無血の術野を目指す 脳動脈瘤手術の基本

手 術 の
コ ツ と
者の
一流術 りたい
ココが知
ピ ッ ト フ ォ ー ル
無血の術野を目指す
脳動脈瘤手術の基本
~両手の同時操作で最後まで clip 先端を見届ける:
Blading テクニックのススメ~
水谷 徹
1) Tohru MIZUTANI
1)昭和大学医学部脳神経外科学講座 〒 142-8666 東京都品川区旗の台 1-5-8
今回のココ!
・ Clip をかけるときは,両手を同時に使う
・Blading テクニックを利用して最後まで clip 先端を視認しよう
はじめに
弊誌 24 巻 10 号にて,未破裂脳動脈瘤の手術に
おいて,安全,確実にクリッピングを遂行するた
めに,基本手技として私が気をつけていることの
端を視認しよう
⑧各動脈瘤の戦略
について解説します.
両手を常に同時に使う
一部を紹介しました.前回は,
左右両手を連動して同時に使用できることは,
①開頭野への血液垂れ込みを防ぐ
どの分野でのどの手術でも有利なことだと思いま
②マイクロで手が震えないために
すが,動脈瘤クリッピングにおいても大切で,また,
③顕微鏡は術者が確実に見える低倍率で
これができることによって安全性を高め,手術の
④無血の術野を目指す,ハサミや吸引管の使い方
アプローチの幅を広げることができます.
⑤ Sylvian fissure の剥離:表層から深層まで
Clipping で危ないのは,“ 見えないところに clip
について解説しました.今回は,
を突っ込むこと ” です.さらに,未破裂動脈瘤
⑥ Clip をかけるときは,両手を同時に使う
clipping の重要なコンセプトの一つは,穿通枝の
⑦ Blading テクニックを利用して最後まで clip 先
血流障害を避けることです.このためには,常に
128 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
clip 先端を視認し,裏側の穿通枝を噛まないよう
に皮一枚残してかけることを目指しています.
具体的には,clip をかける操作において,右手
対側の吸引管を同時に連動させ使用します.
各部位の動脈瘤に対する戦略
で clip 鉗子を持つ際に,左手の吸引管を連動さ
Pterional approach を用いる各部位の動脈瘤に
せて周囲を微妙に吸引,牽引しつつスペースを作
対して,戦略を解説します.
り,clip 先端をずっと視認していくことが大切で
1)IC-Pcom 動脈瘤
す.左手で clip を挿入する際も同じように右手
やや大型の IC-Pcom 動脈瘤の 1 例を提示しま
の吸引管の操作を行います.
す(Case 1:図 1,2).
この動脈瘤は Pcom が dome より出ています
Blading テクニック
またこの際,blading テクニック
1)
( 図 1A,B).術野では sylvian vein から前頭葉に
という方法
bridge する数本の vein を認めました.
を提唱しています.これは clip blade を利用して,
まず,sylvian vein を側頭葉につけて sylvian
わずかに 3 次元的に動脈瘤を動かし,先端を視認
fissure を 剥 離 し, 前 頭 葉 に bridge す る vein を
しつつ clip を閉じていくテクニックです.Clip
伸ばせる状態にして,前頭葉のみを retract した
を挿入する際に鉗子のロックを外し,clip が動か
状態です(図 2A).前頭葉方向から側頭葉の下を
ないようにバネを効かした状態にして把持する.
のぞきこむような subfrontal 気味の視野をとっ
次に,片方の blade を交互に利用しつつ動脈瘤を
ていますが,vein をさらに伸ばし動脈瘤に被さ
わずかに持ち上げる,手前に引く,牽引するとい
っている側頭葉を牽引し,顕微鏡を微調整して
う微妙な操作を加え,また,blade 全体の角度調
clip をかける術野とします.このような broad
整をして,先端を視認しつつ,clip をだんだん閉
neck の動脈瘤は,手前の clip blade で dome を持
鎖していき,進入途中は両側 blade で動脈瘤を軽
ち上げつつ dome の裏側に blade を滑り込ませ,
く挟んだ状態で,動脈瘤の壁をとらえ続け,最終
IC に平行に clip をかけていくような意識を持って
的に動脈瘤を “ 皮一枚 ” 残す深度で clip 閉鎖する
いますので,IC を確保したうえで dome の裏側を
ことを目指しています.この際に,鉗子を持つ反
distal neck のほうから剥離しておきます(図 2B)
.
