路車間通信の適用性 (PDF 105 KB)

路 車 間 通 信 の 適 用 性
岩 田 武 夫
Takeo
Iwata
ITS 統括研究部
近 年 , ITS 路 車 間 通 信 の メ デ ィ ア と し て , DSRC, 無 線 LAN, 次 世 代 携 帯 電 話 , 地 上 デ ジ タ ル 放 送 等 の 各 種 メ
ディアが出現してきている.このような背景の中,路車間通信のアプリケーション将来動向とそれぞれの利用シ
ーンに適したメディアとして,何が適するかという観点から比較検討した.なお,この検討は将来の方向性を示
すものではなく,当面考えられる将来アプリケーションに対し,各種メディアの適用性について醒めた目で検討
したものである.
1. ま え が き
2.1 DSRC
近年,各種の新しい移動体通信技術の実用化が行わ
DSRC は 通 信 範 囲 が 最 大 30m 程 度 の 小 ゾ ー ン ス ポ ッ
れ て い る . こ れ ら の 技 術 を ITS 路 車 間 通 信 に 適 用 で き
ト通信であり,同一周波数を繰り返し利用することで
れ ば ITS 分 野 の 更 な る 発 展 が 期 待 で き る こ と か ら , そ
周波数の有効利用が可能となる.変調方式,伝送速度
れ ら 技 術 の ITS へ の 適 用 可 能 性 に つ い て 研 究 し , 可 能
等は表1のとおりである.
性 の あ る 用 途 を 整 理 し た .ITS に お け る 路 車 間 通 信 は ,
広く移動体通信技術をその技術基盤として有するもの
で あ る が ,近 年 の 移 動 体 通 信 技 術 と し て DSRC の 他 に
無 線 LAN, 第 3 世 代 携 帯 電 話 , 地 上 デ ジ タ ル 放 送 等 ,
各種通信メディアが実用化されている.これらの技術
的 特 性 を 明 ら か に し , 近 未 来 に ITS で 想 定 さ れ る 利 用
シーンを総合的に考察して,それぞれのメディアの
表1
DSRC の 通 信 方 式
変調方式
ASK, QPSK
伝送速度
ASK:1Mbps, QPSK:4Mbps
無線アクセス方式
TDMA-FDD
TDMA 多 重 数
2,4,8 で 可 変
ITS 路 車 間 通 信 へ の 適 用 可 能 性 の 有 無 を 検 討 し た .
DSRC 規 格 に ア プ リ ケ ー シ ョ ン サ ブ レ イ ヤ (ASL)規
2. 対 象 メ デ ィ ア と そ の 特 性
格 が 追 加 標 準 化 さ れ た こ と に よ り ,従 来 ETC 専 用 で あ
路 車 間 通 信 技 術 の ITS ア プ リ ケ ー シ ョ ン へ の 適 用 性
っ た DSRC が 多 目 的 に 利 用 可 能 と な っ た . DSRC の 伝
を 検 討 す る に あ た り 、始 め に 路 車 間 通 信 の 対 象 と し て ,
送 速 度 は QPSK 変 調 で 4Mbps で あ る が ,プ ロ ト コ ル フ
現在実用化が展開中,または近未来に実用化が想定さ
ァ ク タ の 関 係 で 実 行 伝 送 レ ー ト は 1.3Mbps 程 度 に 低 下
れる次の 6 種の代表的な路車間通信メディアを取上げ
する.また通信ゾーン内の複数の車両と同時通信を行
ることとした.
うと図 1 のとおり 1 台当りの実行伝送レートは暫時低
①
DSRC
②
無 線 LAN
下する.
こ の 図 1 の 関 係 は ,次 式 で 近 似 的 に 表 さ れ る .伝 送
③
次 世 代 ( 3 G) 携 帯 電 話
レ ー ト を R ,MAC 及 び プ ロ ト コ ル フ ァ ク タ を k ,通 信
④
ミリ波
ゾーン内の同時通信車両台数をnとすると,実行伝送
⑤
地上デジタル放送
レートをReとして,
⑥
準天頂衛星
1
Re = k ⋅ ⋅ R
n
それぞれの路車間通信メディアの無線通信特性と
通信範囲,通信形態及び伝送レート等について調査し
.
こ こ で , R は QPSK 変 調 方 式 の 場 合 4Mbps で あ り ,
た . 特 に 伝 送 レ ー ト は , ITS ア プ リ ケ ー シ ョ ン へ の 適
k = 0.3 に 相 当 す る . す な わ ち , 実 行 伝 送 レ ー ト は 通
用にあたりアプリケーションデータの最大実効伝送レ
信ゾーン内の同時通信車両台数が増えるとその分だけ
ートがキーファクタになることから,通信メディア毎
低下する.
に エ ア イ ン タ フ ェ ー ス の PHY レ ベ ル 伝 送 レ ー ト だ け
また,路側から車両側への同報通信,放送通信であ
でなく,アプリケーションから見たデータの最大実効
る片方向通信では,通信ゾーン内の車両台数に関わり
伝送レートを検討することとした.
なくn=1 の場合と同じである.
802.11a, 802.11g と 進 化 し て き た . 最 近 話 題 に な っ て
1400.00
い る WAVE は 801.11p で あ る .
5 slot/frame
9 slot/frame
1200.00
IEEE は 米 国 規 格 で あ り ,日 本 で 使 用 可 能 な 周 波 数 及
び使用条件は若干異なる.詳細は電波法施行規則及び
実効伝送レート (kbps)
1000.00
電 波 産 業 会 (ARIB)規 格 に よ る こ と と な る .
無 線 LAN の デ ー タ レ ー ト R は , 表 2 に 示 す と お り
800.00
802.11a 及 び 802.11g で 最 大 54Mbps,802.11b は 最 大
600.00
11Mbps と 見 か け 高 速 な 規 格 で あ る .こ れ は 静 止 時 の 短
距離の時であり,表2に示したように通信距離に依存
400.00
し 大 き く 低 下 す る .ま た ,DSRC と 同 様 に MAC 及 び プ
ロトコルファクタが関係し,実行伝送レートは低下す
200.00
る.
