CyclinA2 と DNA 含量の 同時測定による細胞周期解析

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CyclinA2 と DNA 含量の
同時測定による細胞周期解析
はじめに
細胞周期は細胞が分裂するためにDNAの複製から始まり、細胞構成成分の倍加、細胞の成長を行なう倍加を
経て、倍加された細胞を 2 つに分ける分配から成り立っています。倍加では遺伝物質であるDNAの複製が最も
重要になります。複製により 2 倍にされたDNAを 2 つに分けるためには、分配しやすい染色体にしたうえで、紡
錘体を利用して分配されます。しかしながら、DNAの複製と紡錘体は直接作用することがなく、細胞周期エンジ
ンを介して伝達されます。
この細胞周期エンジンを構成しているのが、Cyclin と CDK(Cyclin Dependent Kinase)複合体で、Cyclin は CDK
と複合体を形成することで、CDK の活性を調節して、特定のタンパクをリン酸化し、下流へのシグナル伝達を誘
導します。
Cyclin は細胞周期に同期して合成・分解するタンパク
質であり、サイクリンボックスという共通の配列を持つ
類縁のタンパク質は現在では 10 種類以上が知られて
います。その中でも、高等動物の細胞周期における役
割が明らかになっているものは、A,B,D,E,H の 5 タイプで
す。
細胞周期の運行に重要な A,B,D,E タイプの Cyclin は生
体内では普遍的に発現します。しかし各サブタイプは、
発現場所の組織、部位特異性があり、サブタイプの使
い分けがされています。
CyclinA には 2 種類のサブタイプがあり、ヒトでは、胚細胞特異的な CyclinA1 と体細胞の CyclinA2 の 2 種類の
A 型 Cyclin が存在します。CyclinA1 は減数分裂及び初期胚のみに発現しますが、CyclinA2 は増殖する体細胞
に存在します。CyclinA2 と CDK2 の複合体は、DNA の複製を誘導し、S 期の進行に必要です。G2 期から M 期
では、CyclinA2 は CDK1 と複合体を形成します。また M 期の初期にユビキチン依存タンパク分解経路を介して
分解されます。
これらを利用して、蛍光標識した CyclinA2 と DNA 含量の同時染色を行うと、G0 期(休止期)および、M 期(有糸
分裂期)では CyclinA2 の発現はないか非常に低くなり、G1 期ではその発現レベルがわずかに高くなり、S 期で増
加し、G2 期で最も高い発現が見られます。
CyclinA2 の発現を用いて、発現のないまたは非常に低い M 期と最も発現の高い G2 期を判別することができま
す。
サンプル調製
Ⅰ.サンプル
細胞:(細胞濃度 1×106 個)
浮遊細胞の場合は、遠心・回収します。
付着細胞の場合は、トリプシン・EDTA で細胞を単離後、PBS で遠心洗浄し、回収します。
Ⅱ.試薬
固定:
100%メタノール(-20℃で冷やしておきます。)
抗体:
Anti Cyclin A2-FITC
IgG1(Mouse)-FITC Isotype Control
7-AAD
Beckman Coulter 社
Beckman Coulter 社
Beckman Coulter 社
製品番号 A22327
製品番号 A07795
製品番号 A07704
Ⅲ.溶液
0.5%BSA 加 PBS
PBS
Ⅳ.その他
40μm ナイロンメッシュ
Ⅴ.サンプル調製
1.
2.
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4.
5.
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8.
9.
