フィナンシャル・グローバルITイノベーターを目指す(PDF:1276KB)

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特集
フィナンシャル・グローバルITイノベーターを目指すNTTデータ 新生金融分野の取組み
1 インタビュー
4本柱の重点領域を基軸に、
フィナンシャル・グローバル
IT イノベーターを目指す
2015 年 7 月、迅速な意思決定を目途に大幅な機構改革を実施した NTT データ。
金融分野の
機構改革の趣旨と新体制、さらには次期中期経営計画への取組みについて、金融分野担当
の植木英次取締役常務執行役員にお話しをうかがった。
フラットな組織構造で迅速な意思
決定と本部間の連携強化が狙い
㈱NTTデータ
取締役常務執行役員
の支援を行うこととしました。
金融分野担当 植木 英次氏
3 事業本部+ 1 事業推進部に再編
コミュニティバンク向けビジネスに
廃止した大幅な機構改革を実施されま
—金融分野の新体制についてお聞か
した。その背景からお聞かせください。
た金融ネットワークのサービス組織
せください。
が加わりました。また、金融分野の
植木 カンパニー制の導入は 2009
植木 3 つの金融事業本部と、本部
子会社などのグループ会社数は、事
年でしたが、当時と今とでは市場や
ビジネスの支援や分野横断的な戦略
IT 技術の進化を含めた経営環境が
の策定・取組みを推進する金融事業
大きく変化しており、これまで以上
推 進 部 に 再 編 成 し ま し た( 図 1 参
に事業を跨った連携や迅速な意思決
照)
。右側に配下の事業部を示してい
定が求められています。こうした背
ます。新生第一金融事業本部は政府
景を踏まえ、今後の中長期での経営
系金融機関や、りそな・郵貯といっ
環境変化へ対応するため、カンパニ
た大口のお客さま、保険・共済関連
ー制を廃止し、業務執行について事
のお客さま向けビジネスを推進して
業本部レベルで迅速な意思決定が図
います。新生第二金融事業本部は、
られる体制へ移行することとしまし
メ ガ バ ン ク・ 地 方 銀 行・ANSER・
た。この機構改革により、従来の各
金融ソリューション・証券取引所向
事業本部はカンパニー配下から本社
けビジネスを担っています。配下に
直轄のよりフラットな組織構造とな
営業本部を新設した
り、事業本部間の連携がより一層促
他、旧エンタープライ
進することを目指しています。具体
ズ IT サ ー ビ ス カ ン パ
的には、公共・社会基盤分野、金融分
ニーの第一法人事業
野、法人・ソリューション分野、グ
本部から市場取引ビ
ローバル分野の 4 つの事業分野を創
ジネス事業部が加わ
設し、各事業分野には分野担当役員
りました。新生第三金
と事業推進部を配置し、各事業本部
融事業本部は、従前の
加え、新たに全銀・統合 ATM といっ
—2015 年 7 月 1 日、カンパニー制を
40
業会社・機能会社・アウトソーシン
グ会社を含め 34 社です。海外は中国
の 3 社に加え、APAC には保険に特
化した子会社を有しています。
4 つの重点領域を軸に次期中期経
営計画の取組みに注力
—現在、金融分野として、どのよう
な取組みに注力されていますか。
植木 現在次期中期計画を策定中で
すが、金融分野のマクロ環境を簡単
にご説明しますと、金融分野は日本
第一金融
事業本部
政府系金融機関・りそな銀行・
ゆうちょ銀行・保険・共済
第二金融
事業本部
メガバンク・地方銀行・
ANSER・金融ソリューション・
証券取引所
第三金融
事業本部
信用金庫・信用組合・
労働金庫・JAバンク・
全銀・統合ATM
金融事業
推進部
本部ビジネスの支援・
分野横断的な戦略策定・取組推進
金融社会インフラ事業部
金融ITマネジメント事業部
郵政ビジネス事業部
保険ITサービス事業部
保険ITビジネス事業部
営業本部
第一バンキング事業部
第二バンキング事業部
第三バンキング事業部
e-ビジネス事業部
金融ソリューション事業部
金融グローバルITサービス事業部
市場取引ビジネス事業部
しんきん事業部
しんくみ事業部
ろうきん事業部
JAバンク事業部
決済ITサービス事業部
図 1 新生金融分野の体制(事業本部)
ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.12
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国内の売上がグループ全体売上の大
顧客・技術・世の中のトレンドを先読みし、
フィナンシャル・グローバルI