A
B
図1
Case 1:左 IC-Pcom 動
脈 瘤(10 mm) 術 前 3D
DSA
A:3D DSA 正面像.
B:頭部15°
右回転の術野イメージ.
脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2. 129
手 術 の コ ツ と ピ ッ ト フ ォ ー ル
GO →
IC-Pcom 動脈瘤における sylvian fissure の剥離
きです.この操作中,同時に distal neck 近傍の
は,このように distal neck のほうから dome の
anterior choroidal artery(AChA)に注意しつつ,
裏側をチェックできる視野が得られる程度を目標
clip blade の先端を視認できるように,右側の吸
に し て い ま す.Clip 挿 入 は base 側 の blade を
引管で distal neck 近傍の IC を内側に牽引し続け
proximal neck と Pcom の 角 に 置 き( 図 2C), そ
ます(図 2D ~ F).
こを支点にするような感じで dome 先端側にずら
このような broad neck の左 IC の動脈瘤の場
さないようにして,手前の blade を徐々に distal
合,左で clip をかけると有利な点は,右の吸引
neck の裏側に挿入していき,dome を持ち上げ
管で前頭葉側の広い working space から上記の
ていくように clip を閉めていく感覚です.
ような動きができることと,clip が dome の方向
Clip 先端を視認するために,clip はわずかに左
にスリップアウトするような場合に,すかさず
斜め上から入れています.先端が見えず突っ込む
IC の内側を押してカウンタープレッシャーをか
ような tangential な角度の clip 挿入は避けるべ
けることが可能な点です.また,IC-Pcom の動
A
B
C
D
E
F
図2
Case 1:左 IC-Pcom 動脈瘤(10 mm)術中画像
A:Sylvian veinをtemporalに付けて架橋静脈を伸展,frontal側から動脈瘤を見る.
B:Distal neckからdomeの裏側を剥離しておく(矢印)のがポイント.
C:左手でclip挿入時にblade先端が視認できるように,同時操作で,右手の吸引管でICを内側に引く.
D ~ F:AChAに注意し,bladeを閉じきるまで先端を視認する(連続動作)
.
130 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
脈瘤は base 側の硬膜に癒着している,あるいは
base 側の硬膜にやや癒着しており,後床突起が
後床突起に当たって近位側の blade が入りにくい
clip 挿入の妨げになる場合,無理に剥離に行かず
という状況もよくあり,このような際にも上記の
に clip を寝かせながら手前の blade を視認しつつ,
ように proximal 側の blade を無理に奥に挿入せ
dome の下に回し込んで閉めていく感覚でした.
ず,distal neck 側の blade を持ち上げつつ IC に
IC の後方向きの動脈瘤に対して,側頭葉側よ
平行に clip をかけていくという意識を持つと,
りの視野を得ようとして sylvian vein を前頭葉側
安全に clip をかけられることが多いです.
に付けて sylvian fissure を分ける際は,clip 鉗子
このケースのように sylvian vein がやや発達し
は側頭葉と sylvian vein の間の狭いスペースから
2 ~ 3 本の vein が前頭葉に bridge するような標
入れることが多くなり,相当 sylvian vein に気を
準的な IC-Pcom の動脈瘤は,sylvian vein をなる
遣うことになります.こうするよりは,たいてい
べ く 前 頭 葉 側 で 剥 離 し て fissure を 分 け る
の場合,sylvian vein を側頭葉側に付けて sylvian
→ bridge する vein を剥離し伸ばす→前頭葉側の
fissure を分け,IC を少し内側に引いて neck を
広い working space を利用する→ clip 鉗子と反
見に行きつつ,sylvian vein に邪魔をされない前
対の手に持つ吸引管で同時に IC を内側にわずか
頭葉側の広いスペースから clip 鉗子を入れて自
に牽引し→ blade 先端をずっと視認しながら→動
在に動かして clip をかけることのメリットは大
脈瘤を皮一枚残すようにして blade を閉じ切ると
きいです.キーポイントは,clip 鉗子と反対側に
いうことを標準的な操作としています.
持つ吸引管の同時操作の動きです.
IC の後方向きの動脈瘤は,側頭葉側から見な
2)IC-AChA 動脈瘤
ければという意識が働きがちですが,逆に,前頭
この部位の動脈瘤は IC-Pcom よりも遠位,高
葉側からの広いスペースから側頭葉の下をのぞき
位にあり,また Pcom が IC の内側に向けて走行
込むようにして,distal neck よりやや distal の
するのに対して,AChA は dome の裏側を走行
IC を吸引管で少し引くことで,neck を視認でき
す る の で, よ り blade の 先 端 と dome 裏 側 の
ることが多いです.
