ご あ い さ つ 編集後記 2008年秋、こころの未来研究センターは稲盛財団記念館に研究の場を移し、その新たな門出を記念して『こころ の未来』の刊行を開始しました。その後、『こころの未来』は多くの方々に親しく目を通していただける学術広報 誌として順調に発行を続けています。今号は「徳ときずな」をテーマに編集しました。巻頭のインタビューは、こ ころの未来研究センターの創設にもご尽力くださった稲盛財団理事長・稲盛和夫氏です。日本を代表する国際的な 企業人として多くの経営者を育て、広く社会に貢献するさまざまな事業に取り組んでこられた稲盛理事長に、大企 今号は「徳ときずな」というテーマを取り上げ、少し新しい形で編 集しました。ご多忙の中、インタビューをお受けくださった稲盛財 団理事長稲盛和夫様、論考をお寄せくださった先生がた、どうもあ 業を率いる代表者としての思想や、その生き方を支える哲学についてお話を伺いました。3月11日の東日本大震 りがとうございました。本誌をお送りしている方々から、ときおり 「徳ときずな」 災を経験し、わたしたちは、これまでの常識や価値観を、根底から考え直すべき時を迎えています。 「楽しみに読んでいます」と声をかけられるようになりました。 「こ をめぐる多彩な論考が、人と人、人と社会を結ぶきずなの在り方を考える一助となることを願っています。 こころの未来研究センター長 𠮷川左紀子 2011年9月 7 目次 2011 vol. ころを知り、 未来を考える」 学術広報誌、 これからもご愛読ください。 (𠮷川) 最近、2回目の東日本大震災の被災地調査をおこなった。5月初め に4日間かけて調査した宮城県仙台市若林区から岩手県久慈市まで 沿岸部約 350 キロほどを追跡再調査したのだが、瓦礫の撤去もまだ 終わっていない様子、復旧作業にかなりの時間がかかりそうで、こ 01 ごあいさつ 巻頭言 わかることによってわからなくなる 02 稲盛和夫理事長インタビュー 「動機善なりや、私心なかりしか」 𠮷川左紀子 龍村 仁 心のきずな ̶仏教思想を手がかりとして 進化シミュレーションで絆と徳を探る ̶頼母子講を例に チンパンジー・ボノボにみる「徳」の起源 徳と絆 の現実との落差を感じた。日本はどうなるのか?(鎌田) 稲盛和夫+𠮷川左紀子+ 鎌田東二+平石 界 大学時代に動物行動学を学んだときの最大の衝撃の1つが「薄め効 木村清孝 だが、その内容は身も蓋もない。群れを作れば(他個体が壁となる 論考 〈特集・徳ときずな〉 12 16 20 24 の冬のことが心配になった。 「中央」で議論していることと、 「地域」 中丸麻由子 果」であった。なぜ動物が群れを作るのか説明する理論の1つなの ので) 、自分が食べられる危険性が薄まるから、というのである。そ 山本真也 れと比べて人間の群れのきずなのなんと深いことか。人付き合いは 上田紀行 難しさもあるが、やはり人間でよかったとつくづく思う。 (平石) 𠮷川左紀子 本号から論考を中心に特集テーマを設け、インタビューなども関連 エッセイ 28 幸せを考えさせる国 29 「徳が先か、きずなが先か。それが問題だ」 平石 界 た。より良い誌面づくりを目指して一歩ずつ進んでいきたいと思っ 研究プロジェクト 30 感情・認知機能におよぼす他者・モノの影響 31 共感的対話の相互作用性 「つなぐ」役割の検証 32 社会的ネットワークの機能と性質: させることになりました。また、全体に少しレイアウトを変えまし 𠮷川左紀子 ています。ご意見ご感想などをお寄せいただければ幸いです。 (原) 𠮷川左紀子+長岡千賀 内田由紀子+竹村幸祐 33 新人看護師のストレス予防とSOC改善調査 34 青年期の社会的適応:ひきこもり・ニートの文化心理学的検討 35 日米における糖尿病患者の心理・社会的側面と療養状況の関連 カール・ベッカー 36 ものへの依存・人への依存 河合俊雄 37 発達障害への心理療法的アプローチ 38 発達障害と読み書き支援 河合俊雄 𠮷川左紀子+小川詩乃 発 行 日 2011 年 9 月 30 日 39 こころの研究ニュースの発信:こころ学ブログ 40 「社会的こころ」の多様性の進化的・遺伝的基盤に関する研究―双生児法による 平石 界 発 41 利他主義の進化認知科学的基盤 小田 亮 42 こころと身体をつなぐメディアとしての味覚研究:食の「質」をふまえた食教育の検討 荒牧麻子 編 集 委 員 43 認知的文化差異の基盤に関する研究:調整型・影響型対人関係の役割 宮本百合 表紙写真 44 こころの未来研究センター滞在記 46 センターの動向(2011 年4月∼9月) ベス・モーリング 編集後記 内田由紀子 内田由紀子 第7号 行 京都大学こころの未来研究センター 〒 606-8501 京都市左京区吉田下阿達町 46 京都大学稲盛財団記念館内 電話 075-753-9670 FAX 075-753-9680 http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/ 安藤寿康 川左紀子+鎌田東二+平石界+森崎礼子 小山敦資 曼珠沙華に蝶 編集・制作 編集工房レイヴン 原 章 デ ザ イ ン 鷺草デザイン事務所 尾崎閑也 印 刷 株式会社 NPC コーポレーション
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