0.00
1台
図1
2台
3台
4台 5台 6台 7台
下り同時通信車両台数
8台
通信方法は原則として回線が空いていたら「キャリ
9台 10台
ア 確 認 → デ ー タ 送 信 → ACK 確 認 」 と い う 手 順 で あ る .
DSRC の 同 時 通 信 台 数 と 実 行 伝 送 レ ー ト
またデータをパケットで送信するためパケットデータ
長に依存する.
2.2
図 2 は 無 線 LAN の IP プ ロ ト コ ル 伝 送 の 場 合 で ,
無 線 LAN
無 線 LAN は , 米 国 IEEE802.11 規 格 と し て ま と め ら
802.11b,11g の と き m バ ケ ッ ト を 送 信 す る 時 間 は ,
t = ( 8m + 1488) / R + 494μ s
・・802.11b,11g
ー プ )を 作 り 規 格 作 成 及 び メ ン テ ナ ン ス を 行 っ て い る .
t = ( 8m + 1488) / R + 142μ s
・・802.11a
現 在 ま で に 802.11a∼ 802.11d,802.11f∼ 802.11h が 規 格
実行伝送レートReは次式で求まる.
れ て い る . 802.11 で は 規 格 テ ー マ 毎 に TG(タ ス ク グ ル
R e = 8m / t
化 済 で あ り , 802.11i∼ 802.11p が 作 業 中 ま た は 提 案 中
の も の で あ る . 無 線 LAN の 歴 史 は , IEEE802.11b ,
表2
項
目
呼称
802.11a 相 当
802.11b 相 当
802.11g 相 当
5GHz 帯 無 線
5.2GHz 帯 小 電 力
小電力データ通信
第 2 世代小電力
アクセスシステム
データ通信システム
システム
データ通信システム
STD-33
STD-T66
ARIB 規 格
周波数帯
日 本 の 無 線 LAN 規 格
STD-T70, STD-T71
4.9 – 5.0 GHz
*1
,
(日本)
5.03 –5.091 GHz * 2
5.15 – 5.25 GHz
2.471 – 2.497 GHz
2.4 – 2.4835 GHz
変調方式
OFDM, DSSS etc.
OFDM, DSSS
SS(DS, FH)
OFDM, SS etc.
100m(typ.)
通 信 環 境 、 データレートに 依 存
通信範囲
屋 外 160 m(11Mbps)
屋 外 100m(54Mbps)
(下段は静止時
36 m(54Mbps)
550m(1Mbps)
270m(6Mbps)
の実施例)
200m(6Mbps)
屋 内 25m(11Mbps)
屋 内 40m(54Mbps)
データレートR
チャネル数
(日本)
6− 54 Mbps
7 ch
100m(6Mbps)
10− 54 Mbps
1− 11 Mbps
6− 54 Mbps
4 ch
3 ch
(20 MHz/ch)
( 5 MHz/ch)
(20 MHz/ch,
10 MHz/ch * 3 ,
5 MHz/ch)
通信形態
115m(1Mbps)
加入者局は基地局
とのみ通信する
屋内用途限定(屋外で
は気象レーダから干渉
を受ける可能性あり)
13 ch
( 電 子 レ ン ジ 、Bluetooth 等 の ISM 機 器 や ア マ チ
ュア無線局から干渉を受ける可能性あり)
*1
2007 年 ま で は 固 定 マ イ ク ロ と 共 用 , そ れ 以 降 は 専 用 で 使 用 .
*2
2007 年 ま で の 暫 定 使 用 . MLS( 自 動 着 陸 シ ス テ ム ) に 割 当 て 済 み .
*3
IEEE802.11j と し て IEEE で 規 格 化 中 .
すなわち,パケット長が短いと伝送効率が著しく低
下 す る .こ の こ と か ら 無 線 LAN は イ ン タ ー ネ ッ ト 検 索
1
Re = k ⋅ ⋅ R
n
のような長いデータ通信に適していると言えよう.
.
図 3 は ,パ ケ ッ ト 長 m = 1000 バ イ ト の 時 の R と R e
の関係を示したものである.
2.3
以 上 の 結 果 ,無 線 LAN を 実 用 的 見 地 に か ら 見 た と き ,
次世代携帯電話
携帯電話はアナログ方式の第1世代から,現在主と
その通信範囲と実行伝送レートは表3のとおりと想
して使用されている第2世代のデジタル方式がある.
定できる.
ここで言う次世代携帯電話とは第3世代のことをいい,
キャリア確認
データフレーム
第2世代システムに対し国際ローミングと幅広いコン
ACK 確認
時間
テ ン ツ の 提 供 を 目 的 と し て 国 際 電 気 通 信 連 合 (ITU) に
おいて国際標準化が行われた.
目的は,世界共通化の技術基準として,
IP ヘッダ
TCP ヘッダ
テキスト
MAC ヘッダ
IP ヘッダ
TCP/ACK
①
高 速 移 動 体 に 対 し て 144 kbps
②
歩 行 者 の 速 度 に 対 し て 384 kbps
③
静 止 者 に 対 し て 2 Mbps
のマルチメディアを提供することにある.使用する周
CS(キャリアセンス)
図2
波 数 帯 が 2000MHz 帯 , デ ー タ 速 度 が 2000kbps, 2000
無 線 LAN の デ ー タ 構 成 (IP)
年 頃 の サ ー ビ ス 開 始 が 目 標 と い う こ と か ら IMT-2000
という呼称が生まれた.
PHY
MAC
NTT ド コ モ は 2001 年 10 月 か ら 世 界 に 先 駆 け て
TCP/IP
FOMA の 愛 称 で W-CDMA の サ ー ビ ス を 開 始 し た . 続
Re (Mbps)
60
50
い て J フ ォ ン は 2002 年 12 月 に W-CDMA の サ ー ビ ス を
40
開始した.
