基調講演 「我が国の地球温暖化対策の取組について」

我が国の地球温暖化対策の取組について
平成27年11月4日
環境事務次官
関 荘一郎
1.2020年以降の国際枠組みの構築に向けて
1
世界のエネルギー起源CO2排出量の推移
米中2か国で世界の40%以上を排出。
気候変動条約締約国194か国中、我が国は第5位の排出国
今後の排出量は、先進国は微増に対し途上国は急増する見込み。
2012年(現状)
1990年
その他
27.5%
中国, 10.9%
その他
30.3%
その他
ロシア
10.4% インド
EU27ヵ国, 19.3%
2.8%
210億トン
ブラジル
1.4%
日本
3.9%
その他
33.6%
中国, 中国 26.0%
米国
23.2%
ブラジル
0.9%
日本
5.1%
2030年(予測)
米国
EU27ヵ国
11.0%
EU27か国
ロシア
5.2% インド
6.2%
317億トン
米国, 16.0%
中国, 28.1%
米国, 12.4%
ブラジル
1.7%
日本
2.5% ロシア
4.6% EU28ヵ国
7.4%
インド
9.5%
363億トン
IEA「CO2 emissions from fuel combustion 2014」「World Energy Outlook (2014 Edition)」に基づいて環境省作成
※2030年はNew Policies Scenarioの値。
2
地球温暖化に関する国際枠組み
1.気候変動枠組条約(1992年採択)
 大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることが究極の目的
 「共通だが差異ある責任」等の原則、先進国・途上国の義務を規定
 具体的な削減目標について規定なし
2.京都議定書(1997年採択)
 先進国全体で1990年比で少なくとも5%の削減を目標
 先進国に対し、法的拘束力のある数値目標を設定
第1約束期間
第2約束期間
期間
2008年~2012年の5年間
2013年~2020年の8年間
基準年
1990年※
1990年※
数値目標
日本-6%、米国(未批准-7%)、
EU-8% 等
EU-20%、豪-0.5%等
(日本、露、NZは参加せず)
※HFC, PFC, SF6は1995年が基準年となる。
 中国を含む途上国には削減義務なし。米国は批准せず。カナダも2012年に離脱。
すべての国が参加する
2020年以降の新たな法的枠組み(ポスト京都議定書)の合意へ 3
最近の国際社会の動向①
4
① G7エルマウ・サミットにおける安倍総理御発言概要
COP21での「全ての国が参加する」新たな枠組の採択に向けて日本として積極的に議論に貢献
する旨を表明し、国際的に遜色のない野心的な排出削減目標(約束草案)に関する日本の考え方
を説明した。また、緑の気候基金(GCF)への15億ドルの拠出をはじめとする気候変動対策のため
の支援についても説明した。
②G7エルマウ・サミット首脳宣言の概要(気候変動部分のみ)
○COP21での新たな枠組の採択への強い決意
○今世紀中の世界経済の脱炭素化、
IPCC第5次評価報告書に示された2050年までに 温室効果ガスの2010年比40-70%の上方の削減
○約束草案の早期提出の呼びかけ
○2020年までに1000億ドルを、気候変動問題解決のために動員
○保険や再生可能エネルギーの導入等、2つのイニシアティブの策定
○非効率な化石燃料補助金の撤廃、輸出信用に関するOECDの議論の進展
○オゾン層破壊物質の代替物質で、温室効果を持つハイドロフルオロカーボン(HFC)の削減
○炭素市場や規制手法を含む、低炭素な経済成長を促進する施策に関する戦略的対話の
ためのプラットフォーム設立
4
最近の国際社会の動向②
5
気候変動に関する米中共同声明(2015年9月25日)
習中国首席の訪米に際し、気候変動に関する米中共同声明等が発表された。
1.COP21に向けた展望・共通ビジョン
COP21において全ての国が参加する野心的な合意を達成すべく協力を強化。
報告・レビューを通じた透明性システムを含めることを支持。
各国の緩和取組が長期的に重要で、2℃目標を念頭に、今世紀半ばまでの戦略策定の重要性を強調。
今世紀中に世界的に低炭素な経済への移行が必要。
• パリ合意は適応の国際的位置付けを高めるべき。
• 2020年以降の継続的な資金援助の必要性を強調。
•
•
•
2.国内気候変動行動の推進
•
•
•
米国から、2015年8月にクリーン電力計画を策定等を発表。
中国から、2017年に排出量取引の国内システムを開始を発表。
両国ともに、大型車に関する燃費基準を2016年までに完成させ2019年に実施すること、HFCの管理取組
強化等を発表。
3.二国間・多国間の気候変動協力の促進
•
•
中国南南気候協力基金に200億元を拠出する用意がある。
米国は、最貧国に対するものを除き、従来型石炭火力発電所の新設に対する公共投資を行わない。中
国は、汚染・炭素排出が大きい案件等への公的投資を国内外で厳格に管理すべく政策・規制を強化。
※この他、米中気候変動作業部会の取組、地方公共団体の取組等にも言及。
気候変動に関する首脳級昼食会(平成27年9月)
国連事務総長・仏・ペルー大統領の共催。日本からは安倍総理が参加。
• 世界のリーダーが、COP21で全ての国に適用される永続的で有意義な合意の採択を支持。
• パリ合意では2℃目標を再確認し、長期的ビジョンを示すべきとした。また今世紀末に十分先立ち世界的に低炭素な移行
がなされるよう拍車をかけることとした。
5
2020年以降の枠組み合意に向けた道筋
6月交渉会合
ドイツ・ボン
(6/1~11)
8-9月交渉会合
ドイツ・ボン
(8/31~9/4)
10月交渉会合
ドイツ・ボン
(10/19~10/23)
プレCOP
未定
(11月前半)
21
20
2014年12月
(ペルー・リマ)
COP
COP
2月交渉会合
ジュネーブ
(2/8~13)
各国がCOP21に十分
先立って(準備ができ
る国は2015年3月末ま
でに)約束草案を提出
G7エルマウ・
サミット
ドイツ
(6/7~8)
国連ポスト2015年
開発アジェンダサミット
(9/25~27)
・国連総会
(9/28~29)
各国の約束草案を総
