第 49 回地盤工学研究発表会 591 K - 07 (北九州) 2014 年 7 月 薄層に支持された鋼管ソイルセメント杭の先端支持特性に及ぼす杭径の影響 先端支持力 薄層支持 有限要素法 大阪大学大学院 学生会員 ○武川修平 大阪大学大学院 国際会員 小田和広 1.はじめに 筆者らは,支持層厚のみを変動パラメータとした数値シミュレーションにより,杭の薄層支持の問題に取り組んでき た 1), 2).一方,鋼管ソイルセメント杭のように鋼管の周りにセメント充填する工法では杭径が鋼管径よりも大きくなる. このように,杭径が大きくなる場合にも薄層支持の問題は起こりえる.そこで,本稿では,鋼管ソイルセメント杭のよ うに鋼管径よりも杭径が大きくなる場合を想定し,杭径を変動パラメータとした数値シミュレーションにより,薄層支 持杭の先端支持特性に及ぼす杭径の影響について明らかにする. 2.解析概要 本稿では,既往の研究 1), 2)において現場載荷試験 3)に対する再現性が確認された数値 C / 10m 解析に基づき,鋼管ソイルセメント杭の局所解析モデルを作成した.図-1 は鋼管ソイル 0.5m セメント杭の局所解析モデルの概略図を示している.解析手法には弾塑性軸対象有限要 素法を用いた.鋼管径は 1.0m であり,ソイルセメント柱内に挿入されている.なお, 拡径長 本稿では鋼管から張り出された根固めコンクリートの径を杭径 D と定義している. 鋼管 解析では,鋼管および根固めコンクリートは弾性体としてモデル化した.砂および砂 根固め コンクリート 礫については破壊する前は tij-sand model4),破壊後は Drucker-Prager の基準に基づく弾塑 性体としてモデル化した.一方,粘性土については,限界状態前までは松井・阿部によ る弾塑性モデル 5),限界状態到達後は 杭径D von Mises の基準に基づく弾塑性体としてモデル 支持層 h 化した.境界条件はモデル上面では自由,モデル底面は完全固定とした.側面において は,外側は完全固定,軸側は側方のみを固定し鉛直方向を自由とした.解析にあたって 10m は,図-1 の青線部分に微小な強制変位を段階的に作用させた. 粘土層 表-1 は解析ケースを示している.解析では,図-1 に示す杭径 D および支持層厚 h を 変動パラメータとした.表中の拡径長は図-1 から分かるように杭の半径と鋼管の半径の 図-1. 差である.すなわち,拡径長がゼロであれば,鋼管径と杭径が一致していることを示し ている.本稿では,施工実績等を参考にし,拡径長を 0cm から 15cm の 4 表-1. パターン変化させた.また,支持層厚は 1.5m から 3.0m までの 4 パターン 解析モデルの概略 解析ケース 支持層厚 (m) 拡径長 (cm) 変化させた.その結果,計 16 ケースの解析を行った 3.解析結果 図-2 は支持層厚 h が 2.0m のときの杭先端抵抗力と杭先端沈下量の関係 を示している.当然のことではあるが,杭径 D が大きいほど同一沈下量に 1.5 2.0 2.5 3.0 0 ex00_15D ex00_20D ex00_25D ex00_30D 5 ex05_15D ex05_20D ex05_25D ex05_30D 10 ex10_15D ex10_20D ex10_25D ex10_30D 15 ex15_15D ex15_20D ex15_25D ex15_30D 対する先端抵抗力は大きくなる.また,先端沈下量が約 6cm に達した地点 において各ケースともに沈下量に対する抵抗力の増加率が減少しており,先端抵抗の降伏が生じている. 図-3 は支持層厚 h が 3.0m のときの杭先端抵抗力と杭先端沈下量の関係を示している.支持層厚 h が 2.0m のときの解 析結果と同様に,杭径 D が大きくなるほど同一沈下量に対する先端抵抗力が大きくなる.また,各ケースともに支持層 厚 h が 2.0m のシリーズのような先端抵抗の明瞭な降伏が見られない.また,降伏したと考えられる杭先端沈下量も大き くなっている. 0 の杭先端周辺の地盤の破壊域の 2 す範囲は,根固めコンクリート 直下から鉛直方向 5.0m,半径方 向 2.5m とした.また,破壊域の 分布は先端沈下量がそれぞれ 2 杭先端抵抗力 (MN) 4 6 8 10 12 0 ex00_20D 10 ex00_30D 14 16 18 18 図-2. ex05_30D 8 16 時点において表されている.な ex10_30D 6 12 14 20 12 10 12 4cm,6cm および 10cm に達した 10 ex15_30D 4 ex05_20D 8 杭先端抵抗力 (MN) 4 6 8 2 ex10_20D 6 2 0 ex15_20D 4 杭先端沈下量 (cm) 分布を示している.破壊域を表 0 杭先端沈下量 (cm) 図-4 は支持層厚 3.0m のとき 20 先端抵抗力と先端沈下量の関係 (h =2.0m) 図-3. 先端抵抗力と先端沈下量の関係 (h =3.0m) Effect of pile diameter on toe bearing characteristics of steel pipe pile surrounded with soil cement on a thin layer Shuhei TAKEGAWA, Kazuhiro ODA (Osaka University) 1181 お,図-4 において,赤色で示す部分が破壊域を表している.