30
KDDI で は 既 存 の 800MHz 帯 cdmaOne ネ ッ ト ワ ー ク
20
を 利 用 し , 3 G と し て 認 め ら れ て い る CDMA2000-1x
10
を 2002 年 4 月 か ら 導 入 し た .利 用 者 か ら の 反 応 は 良 好
0
0
10
20
30
40
50
60
R (Mbps)
な よ う で あ る . CDMA2000-1x で は 既 存 の ネ ッ ト ワ ー
クを100%活用できるので早急なエリア展開が可能
であり,投資コストを必要最小限に抑制することがで
図3
802.11b,g の 実 行 伝 送 レ ー ト
き る .こ の シ ス テ ム は 韓 国 で も 盛 ん に 利 用 さ れ て い る .
一方,将来の第4世代は定義が明確になっていない.
表3
無 線 LAN の 通 信 範 囲 と 伝 送 レ ー ト
高速走行
停止時
(100Km)
802.11b,g
802.11b,g
802.11g
適用規格
通信範囲
約 250m
約 250m
約 100m
伝送レートR
6Mbps
6Mbps
54Mbps
(PHY)
最大実行伝送
3.9Mbps
3.9Mbps
11.9Mbps
レートRe
0.6
0.6
0.2
k
* 最 大 実 行 伝 送 レ ー ト は 1KB パ ケ ッ ト 送 信 時
*通信範囲は基地局アンテナからの距離
同様に最大実行伝送レートReは,PHYレベルの
伝送レートR,MAC及びプロトコルファクタk,並
びに通信ゾーン内の車両台数nにより近似的に次式で
求まる.通信ゾーンが広くなるほど車両台数nが大き
く影響することになる.
ITU で も Beyond IMT-2000 System( IMT-2000 以 降 シ ス
テ ム ) と 呼 ば れ , 使 用 周 波 数 も 5GHz 帯 と か 8GHz 帯
とかの案が出されているがまだ決まっていない.
携 帯 電 話 を ITS へ の 適 用 の 観 点 か ら 見 る と ,
●通信範囲
基地局から半径数十km
●伝送レート
2 G で は 、 42kbps
3 G で は , 高 速 移 動 体 に 対 し て 144 kbps
歩 行 者 の 速 度 に 対 し て 384 kbps
静 止 者 に 対 し て 2 Mbps
であり,実効伝送レートは,伝送レートに対して近似
的 次 式 で 表 さ れ る .上 記 伝 送 レ ー ト を R ,MAC 及 び プ
ロトコルファクターをk,通信ゾーン内車両台数をn
とすると,実効伝送レートをReとして
1
Re = k ⋅ ⋅ R
n
.
すなわち,実効伝送レートは通信ゾーン内車両台数が
増えるとその分だけ低下する.
5.6MHz
KDDI が 3 G の CDMA2000 1x EV-DO(Evolution Data
1セグメント(約429KHz )
Only)( 下 り : 2Mbps max. 上 り : 144kbps max.) に 関
し情報通信審議会へ提出した資料によると,平均セク
周波数
タースループット(基地局1アンテナの通信全体の速
6MHz
度平均)は,フィールド試験の結果,走行環境で約
800kbps, 静 止 環 境 に て 1Mbps 超 で あ っ た と さ れ て い
る . 従 っ て , 3 G 携 帯 電 話 を ITS で 利 用 す る と き ,
k≒ 800 kbps / 2 Mbps = 0.4
程度と推定される.
2.4
地上デジタル放送
図4
帯域幅とセグメントの関係
又,変調方式はセグメント毎に変えることができる
( QPSK, 16QAM, 64QAM). 従 っ て , 例 え ば 12 個 の
セグメントでハイビジョン番組を送り,同時に中央の
1セグメントで携帯端末向けの画像サイズが小さい簡
1953 年 に 開 始 さ れ た 日 本 の 地 上 テ レ ビ 放 送 は ,そ の
易動画を補完的に送信することが可能である.結果と
後のデジタル技術の進歩と放送と通信の融合という流
して固定受信の他に移動受信,歩行中の携帯端末によ
れ の 中 で 大 き く 変 わ り つ つ あ る , 2003 年 12 月 に 地 上
る携帯受信といった多様なサービスが可能になる.
デジタル放送が東京,大阪,名古屋の3大都市圏でス
タートした.
現 在 、 地 上 テ レ ビ 放 送 は VHF1 2 チ ャ ネ ル と UHF
50チャネルの計62チャネルで行われているが,ア
ナログ放送から完全にデジタル放送に移行した暁には
現行の2/3の約40チャネルでテレビ放送を行い,
情報伝送レートは,変調方式,畳み込み符号のコー
デ ィ ン グ レ ー ト( 符 号 化 率 ),ガ ー ド イ ン タ ー バ ル 比 及
びセグメント数によって変えられるフレキシブルな方
式になっている.
例えば,用途別に次のようなセグメント構成が考え
られている.
ハイビジョン放送:
残りの約1/3のチャネルを空けることが決まってい
必 要 に な る の で 12 セ グ メ ン ト を 使 用 す る
る.
標準画質放送
地上デジタル放送のメリットは次のことが言える.
①
映像・音声信号を圧縮して放送するので,アナロ
また静止画像・音楽をスムーズに視聴するためには
約 500kbps,自 動 車 用 NAVI 画 面 等 小 型 画 面 へ 簡 易 動 画
を 送 る に は 約 350kbps の 伝 送 速 度 が 必 要 に な り , こ れ
放送が可能である.又,標準画質のテレビ番組な
らには 1 セグメントを使用するといった形である.
ら3番組を同時に放送可能になる.
2.5
ゴーストのない鮮明な画像
反 射 波 な ど の 妨 害 に 強 い OFDM 方 式 に よ り ,ゴ ー
安定した移動受信
地上デジタル音声放送(デジタルラジオ)
2003 年 10 月 か ら 地 上 デ ジ タ ル 音 声 放 送 の 実 用 化 試
験放送が東京地区と大阪地区で開始された.