計した効果について
の統合報告書を
11月1日までに作成
新
た
な
枠
組
み
を
採
択
2015年11/30
~ 12/11
(パリ)
⽇本の対応:
平成27年7⽉17⽇、地球温暖化対策推進本部において、「⽇本の約束草案」を決
定し、国連気候変動枠組条約事務局に提出。
本年末に開催されるCOP21での、全ての国が参加する公平かつ実効的な枠組み構
築に向けて、引き続き交渉に積極的に貢献。
COP21における新たな国際枠組みに関する合意の状況を踏まえ、できるだけ
速やかに地球温暖化対策計画を策定。
5
日本の約束草案(2030年度の温室効果ガス削減目標)のポイント
◆国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比
▲25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)にする。
◆エネルギーミックスと整合的なものとなるよう、技術的制約、コスト面の課題などを十分
に考慮した裏付けのある対策・施策や技術の積み上げによる実現可能な削減目標。
2013年度比(2005年度比)
エネルギー起源CO2
▲21.9% (▲20.9%)
その他温室効果ガス
(非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC
等4ガス)
▲ 1.5% (▲ 1.8%)
吸収源対策
▲ 2.6% (▲ 2.6%)
温室効果ガス削減量
▲26.0% (▲25.4%)
※JCM及びその他の国際貢献について
○二国間クレジット制度(JCM)については、削減目標積み上げの基礎とはしないものの、民間ベースの事業に
よる貢献分とは別に、毎年度の予算の範囲内で行う日本政府の事業により、2030年度までの累積で5,000万
から1億t-CO2の国際的な排出削減・吸収量が見込まれる。
○国際貢献として、JCMのほか、産業界による取組を通じた優れた技術の普及等により2030年度に全世界で
少なくとも10億t-CO2の排出削減ポテンシャルが見込まれる。
6
約束草案 主要各国の提出状況(2015年10月01日時点)
●各国はCOP21に十分先立って、2020年以降の約束草案(削減目標案)を提出。<COP19決定>
●147か国・地域(欧州各国含む)が提出(世界のエネルギー起源CO2排出量の9割近く)。
●先進国(附属書Ⅰ国)はほぼ提出済み。非附属書Ⅰ国でも中、韓、南アフリカ、ブラジル等が提出。
先進国(附属書Ⅰ国)
米国
EU
ロシア
日本
カナダ
オーストラリア
スイス
ノルウェー
ニュージーランド
2025年に‐26%~‐28%(2005年比)。28%削減に向けて最大限取り組む。
3月31日提出
2030年に少なくとも‐40%(1990年比)
3月6日提出
2030年に‐25~‐30%(1990年比)が長期目標となり得る
4月1日提出
2030年度に2013年度比‐26.0%(2005年度比‐25.4%)
7月17日提出
2030年に‐30%(2005年比)
5月15日提出
2030年までに‐26~28%(2005年比)
8月11日提出
2030年に‐50%(1990年比)
2月27日提出
2030年に少なくとも‐40%(1990年比)
3月27日提出
2030年に‐30%(2005年比)
7月7日提出
途上国(非附属書Ⅰ国)
中国
2030年までにGDP当たりCO2排出量‐60~‐65%(2005年比) 。2030年前後にCO2排出量のピーク
6月30日提出
インド
2030年までにGDP当たり排出量‐33~‐35%(2005年比)。
10月1日提出
2030年までに‐29%(BAU比)
9月24日提出
・2025年までに‐37%(2005年比) (2030年までに‐43%(2005年比))
9月28日提出
2030年までに‐37%(BAU比)
6月30日提出
・2020年から2025年にピークを迎え、10年程度横ばいの後、減少に向かう排出経路を辿る。
・2025年及び2030年に398~614百万トン(CO2換算)(参考:2010年排出量は487百万トン(IEA推計))
9月25日提出
インドネシア
ブラジル
韓国
南アフリカ
※その他、以下の国が提出済み。メキシコ、ガボン、リヒテンシュタイン、アンドラ、モロッコ、エチオピア、セルビア、アイスランド、シンガポール、マーシャル諸島、ケニア、モナコ、マケド
ニア、トリニダート・トバコ、ジブチ共和国、コンゴ民主共和国、ドミニカ共和国、コロンビア、チュニジア、コモロ連合、赤道ギニア、モンテネグロ、ガーナ、アルバニア、マダガスカル、モンゴ
ル、エリトリア、バングラディシュ、セイシェル、ジョージア、ベラルーシ、モルドバ、キリバツ、セネガル、中央アフリカ共和国、モーリシャス、ミャンマー、ガンビア、モルディブ、カザフスタン、
ペルー、バルバドス、ブルキナファソ、チリ、バヌアツ、マリ、ベナン、アルメニア、ニジェール、コートジボワール、キルギスタン、ベトナム、モーリタニア、バルバドス、ウルグアイ、ナミビア、
グレナダ、ザンビア、スワジランド、タンザニア、アゼルバイジャン、コンゴ、ドミニカ、カーボベルデ、イスラエル、グアテマラ、サントメプリンシペ、ハイチ、ウクライナ、レバノン、ブルンジ、ヨ
ルダン,ギニアビザウ、ソロモン諸島、トルクメニスタン、ジンバブエ、コスタリカ、ブータン、マラウィ、カンボジア、ルワンダ、レソト、タジキスタン、リベリア、パプアニューギニア、トーゴ、トル
コ、サンマリノ、サモア、カメルーン、フィリピン、ラオス、マラウィ、タイ、ガイアナ、ホンジュラス、シエラレオネ、チャド、ボツワナ、パラグアイ、アルジェリア、ベリーズ、エクアドル、モザン
ビーク、アルゼンチン
GDP当たり温室効果ガス総排出量及び
一人当たり温室効果ガス総排出量の推移
○我が国において、GDP当たりの温室効果ガス排出量は0.29kg/米ドル(2013年)、人口一人当たり
の排出量は11t/人(2013年)であり、いずれも既に先進国で最高水準にある。
○我が国は自らの排出削減に向けた取組をさらに進める結果、上記の指標についても2030年時点
では2割から4割程度の改善が見込まれる。
kg/米ドル
GDP当たり温室効果ガス総排出量
t/人
一人当たり温室効果ガス総排出量