AChA を意識する必要があります.
このケース(Case 2: 図 3)はやや後方を向い
やはり,distal neck 側の blade を特に意識し,
た右 IC-Pcom 動脈瘤で(図 3A,B),20°回転のシ
視認していくことが重要なので,IC-Pcom の動
ミ ュ レ ー シ ョ ン 3D DSA で も distal neck は IC
脈瘤よりさらに,sylvian fissure を深く分けるこ
の陰に隠れていますが( 図 3C),頭部を 20°左に
とが大切です.
回転した体位をとった実際の手術でも,シミュレ
このケース(Case 3:図 4,5)は,IC top 動脈
ー シ ョ ン 画 像 ど お り の 術 野 で し た( 図 3D).
瘤に clip をかけた後,さらに IC-AChA 動脈瘤に
AChA の起始部に気をつけながら吸引管で distal
clip をかけにいっています.
neck より少し遠位の IC を引くことによって(図
術前画像ではやや後方向きの左 IC-AChA 動脈
3E)
,最後まで
blade 先端を視認しつつ clip をか
瘤 で( 図 4A)
,20 °回 転 の シ ミュ レ ー シ ョン 3D
け る こ と が で き て い ま す( 図 3F,G).Dome は
DSA(図 4B)では,AChA の走行は確認できませ
脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2. 131
手 術 の コ ツ と ピ ッ ト フ ォ ー ル
GO →
ん.実際の手術では,後述する IC top 動脈瘤のた
.この dissector は先端のカーブ
ています(図 5B)
めもあって,sylvian fissure を完全に分けていま
と細さがちょうどよく,動脈瘤の剥離からちょっ
すが,IC を内側に引いて dome の下を走行する
とした部位の牽引に愛用しています.
AChA を確認できました
(図 5A)
.Clip 挿入の際は,
こ う す る こ と に よ っ て, よ り 厳 密 に distal
左手で clip が入れやすいように,また,blade の
neck のほうから AChA の走行を確認し,これを
先端が視認しやすいように,わずかに術者ポジシ
引っかけないようにして,最後まで blade の深さ
ョンと視野を sylvian fissure に正対する方向より
と角度を調整し,clip を閉鎖しました(図 5C).
は前頭葉側からとし,distal neck 近傍の IC を右
3)IC top 動脈瘤
手の dissector(欧和通商,24 巻 10 号記載)で引い
この動脈瘤は M1-A1 と前頭葉のスペースに存
A
B
C
D
E
F
G
132 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
図3
Case 2:やや後方向きのの右 IC-Pcom 動脈瘤(6 mm)
A:3D DSA正面像.
B:同側面像.
C:頭部20°
左回転の術野イメージ.distal neckはICの陰に隠れている(矢印)
.
D:実際の術野.3D DSAのイメージどおりであった.
E:右手でclip挿入時にblade先端が視認できるように,AChAの起始部に注意しながら,同
時操作で,左手の吸引管でICを内側に引く.
F,G:最後までblade先端を視認しながらbladeを閉鎖する.
A
B
図4
Case 3:やや後方向きの左 ICAChA 動脈瘤(3.2 mm)および
後方向きの IC top 動脈瘤
(7 mm)
術前 3D DSA
A:3D DSA正面像.
B:頭部20°
右回転の術野イメージ.
A
図5
B
C
Case 3:やや後方向きの左 IC-AChA 動脈瘤(3.2 mm)および後方向きの IC top 動脈瘤(7 mm)術中画像
A:実際の術野.3D DSAのイメージどおりであった.Sylvian fissureを広く分け,M1方向からdistal neckの裏に存在するAChAを確認(矢印)
.
B,C:左手でclip挿入時に,同時操作で,右手の吸引管でICを内側に引き,最後までblade先端とAChAを視認する.矢印はAChA.
在するために,clip をかけるための術野は,IC,
す.動脈瘤が前方を向いている際には,dome が
M1,A1 の露出が必要となります.前述した IC-
前頭葉に埋没していることが多いので,前頭葉を
Pcom 動脈瘤は前頭葉を subfrontal 方向に引いて
極力 retract しないようにする必要があります.
いましたが,IC top 動脈瘤ではこのように前頭
このケース(Case 4: 図 6,7)は,約 7 mm の
葉を正面から引いて IC を distal に追うのではな
やや前方を向いた左 IC top 動脈瘤です(図 6A,B).