地 上 デ ジ タ ル 音 声 放 送 は ,CD 並 み の 高 品 質 音 声 に 加
えて,データ放送や静止画,簡易動画により生活情報
移動中でも安定して受信することができる伝送方
や交通情報,ニュースなどの多彩なサービスが行われ
式も採用されているので,自動車などの移動体で
る .移 動 受 信( 自 動 車 内 ,電 車 内 )や 携 帯 受 信( 歩 行 ,
受信してもアナログ放送などのように映像が乱れ
屋内)を想定したサービスが検討されている.
ることがない.
④
約 6 Mbps の 伝 送 速 度 が 必
グ放送と同じ1チャネル分の帯域でハイビジョン
ストのない鮮明な映像を受信できる.
③
:
要になるので 3 セグメントを使用する
1チャネル分の帯域でハイビジョン放送や多チ
ャネル放送が可能
②
約 22 Mbps の 伝 送 速 度 が
高機能化
地域に密着したニュースや気象情報などをデータ
放送方式が地上デジタル放送と共通なため,受信機
用 の LSI を そ の ま ま 利 用 で き る な ど ,受 信 機 の 共 通 化 ,
低価格化を図ることができる.
放送としてテレビ番組と同時にサービスし,視聴
周 波 数 帯 は 190MHz 帯 ( VHF の 第 7 チ ャ ネ ル ) を 使
者が見たいときに自由に引き出すことが可能に
用している.本サービス開始は,アナログテレビの周
なる.電話などの通信回線で双方向サービスも可
波数帯域を使うため,現在のアナログテレビの放送が
能になる.
終 了 す る 予 定 の 2011 年 以 降 , 全 国 展 開 が 可 能 に な る .
地 上 デ ジ タ ル 放 送 は , 1 チ ャ ネ ル の 帯 域 幅 6MHz を
地 上 デ ジ タ ル 音 声 放 送 の 実 用 化 試 験 放 送 は 「 (社 )デ
14 分 割 し そ の 中 の 13 個( 約 5.6MHz)を 使 用 す る .
(図
ジ タ ル ラ ジ オ 推 進 協 会 ( DRP: Digital Radio Promotion
4 参 照 ) 13 個 の 各 周 波 数 ブ ロ ッ ク を セ グ メ ン ト ( 約
Association)」 に よ っ て 2003 年 10 月 に 開 始 さ れ た .
429kHz 幅 ) と 呼 ぶ . 14 個 の 内 の 残 り 1 セ グ メ ン ト は
DRP は ,NHK,東 京 ・大 阪 の 民 放 ラ ジ オ 局 ,デ ジ タ ル
混信防止のためのガードバンドに割り当てられる.
ラジオへの新規参入事業者などが共同で設立した団体
で,この協会がデジタルラジオの実用化試験放送の免
許を受けている.
サービスは今後展開されていくことになるが,サーバ
型 放 送 や 地 上 デ ジ タ ル 音 声 放 送 等 は ITS 分 野 で も 活 用
DRP の 行 う 放 送 に お い て ,NHK と (財 )道 路 交 通 情 報
通 信 シ ス テ ム セ ン タ ー( 略 称:VICS セ ン タ ー )は ,東
される可能性が大きい.特に,移動体に対する簡易動
画 や デ ー タ 放 送 サ ー ビ ス は ,早 期 実 用 化 が 期 待 さ れ る .
京,大阪でそれぞれ1セグメントを共同使用してサー
デ ー タ 放 送 は 具 体 的 に ど う す る か 未 定 で あ り , 2003
ビスを提供している.ただし,現在は数十台の試作受
年から開始された 3 大都市圏での放送の中で模索して
信機を使った実用化試験放送が行われており,専用受
いく模様である.今後も注目していく必要があると考
信機は現在電機メーカにて開発中である.
えられる.
VICS セ ン タ ー で は ,上 記 の 動 向 に 対 応 し て 現 行 FM
多重放送に加え,地上デジタル音声放送での情報提供
以 上 の 他 に ,ミ リ 波 LAN,準 天 頂 衛 星 ,SDR( Software
サ ー ビ ス を 検 討 中 で あ る . VICS リ ン ク に 代 え ISO 標
Defined Radio ソ フ ト ウ エ ア 無 線 ) 技 術 及 び MIMO
準である緯度・経度方式への移行も模索している.こ
( Multiple Input / Multiple Output 多 入 力 多 出 力 ) 技 術
の サ ー ビ ス で は 現 行 FM 多 重 で の 5 分 周 期 で 約
についても要素技術の検討を行ったが紙面の関係で割
50kbytes 情 報 提 供 か ら 500kbytes と 10 倍 以 上 の 情 報 提
愛する.
供 を 行 う こ と が で き る ( XML ま た は VXML 形 式 で 転
送 . ISOTC204/WG10 で 検 討 中 の TPEG 方 式 ( ARIB の
地 上 デ ジ タ ル 放 送 と 連 携 )). 駐 車 場 情 報 等 の 広 範 囲 な
本章の検討結果を総合的にまとめると表4のとお
りである.
情報提供サービスも検討中である.
