山口市が進める湯田温泉のまちづくり

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山口市が進める湯田温泉のまちづくり
∼湯田温泉観光回遊拠点施設「狐の足あと」が賑わいを創出∼
山口市湯田温泉二丁目に今年3月、湯田温泉
始まりました。来年4月の「湯田温泉白狐まつ
観光回遊拠点施設「狐の足あと」がオープンし
り」までにはすべての工事が終わり、生まれ変
ました。
まさに湯田温泉のど真ん中。
かつて日々
わった井上公園がお披露目されます。
1,000人の来店客で賑わった山口銀行旧湯田支
店の跡地に整備されました。団体旅行の減少を
●「狐の足あと」が新たな人の流れを創出
はじめ旅行ニーズが変化するなか、平成の初期
歩行者動線の整備や、温泉地としての魅力を
に年間60万人を超えていた湯田温泉の宿泊者数
高めるための空間整備などが進められるなか、
が、近年は50万人前後で推移しています。
「狐の
湯田温泉に観光客や市民を呼び込み、回遊や消
足あと」が新たなシンボルとなって、賑わいを
費を促すための仕掛けとして整備されたのが、
取り戻す起爆剤となることが期待されています。
この度オープンした「狐の足あと」です。
施設には、食やお土産などの情報を提供する
●平成22年度から続く湯田温泉のまちづくり
インフォメーションコーナーやカフェ、ギャラ
湯田温泉は、県庁所在地にある都市型の温泉
リーのほか、趣の異なる3つの足湯施設が設け
地です。観光のほかビジネスで訪れる人も多く、
られていますが、最大の特徴は体験型の情報提
県下最大の宿泊地として発展してきましたが、
供に力を入れていることです。
その反面で、商業地や住宅地が混在しているた
例えばカフェでは、県内18蔵元が醸造した地
め温泉情緒に乏しく、観光客が回遊を楽しめる
酒の飲み比べセットを格安で提供。ギャラリー
ような雰囲気ではないとの声もしばしば聞かれ
では現在、湯田出身の詩人、中原中也を紹介す
ていました。
るコーナーを設けているほか、大河ドラマ「花
そこで山口市は、散策して楽しめる魅力的な
燃ゆ」のドラマ衣装やパネルを展示する企画展
まちにするため、平成22年度から湯田温泉エリ
を開催し、関心を持った人に関連施設への回遊
アの一体的な整備に取り組みました。湯田温泉
を促す取り組みがなされています。
駅前では、既に道路が拡張されるなど、駅や駅
周辺がより快適に利用できるようになっていま
す。
駅舎のすぐ横には、
停車するSL「やまぐち」
号を見ることができる足湯もつくられました。
また、明治維新の元勲、井上馨の生家跡につ
くられた「井上公園」でも、歴史公園としての
魅力を高めるための整備が進められています。
生家の離れで、いわゆる「七卿落ち」によって
長州に逃れてきた三条実美が身を寄せたとされ
る「何遠亭」の再現工事もそのひとつ。12月上
旬の完成予定ですが、6月から前倒しで公開が
▲「狐の足あと」外観
やまぐち経済月報2015.7
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●地域が一体となって、新たな魅力を創出
明治維新150年に向けて観光キャンペーンが展
オープンしてからまだ4カ月あまりの「狐の
開されるなか、今度は萩市の5つの資産を含む
足あと」ですが、訪れる人は予想以上に多く、
「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録と
年間の入館者数目標9万人も早期に達成できる
いうビッグニュースが流れました。
見通しとなっています。足湯につかってお酒が
またとないチャンスを生かすためにも、例え
飲める施設は全国的にも珍しいということで、
ば萩市や下関市といった他の地域との連携をよ
最近ではSNSなどの口コミを通じて、若い観
り強化することによって、それぞれの魅力をつ
光客も増えてきているようです。
なぎ合わせた広域観光ルートを形成することが
今後は、こうして生まれつつある新しい観光
求められています。
客の流れを地域全体でうまく取り込み、リピー
ターを増やしていく努力も欠かせません。
「狐の
●湯田温泉に寄せる期待感
足あと」のオープンを契機に湯田温泉のまちに
そうした背景を考慮すると、山口県の中心部
一体感が生まれ、地域の事業者からもいろいろ
に立地する県下最大の宿泊地、湯田温泉に寄せ
なアイデアが出てくるようになれば、山口市の
る期待感も自然と高まります。
「狐の足あと」が
進める湯田温泉のまちづくりもさらに勢いを増
単に湯田温泉の観光回遊拠点に留まらず、国内
していきそうです。
外の観光客に向けて山口県の魅力を存分に発信
できる拠点施設になったとき、自ずと湯田温泉
●地域間連携による広域観光ルートの形成
の宿泊者数も本格的な回復を迎えるのではない
大河ドラマ「花燃ゆ」の効果もあって、山口
でしょうか。
県を訪れる観光客が増加しています。3年後の
地図出所:山口市
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やまぐち経済月報2015.7
(岩本 賢治)