニタリング体制(上記I.の補完的位置付け) • 特に、金融商品の提供が急速に拡大している場合や、通常より大きな利益が生じている場合に当該モニタリングが重要。 出典:"Good compliance, not mere compliance" (Daniel K Tarullo, Member of the Board of Governors of the Federal Reserve System, 2014/10), "Thomas Huertas (2014), Safe to Fail (London: Palgrave Macmillan), pp. 158–59" コンダクトリスクの存在を検出するための指標例: a. 金融機関(自社)が不正行為に起因して関連当局から受けた過去の制裁処分(実績) b. 同業他社が不正行為に起因して受けた最近の制裁処分 c. 関連する苦情の件数や金額 出典:"Consultation Paper-Draft Guidelines for common procedures and methodologies for the supervisory review and evaluation process under Article 107 (3) of Directive 2013/36/EU" (EBA, 2014/7) 11 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. コンダクトリスクを捉える手法には様々なものがある(2/2) コンダクトリスクの捕捉方法 FCAは、金融商品に係るライフサイクルの各段階(以下)に着目。 • 商品設計方法 • 販売方法(利益相反の管理方法を含む) • 顧客対応方法 • 不祥事の際の苦情処理方法 出典:"Our supervision overview" (Clive Adamson, Director of Supervision, the FCA, 2014/6) 12 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 隠れたリスク(コンダクト・リスク等)を包括的に捕捉・管理する体制を構築する 組織内での役割分担の 明確化 隠れたリスクの体系化と リスク顕現化事象の定義 リスクを様々な視点から分類する 隠れたリスクを包括的に取り込む 枠組みを構築し、その内容や深刻 度を定義する 現行のリスク管理体系で、カバーさ れているリスクと十分カバーされて いないリスク(隠れたリスク)を明確 化する 十分カバーされていないリスクは、 一般に、定量化が困難、定義が曖 昧、外部環境の変化に依存する (フォワード・ルッキングな視点が求 められる)タイプが多い 十分カバーされていないリスクを管 理する部署を特定化する 13 隠れたリスクの定義は一般に難し い(リスク顕現化事象は様々) リスクを「ステークホルダーの期待 からの著しい乖離」と捉え、そのタ イプ別に分類する 隠れたリスクの蓋然性評価 各リスクへの対応の決定 外部環境やビジネスモデルの変化、 事前に対応を検討すべき事象を、 内在的要因等を踏まえながら、各 深刻度×蓋然性の組み合わせマト リスクが顕現化する蓋然性を評価 リックス表に基づき決定する(一定 する 以上の深刻度、蓋然性のものを抽 出する)。 外部環境の変化に伴うリスクを把 握するため、例えば、コンダクトリ その上で、抽出されたリスクタイプ スクや規制リスクに関しては、各国 に関しては、事前にリスク顕現化 当局の関心の時系列変化を捕捉し、 の際の対応(インパクト軽減対策 これに基づき、足許や今後のリス 等)や、予防策の強化方法を決定 ク顕現化の蓋然性を評価する する 各社のリスクアペタイトに応じて、リ スク一般に係る複数の「深刻度」を 定義する 同時に、内在的な要因や経営戦 略・ビジネスモデルの影響を把握 するため、経営戦略リスク分析や 商品毎のライフサイクル・リスク分 外部環境やビジネスモデルの変化、 析等を行う 内在的要因等を踏まえながら、国 別、エンティティ別、ビジネスライン 上記情報に基づき、リスクタイプ× 別に、異なる深刻度に応じた、リス 国×エンティティ/ビジネスライン毎 ク顕現化事象を定義する に、(特定深刻度の)有事が発生す る蓋然性を決定する © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 金融機関を取り巻くリスクを改めて整理する 「ステークホルダーの期待からの著しい乖離」という視点から見た場合のリスク 経営レベルのリスクアペタイトが注目する分野は、主に「資本」、「流動性」、「収益」、「レピュテーション」の4分野 「隠れたリスク」の把握に際しては、従来十分な関心が向けられていなかった「レピュテーション」の分野(コンダクトリスク等)に焦 点を当てる 金融機関のパフォーマンスに関し、ステークホルダーの期待から著しく乖離した結果、レピュテーションが大きく傷つく要因とは何 か 14 • 多大な損失の発生 • 犯罪行為 • ルール違反 • 顧客への間接的な被害 • 社会的公正概念からの乖離 従来のリスク管理体制下でも相応に管理されてきたリ スク要因 従来のリスク管理体制下で十分管理されてこなかっ たリスク要因 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 社会的公正概念からの乖離が生じるケースとは 社会的公正概念からの乖離が生じる要因の分類(例) 組織に対する一般的な信頼の失墜 ガバナンスや(プロダクト・サイクル、顧客情報等に関する)管理体制の問題 雇用に係る問題 役職員の行動に係る問題 ベンダーや関連会社に係る問題 情報の非対称性や寡占といった市場の歪みの悪用 顧客適合性の問題 市場寡占による影響力の行使 利益相反 社会的公器としての機能に係る信頼の失墜 業務継続性の問題 会計上の問題 不公正ビジネス、外部不経済への直接的・間接的な支援 金融業界全体や日本への信頼の失墜 15 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 「隠れたリスク」の殆どのタイプは「ステークホルダーの期待からの乖離」に基づく枠組みでカ バーされる 国 エンティティ ビジネスライン 中国 米国 日本 商業銀行 商業銀行 商業銀行 ホールセール ホールセール ホールセール/リテール 多大な損失の発生 犯罪行為 ルール違反 顧客への間接的な被害 組織に対する一般的な信頼の 失墜 高級官吏子弟 の採用 外国人行員に よる情報漏洩 役員のセ クハラ 情報の非対称性や寡占といっ た市場の歪みの悪用 社会的公正概念 からの乖離 金融指標の悪 用 社会的インフラとしての機能に 係る信頼の失墜 サイバー テロ 高報酬 業界への信頼の失墜 日本への信頼の失墜 16 テロリスト関連 企業への融資 歴史問題の再 燃 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 社会的公正概念からの乖離の「深刻度」⇒リスクアペタイトに従った「リスクの大きさ」を定義 する コンダクトリスク事象の「深刻度」の定義は、各金融機関のコンダクトリスクに対する「リスクアペタイト」に依存する 「深刻度」の一般的な定義(例) ランク1 :深刻度はさほど高くない ランク2 :公式謝罪等ブランド・イメージが傷つく ランク3 :一部役員の辞任等ブランド・イメージが大きく傷つく、関連事業からの撤退に迫られる ランク4 :経営の継続自体が危ぶまれる 「深刻度」決定に際し考慮する要因(例)━━基本的には、経営のリスクアペタイトをベースに決定 損失額 :間接被害額や外部不経済も含む 意図性 :過失、重過失、故意の区別(十分な防止策が取られていたか否かもここに含まれる) 組織的行動の要素 :単に組織的な行動の結果なのか否かのみではなく、そのような行動を許す組織的な体質・リスク 文化の有無もここに含まれる 社会的関心の強さ・メディアの取り扱い :近年の社会的状況を背景に、社会の反感を招きやすいか否か、或いはメ ディアの取り扱いが大きくなる傾向があるか否かを考慮 17 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 外部環境やビジネスモデルの変化、内在的要因等を踏まえながら、リスク事象の概要を、深 刻度別に具体的に定義する (例1)特定ケースにおける「深刻度」の定義(日本/商業銀行リテール業務における顧客適合性のケース) ランク1 :高齢者に対し、不適合な金融商品を販売するケースが稀にみられる ランク2 :高齢者に対し、不適合な金融商品を販売するケースが頻発 ランク3 :高齢者に対し、不適合な金融商品を、組織ぐるみで販売 ランク4 :高齢者に対し、不適合な金融商品を、大々的に、経営の暗黙の了解の下、組織ぐるみで販売 (例2)特定ケースにおける「深刻度」の定義(米国/商業銀行ホールセール業務における不公正ビジネスへの直接・間接的支援) ランク1 :ロシアの制裁対象企業との深い関係が確認できないロシア企業や個人に対し、金融サービスを提供 ランク2 :ロシアの制裁対象企業と深い関係がありそうなロシア企業や個人に対し、金融サービスを提供 ランク3 :ロシアの制裁対象企業に対し、金融サービスを提供 ランク4 :ロシアの制裁対象企業に対し、経営の暗黙の了解の下、金融サービスを提供 18 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 「隠れたリスク」が顕現化した際の有事を、リスクタイプ×国×エンティティ/ビジネスライン別 に一覧表形式で示す 国 日本 ・・・ エンティティ 商業銀行 証券 ビジネスライン リテール コーポレート ・・・ 投資銀行 ・・・ 多大な損失の発生 犯罪行為 顧客被害-リテール-金融商品販売の例 ルール違反 ランク 顧客への間接的な被害 組織に対する一般的な信頼の 失墜 情報の非対称性や寡占といっ た市場の歪みの悪用 社会的公正概念 からの乖離 19 1 高齢者に対し、不適合な金融商品を販 売するケースが稀にみられる 2 高齢者に対し、不適合な金融商品を販 売するケースが頻発 3 高齢者に対し、不適合な金融商品を、組 織ぐるみで販売 4 高齢者に対し、不適合な金融商品を、 大々的に、経営の暗黙の了解の下、組 織ぐるみで販売 業界への信頼(喪失) 社会的インフラとしての機能に 係る信頼の失墜 金融業界全体や日本への信 頼の失墜 定義(例) © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 「隠れたリスク」が顕現化する蓋然性を評価する 各国当局のコンダクトリ スク等に対する問題意 識に係る情報の収集と ヒートマップ化 シナリオ分析を通じたビ ジネスモデルや経営戦 略に係るリスクの大きさ や蓋然性の分析 金融商品のライフサイク ル分析を通じた、特定金 融商品に係るリスクの大 きさや蓋然性の分析 20 外部環境 の変化 ビジネスモ デルの変 化、内在的 要因 深刻度の高 い「隠れたリ スク」が顕現 化する蓋然性 の評価 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 外部環境の変化(当局の問題意識の変化等)が「隠れたリスク」の蓋然性に与える影響を評 価する コンダクトリスク ヒートマップ 欧州 21 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. 深刻度・蓋然性評価に基づき「隠れたリスク」への対応を決定する 深刻度ランク 深刻度 評価 1 蓋 然 性 ラ ン ク 蓋然性 評価 22 2 3 4 1 予防策の強化 2 3 事後対応(インパクト軽減策) 4 © 2015. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC. デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそのグ ループ法人(有限責任監査法人 トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、税理士 法人トーマツおよびDT弁護士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各 法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40都市に約 7,900名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トー マツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。 Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務およびこれらに関連するサービスを、さまざ まな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複 合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約 210,000名を超える人材は、“standard of excellence”となることを目指しています。 Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成す るメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTLおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。 DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。DTTLおよびそのメンバーファームについての詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するも のではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事 案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決 定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。 © 2015. 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