地上デジタル放送は近年始まったばかりで,多くの
表4
通信範囲
通信形態
伝送レート
(PHY)
最大実効
伝送レート
狭域
約 30m
停止時∼高速走行
高速走行
約 250m
100km/h
約 250m
停止時
約 100m
双方向
ポイントツーポイント
ポイントツーマルチポイント
(ASK:1Mbps)
QPSK:4Mbps
1.2Mbps
6Mbps
3.9Mbps
通信メディア
DSRC
無 線 LAN
3
各種路車間通信技術の特性まとめ
携帯電話
数 十 km
ミ リ 波 LAN
約 30m
地上デジタル
放送
複数県域レベル
準天頂衛星
国内全域
双方向
ポイントツーポイント
ポイントツーマルチポイント
双方向
ポイントツーポイント
双方向
ポイントツーポイント
ポイントツーマルチポイント
片 方 向 (IP 双 方 向 )
ポイントツーマルチポイント
片方向
ポイントツーマルチポイント
ITS 利 用 シ ー ン
6Mbps
54Mbps
2G : 42kbps
3G :
< ダウンリンク>
高 速 移 動 体 :144kbps
歩 行 者 :384kbps
静 止 者 : 2Mbps
< アップリンク> 64kbps
3.9Mbps
11.9Mbps
3G :
< ダウンリンク>
高 速 移 動 体 :52kbps
歩 行 者 :154kbps
静 止 者 : 800kbps
< アップリンク> 26kbps
156Mbps
31Mbps
280kbps(1 セグメント) ∼
23Mbps(13 セグメント)
275kbps(1 セグメント)∼
22.7Mbps (13 セグメント)
数 Mbps
未定
することとした.アンケート調査結果によれば,一般
ITS 路 車 間 通 信 の 利 用 シ ー ン と し て , 国 土 交 通 省 ,
ドライバーや事業用自動車の運行管理者等が求めてい
総 務 省 , 道 路 新 産 業 開 発 機 構 , ITS 情 報 通 信 シ ス テ ム
るのは,一般的な渋滞情報のみでなく,それに加えて
推進会議等で検討されている様々な路車間通信アプリ
利用者のリクエストに応じた情報であり,局所的,個
ケーションを取上げ調査した.また各機関が行ったい
別的情報として現在地から目的地までの渋滞情報,所
くつかの利用者ニーズの調査を参考に将来動向を把握
要時間,最短経路,事故危険箇所の詳細情報およびそ
の 解 除 見 込 み な ど で あ る こ と が 明 ら か と な っ た .更 に ,
駐 車 場 サービス(SA/PA,道 の駅 ,一 般 駐 車 場 )
SA/PA や 道 の 駅 に 休 憩 中 に 車 内 で の イ ン タ ー ネ ッ ト
ガソリンスタンド等 での電 子 決 済 ,広 告 等
( IP) 接 続 に よ る 情 報 検 索 サ ー ビ ス も 高 い ニ ー ズ が あ
った.
最 初 の安 全 参 考 情 報 提 供 とは,安 全 走 行 に関 する危 険
箇 所 などの支 援 情 報 や標 識 案 内 ,広 告 など走 行 参 考 情 報
これら各 機 関 の検 討 状 況 や利 用 者 ニーズを総 称 して,近
提 供 である.道 路 交 通 情 報 提 供 とは,いわゆるVICSのよう
未 来 に実 現 の可 能 性 のある路 車 間 通 信 ア プリケーションを
な渋 滞 ,工 事 などの交 通 情 報 提 供 である.最 後 のガソリンス
サービス区 分 として大 括 りし次 の 4 種 類 とした.
タンド等 での広 告 は,路 側 に設 置 してその場 所 特 有 の PR
安全参考情報提供
情 報 を提 供 する簡 易 ビーコンを想 定 したものである.
道 路 交 通 情 報 提 供 (高 速 道 路 等 )
表5
近未来路車間通信アプリケーションの諸元
ガソリンスタンド
等での電子決済,
広告等のサービス
交通情報提供サービス
アプ
リケ
ーシ
ョン
情報
量
通信
形態
通信
範囲
その
他の
要件
緊急情報
提供サービス
走行中 停止中
ファイル
音声
転送
道路交通情報提供サービス
放送型
リクエスト型
アップリンク
ダウンリンク
情報
情報
プロー
ブカー
情報
安全参考
情報提供
サービス
駐車場
サービス
停止中
走行中
25 kB
(max.)
2 kB
(max.)
2 kB
(max.)
2 kB
(max.)
15 kB
(max.)
2kB(max.)
IP 接 続 は
無制限
1 kB
(max.)
15 kB
(max.)
放送型
放送型
ポイント
ツー
ポイント
ポイント
ツー
ポイント
ポイント
ツー
ポイント
放送型
ポイント
ツー
ポイント
ポイント
ツー
ポイント
放送型
数km∼複数県
域内の高速道
路 ,一 般 道
路 ,SA/PA,駐 車
場
高速道路
一般道路
SA/PA,
駐車場
高速道路
一般道路
高速道路
一般道路
SA/PA,駐 車
場
ガソリン
スタンド
高速道路
一般道路
15 kB
(max.)
3 MB
高速道路
一般道路
SA/PA,
駐車場
高速道路
一般道路
SA/PA,
駐車場
緊急性
(常時受信機
ミニマムスループ
能)
ット:300kbps
専 用 チャンネル
音声ガイド
(ボイスガイド)
緊急性
(常時受信機能)
専 用 チャネンル
音声ガイド
(ボイスガイド)
これ ら 近 未 来 の路 車 間 通 信 ア プ リケー ショ ンを 利 用 シー
ンや情 報 内 容 について分 析 し,前 記 交 通 情 報 提 供 サービ
SA/PA,
駐車場
4
路車間通信の適用性
路車間通信の適用性は,無線通信ゾーンの大きさや
ス(高 速 道 路 等 )の情 報 伝 送 内 容 は,
速度要件をパラメータとして,一般的な立場から通信
緊 急 情 報 提 供 サービス
ゾーン内の車両台数,車両1台当りの通信時間から所
道 路 交 通 情 報 提 供 サービス
要情報伝送レートがいかにあるべきかについて利用シ
− 放送型
ーン毎に各々のメディアについて検討した.
− リクエスト型
路 車 間 通 信 の 現 状 調 査 結 果 と , ITS 路 車 間 通 信 の 利
− アップリンク情 報
用シーン検討結果から導かれた近未来路車間通信アプ
− ダウンリンク情 報
リケーションの諸元とを対比し,近未来路車間通信ア
− プローブカー情 報
プリケーション毎に,各種路車間通信メディアが有す
に大 分 類 し て その 通 信 条 件 をま とめ た . ま た 安 全 情 報 , 駐
る無線通信ゾーンの大きさを出発点に,アプリケーシ
車 場 サービス,ガソリンスタンド等 での電 子 決 済 ,広 告 等 に
ョン毎に設定された所要情報伝送量,走行条件,通信
ついてもその通 信 条 件 を整 理 した.(表 5参 照 )
形態等から所要情報伝送レートを具体的に算出する.
