「オープン・ラボ」を活用した オープン・イノベーション

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特集 1 オープン・ラボ
「オープン・ラボ」
を活用した
オープン・イノベーションにより
材料ビジネスを変革していきます。
特集1
2014 年6月、日立化成は次世代の半導体実装材料技術の強化を目的として、筑波総合研究所内に
「オープン・ラボ」
を開設しました。日立化成は、オープン・ラボを活用したオープン・イノベーションにより、先端情報の先取りおよびサ
プライチェーンを巻き込んだ共同開発を促し、
「社会やお客さまの期待を超える驚き」と
「化学を超えた
『新たな価値』
の創造」を業界に先駆けて実現していきます。
Part.1
日立化成のオープン・ラボとは?
その目的と概要
ることが可能です。また、日立化成は、実装工程で必
近年、半導体実装材料(以下、実装材料)の開発にお
要な材料をほぼラインアップしているため、お客さま
いては、半導体パッケージの技術がより高度になってい
は、いろいろな組み合わせを試すことができるうえ、日
ることに加え、製品サイクルが短く、短期間で実装材料
立化成からはお客さまの求める実装材料や使い方(プ
を開発し、提供することが重要になっています。同時に、
ロセス)
をタイムリーに提案することができます。
次世代の製品開発に活かせる新しいアイデアも必要に
これにより、開発期間は大幅に短縮されます。さら
なっています。日立化成では、これらの課題を解決する
に、お客さまの開発の場に立ち会うことで、新しいアイ
ための新たなアプローチ法としてオープン・ラボを開設
デアを発見することも期待できます。
しました。
お客さま採用
評価(ソリューション提案)
お客さま持ち込み部材
Annual Report 2015
オープン・ラボ
もしくはお客さまの半導体パッケージで実装、解析す
当社サンプル
競合の製品を問わず使いたい材料を用いて、日立化成
お客さまのニーズ吸い上げ・材料紹介
一方、オープン・ラボでは、お客さまは、日立化成、
新アプローチ
お客さま採用
に解明できる問題も多くありました。
お客さま評価(材料・プロセス)
条件の違いなど、お客さまとともに実験できれば簡単
サンプル提出
価」の繰り返しに多くの時間を費やしていました。また、
(OKが出るまで繰り返し)
従来の実装材料開発では、「サンプル提出⇔顧客評
お客さまのニーズ吸い上げ・材料紹介
アプローチの変化
従来アプローチ
特集 1 オープン・ラボ
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関係の変化
日立化成とお客さまや競合メーカーなどとの関係が
発揮する実装材料をタイムリーに提案し、お客さまの
変われば、新しいプロセスを検討する場合、その分野が
期待に応えていきます。同時に、先端の情報を入手し、
得意な装置メーカーや日立化成が保有していない材料
その情報を基に新製品を開発し、次世代に対応するこ
が得意なメーカーと一緒に半導体パッケージの評価を
とで、実装材料分野を積極的にリードし、お客さまに頼
実施し、お客さまへ提案することができます。
られ、お客さまの発展に貢献できる存在になることを
日立化成は、オープン ・ ラボを通して、求める性能を
めざします。
従来
これ から
コンソーシアムを主導
して価値を提供
コンソーシアム
お客さまはどんな材料を
組み合わせているんだろう?
どんな処理をされるんだろう?