各ケー ex00_30D スともに,地盤の破壊は根固めコンクリート縁端部から鉛直下方お ex05_30D c/ c/ よび支持層と粘土層の境界から支持層内には上向き,粘土層内には ex15_30D 根固め コンクリート c/ 4cm 下向きへと進展している.これらの破壊は沈下量の増加に伴い大き 支持層 く進展し,杭先端沈下量が 10cm に達した時点において,ex05_30D および ex15_30D では根固めコンクリート縁端部から下方に進展した 粘土層 破壊域と支持層と粘土層の境界から上向きに拡大した破壊が結合し ている.すなわち,パンチングせん断破壊が生じていると考えられ 6cm 支持層 る.一方,ex00_30D では杭先端沈下量が 10cm に達した時点におい てもパンチングせん断破壊が明瞭には生じていない.つまり,杭径 粘土層 に比して相対的に支持層厚が薄い ex15_30D のほうが ex00_30D より も破壊の進展が早い. 10cm 支持層 図-5 および図-6 はそれぞれ支持層厚が 2.0m および 3.0m のシリー ズにおける先端支持力度と杭径で正規化した沈下量の関係を示して 粘土層 杭先端 沈下量 いる. 図-5 から,先端支持力度が低い段階を除き,各ケースの関係 は一致しない.杭径が大きいほど同一の正規化沈下量に対する先端 図-4. 支持力度が小さくなっている.これは杭径が大きいほど相対的に支 持層厚が薄いためである.一方,図-6 では,ex00_30D と ex05_30D の関係がほぼ一致している. これは,支持層内の破壊域の 0 と ex15_30D における先端支持 力度は ex00_30D と ex05_30D のそれよりも小さい. 図-7 は支持層厚比(h/D) 0 12 ex05_20D 0.06 ex00_20D 0.08 0.06 0.08 ex15_30D 0.12 ex10_30D 0.14 ex05_30D 0.16 0.16 ex00_30D 0.18 0.18 0.12 0.14 図-5. 12 0.04 0.10 0.10 と杭先端沈下量が杭径の 10% 10 0.02 ex10_20D 0.04 先端支持力度 (MPa) 4 6 8 2 0.00 杭径で正規化した沈下量 化沈下量において,ex10_30D 10 ex15_20D 0.02 杭径で正規化した沈下量 ると考えられる.同一の正規 先端支持力度 (MPa) 4 6 8 0.00 進展がそれほど支持特性に影 響を及ぼさなかったためであ 2 杭先端周辺の地盤の破壊域 (h =3.0m) 図-6. 先端支持力度と杭径で正規化 先端支持力度と杭径で正規化 した沈下量の関係 (h=3.0m) した沈下量の関係 (h=2.0m) に達したときの支持力度(極 10.0 は,支持層厚比と極限支持力度の関係はほぼ直線で表すことができ 9.0 る.したがって,薄層の判断は,鋼管径ではなくソイルセメント杭 8.0 の杭径に対する支持層厚比に基づかなければならない. 4.まとめ 本稿では,薄層に支持された鋼管ソイルセメント杭の先端支持特 性に関する杭径の影響を解明した.以下に得られた主な知見を示す. ・杭径が大きくなるにつれて先端抵抗力は増加する.ただし,支持 層内での破壊の進展も早くなることから,同一の正規化沈下量に 極限支持力度 (MPa) 限支持力度)の関係を示している.支持層厚比が 1.0~3.0 の範囲で 7.0 6.0 5.0 4.0 ex15 3.0 ex10 2.0 ex05 1.0 ex00 0.0 0 おける先端支持力度は小さくなる. ・支持層厚比と極限支持力度の関係はユニークな線形関係を持つ. 図-7. 1 2 支持層厚比 (h/D) 3 4 支持層厚比と極限支持力度の関 ・薄層の判断は,支持層厚ではなく支持層厚比によって行う必要が ある. 参考文献 1)小田 他 先端根固め中掘り鋼管杭の薄層支持特性に関する解析的研究, 第 28 回土質工学研究発表会, pp.1735-1738, 1993 2)Oda, K .et.al. pp.185-190, 1994 3)古池 第Ⅲ部, pp.828-829, 1991 End bearing characteristics of bored steel pipe piles with on a thin bearing layer, Proc.3rd ICDFP, 他 大径・中掘り・薄層支持鋼管杭の載荷試験, 土木学会第 46 回年次学術講演会講演概要集 4)Nakai, T. An isotoropic hardening elastoplastic model for sand considering the stress path dependency in three-dimensional stresses, S&F, 29, 1, pp.119-137, 1989 consolidation analysis by finite element method, S&F, 21,1, pp.79-95, 1981 1182 5)Matsui, T. et.al. Multi-dimensional elasto-plastic
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