これを路車間通信メディアが固有特性として有する最
大実効伝送レートと比較することによって,路車間通
信メディアの基礎的な適用可能性を検討した.また置
局コスト,専用チャンンネル,常時受信機能等の関連
の車両台数Nは,
する要因も考慮に入れて総合に評価考察を行うことと
3車線道路:
N=3Lc/80
(台)
した.
2車線道路:
N=2Lc/80
(台)
但し,Nが車線数未満の場合は,二輪車の走行を考慮
前節で選定した近未来路車間通信アプリケーショ
ンについて,洗い出した諸要件を基に,各アプリケー
ションの通信条件の検討フローを図5に示す.
し,N=車線数+1
とした.
駐車場のような『二次元モデル』の場合は,標準駐
車マスと通路の関係から,車両1台あたりの占有面積
を ( 6.0/2+ 5.0) ×2.5= 20 ㎡ と お き , 無 線 通 信 ゾ ー ン
無線通信ゾーン
交通流特性
統計データ
(ゾーンの大きさ:
パラメータ)
内の車両台数Nは次式で求まる.
駐車場
4.2
通信ゾーン内の
車両台数
道路種別
速度要件
2
N=πr /20
:
(台)
通信時間
道 路 上 の 通 信 ゾ ー ン 内 に N 台 の 車 両 が あ っ て ,そ れ
ぞ れ と ポイントツーポイント通 信 を 行 う 場 合 , 車 両 1 台 当 り の
通 信 可 能 時 間 T max は 次 式 で 計 算 で き る .
車両1台あたり
の通信時間
1 Lc
⋅
N 2V
Tmax =
所要情報
伝送レート
近未来アプリの
通信情報量
各種路車間通信
技術の適用性
近未来アプリの
その他要件
(s)
ここで,N:通信ゾーン内の車両台数(台)
Lc:通信距離(m)
V:車両速度(m/s)
車両速度を 2 倍としたのは,送受信の非同期性と再送
時間を考慮したものである.
図5
適用性検討手順
個別通信サービス時間Te(1 台当り)と放送サー
ビス時間Tbが重複するときは,それぞれの時間の和
4.1
通信ゾーン内の車両台数
を確保する.
車両分布として、高速道路や一般道路のような道路
Tmax ≥ Tb+NTe
上 に 車 両 が 存 在 す る 一 次 元 モ デ ル (複 数 車 線 あ っ て も
一 括 し て 考 え る )と ,SA/PA,駐 車 場 に 車 両 が 面 的 に 存
SA/PA や 駐 車 場 な ど の 二 次 元 モ デ ル の 場 合 は , 車 両
在する二次元モデルの2つのモデルについて検討する.
は駐車中であることが基本であるが,そこへの進入ま
まず,道路上のような『一次元モデル』の場合は,
た は 退 出 時 に 36Km/h(10m/s)で 走 行 す る と 仮 定 す る .
進 行 方 向 の 通 信 距 離 を Lc (m)と す る ,Lc で 無 線 通 信 ゾ
ー ン を 定 義 す る . こ の Lc の 値 は , 路 車 間 通 信 技 術 に
4.3
所要情報伝送レート
所 要 情 報 伝 送 レ ー ト Rx は , 近 未 来 路 車 間 通 信 ア プ
よ っ て 異 な る .全 国 高 速 道 路 の 交 通 統 計 デ ー タ に よ り ,
リケーションに対してそれぞれ設定している情報量 B
車線別,車種別分布及び断面交通量と平均速度により
と 前 節 の ( Tb + nTe )の 上 限 値 T m ax か ら 決 め ら れ る .す
車頭間隔を導き出した.中国自動車道の3車線区間で
な わ ち ,放 送 サ ー ビ ス の 情 報 量 を Bb,個 別 通 信 サ ー ビ
は,表6に示す特性である.
ス の 情 報 量 を Be と す る と ,
表6
第一走行
第二走行
追い越し
3車線高速道路の交通特性
日交通量
時間交通量
車頭間隔
( 台 /日 )
( 台 /h )
(m)
40,005
1,667
60.9
38,144
1,590
62.9
25,223
1051
95.1
※JH交通統計資料より
最 も 車 頭 間 隔 が 短 い の は 3 車 線 区 間 が 60m 程 度 で あ
Tb =
Bb
,
Rx
Rx ≥
1
Tmax
Te =
Be
Rx
から,
( Bb + NBe)
が 所 要 情 報 伝 送 レ ー ト Rx の 必 要 条 件 と な る .
り , 2 車 線 区 間 で は 55m 程 度 で あ っ た .
このような車頭間隔では緊張感を持って運手して
いると想定されるため,情報提供の観点からは安全車
間 距 離 を 原 則 と し 80m を 設 定 す る こ と と し た .
通信距離をLc(m)としたとき無線通信ゾーン内
以上の結果を整理すると表7のとおりである.
表7
通信形態
放送型
通信ゾーン内の
車両台数 N
−
通 信 時 間 T max
ポイントツーポイント
3Lc
一次元モデル: N =
,
80
Lc
Tmax =
2V
放 送 型 + ポイントツーポイント
二次元モデル: N =
情報量
Bb
Be
Bb, Be
所要情報
Bb
Tmax
NBe
Tmax
Bb + NBe
Tmax
伝 送 レ ー ト Rx
4.4
通信条件パラメータ
各方式の適用性
ITS 分 野 に お け る 今 後 の 路 車 間 通 信 メ デ ィ ア と し て ,
次の5つのメディアをとりあげ検討した.
DSRC, 無 線 LAN, 次 世 代 携 帯 電 話 , ミ リ 波 ,
り ITS 分 野 で 広 く 使 わ れ る の は 暫 く 先 の こ と に な る と
予想されること,また,準天頂衛星は測位機能の他に
通信機能及び放送機能も検討されているものの,まだ
詳細について開発期間中であることにより検討から覗
いた.ここではこれら5つのメディアを今後の路車間
通信方式として有望な方式として取上げる.