15.6
0.39
0.29
11.1
8.9
0.16
*日本を除く他
のG7諸国
*日本を除く他
のG7諸国
【出典】日本の約束草案、長期需給エネルギー見通し関連資料及び各国国連提出温室効果ガス排出・吸収目録、IEA推計、国連推計をもとに作成。
8
新枠組みに向けた交渉の状況と主要論点
交渉状況
 大きくは「先進国」対「途上国」の構図。途上国の中も意見が多様化。(新興国から島嶼国まで)
 主要国、とりわけ米、中の参加が鍵。
 米中首脳が合意に向けた意欲を示すなど政治的意志が存在。150か国(排出量にして約87%)が
約束草案を提出していることも好材料。
 しかし、解決すべき課題は多く、閣僚間の交渉を要する議題も多い。
 COP21で大枠に合意し、枠組みの詳細ルールはCOP21以降に送られる見込み。
主要論点
 差異化:
あらゆる要素(目的、緩和、適応、支援、透明性)において先進国・途上国の差異化が争点。
 緩和:
目標の義務に関する仕組み(法的拘束力、遵守規定)づくり。
野心を引き上げるための仕組み(定期的な見直し等)づくり。
 適応:
途上国の主張(特にロス&ダメージ等)への対応。
 支援:
途上国の主張(2020年以降の先進国による定量的な支援等)への対応。
 透明性:
既存の報告・検証制度からの移行。差異化のあり方。
 市場メカニズム:
市場メカニズム(二国間クレジット制度(JCM)を含む)を目標達成に活用するに際しての仕組み
づくり。
9
2.我が国の約束草案について
10
日本の約束草案(2030年度の温室効果ガス削減目標)のポイント
◆国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比
▲25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)にする。
◆エネルギーミックスと整合的なものとなるよう、技術的制約、コスト面の課題などを十分
に考慮した裏付けのある対策・施策や技術の積み上げによる実現可能な削減目標。
2013年度比(2005年度比)
エネルギー起源CO2
▲21.9% (▲20.9%)
その他温室効果ガス
(非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC
等4ガス)
▲ 1.5% (▲ 1.8%)
吸収源対策
▲ 2.6% (▲ 2.6%)
温室効果ガス削減量
▲26.0% (▲25.4%)
※JCM及びその他の国際貢献について
○二国間クレジット制度(JCM)については、削減目標積み上げの基礎とはしないものの、民間ベースの事業に
よる貢献分とは別に、毎年度の予算の範囲内で行う日本政府の事業により、2030年度までの累積で5,000万
から1億t-CO2の国際的な排出削減・吸収量が見込まれる。
○国際貢献として、JCMのほか、産業界による取組を通じた優れた技術の普及等により2030年度に全世界で
少なくとも10億t-CO2の排出削減ポテンシャルが見込まれる。
11
エネルギーミックスにおける電力需要・電源構成
電力需要
電源構成
(総発電電力量)
徹底した省エネ
1,961億kWh程度
経済成長
1.7%/年
電力
9666
億kWh
2013年度
(実績)
(対策前比▲17%)
12,780億kWh程度
(総発電電力量)
(送配電ロス等)
省エネ17%程度
10,650億kWh程度
省エネ+再エネ
で約4割
電力
9808
億kWh
程度
2030年度
再エネ19~20%
程度
再エネ22~24%
程度
原子力18~17%
程度
原子力22~20%
程度
LNG22%程度
LNG27%程度
石炭22%程度
石炭26%程度
石油 3%程度
石油 2%程度
2030年度
地熱 1.0
~1.1%程度
バイオマス
3.7~4.6%程度
風力 1.7%程度
太陽光 7.0%程度
水力 8.8
~9.2%程度
ベースロード比率
:56%程度
12
部門別のエネルギー起源CO2削減目標
 エネルギー起源CO2のうち、環境省が中心となって対策を進める業務その他部門、
家庭部門においては、2013年度比約40%減と大幅に削減することが必要。
600
(単位 百万トンCO2)
500
400
業務その他部門
300
40%減
▲6.5%
産業部門
▲27.4%
運輸部門
業務その他部門 ▲39.7%
▲39.4%
家庭部門
エネルギー転換部門
▲27.5%
200
家庭部門
100
39%減
0
1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030
13
排出削減目標の構造
○第一に、省エネによりエネルギー需要の抑制
○第二に、ゼロエミッション電源やCO2の少ないエネルギーの選択
※第189回国会安倍総理施政方針演説: 「あらゆる施策を総動員して、徹底した省エネル
ギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めてまいります。」
省エネ対策
エネルギー需要
‐ 経済成長
‐ 世帯数増加
再エネ
石油火力
ガス火力
原発
石炭火力
火力
電力以外
2030
電力
省エネ対策した場合のエネルギー需要
現在
エネルギー
供給構成
CO2
排出
石炭
ガス
重油
軽油
等
CO2
排出
CO2
排出
C
O
2
排
出
量
CO2排出
※このほか、森林吸収、メタンガス抑制、フロン対策等
14
徹底した省エネ(5030万kL相当)、温室効果ガス26%削減の達成に「COOL CHOICE」が果たす役割について
約束草案で見込んでいる省エネ量の内訳
 徹底した省エネルギー対策により、5,030万kL程度エネルギー需要を削減。
[省エネ量:万kL]

石油危機後並みの大幅なエネルギー効率改善(35%程度)を実現。
5000
燃費改善・次世代自動車の普及
4000
交通流対策(エコドライブ等)
3000
2000
住宅・建築物の断熱化、高効率給湯器
LEDなど高効率照明の導入
エネルギー管理の実施(工場、業務、家庭)
1000
更なる技術開発によるエネルギー効率の
向上に加えて、日本が世界に誇る省エ
ネ・低炭素型の「製品」「サービス」「行動」
の積極的な選択を促す必要がある。
省エネ型の家電・OA機器の普及