Tイノベーターへ
ありたい
姿
きな比率を占めています。しかし
2010 年度以降、国内売上高につい
提供
価値
ては、特定大規模システムの落ち込
みを受け、減少傾向にあります。
一方
で金融分野の IT 投資は、日本企業の
重点
領域
海外進出支援、新規プレイヤーとの
業界横断
既存堅守
国内金融機関の業
容変化/業界再編
国内新規獲得
戦略
パートナー
攻めの投資の
拡大
共創
クロスボーダー
ビジネスモデル転換
事業変革
プレイヤー
決済高度化/
グローバル化
グローバル化対応
顧客の変化
守りの投資の
抑制
サービス競争、イノベーションの導
顧客・業界先導
ハイ・
パフォーマー
破壊的イノベーション
の昇華
外部トレンド
業界構造の
変化
+
技術トレンド
国内外
トレンド
競合の
変化
…
本部基本戦略、海外戦略
(オーガニック、
ノンオーガニック)
入など、より戦略的な投資にシフト
図 2 2020 年における金融分野の“ありたい姿”
すると捉えています。つまり、従来
価値への IT 投資の市場規模は年々
年を 1 つの区切りとして、若干長い
縮小し、新規価値への IT 投資や新規
スパンで5年後のありたい姿を議論
プレイヤーの IT 投資は拡大すると
しています。この間の外部環境の主
る IT を 活 用 し た サ ー ビ ス の 開 発、
いう仮説を踏まえ、既存領域の堅守
なトピックとして、2016 年にはマ
デジタルビジネスの利用拡大と幅広
を確実に遂行しながら、新規分野に
イナンバーの利用開始や、デジタル
い浸透に対応すべく、既存の秩序を
対する戦略・リソース配置を図って
ビジネスを支える技術のさらなる進
破壊するような革新的なイノベーシ
いくことが重要で、新規参入による
化、2018 年には域内関税撤廃によ
ョンについても取り組むものです。
破壊的イノベーションへの対応も必
るアジア経済統合、2019 年には全
要だと考えています。この仮説に基
銀システムの 24 時間・365 日化の
づいて、当社が目指す提供価値とし
完了などがあげられます。この外部
ては、①既存領域につきましては、
環境とそれに対応したお客さまの動
ハイパフォーマーとして、既存ビジ
向や業界構造と競合状況の変化に加
中の金融分野の新中期経営計画の概要
ネスを堅守しながら高い生産性・品
え、前述の金融分野における将来的
をご説明いただきましたが、今後の抱
質を提供する、②新規価値への IT 投
な IT 投資動向と当社が目指す提供
負をお聞かせください。
資については、戦略パートナーとし
価値を勘案し、本部の基本戦略や海
植木 2020 年のゴールとして、図 2
てお客さまの変革とトップラインの
外戦略にプラスして、
に示すような金融分野の“ありたい
向上をサポートする、③さらに新ら
Ⅰ 国内金融機関の業容変化/業
たなビジネスモデルの提供について
界再編
24/365 化への対応。そしてⅣは、
“FinTech”という金融領域におけ
フィナンシャル・グローバル IT
イノベーターを目指す
—2020 年までを視野に入れて策定
姿”を描きました。
「顧客・技術・世
の中のトレンドを先読みし、フィナ
は、事業変革パートナーとして、自ら
Ⅱ グローバル化対応
ンシャル・グローバル IT イノベー
事業主体としてサービスを提供する
Ⅲ 決済の高度化・グローバル化
ターへ」を金融分野のビジョンとし
ことも含めて新たな価値を提供して
Ⅳ 破壊的イノベーションの昇華
て掲げましたが、この実現に向け最
いくといった 3 点を考えています。
の 4 つの重点領域を定めました。Ⅰ
大限努力したいと思っています。具
—詳細は後続の各論頁でご紹介しま
は、大手金融機関の投資環境の変化
体的な事業目標としては、市場成長
すが、新中期の重点領域の概要をお聞
や銀行と証券会社による業務・サー
率以上の売上拡大は必達だと思って
かせください。
ビスの連携の加速、国内金融機関の
います。
統合への対応。Ⅱは、金融機関の海外
—本日は有難うございました。
植 木 新 新 中 期 経 営 計 画 は 本 来、
2016 年 度 ∼ 2018 年 度 ま で の 3 カ
年計画ですが、今回は、まず 2020
進出の本格化への対応。Ⅲは、決済イ
(聞き手 ・ 構成:特別編集委員 河西義人)
ン フ ラ の 進 化・ 域 内 連 携、 全 銀
ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.12
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