ITS 路 車 間 通 信 の 利 用 シ ー ン 検 討 結 果 を 基 に , 各 種
の路車間通信メディアが有する無線通信ゾーンの大き
さを出発点に,近未来の路車間通信アプリケーション
ごとに設定された情報量,走行条件,通信形態等から
所要情報伝送レートを具体的に算出し,これを路車間
通信メディアが固有特性として有する実効伝送レート
と比較することによって,路車間通信メディアの基礎
20
報提供サービス』の詳細評価例を表9に記述する.
また,5つのメディアと5つの近未来路車間通信ア
プリケーションについて,それぞれの適用性をまとめ
たのが表10である.
地上デジタル放送
このうちミリ波通信は,まだミリ波素子が高価であ
πr2
5
まとめ
それぞれのサービスについて,路車間通信通信の適
用性について整理すると次のとおりである.
『緊急情報提供サービス』は,高速道路走行中の音
声 ガ イ ド に 対 し て DSRC と 地 上 デ ジ タ ル 放 送 に 適 用 可
能性がある.停止中のファイル転送サービスに対して
も同様である.ここでは地上デジタル放送の受信機が
緊急放送の常時受信機能を有することを前提にしてい
る.また本用途に専用チャネルとして使えるときは無
線 LAN 及 び 3 G 携 帯 電 話 に も 適 用 可 能 性 が あ る .
『道路交通情報提供サービス』は,放送型サービス
で あ れ ば DSRC, 無 線 LAN, ミ リ 波 LAN 及 び 地 上 デ
ジタル放送に適用可能性がある.リクエスト型及びプ
ロ ー ブ カ ー 情 報 は 走 行 中 通 信 で あ る こ と か ら ,DSRC,
的な適用性検討を行うとともに,更に関連する要因と
無 線 LAN 及 び 3 G 携 帯 電 話 に 適 用 可 能 性 が あ る .但 し
して専用チャネル,常時受信機能,置局コストも考慮
3G 携帯電話で短期間に頻繁に通信するとトラヒック
に入れて総合評価する.
3節で抽出した5つの近未来路車間通信アプリケ
ーションについて,路車間通信メディアの適用可能性
を検討する.
① 緊急情報提供サービス
② 道路交通情報提供サービス
③ 安全参考情報提供サービス
④ 駐車場サービス
⑤ スタンド等での電子決済、広告等サービス
の輻輳を招くことになるので低周期通信にすることが
必要であろう.
『安全参考情報提供サービス』は,上記緊急情報提
供 サ ー ビ ス と 同 様 で あ り DSRC 及 び 地 上 デ ジ タ ル 放 送
に適用可能性がある.また本用途に専用チャネルとし
て 使 え る と き は 無 線 LAN 及 び 3 G 携 帯 電 話 に も 適 用
可能性がある.
『 駐 車 場 サ ー ビ ス 』は ,放 送 型 サ ー ビ ス の 場 合 DSRC,
無 線 LAN,ミ リ 波 LAN,地 上 デ ジ タ ル 放 送 に 適 用 可 能
性がある.他方,駐車場におけるポイントツーポイン
紙 面 の 関 係 で ,代 表 的 な『 ① 緊 急 情 報 提 供 サ ー ビ ス 』
の 音 声 ガ イ ド の 詳 細 評 価 例 を 表 8 に ,『 ② 道 路 交 通 情
ト 通 信 の 場 合 ,DSRC 及 び ミ リ 波 LAN に 適 用 可 能 性 が
ある.また本用途に多チャネルを使えるときは,無線
LAN 及 び 3 G 携 帯 電 話 に も 適 用 可 能 性 が あ る ,
後注目していくことが必要と考えられる.
『ガソリンスタンド等での電子決済,広告等』につ
『 ミ リ 波 LAN』 は , ま だ あ ま り 普 及 し て い な い が ,
い て は ,停 止 中 サ ー ビ ス は DSRC,無 線 LAN 及 び ミ リ
将来の周波数需要や高速通信のニーズが想定されるこ
波 LAN に 適 用 可 能 性 が あ り ,走 行 中 サ ー ビ ス の 場 合 は
とから今後とも注目していく必要があると考えられる.
DSRC 及 び 無 線 LAN に 適 用 可 能 性 が あ る .
『地上デジタル放送』は,3大都市圏で放送が始ま
ったばかりで今後普及していく段階にある.現時点で
また,視点を各通信メディア単位について整理して
みると次の通りである.
は地上デジタル放送による走行中車両へのデータ放送
の 規 格 は 未 定 で あ る が , 今 後 ITS の 分 野 に お い て も 利
『 DSRC』 は , 既 に 広 く 普 及 し つ つ あ り , ETC 用 途
用価値があるものと見られる.
の 車 載 器 は 300 万 台 (2004 年 05 月 末 現 在 )を 突 破 し ,今
後 更 に ITS 専 用 チ ャ ネ ル で あ る と い う 特 性 を 生 か し て
路車間通信メディアの技術開発は日々進歩しており,
ITS 用 途 に 普 及 す る こ と が 想 定 さ れ る . な お DSRC を
昨 年 ま で の 技 術 は 今 年 は も う 古 い ,と い う 時 代 で あ る .
使って緊急情報提供サービスや安全参考情報提供サー
何時までも旧来の資産にすがることなく,国民的ニー
ビ ス を 行 う 場 合 に ,ETC と 同 じ チ ャ ネ ン ル を 使 う と 走
ズに立った,かつ一歩・二歩将来展望を見据えたプラ
行 中 の ETC サ ー ビ ス と 競 合 す る 恐 れ が あ る た め ,ETC
ンとする必要がある.サービスアプリケーションにつ
とは別の無線チャンネルを使用することが望ましい.
いても同様であり,国民ユーザの時代進化を的確につ
『 無 線 LAN』 は , 既 に ホ ッ ト ス ポ ッ ト サ ー ビ ス や
か み ,IT 時 代 や ユ ビ キ タ ス 社 会 に マ ッ チ し た サ ー ビ ス
ADSL 等 広 く 一 般 の 通 信 に 利 用 さ れ て お り , 今 後 ITS
を導入する必要がある.