産業部門の省エネ等
家庭・業務部門で2013年度比約40%、運輸
部門で約30%のCO2排出量の
大幅削減を達成しなければならない
産業部門で2013年度比6.5%のCO2削減
0
15
約束草案で見込んでいる主な省エネ対策①
燃費改善・次世代自動車の普及
2台に1台が次世代自動車(保有ベース)
ハイブリッド自動車:3%(2012)→29%(2030)
電気自動車/プラグイン・ハイブリッド自動車:0%(2012)→16%(2030)
燃料電池自動車:0%(2012)→1%(2030)
クリーンディーゼル自動車:0%(2012)→4%(2030)
交通流対策(エコドライブ等)
・交通流対策の推進
・公共交通機関の利用促進等
・高度道路交通システム(ITS)の推進
・自動運転の推進
・エコドライブの推進
・カーシェアリング
等
住宅/建築物の省エネ化、高効率給湯器の導入
・新築住宅/新築建築物について、2020年までに段階的に省エネルギー基準への適合を義務化
・低炭素建築物の推進、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)/ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の促進
・高効率給湯器の導入
家庭用燃料電池:5.5万台(2012)→530万台(2030)
家庭用ヒートポンプ式給湯器:400万台(2012)→1400万台(2030)
16
約束草案で見込んでいる主な省エネ対策②
LEDなど高効率照明の導入
LED、有機EL等の高効率照明を用いた、高輝度な照明技術により省エネ
高効率照明のうち高効率LED・有機ELのシェア(保有ベース)は、LED照明
のトップランナー基準策定に伴い、2030年度でほぼ100%
エネルギー管理の実施(工場、業務、家庭)
・製造ラインの見える化を通じたエネルギー効率の改善
・HEMS/BEMSによる見える化・エネルギーマネジメント
HEMSの全世帯への導入
BEMSの約半数の建築物に導入
省エネ型の家電・OA機器の普及
・トップランナー基準等による、様々な製品(エアコン、冷蔵庫、複写機、プリンター 等)
の性能向上
国民運動の推進
・国民運動を通じた国民への情報提供の充実と省エネの行動変革
クールビズ・ウォームビズの実施徹底の促進
機器の買換え促進
等
17
約束草案で見込んでいる再エネ量の内訳・推進施策
◆総発電電力量(10,650億kWh程度)のうち、再生可能エネルギーは22~24%を占める。
◆足下から、太陽光は7倍、風力・地熱は4倍の発電電力量を見込んでいる。
[単位:億kWh]
風力
洋上風力
陸上風力
再生可能エネルギー導入推進施策
太陽光
非住宅
住宅
バイオマス
地熱
既導入量
中小規模
大規模
・固定価格買取制度の適正な運用
・規制緩和
・低コスト化・高効率化のための技術開発
・大型蓄電池の開発・実証
・送配電網の整備
等
水力
 再生可能エネルギーの導入は、低炭素社会
の実現に不可欠
 まずは今回示された目標を確実に達成し、
中長期的に更なる導入拡大を図る
既導入量
RPS
一般廃棄物等
バイオガス
建設資材廃棄物
未利用間伐材
一般木材・農作物残渣等
中小水力(追加:130~201万KW)
大規模水力(追加)
18
3.約束草案の実現に向けた施策について
19
民生部門に重点を置いた当面の対策
 2030年度に2013年度比26%減(2005年度比25.4%)、その中でも環境省が重点的に
対策を進める民生分野(業務その他部門及び家庭部門)では4割程度の大幅削減を行う必要
があり、対策を抜本的に拡充する必要がある。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書を踏まえ、我が国でも第一次安倍政権時に
2050年世界半減を提唱。第二次安倍政権時にも2050年半減・先進国80%削減を堅持。
 できるだけ速やかに地球温暖化対策推進法に基づく地球温暖化対策計画を策定(閣議決
定)。制度面での対応(各種規制や税制、対策の誘導的手法)と、エネルギー対策特別会計予
算の活用による財政・金融面での対応を両輪として、総合的かつ計画的に実施していく。
エネ特予算
[環境省]:1,125億円
・主に業務分野、家庭分野
[経産省]:3,207億円
・主に産業分野、エネルギー転換分野
規制・基準
低炭素化促進投資
2030年まで累積約100兆円
・排出抑制指針
・年1%省エネ推進義務
・住宅建築物断熱化義務
・自動車燃費規制
・家電等トップランナー基準 等
再生可能エネルギー
税 制
その他の予算
[国土交通省]:道路、住宅、港湾、鉄道、下
水道等
[環境省]:廃棄物
[農水省]:農林水産業の省エネ
[文科省]:技術開発
FIT制度
2015年:約1兆円、
設備認定案件が全て実現:約3兆円/年
・エコカー減税
・グリーン投資減税
・省エネ住宅減税
・モーダルシフト減税
・省エネ住宅向け贈与税特例
20
地球温暖化対策の推進に関する法律
⼤気中の温室効果ガス※の濃度を安定化させ、地球温暖化を防⽌することが“⼈類共通の課題”
地球温暖化対策計画の策定(政府の地球温暖化対策推進本部を経て閣議決定)
社会経済活動その他の活動による温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置
等により地球温暖化対策の推進を図る。
※CO2、メタンなど7種類
1.温室効果ガスの排出の抑制等のための施策
政府・地方公共団体実行計画
 国・⾃治体がその事務・事業に関して⾏う排出削減等の計
画
 都道府県・指定都市・中核市は、⾃然エネルギー利⽤
促進、公共交通機関の利便増進等、区域の⾃然的
社会的条件に応じた施策を位置づけ
 都市計画、農村振興地域整備計画等は地⽅公共
団体実⾏計画と連携
温室効果ガス算定報告公表制度
 ⼀定以上の温室効果ガスを排出する事業者に対し、当
該排出量を算定し、国に報告することを義務付け、国が
データを集計・公表
 事業者、フランチャイズチェーン単位での報告
2.その他
排出抑制等指針
 事業活動に伴う排出抑制(⾼効率設備の導⼊、冷暖
房抑制、オフィス機器の使⽤合理化 等)
 ⽇常⽣活における排出抑制(製品等に関するCO2⾒え