1.5ml マイクロチューブを 2 本準備します。(コントロールサンプル用、CyclinA2 染色サンプル用)
細胞を 1×106 個に濃度調製し、1.5ml マイクロチューブに 1mL ずつ分注します。
チューブを遠心し、上清を除去します。(300×g、5 分、室温(18~25℃))
1mL の PBS を加え、遠心し、上清を除去します。(300×g、5 分、室温(18~25℃))
ペレットをタッピングでよくほぐします。
各チューブに冷 100%メタノール(-20℃)1mL をボルテックスしながら、徐々に加えます。
4℃(氷中)で 10 分間固定します。
チューブを遠心し、上清をできるだけきれいに除去します。(300×g、5 分、室温(18~25℃))
ペレットをタッピングでよくほぐし、各チューブに 1mL 0.5%BSA 加 PBS を加え遠心洗浄します。
(300×g、5 分、室温(18~25℃))
10. 上清を除去後、ペレットをタッピングでよくほぐします。
11. 各チューブに 0.5%BSA 加 PBS を 100μL ずつ加えます。
12. コントロールサンプル用チューブに IgG1(Mouse)-FITC を 20μL、7-AAD を 20μL 加えます。
13. CyclinA2 染色用チューブに Anti CyclinA2-FITC を 20μL、7-AAD を 20μL 加えます。
14. 各チューブを混和後、室温(18~25℃)・暗所で 20 分間反応させます。
15. ペレットをタッピングでほぐし、各チューブに 0.5%BSA 加 PBS を 1mL 加えます。
16. 遠心洗浄後、上清を除去します。(300×g、5 分、室温(18~25℃))
17. ペレットをタッピングでほぐし、各チューブに 0.5%BSA 加 PBS を 1mL 加えます。
18. 遠心洗浄後、上清を除去します。(300×g、5 分、室温(18~25℃))
19. ペレットをタッピングでほぐし、各チューブに 0.5%BSA 加 PBS を 0.5mL 加えます。
20. 各サンプル溶液を 40μm ナイロンメッシュに通し、FCM 用チューブに移します。
21. FCM にて測定します。
サンプル測定
1. それぞれの機器のフィルタ設定に応じた検出器を選択します。
FITC
7-AAD
FL1(Gallios / Navios / FC500 / XL など)
FL4(Gallios / Navios / FC500 / XL など)
2. 各パラメータを選択し、プロット図を作成します。
Gallios / Navios
FC500/ XL
-パラメータ選択例Gallios / Navios
FC500 / XL
FS Integral Lin, SS Integral Lin, FL1 Integral Log, FL4 Integral Lin,
FL4 Peak Lin, Time
FS Lin, SS Lin, FL1 Log, FL4 Lin, AUX(FL4) Peak, Time
-プロット図作成例-
①
②
④
⑤
③
⑥
①SS LIN / FS LIN
②FL4 INT LIN / FL4 PEAK LIN
細胞集団のカットオフの位置を確認します。
ダブレットの除去を行います。(シングルセルを囲うように
リージョン A を作成します。)
③Time / FL4 PEAK LIN
流れの安定性を確認します。(不安定な場合、各期の CV 値
が大きくなります。)
④FL4 INT LIN / FL1 INT LOG(A ゲート) データ解析を行います。
⑤FL4 INT LIN / FL1 INT LOG(Ungated) A ゲートの位置の確認を行います。
⑥FL4 INT LIN
細胞周期の確認を行います。
3.コントロールサンプルを測定します。
4.SS LIN / FS LIN のプロット図で、サンプル集団が確認できるよう
に FS と SS の感度を調整します。
ディスクリミネーターによりサンプルがカットされていないか確認しま
す。ディスクリミネーターは FS で 50 チャンネル位に設定します。
(固定処理することで細胞は小さくなりますので、FS の集団の位置が
低くなります。)
5.FL4 INT LIN / FL4 PEAK LIN のプロット図を確認しながら、FL4
の感度を調整し、ダブレットセルが分かれるようにします。
この時、G0/G1 期の集団が FL4 INT LIN において適切な位置(通常
200~300 チャンネル前後)になるように感度を調整します。
6.ダブレットセルを除くようにシングレットセルにリージョン A を作成
します。
ダブレットセル
7.FL4 INT LIN / FL1 INT Log のプロット図を確認しながら、FL1 の
感度を調整します。
この時、G0/G1 期の集団が FL1 INT Log で適切な位置(100~101 位)
に調整します。
8.CyclinA2 染色サンプルを測定します。
この時、流速は Low で行います。
Low でサンプルを流すことで、測定分解能が上がります。
9. Time / FL4 PEAK LIN のプロット図で、サンプルの流れの安定
性を確認します。
流れが不安定になると細胞集団が途切れたり、幅が広がったりしま
す。
10.シングルセルゲート(A)が設定された FL4 INT LIN / FL1 INT
Log のプロット図で、10000 個以上カウントします。
11.必要であれば、G2 期と M 期にゲートを作成し、各期の%を表
示します。
G2 期
M期
G0/G1 期
解析例
参考文献
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2013 年 3 月
2013/03
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