の分野でも利用されることが想定される.
『3G 携帯電話』は,現在主流の2G から次第に3
本 研 究 報 告 は ITS 情 報 通 信 企 業 や コ ン サ ル タ ン ト の
G に移行する状況である.なお携帯電話は,基本的に
識者からなる検討会作業の成果であり,ご協力いただ
ポイントツーポイント通信であるため放送型サービス
いた関係諸兄に御礼を申し上げる.
の受信はできないが,最近の状況として地上デジタル
放送を携帯電話で受信する方式の規格が決まったこと
により,今後携帯電話に放送型サービスの受信機能が
最後に,本報告の内容が国の施策や方向性を示すも
のでないことを補足する.
付 加 さ れ れ ば ITS サ ー ビ ス も 適 用 可 能 に な る の で , 今
表8
条件:
緊急情報提供サービスの音声ガイドサービスと適用メディア
想 定 情 報 量 =15 kB, 通 信 形 態 = 放 送 型 , 走 行 速 度 = 100 km/h (27.8 m/s)
メディア
通信距離
Lc
通信時間
T m ax
所要
伝 送 レート
Rx
最大実効
伝 送 レート
Re (N=1)
Rx≦
Re ?
常時受
信
機能
専 用 チャネル
総合評価
DSRC
20 m
0.36 S
330 kbps
1.2 Mbps
○
○
○
○
無 線 LAN
250 m
4.5 S
27 kbps
3.9 Mbps
○
○
X
(○ 注 1 )
X
(○ 注 1 )
3G
携帯電話
10 km
180 S
0.7 kbps
52 kbps
○
○
X
(○ 注 1 )
X
(○ 注 1 )
ミリ波
LAN
15 m
静止,
歩行者用
X
○
X
X
地上デジ
タル放送
20 km
360 S
○
△
(○ 注 2 )
0.34 kbps
275 kbps
以上
○
△
(○ 注 2 )
注1
緊急情報提供サービス用に専用チャネルとして使えればxは○に変わる.
注2
地上デジタル放送の受信機が常時受信機能(緊急放送受信機能)を持てば△は○に変わる.
凡例
○:適用可能,
△:可能性あり,
X: 適 用 困 難 ,
−:未定
備考
ミリ波素
子が高価
表9
条件:
道路交通情報提供サービスと適用メディア
想 定 情 報 量 = 放 送 型 /25kB, リクエスト型 アップリンク/2kB, リクエスト型 ダウンリンク/2kB,
プローブカー情 報 アップリンク/2kB( Bb = 25 kB, Be = 6 kB),
<高速道路でのサービス>
走 行 速 度 = 100 km/h (27.8 m/s)
メディア
ポイントツー
ポイント通
信
通信距
離 Lc
通 信 ゾーン
内車両
台数 N
通信時間
T m ax
Bb +
NBe
所要伝送
レート Rx
最大実効
伝 送 レート
Re (N=1)
Rx≦
Re ?
総合
評価
DSRC
○
20 m
4
0.36 S
49 kB
1.1Mbps
1.2 Mbps
○
○
無 線 LAN
○
250 m
10
4.5 S
85 kB
151
kbps
3.9 Mbps
○
○
2275 kB
101
kbps
52 kbps
→注1
Re/η
=173 kbps
○
○
X
X
3G
携帯電話
ミリ波
LAN
地上デジ
タル放送
注1
○
10 km
○
15 m
375
180 S
静 止 ,歩
行者用
X
備考
ミリ波素
子が高価
X
3 G 携 帯 電 話 は 通 信 距 離 が 長 い た め ,通 信 ゾ ー ン 内 車 両 台 数 が 多 い .こ の と き の サ ー ビ ス 要 求 同 時 発 生 率 η =0.3
と仮定.また,放送型サービスのみの場合は3G 携帯電話とミリ波以外の全てのメディアで適用可能性がある.
携 帯 電 話 は ポントツーポイントの み . ミ リ 波 は 停 止 中 の み .
< SA/PA, 駐 車 場 サ ー ビ ス > 進 入 時 又 は 退 出 時 の 条 件 下 ( 36km/h) で は 3 G 携 帯 電 話 も Rx≦ Re を 満 た す .
表10
各種路車間通信メディアの近未来路車間通信アプリケーションへの適用性
交通情報提供サービス
アプリ
ケーション
路車間
通信
メディア
DSRC
緊急情報提供
サービス
走行中 停止中
音声
ファイル
転送
○
△
(○ 注
1)
道路交通情報提供サービス
安全
参考
情報
提供
サービ
ス
駐車場サービス
ガソリンスタンド等
での電子決済、
広告等のサービス
放送
型
ポイント
ツー
ポイント
型
停止中
走行中
放送
型
リクエスト型
アップ
ダウン
リンク
リンク
情報
情報
○
○
○
○
○
○
○
○
○
X
(○ 注 2)
○
X
(○ 注 2)
△
○
○
低周
期時
X
(○ 注 2)
X
X
(○ 注 4)
X
X
プロ
ーブ
カー
情報
無 線 LAN
X
( ○ 注 2)
○
○
3G
携帯電話
X
( ○ 注 2)
X
○
低周期時
X
X
X
X
○
○
○
X
○
X
X
△
(○ 注 3)
○
X
X
X
ミリ波
LAN
地上デジ
タル放送
凡例
注 1
X
X
(○ 注 1)
△
(○ 注 3)
○:適用可能,
△:可能性あり,
X: 適 用 困 難 ,
−:未定
走 行 速 度 が 15km/h 以 下 で あ れ ば ○ に 変 わ る .
注 2
本用途に専用チャネルとして使えるときは○に変わる.
注 3
地 上 デ ジ タ ル 放 送 の 受 信 機 が 常 時 受 信 機 能 (緊 急 放 送 受 信 機 能 )を 持 て ば △ は ○ に 変 わ る .
注 4
本用途に多チャネルを使えるときは○に変わる.