実践のまとめ(第5学年 理科) 新発田市立住吉小学校 教諭 渡邊 幸太 1 研究テーマ 科学的思考力を育む理科指導 ~知識の積み重ねと「書く」活動を通して~ 2 研究テーマについて (1) テーマ設定の意図 これまでの理科学習での児童の様子を振り返ると、積極的に実験を行っている姿が見られ、実験は 楽しいという児童が多くいる。しかし、実験結果からどのようなことが確かめられたのかを書けない 児童、主体的に課題を見つけて解決しようとすることができない児童も見られた。これは、 「目的意識 をはっきりともって学習に臨むことができていないこと」 「学習や日常生活で出てくる疑問や問題をつ かみきれないこと」が原因としてあげられる。そのため、一つ一つの実験がその場限りで完結してし まい、既習学習や日常生活とのつながりを意識できないままに次の学習に入り、見通しや考えの根拠 が見つからない様子が見られることがあった。 そこで、本研究では、 「獲得した知識の定着を図るためのカードの活用」「問題解決の過程に沿った 書き方ガイドの提示」 「主体的に、獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場の設定」を手立 てとして授業実践を行った。獲得した知識を積み重ね、問題解決の過程で、筋道立てて「書く」活動 を通して、個々の思考過程を明確にし、科学的思考力を育む授業づくりを目指したい。 * 知識の積み重ね・・・科学的な言葉を定着させ、イメージの言語化・共有化を図ることとする。 * 科学的思考力・・・本研究では、事象を、根拠を基に筋道立てて考える力とする。 (2) 研究テーマに迫るために ① 獲得した知識の定着を図るためのサイエンスカードの活用 について 知識は考えを構築する上での材料として必要不可欠である。知識を積み重ね、定着させていくこ とが、問題解決の手がかりとなる。科学的な言葉や概念を児童が学習するごとに、カードに書き溜 めさせる。毎時間の導入時に、カードを使って、クイズ形式の問題を出し合わせることで科学的な 言葉や概念が定着し、イメージの言語化・共有化ができると考える。 ② 問題解決の過程に沿った書き方ガイドの提示 について 自分の考えを単に書かせるだけでは、児童は、直感的・断片的な思考にとどまりがちである。そ こで、問題解決の過程において、 「書く」活動を重視し、筋道立った思考ができる手立てを講じるよ うにする。問題解決の過程で考える順序を意識させながら書かせることに加え、書き方ガイドを示 し、根拠を基に筋道立てて考える活動の充実を図る。 1 ㋐ 単元全体を通して 思考したり書いたりする時間を確保する。書かせる項目を整理し、思考の流れを構造化した書 き方ガイドを示し、児童が主体的に「書く」活動に取り組むことができるようにする。 (課題→予想→実験方法→結果の見通し→結果→考察→結論(まとめ) ) ㋑ 自然事象から問題を見いだす場面 児童の思考過程に沿った課題提示をし、気付きや疑問、知的好奇心を喚起する。 ㋒ 見通しをもって事象を調べる場面 課題に応じた予想と根拠を明確にさせる。 (「~だと思う。それは・・・だから。」)また、実験 方法や結果の見通し(「もしも~だったら・・・はずだ。」)を、予想を検証する材料とする。 ㋓ 結果を考察して、問題を解決する場面 結果には観察・実験から得られた事実を適切な方法(表やグラフ、絵、図、文章など)で書か せる。考察は、結果に基づいていえることを筋道立てて書かせる。(「(結果)。つまり(だから) ~といえる(となる)。」)文章だけでなく、絵や図などでかくことも奨励する。結論(まとめ) は、 「やっぱり(確証)」 「そうだったのか(とらえ直し)」 「なるほど(納得) 」 「どうして(疑問)」 のいずれの立場に当てはまるかを決めさせてから予想から考察までの思考過程を振り返らせて書 かせる。 ③ 主体的に、獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場の設定 について 一連の問題解決の過程において、児童が目的意識をもって活動することが大切である。そこで、 単元を通して児童が学習のつながりを意識して学習できるよう、単元の終末で、児童が主体的に、 獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場を設定する。 (3) 研究テーマにかかわる評価と対象 平成25年度、第5学年児童(30名)を対象に、3つの手立て(上記①~③)に基づいて行った 授業の分析により、それぞれの手立ての有効性を検証する。 (3つの手立てを基に行った実践1の課題 を修正し、実践2を行う。 ) 3 実践1を振り返って 【実践1】 平成25年度 第5学年(30名) 『電流のはたらき』 (1) 獲得した知識の定着を図るためのサイエンスカードの活用 授業で出てきた科学的な言葉やその概念(既習の言葉や概 念も)を、カードに書き溜めさせた。毎時間の授業始めに、 カードでクイズを出し合わせた。