く,M1 の走行に沿って sylvian fissure を展開,
シミュレーション 3D DSA を示しますが,正面
進入し,A1 まで奥に一直線になるような術野を
から正対して IC を近位から追っていくように前
作ることが,ポイントです.こうすると sylvian
頭葉を subfrontal に牽引してアプローチすると,
fissure からの視野を最大限に活かすことができ
neck を露出するまでの牽引が強くなり,前頭葉
ます.このためには,前頭葉と側頭葉を完全に切
に埋没しているような動脈瘤にこの操作をするこ
離して free とする必要があり,さらに無血でき
とは破裂のリスクも出てきます.また,正面近く
ちっと sylvian fissure を分けることが要求されま
からの視野では neck の裏の穿通枝がわかりにく
脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2. 133
手 術 の コ ツ と ピ ッ ト フ ォ ー ル
A
B
C-1
C-2
GO →
図6
Case 4:やや前方向きの
左 IC top 動脈瘤(7 mm)
術前 3D DSA
A:3D DSA正面像.
B:3D DSA LAO約15°
.
C-1:Frontal正面から見た術野イメ
ージ.
C-2:Sylvian fissure方向から見た
術野イメージ(頭部25°右回
転)
.M1側からneckの裏側の
穿通枝を確認する(矢印)
.
くなります(図 6C-1).
側の blade の先端を確認した( 図 7B-3)後,リリ
一方,sylvian fissure 方向から見た 25°回転の
ースしました.最終的な blade の深さは動脈瘤の
シミュレーション 3D DSA を示します(図 6C-2).
皮一枚を残した状態です.
実際の術野を見ても,前頭葉の牽引は最少にして,
この動脈瘤に対応できるような,前頭葉をほと
M1 側から neck の裏側を見ることができること
んど牽引することがなく sylvian fissure を分けて
がわかります( 図 7A-1).Clip 挿入の際には M1
前頭葉,側頭葉を完全に切離することができる技
側から neck の穿通枝をチェックし(図 7A-2),ま
術を習得すると,例えば前頭葉に大きくめり込む
た,A1 側の neck 部分を剥離し A1 の穿通枝の状
IC 系の大型動脈瘤などにも対応でき,手術の応
態 を 確 認 し た 後,clip の そ れ ぞ れ の blade で
用範囲は格段に広くなります.
neck 部 分 を わ ず か に 動 か し な が ら(blading
4)Acom 動脈瘤
technique)
,左手の吸引管を同時操作で有効に使
Pterional approach で Acom の動脈瘤を手術す
用して,最後まで blade 先端を視認しながら clip
る際は,sylvian fissure を分け,さらに視神経と
を閉鎖しています(図 7B-1 ~ 4).閉鎖後も clip を
前頭葉を剥離,
interhemispheric fissure を剥離し,
リリースする前に鉗子をわずかに緩め clip head
剥離した sylvian fissure と interhemispheric fis-
を手前にわずかな力を加えることによって,A1
sure の部分がスライドする状況を利用して,前
134 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
A-1
A-2
B-1
B-2
B-3
B-4
図7
Case 4:やや前方向きの左 IC top 動脈瘤(7 mm)術中画像
A-1:実際の術野.3D DSAのイメージどおりであった.
A-2:M1方向からneckの裏側の穿通枝を確認.
B-1:Blading technique:A1側のbladeでneckにわずかな力を加え(矢印)
,neckとA1の間を確認する.
B-2:Blading technique:M1側のbladeでneckにわずかな力を加え(矢印)
,neck裏側の穿通枝を確認する.
B-3:Clip閉鎖後にもclip headに横方向にわずかな力を加え(矢印)
,先端を確認してからリリースする.
B-4:動脈瘤の向こう側を皮一枚残すようにする(矢印)
.
頭葉を牽引して動脈瘤を露出する必要がありま
場合はよいのですが,術側の A2 が clip 挿入の際
す. 前 頭 葉 の 牽 引 を 少 な く す る た め に rectal
に dome の手前にかぶってくる例は,pterional
gyrus を吸引除去するのも一つの手ですが,でき
approach より interhemispheric approach のほう
るだけ脳を傷つけずに interhemispheric fissure
に分があると思います.また,正中側で前頭葉を
を剥離して前頭葉を牽引できる状況にしたいと考
牽引し過ぎると嗅神経の断裂を招くので,常に嗅
えています.Interhemispheric fissure のスライ
神経のテンションを気にしている必要がありま
ドを利用でき,しかも術野が正中側に寄るので,
す.
sylvian fissure を分ける範囲は IC top ほどでは
このケース(Case 5: 図 8)は前向きの Acom
ありません.このため,最終的には前述の IC 系
動脈瘤です.ソフトを用いて DSA と視神経をフ
の動脈瘤よりも interhemispheric fissure 側を脳
ュージョンした画像を作成しています( 図 8A).
