オセッティ平成27年2月25日号

労働基準法
February
2015
36協定作成時に
間違えやすいポイント
従業員に時間外労働や休日労働をさせるためには、時間外労働・休日労働に
関する協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
この協定は4月からの年度にあわせて締結している企業が多いことから、今回
は36協定の作成時に間違えやすいポイントを3点取り上げたいと思います。
1.法定労働時間を超えて
時間外労働を行える時間数
36協定には法定労働時間を超えて時間外労
働を行う時間数を記入することになっていま
すが、ここに何時間と記入すればよいのか、
あるいは時間数に制限はないのかなど、作成
する際に判断に迷うことがあるのではないで
しょうか。そもそも36協定における時間数に
ついては無制限に認められるものではなく、
下表のとおり、時間外労働の限度に関する基
準(平成10年労働省告示第154号)において
限度時間が設けられており、この範囲内で時
間数を決めることが原則となります。
表
期間
1週間
2週間
4週間
1ヶ月
2ヶ月
3ヶ月
1年間
限度時間
限度時間
1年単位の変形労働
一般労働者
時間制を採用している
労働者
15時間
14時間
27時間
25時間
43時間
40時間
45時間
42時間
81時間
75時間
120時間
110時間
360時間
320時間
2.時間外労働の限度時間を
超える場合の特別条項の
設定と割増賃金率
繁忙期など、上記の限度時間を超えて臨時
的に時間外労働を行わなければならない場合
は、36協定に特別条項を設けておく必要があ
ります。この特別条項を定めるときには、限
度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を
社会保険労務士法人たんぽぽ会 平成27年2月6日 超え3ヶ月以内の期間、1年間)ごとに割増賃
金率を記載する必要がありますが、その記入
漏れが多く見られます。そのため、次の記載
例のように割増賃金率を記入しておきましょ
う。
[記載例]
時間外労働において1ヶ月45時間、1年360
時間を超えた場合の割増賃金率は2割5分とす
る。
3.協定の労働者代表の職名と
選出方法の記載
次に、36協定に労働者代表の職名と氏名、
労働者代表の選出方法を記載する欄がありま
すが、この記入漏れも多く見られます。
①労働者代表の職名
労働者代表の職名は、例えば製造部品質
係員、一般販売店員のように具体的に記載
することになっています。また、そもそも
部長、工場長など労働時間管理の対象外で
ある管理監督者は、労働者代表にはなるこ
とができないため、選出する際には注意し
ましょう。
②労働者代表の選出方法
会社側から代表となる者を指名している
ケースがよく見られますが、労働者代表の
選出方法については36協定を締結する者を
選出することを明らかにして行われる投票
や、挙手等の方法により選ぶ必要があり、
記載欄にはその方法を記載することになり
ます。朝礼など多くの従業員が集まる機会
を活用して従業員の過半数の信任を得てお
きましょう。
社会保険情報
February
2015
平成27年1月から引き上げられた
出産育児一時金の額
出産育児一時金は、生まれる子ども一人あたり42万円が支給されることに
なっていますが、これは本来の出産育児一時金と産科医療補償制度の掛金補助
の合計額となります。平成27年1月1日に実施された産科医療補償制度の掛金改
定に伴い、この額に変更はありませんが、内訳が変更されています。そこで今
回は、出産育児一時金の仕組みについて取り上げておきましょう。
1.出産育児一時金の仕組み
出産育児一時金とは、出産に関連して受け
ることができる健康保険の給付制度の一つで
あり、健康保険の被保険者または被扶養者が
出産したとき、その経済的負担の軽減を目的
として子ども一人の出産に対して一定額が支
給される制度です。その支給額は、平成21年1
月の産科医療補償制度の開始に伴い3万円の加
算が行われるようになり、同年10月から39万
円と加算額3万円を合わせた42万円が支給され
るようになりました。
[産科医療補償制度とは]
この産科医療補償制度とは、出産に関連し
て発症した重度脳性まひの子どもと家族の経
済的負担を速やかに補償し、原因分析や再発
防止のための情報提供などを行うことで、産
科医療の質の向上を図ることを目的として創
設されたものです。この制度には99.8%(平
成26年12月19日時点)というほぼすべての産
婦人科等の医療機関等が加入して、掛金を支
払っています。この掛金の額は、平成26年12
月までは3万円とされており、これと同額を出
産育児一時金に上乗せして支給することで出
産費用の補助を実施しています。
2.今回の出産育児一時金の
改正内容
そして今回、平成27年1月1日以降に生まれ
た子どもに対するものから、産科医療補償制
度の掛金が3万円から1.6万円に引き下げられ
ました。その一方で、最近の平均的な出産費
用の額(平成24年度の全国平均41.7万円)を
考慮すると、単純に合計額を引き下げた場合
に、本人の実質的な負担増に繋がりかねませ
ん。そのため合計額の42万円は据え置かれ、
差額を埋めるために出産育児一時金の本来額
が39万円から40.4万円まで引き上げられまし
た。これにより出産育児一時金の支給額は、
以下のとおりとなります。
●産科医療補償制度に加入している
医療機関等
42万円
●産科医療補償制度に加入していない
医療機関等
40.4万円
今回の出産育児一時金の額に関する改正は、出産育児一時金は「42万円」という認識が
一般的である状況や、直接支払制度という被保険者本人の経済的負担を大幅に軽減できる
制度の利用も広まっていることを考えると、実務上の影響はあまりないかも知れません。
ただ、今後も出産費用の上昇がみられる場合には額の改定が議論されていくと予想される
ため、現行制度の仕組みそのものはしっかり理解しておきたいものです。
社会保険労務士法人たんぽぽ会 平成27年2月6日