装置
メーカー
材料
メーカー
アライ
アンス
(協業)
お客さま
材料
メーカー
日立化成
協力
材料
メーカー
(競合)
日立化成
オープン・
ラボ
パートナー
シップ
お客さま
(協業)
材料
メーカー
材料
メーカー
(協業)
材料
メーカー
材料
情報共有
メーカー (装置・プロセス
(競合)
(競合)
(協業)
既存の枠組みや視野に閉じこもる
条件のフィード
バックなど)
装置
メーカー
材料
メーカー
(競合)
オープン・ラボを核として、
装置・材料メーカーのコンソーシアムを構築
(お客さまにとっての存在価値低下)
オープン・ラボ設立の背景
近年のスマートフォンやタブレットPC に代表される情
います。
報端末機器の急激な小型化・高機能化に伴い、半導体パッ
一方、製品サイクルも短くなっており、このような複雑
ケージは小型化・高密度化が急速に進んでいます。この
な半導体パッケージを短期間で開発するには、新しい実
ため、その構造は面実装の高密度化にとどまらず、デバイ
装材料をタイムリーに提案することはもちろんのこと、実
スに貫通ビア(TSV: Through Silicon Via)
を有する3
装プロセスを含めた顧客目線での総合的なソリューション
次元へとより複雑化しており、実装プロセスも多様化して
をスピーディーに提案することが重要となります。
電子機器と半導体パッケージの動向
1970 年代
1980 年代
1990 年代
2000 年代
2010 年代
2020 年代
パーソナルコンピュータ
な工程を経てシリコンチップ(ベアチップ)
上に
つくり込まれた集積回路によって実現されてい
ゲーム機
リードフレーム
ます。そのシリコンチップは非常に繊細なため、
携帯電話
有機基盤
メモリー積層
わずかなゴミや水分などの影響で動作しなく
デジタルカメラ
なったり誤動作を起こしたりしてしまいます。こ
スマートフォン
電子機器の小型化・
高機能化が加速
パッケージ積層
タブレット
半導体パッケージの
実装形態複雑化
ウェアラブル機器
製品サイクルの短縮化
半導体パッケージとは
半導体デバイスのさまざまな機能は、複雑
デバイス積層
うしたトラブルを防止するため、シリコンチップ
を樹脂(封止材)
で覆い外部環境から保護する
必要があります。また、非常に微細なシリコン
チップの電極をプリント配線板と接続し確実に
電子情報を伝えることが必要です。これらの役
割を担うのが半導体パッケージです。
新しい半導体パッケージを短期間で開発
材料提案だけでなく、お客さまでの実装プロセスも提案
Annual Report 2015
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特集 1 オープン・ラボ
Part.2
オープン・ラボで実現した新たなアプローチ
─ 半導体パッケージ開発の各工程における、お客さまとの関係の変化 ─
次 世 代 のスマートフォンなどには、
どのような構造の半導体パッケージ
が必要になるのか、お客さまの要望
をうかがいます。
オープン・ラボへ最先端の装置を導入したことに
より、お客さまから「ニーズに応えてもらえる」
と
期待を持っていただけるため、以前より踏み込
んだ具体的なニーズを引き出すことができるよ
うになりました。
お客さまのニーズ
吸い上げ・材料紹介
評価用
半導体パッケージの
打ち合わせ
シミュレーション
お客さまにとって最適な半導体パッケー
ジを提案するために、評価に使用するさ
まざまな材料・プロセスを検討します。
評価する材料を決めた後、
材料の詳細な仕様を決めます。
オープン・ラボでは、日立化成の豊富な材料ラインアッ
変わると発生する応力や反りに違いが生じます。
プに加え、他社の材料も含めていくつものパターン、組
み合わせを選ぶことができます。どのような材料・プロ
セスで評価するのか、お客さまと相談しながら決めるこ
とができるようになりました。
同じ材料でも、弾性率や熱膨張率、厚さなどが
オープン・ラボでは、どのような特性の材料が良
いか、お客さまと一緒にシミュレーションを行い、
詳細な材料特性および組み合わせ仕様を決める
ことができます。
半導体パッケージの反りシミュレーション
Annual Report 2015
特集 1 オープン・ラボ
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実装材料分野で No.1 ポジションの確立をめざします
2015 年 2 月、オープン・ラボは横串の組織体制となり、各材料の開発や営
業、さらには海外の販売拠点のメンバーが情報共有し、一体となって動いてい
くこととなりました。オープン・ラボによって、装置メーカーや材料メーカーと
も積極的に協業し、期待以上にお客さまに貢献できるよう取り組んでいきま
す。そして、半導体パッケージにおけるこのビジネスモデルを今後はタッチパ
日立化成株式会社
執行役
森嶋 浩之
ネル・ディスプレイ関係でも展開していきます。
オープン・ラボを核として積極的なオープン・イノベーションを進めていきます
オープン・ラボの最大の特徴は、日立化成グループの豊富な材料ラインアッ
プと、最先端パッケージの組み立て装置をすべてそろえていること、そして完
成したパッケージの評価設備が充実していることです。お客さまはもとより、
装置メーカーや材料メーカーからの反響も大きく、これまであまりお付き合い
できていなかったメーカーとも協業できる仕掛けができつつあることを実感し
ています。今後はお客さまのデザイン・設計などの部署が取り組む次世代の
プロジェクトにも参加できるように、オープン・ラボの実力を高めていきます。
評価
採用
評価する材料・プロセスが決まれば、
オープン・ラボで評価します。
各プロセスで必要な装置は、多くのお客さまへのヒアリング調査を
基に、お客さまと同じレベルのものを備えています。お客さまにとっ
ては、一度にさまざまな材料や仕様の組み合わせを同じ装置で評
日立化成株式会社
機能材料事業本部
パッケージング
ソリューションセンタ
センタ長
宮崎 忠一
次世代への
提案
お客さまとの協業を
通じて得られた情報を
分析し、次世代に向けた
新しい材料やプロセスを
提案していきます。
価できるので、迅速に材料の仕様やプロセス条件を確立でき、採用
までの時間を短縮できます。
Annual Report 2015