る化推進、3Rの促進)
この2つの努⼒義務に関して、適切かつ有効な実施を図るた
め必要な指針を公表
地球温暖化防止活動推進センター等
 全国センター(環境⼤⾂)
⼀般社団法⼈地球温暖化防⽌全国ネットを指定
 地域センター(都道府県知事等)
47都道府県+8市が指定(27年8⽉現在)
 温暖化防⽌活動推進員を都道府県知事等が委嘱
 京都メカニズムの取引制度(割当量⼝座簿等)
 森林等による吸収作⽤の保全等
 温室効果ガスの排出がより少ない⽇常⽣活⽤製品等の普及促進 等
21
エネ特における環境省の役割と対策の「四本柱」
環境省の役割
右の役割の下、以下4つの柱に
基づき戦略的に取組を実施。
① 民生・需要サイドからの社会変革を強力に推進
② 国際交渉を主導する事業を推進
③ 各省の総合調整役として連携事業を推進
平成28年度における「エネルギー対策特別会計」概算要求額は、 1,836億円 (平成27年度予算額 1,125億円)
第一の柱
業務・家庭部門を含む地域まるごと再エネ・省エネの推進
国内展開
○ 地域内の再生可能エネルギー(電気・熱)の最大限の活用
○ 地域内の省エネによる大幅なCO2削減(住宅、業務用ビル等における省CO2の促進)
○ 公共交通・物流システムの再エネ・省エネ導入促進 ○廃棄物エネルギーの徹底活用
第二の柱
省エネの徹底と再エネの最大限導入のため技術の革新と実証・実用化
○ 社会を一新する最先端技術(最高効率デバイス、低炭素な水素社会の構築等)、将来の必
須技術(CCS等)等の開発
○ 先進的な対策技術の実証・導入支援(セルロースナノファイバー等の次世代素材の活用等)
第三の柱
社会システムから大きく変革する環境金融や国民運動等
○ 金融を活用した低炭素投融資の促進
○ 人材育成・国民運動の推進、情報提供等の基盤整備
海外展開
第四の柱
優れた低炭素技術の海外展開を通じた世界全体の排出削減への貢献
○ 日本の削減目標に寄与するクレジットの確保
○ 優れた低炭素技術を持つ企業の海外展開の支援
○ 国際交渉力の増強・応援国の増加
22
業務部門・家庭部門の省CO2に向けた今後の施策について
業務部⾨における施策の例
●ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業
先進的な業務⽤ビル等(ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー
・ビル))の実現と普及拡⼤を⽬指して、中⼩規模業務ビル等に
対し、省エネ・省CO2性の⾼いシステムや⾼性能設備機器等の
導⼊を⽀援する。
オーナーとテナントが協働で低炭素化を促進
オーナー
●テナントビルの省CO2促進事業
テナントが⼊居するビルはオーナーに光熱費削減のメリッ
トが感じられにくいため低炭素化が進みにくい状況にある。
環境負荷を低減する取組についてオーナーとテナントの協
働を契約や覚書等で取決めを結び(グリーンリース契約等)
省CO2を図る事業を⽀援する。
テナント
ビルのCO2
削減
家庭部⾨における施策の例
 賃貸住宅における省CO2促進モデル事業
新規着⼯件数の約4割を占める賃貸住宅では、低炭素価値が評価されておらず、賃料アップや⼊居者獲
得につながらないため、省CO2型の住宅の供給、市場展開が遅れている。
市場への省CO2性能に優れた賃貸住宅の供給促進と、市場において低炭素価値が評価されるための普及
啓発を⼀体的に⾏う。
CO2排出量が少ない賃貸住宅を新築、⼜は既築住宅を改修する場合に必要となる給湯、空調、照明設備
等の導⼊を⽀援する。
<賃貸住宅(集合or⼾建て)>
低炭素化
住宅性能の表⽰
(情報提供の⽀援)
賃貸市場における低炭素型住
宅の供給と普及啓発の
⼀体的実施により、
賃貸住宅からの
CO2⼤幅削減
23
再エネ等を活用した水素社会の実現
 水素は、燃料電池等により効率的な利用が可能。また、再生可能エネルギー等のエネルギー貯
蔵にも活用できることから、CO2排出削減に大きく寄与する可能性を持つ。
 一方、水素の製造、貯蔵、輸送の各段階でエネルギー投入が必要であるため、地球温暖化対
策の観点からは、CO2削減効果をチェックするとともに、低炭素化の技術の確立が必要。
 水素利活用の統合的システム(サプライチェーン)の確立が急務。
製造
輸送・貯蔵
H2
再生可能エネルギー
未利用エネルギー
気体圧縮貯蔵
液化貯蔵
化学貯蔵
利用
H2
全長170m
東京タワー
の半分
ビル60階建
FCV
FCバス
風力発電
廃棄物発電
燃料電池
 サプライチェーン全体でのCO2削減効果評価手法の確立
 地方自治体と連携し、先進的かつ低炭素な水素技術を実証し、地域の特性を
活かした低炭素な水素サプライチェーンを確立
24
電力部門CO2排出量とその割合の推移
 電力部門からのCO2排出量は、エネルギー起源CO2排出量の約4割を占める。
 1990年から電力全体で2億トン(石炭は約1.7億トン、LNGは約0.9億トン)増加している。
 同じ発電量当たりのCO2排出量は、石炭は0.71~0.87㎏、LNGは0.32~0.42㎏
2030年は、長期エ
ネルギー需給見通
しにおける想定
出所) エネルギー起源CO2排出量(1990年度~2013年度): 日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2015年4月版
エネルギー起源CO2排出量(2030年度):長期エネルギー需給見通し 関連資料(資源エネルギー庁)
発電に伴うCO2排出量(1990年度~2013年度):総合エネルギー統計(資源エネルギー庁)より作成 (事業用発電及び自家発電を対象)
発電に伴うCO2排出量(2030年度): 長期エネルギー需給見通し 関連資料(資源エネルギー庁)より作成 (※)
(※)燃料種別発電電力量に、各電源の排出係数を乗じて算出したCO2排出量を、長期需給見通し関連資料における電力由来エネルギー起源CO2排出量にもとづき按分して算出。なお、排出係数は、石炭及び天然ガスは
平成27年度環境白書、石油は電力中央研究所「日本の発電技術のライフサイクルCO2排出量評価(2010年7月)」等より設定。
25
石炭火力の設備容量とCO2排出量について