べらで引くことになります.しかし下向き,前向
Clip 直前では,interhemispheric fissure と sylvi-
きや,少し上向きでも A2 が術側に開いており,
an fissure の真ん中より interhemispheric fissure
clip を両側 A2 の前方あるいは間からかけられる
寄りに脳べらをかけています(図 8B).また,clip
脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2. 135
GO →
手 術 の コ ツ と ピ ッ ト フ ォ ー ル
A
図8
Case 5:前向き前交通動脈瘤(3.5 mm)
A:視神経とフュージョンした右pterional approachの術野イメージ画像.
B:実 際 の 術 野.interhemispheric fissureとsylvian fissureのスライドを利 用して( 矢 印 )
,
frontal lobeの牽引を行っている.
C:左手の吸引管の同時操作で対側A2とblade先端を視認しつつ(矢印)
,clipを閉鎖.
D:リリースする前にclip headにわずかに横方向の力を加えて(矢印)
,右側bladeの先端を確
認しにいく.
B
C
D
挿 入 時 に は 左 の 吸 引 管 で 左 A2 を 露 出 し て,
DSA 装置のある場所でしかこのような操作がで
blade の先端を視認しながら閉鎖しました( 図
きないのは血管外科医には大変残念であり,最も
8C)
.やはり,最後にわずかに
優れた DSA 付属ワークステーションはネットワ
clip head を前頭
葉方向に押して,見えにくかった右側の blade の
ーク型にして,カンファレンス(カンファ)室,
先端を見にいっています(図 8D).
手術室で見られてかつ操作できてこそ(図 9),さ
将来の術者養成のために
らに値打ちがあると思いますし,DSA メーカー
は積極的にサポートすべきだと思います.われわ
最後になりますが,手術映像と術者教育につい
れ昭和大学脳神経外科では次善の策として,汎用
て少しコメントさせていただきます.
型のワークステーションに一度データを送り,ネ
最近は,3D 画像が発達し,また動画もハイビ
ットワークでカンファ室,手術室から操作できる
ジョンファイルを使用することができる時代です.
ようにしています.
特に 3D DSA の画像を作成し,またフュージ
また,手術動画はディスクレス,ハイビジョン
ョンし,これをワークステーションで自分の見た
ファイルとして医局のサーバ PC に蓄積していま
い角度で見られるように画像を動かして操作する
す.サーバ PC は固定 IP アドレスを設定し,通
ことが可能になったことは大変な進歩です.血管
常の院内 LAN network(100 Base T)でカンフ
内治療医は常にこれを実践しています.ただ,
ァ室,個人の PC からいつでもスムースに見るこ
136 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
とができます.Windows 7 以上ならセキュリテ
ィも簡単万全です.カンファでは,この動画ファ
イルを編集することなくシームレスで見て毎朝
discussion しています( 図 10).Media player な
どの再生ソフトでは点から点への再生になり完全
シームレスではないので,オーサリングソフトを
使用することがポイントです.このようなシステ
ム全体は私が考案,構築しましたが( 図 11)(ハ
イビジョン手術映像ネットワークシステム / シ
ステムサポート ライカ,共信コミュニケーショ
ンズ)
,既存の LAN を利用し,機器のフレキシ
ブルな組み合わせが可能であり,手術教育に活用
してきました.また,市販 PC 機器,ソフトを用
いているので特別なお金がかからず,汎用性があ
ると思っています.少しネットワークの理解が必
要ですが,どこかで機会があれば詳しく紹介した
いと思います.
図9
手術室でワークステーションを操作する
図10 昭和大学脳神経外科の毎朝の手術カンファレンス
ディスクレス,未編集,シームレスでハイビジョン手術動画を見る.
脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2. 137
手 術 の コ ツ と ピ ッ ト フ ォ ー ル
図11 ハイビジョン手術映像ネットワークシステムの模式図
文献
1)
水谷 徹,杉山達也ほか : 未破裂脳動脈瘤における穿通枝温
存のための Blading technique.脳卒中の外科 42: 397-401,
2014
138 脳神経外科速報 vol.25 no.2 2015.2.
GO →