○2030年のエネルギーミックスでは、⽯炭⽕⼒のCO2排出量を約2.3億トンに削減すると想定。これを、発電容量
ベースに割り戻すと、約4600万kW程度に相当する。
←現在、⽯炭の新増設の計画は約1800万kW(平成27年10⽉現在)。全て実⾏されると、⽼朽⽕⼒が稼働45年で
廃⽌するとしても、2030年には約5900万kW(発電効率や稼働率がミックスの想定通りになるとしても、
CO2排出は約2.7億トン)。2030年の削減⽬標を4000万トン以上超過することになる。
石炭火力の設備容量とCO2排出量
設備容量(万KW)
6000
既にミックス
以上の容量
約2.74億トン
約2.7億トン
対策がされな
いと、大幅な
排出超過
約2.3億トン
5000
2.5
2
4000
3000
3
約5900万
約4900万
1.5
約4600万
2000
1
1000
0.5
CO2排出量(億t‐CO2)
3.5
7000
0
0
2013年
(実績)
2030年
(ミックス)
2030年
(現状追認)
設備容量
CO2排出量
<2013年度実績>
石炭の発電容量約4900万Kw : 総合エネルギー統計より推計。
石炭のCO2排出量約2.7億トン : 総合エネルギー統計の燃料消費量から求めた値で、我が国の温室効果ガス排出インベントリでも用いられている公表値。
<2030年度ミックス> 石炭の発電容量約4600万Kw : エネルギーミックスは石炭の発電電力量を2810億kWh(稼働率70%と設定)としているため、割り戻したもの。
石炭のCO2排出量約2.3億トン : エネルギーミックスでは石炭のCO2係数はUSC並み0.81kg‐CO2/kWhという設定。2810億kWh×0.81kg‐CO2/kWh=約2.3億トン
<2030年度現状追認> 石炭の発電容量約5900万kW : 各社公表資料等によると、約1800万KW新増設の計画がある。45年廃止の想定で約800万kW廃止になり、現状から約1000万kWの増加。
石炭のCO2排出量約2.74億トン : 石炭の設備容量約5900万kWについて、ミックスと同じ設定(稼働率70%、平均USC相当のCO2係数)で計算すると、約2.74億トン
26
電力業界の自主的枠組みについて
【電⼒業界の⾃主的枠組みの概要(平成27年7⽉17⽇公表)】
○10電⼒・電源開発㈱・⽇本原⼦⼒発電㈱・新電⼒有志23社が参加。
○政府が⽰すエネルギーミックスから算出した、2030年における温室効果ガスの排出係数
0.37kg-CO2/kWh程度を⽬指す。
○⽕⼒発電所の新設等におけるBAT活⽤等の取組を推進。
○実施状況を毎年フォローアップし、結果等を翌年度以降の取組に反映。
【武豊⽕⼒発電所リプレース計画・計画段階環境配慮書に対する環境⼤⾂意⾒(8⽉14⽇)】
○掲げられた⽬標を如何にして達成するのかという実効性の観点から、現時点で公表されている内容
については、例えば、
①⽬標を達成するために、⽯炭⽕⼒のCO2排出量をどのようにして削減するのか
②進捗管理(PDCA)をするなかで、全体のCO2排出が⽬標通りにおさまらない場合にどのように
対応するのか
など、詰めるべき課題がある。
【武豊⽕⼒発電所リプレース計画・計画段階環境配慮書に対する経産⼤⾂意⾒(8⽉27⽇)】
○平成27年7⽉17⽇に35社により策定し、公表された「⾃主的枠組みの概要」等に関して、
「⽇本の約束草案」及びエネルギーミックスの達成に向け、エネルギー政策の検討も踏まえ
た国の地球温暖化対策の⽬標・計画の策定と併せて、早急に⾃主的枠組みの⽬標の実現のた
めの具体的な仕組みやルールづくり等が⾏われるよう努めること。
27
二国間クレジット制度(JCM)について
 途上国への優れた低炭素技術等の普及を通じ、地球規模での温暖化対策に貢献するとともに、
日本からの温室効果ガス排出削減等への貢献を適切に評価し、我が国の削減目標の達成に活
用する。
 国連気候サミット(平成26年9月)において、安倍総理が『JCMを着実に実施すること』を表明する
等、政府全体としてJCMを推進。
 現在、インドネシア、ベトナム等の15か国と署名済み。 その他の国とも署名に向けた協議を行って
おり、パートナー国の増加に向けて取組中。
 JCMを推進するため、JCMプロジェクトの組成に係る支援(設備補助事業・JICA等連携資金・ADB拠
出金・REDD+補助事業・NEDO実証事業によるプロジェクト支援、都市間連携の協力を含む実現可
能性調査等)及びJCMの手続に係る支援を実施。
日本
日本の削減目標
達成に活用
優れた低炭素技術等の普及や
緩和活動の実施
両国代表者からなる
合同委員会で管理・運営
クレジット
パートナー国
JCMプロジェクト
測定・報告・検証
温室効果ガスの排出
削減・吸収量
パートナー国(15か国)
モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア
コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー (署名順)
28
4.気候変動の影響への適応について
29
気候変動の影響への適応とは
※気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書では、適応について、「現実の又は予想される気候及びその影響
に対する調整の過程。人間システムにおいて、被害を穏やかにする、又は有益な機会を活かすために、現実のあるいは予測
される気候及びその影響に対して調整を行う過程のこと。自然システムにおいては、現実の気候及びその影響に対する調整
の過程のことで、人間の介入が予測される気候への調整を促進することもある。」とされている。
30
我が国において既に起こりつつある気候変動の影響
米・果樹
異常気象・災害
米が白濁するなど品
質の低下が頻発。
日降水量200ミリ以上の大雨の発生日数が増加傾向
図: 洪水被害の事例
(写真提供:国土交通省中部地方整備局)
図: 水稲の白未熟粒(写真提供:農林水産省)
・水稲の登熟期(出穂・開花から収穫までの期間)の
日平均気温が27℃を上回ると玄米の全部又は一部
が乳白化したり、粒が細くなる「白未熟粒」が多発。
・特に、登熟期の平均気温が上昇傾向にある九州地方
等で深刻化。
(出典:気候変動監視レポート2013(気象庁))
デング熱の媒介生物
であるヒトスジシマカ
の分布北上
熱中症・
感染症
2013年夏、 20都市・地区計で15,189人の熱中
症患者が救急車で病院に運ばれた。
(国立環境研究所 熱中症患者速報より)
図 ヒトスジシマカ
(写真提供:国立感染症研究所
昆虫医科学部)
図: みかんの浮皮症
(写真提供:農林水産省)
成熟後の高温・多雨により、果皮と果肉が
分離する。(品質・貯蔵性の低下)
サンゴの白化・ニホンジカの生息域拡大
農林産物や高山植物等の食害が発生
農山村の過疎化や狩猟人口の減少等に加
え、積雪の減少も一因と考えられる。
生態系
図 サンゴの白化(写真提供:環境省)
31
(写真提供:中静透)
政府の適応計画策定に向けたステップ
中央環境審議会地球環境部会に「気候変動影響評価等小委員会」を設置(平成25年7月)
⇒気候変動の影響及びリスク評価と今後の課題を整理し、意見具申を取りまとめ
(平成27年3月)
「気候変動の影響への適応に関する関係府省庁連絡会議(局長級)」を設置
(平成27年9月11日)
気候変動の影響への適応に関する関係府省庁連絡会議において、
政府の「気候変動の影響への適応計画(案)」を取りまとめ(平成27年10月23日)
平成27年10月23日~11月6日の間、パブリックコメント実施
COP21※に向けた我が国の貢献となるよう、政府の適応計画を策定
(11月下旬頃 閣議決定(予定)) ※気候変動枠組条約第21回締約国会議
11/30〜 12/11(パリ)
32
気候変動の影響への適応計画(案)について
○IPCC第5次評価報告書によれば、温室効果ガスの削減を進めても世界の平均気温が上昇すると予測
○気候変動の影響に対処するためには、「適応」を進めることが必要
○平成27年3月に中央環境審議会は気候変動影響評価報告書を取りまとめ(意見具申)
○我が国の気候 【現状】
年平均気温は100年あたり1.14℃上昇、日降水量100mm以上の日数が増加傾向
【将来予測】 厳しい温暖化対策をとった場合
:平均1.1℃(0.5~1.7℃)上昇
温室効果ガスの排出量が非常に多い場合 :平均4.4℃(3.4~5.4℃)上昇
※20世紀末と21世紀末を比較
<基本的考え方(第1部)>
■目指すべき社会の姿
○気候変動の影響への適応策の推進により、当該影響による国民の生命、財産及び生活、経済、自然環境等
への被害を最小化あるいは回避し、迅速に回復できる、安全・安心で持続可能な社会の構築
■基本戦略
■対象期間
(1)政府施策への適応の組み込み
(2)科学的知見の充実
(3)気候リスク情報等の共有と提供を通じた
理解と協力の促進
(4)地域での適応の推進
(5)国際協力・貢献の推進
○21世紀末までの長期的な展望を意識しつつ、
今後おおむね10年間における基本的方向を示す
■基本的な進め方
○観測・監視や予測を行い、気候変動影響評価を実施し、そ
の結果を踏まえ適応策の検討・実施を行い、進捗状況を把
握し、必要に応じ見直す。このサイクルを繰り返し行う。
○おおむね5年程度を目途に気候変動影響評価を実施し、必
要に応じて計画の見直しを行う。
<分野別施策(第2部)>
■農業、森林・林業、水産業
■水環境・水資源
■自然生態系
■自然災害・沿岸域
■健康
■産業・経済活動
■国民生活・都市生活
<基盤的・国際的施策(第3部)>
■観測・監視、調査・研究
■気候リスク情報等の共有と提供
■地域での適応の推進
■国際的施策
33
気候変動の影響と適応の基本的な施策(例)
分野
予測される気候変動の影響
一等米の比率低下
農業
農業、
森林・
林業、
水産業
適応の基本的な施策
適応以外の他の政策目的を有し、
かつ適応にも資する施策を含む。
適応以外の他の政策目的を有し、
かつ適応にも資する施策を含む。
高温耐性品種の開発・普及、肥培管理・水管理等の徹底
りんご等の着色不良、栽培適 優良着色系品種への転換、高温条件に適応する育種素材の開
地の北上
発、栽培管理技術等の開発・普及
病害虫の発生増加や分布域 病害虫の発生状況等の調査、適時適切な病害虫防除、輸入検
の拡大
疫・国内検疫の実施
山地災害の発生頻度の増加、 山地災害が発生する危険性の高い地区の的確な把握、土石流
や流木の発生を想定した治山施設や森林の整備
森林・ 激甚化
林業
マイワシ等の分布回遊範囲
水産業 の変化(北方への移動等)
漁場予測の高精度化、リアルタイムモニタリング情報の提供
水環境 水質の悪化
工場・事業場排水対策、生活排水対策
あまみず
水環境・
無降水日数の増加や積雪量 既存施設の徹底活用、雨水・再生水の利用、渇水被害軽減のた
水資源 水資源 の減少による渇水の増加
めの渇水対応タイムライン(時系列の行動計画)の作成の促進
等の関係者連携の体制整備
自然
生態系
ニホンジカの生息域の拡大、 気候変動に伴い新たに分布した植物の刈り払い等による国立公
各種 造礁サンゴの生育適域の減 園等の管理
気候変動に生物が順応して移動分散するための生態系ネット
生態系 少
ワークの形成
34
気候変動の影響と適応の基本的な施策(例)
分野
予測される気候変動の影響
大雨や短時間強雨の発生頻度の増
加と大雨による降水量の増大に伴う
水害の頻発化・激甚化
水害
自然
災害・
沿岸域
適応の基本的な施策
適応以外の他の政策目的を有し、
かつ適応にも資する施策を含む。
○比較的発生頻度の高い外力に対する防災対策
・施設の着実な整備 ・災害リスク評価を踏まえた施設整備
・できるだけ手戻りない施設の設計 等
○施設の能力を上回る外力に対する減災対策
①施設の運用、構造、整備手順等の工夫 (・既存施設の機能を最大
限活用する運用 等)
②まちづくり・地域づくりとの連携 (・まちづくり・地域づくりと連携した浸
水軽減対策 ・災害リスク情報のきめ細かい提示・共有 等)
③避難、応急活動、事業継続等のための備え (・タイムライン策定等
による壊滅的被害の回避 等)
高潮・ 海面上昇や強い台風の増加等による 海象のモニタリング及び同結果の評価、港湾・海岸における粘り強い構
浸水被害の拡大、海岸侵食の増加
造物の整備の推進、港湾のハザードマップ作成支援、順応的な対応を
高波
可能とする技術の開発、海岸侵食への対応の強化
土砂
災害
土砂災害の発生頻度の増加や計画
規模を超える土砂移動現象の増加
暑熱
夏季の熱波が増加、熱中症搬送者数 気象情報の提供や注意喚起、予防・対処法の普及啓発、発生状況等
の倍増
の情報提供
健康
人命を守る効果の高い箇所における施設整備、土砂災害警戒区域等の
基礎調査及び指定の促進、大規模土砂災害発生時の緊急調査の実施
感染症を媒介する節足動物の分布域 感染症の媒介蚊の幼虫の発生源の対策及び成虫の駆除、注意喚起
感染症 の拡大
産業・
経済活動
国民
生活・
都市生
活
金融・
保険
保険損害の増加
損害保険協会等における取組等を注視
インフラ、 短時間強雨や渇水頻度の増加等によ 地下駅等の浸水対策、港湾の事業継続計画(港湾BCP)の策定、水道
施設・廃棄物処理施設の強靱化
ライフライン るインフラ・ライフラインへの影響
ヒートアイラン 都市域でのより大幅な気温の上昇
ド
緑化や水の活用による地表被覆の改善、人工排熱の低減、都市形態の
改善
35
気候変動影響評価の概要
【重大性】
【確信度】
章
農業、森
:特に大きい
:高い
節
農業
:「特に大きい」とは言えない -:現状では評価できない
:中程度
:低い
-:現状では評価できない
項目
重大性 緊急性 確信度
水稲
林・林業、
果樹
水産業
麦、大豆、飼料作物等
野菜
高潮・高波
-
業
-
野生鳥獣による影響
河川
特用林産物(きのこ類等)
高潮・高波
熱中症
沿岸域及び閉鎖性海域
-
臨床症状に至らない健
-
産業経済 産業・経 製造業
活動
済活動 エネルギー需給
商業
-
-
建設業
-
-
-
医療
-
-
-
-
-
金融・保 金融・保険
生物季 生物季節
険
節
観光業
観光業
その他
その他の影響(海外影響
水害
在来種
洪水
等)
国民生
活・都市
生活
インフラ・ラ
水道、交通等
イフライン
内水
等
高潮・高波
文化・歴 生物季節
高潮・
海面上昇
史などを 伝統行事、地場産業
高波
高潮・高波
感じる暮
海岸侵食
らし
海岸侵食
その他 死亡リスク
脆弱集団への影響
康影響
温帯・亜寒帯
の変動
自然災
害・沿岸
域
海面上昇
河川
-
個体群 外来種
淡水生態系
-
-
合影響
態系
分布・
増養殖等
境
その他
人工林
海洋生 海洋生態系
沿岸生態系
節足動物媒介感染症
温暖化と大気汚染の複
里地・里山生態系
自然林・二次林
水資源
感染症
-
態系
湖沼・ダム湖
熱中症
-
沿岸生 亜熱帯
海洋生態系
死亡リスク
その他の感染症
人工林
態)
緊急性 確信度
自然林・二次林
湿原
回遊性魚介類(魚類等の生
重大性
-
態系
水環
暑熱
項目
-
水供給(地表水)
水環境・
節
水系・食品媒介感染症
淡水生 湖沼
分布・個体群の変動
章
健康
-:現状では評価できない
高山帯・亜高山帯
海岸侵食
野生鳥獣による影響
緊急性 確信度
:低い
物質収支
木材生産(人工林等)
水産
重大性
水需要
農業生産基盤
林業
項目
:中程度
水資源 水供給(地表水)
自然生態 陸域生
系
態系
※「生態
系」に対
する評価
のみ記載
病害虫・雑草
土石流・地すべり等
節
:高い
水供給(地下水)
畜産
森林・
章
水環境・
水資源
【緊急性】
-
土砂災 土石流・地すべり等
害
その他 強風等
その他
暑熱による生活への影
響
36
5.グリーン経済の実現に向けて
〜環境⾦融からのアプローチ〜
37
環境に配慮した投融資の広がり
サプライチェーンのグローバル化による、リスクと機会の把握の重要性の⾼まり
リスク・・サプライチェーン上の労働、資源調達・開発などの課題が、経営に重⼤な影響を及ぼす可能性
機 会・・資源利⽤の効率化、⽣産性向上の取組などが、中⻑期的な業績に寄与する可能性
Global SRI Assets by Region (US$)
Canada
$945 Bn.
Europe
$13,608 Bn.
Asia
$53Bn.
環境(E)、社会(S)、企業統治
(G)の⾮財務項⽬を投資分析や、意
思決定に反映させる、ESG投資が欧
⽶を中⼼に急速に拡⼤
国際的潮流へ
Australia & New
Zealand $180 Bn.
USA
$6,572 Bn.
●日本国内の動き
2014年:スチュワードシップ・コード
2015年:コーポレートガバナンス・コード
World Total:
21,358 Bn.
出典: 2014 Global Sustainable Investment Review
投資家、企業のESG情報への意識の高まり
38
投資に活⽤される環境情報開⽰促進
●環境報告書作成の取組を⽀援-環境配慮促進法(2005年施⾏)
●投資家等に環境情報が活⽤されるようにするための情報基盤整備を開始(2013年度〜)
・財務報告で広く採⽤されているXBRL*を活⽤
*eXtensible Business Reporting Language :財務報告の作成・流通・利⽤が容易となるコンピュータ⽤語。世界約50カ国で導⼊が進んでいる。
・CDPの質問票等を参考に、関係者にとって効率的・効果的なツールを⽬指す
企業
情報
環境情報等の⾮
財務情報
情報開⽰
環境報告書
など
・GHG排出量と
削減状況
・ガバナンス
・リスク機会 など
・売上
・営業利益
・利益率
・純資産 など
投資家等
整備に着⼿
中⻑期
投資家
企業・⾦融機関の参
加を得て試⾏
資⾦
情報開⽰
財務情報
開⽰基盤
情報
有価証券
報告書など
開⽰基盤
⽇本版スチュワードシップコードの
公表などで、国内も増加⽅向へ
有報検索
システム
短期
投資家
(EDINET)
資⾦
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平成27年度予算(案)額
43百万円(27百万円)
⽀出予定先:⺠間団体等
グリーン経済の実現に向けた環境⾦融の推進
グリーン経済への転換を進めるためには、
環境分野への資⾦の流れを作り出すことが不可⽋
経済の⾎流である「⾦融」の役割は重要
⾦融 = 経済活動の⾎流
企業の環境に配慮した事業活動への投融資
低炭素プロジェクトへの投融資
環境分野への投融資が加速
グリーン経済への転換
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