児童は楽しみながら用語を 繰り返し声に出したり、意味を確かめたりしていた。その結 果、科学的事象を説明する際にも、科学的な言葉や概念を進 んで用いたり、記述したりする児童が増え、クラス共通の言 葉になった。 2 (2) 問題解決の過程に沿った書き方ガイドの提示 「課題→予想→実験方法→結果の予想→結果→考察→結論(まとめ) 」が書ける『ガリレオシート』 を用い、思考過程ごとに書き方を提示した。 『電磁石の力を強くするにはどうしたらよいだろう』の課 題では、C1は下記のように、課題から結論までを、一連の思考過程の流れで、学習することができ た。 予想「~だと思う。それは・・・だから。」 結果の予想「もしも~だったら…といえる。 」 考察「 (結果) 。つまり~といえる。 」 (3) 主体的に、獲得した知識や技能、見方や考 え方が活用できる場の設定 単元の終末で、説明文を書く活動を設定し た。児童は、ガリレオシートで予想から結論 までの一連の思考過程を振り返り、明確な根 拠に基づき、サイエンスカードで定着した科 学的な言葉を用いて、筋道立てて書くことが できた。 (C1の説明文一部抜粋) <実践1の課題> 科学的思考力を磨き上げる場が不十分だった。児童の科学的思考力をさらに向上 させるために、予想や考察の段階で、自分の考えと他者の考えを比較・検討する活動を充実させる。 3 4 単元と指導計画 (1) 単元名 「流れる水のはたらき」 (2) 単元の目標 流水の様子を時間や水量、自然災害などに目を向けながら調べ、見いだした問題を計画的に追求す る活動を通して、流水の働きの規則性についての見方や考え方を育てる。 (3) 単元の評価基準 関心・意欲・態度 科学的な思考・表現 観察・実験の技能 知識・理解 ○地面を流れる水や川の流 ○流れる水と土地の変化 ○流れる水の速さや量の変 ○流れる水には、土地を侵食 れの様子や川の上流と下流 の関係について予想や仮 化を調べる工夫をし、モデ したり、石や土などを運搬し の川原の石の違いに興味・ 説をもち、条件に着目し ル実験の装置を操作し、計 たり堆積させたりする働きが 関心をもち、自ら流れる水 て実験を計画し、表現し 画的に実験している。 あることを理解している。 と土地の変化の関係を調べ ている。 ○安全で計画的に野外観察 ○川の上流と下流によって川 ようとしている。 ○流れる水と土地の変化 を行ったり、映像資料など 原の石の大きさや形に違いが ○増水で土地が変化するこ を関係付けたり、野外で を活用して調べたりしてい あることを理解している。 となどから自然の力の大き の観察やモデル実験で見 る。 ○雨の降り方によって、流れ さを感じ、川や土地の様子 いだしたきまりを実際の ○流れる水と土地の変化の る水の速さや水の量がかわ を調べようとしている。 川に当てはめて考察し、 関係について調べ、その過 り、増水により、土地の様子 自らの考えを表現してい 程や結果を記録している。 が大きく変化する場合がある る。 (4) 指導計画(全14時間、本時 次 第一次 目標 ことを理解している。 6/14時間) 主な学習活動 支援と評価 流れる水には、 ◎水害の映像や写真から、流れる水の 関・意・態地面を流れる水の働きに興味。関心 侵食、運搬、堆 はたらきについて、感じたことや気 をもち、調べようとする。 【観察】 地面を 積の働きがあ づいたこと、疑問に思ったことを話 思・表地面が変化する要因として、流れる水の 流れる ることが分か し合い、学習の見通しをもつ。 速さと水の量を見出し、実験計画を立てること 水のは る。 たらき ◎雨水が地面を流れる様子や雨上が りの地面の様子を観察し、流れる水 ができる。 【観察・シート】 技能モデル実験で、流水の道筋に沿ってその周 には地面を侵食したり、石や土、砂、 りの変化する様子を調べ、記録することができ 7時間 泥などを運搬したり堆積させたり る。 【観察・シート】 する働きがあることを観察する。 知・理流れる水は、地面を浸食したり、侵食し <A> た土や砂を運搬したり、堆積したりする働きが あることを理解している。 【観察・シート】 <B> (本時) ◎Aを基に、人工の流れをつくり、モ デル実験により「流れる水の働き」 における観察の視点を確かめる。 4 第二次 川の上流・中 ◎Bでの学習を基礎にして、野外観察 関・意・態 流・下流の川の を実施する。上流・中流・下流の 川の流れや水の働き、川原や川岸や川原の石の 川の水 様子や川原の 石の大きさの違いをとらえられる 様子に興味・関心をもち、調べようとする。 【観 のはた 石の大きさや ようにする。また、上流から下流 察・シート】 らき 形の違いを、流 まで、川を全体としてとらえ、「流 思・表川岸や川原の場所による様子の違いにつ れる水の働き れる水の働き」による川の様子の いて、流れる水の働きと関係付けて考えること と関係付けて 違いをとらえる。 ができる。 【観察・シート】 4時間 <C> 捉えることが 技能川原の様子や川の流れの速さを調べたり、 できる。 川の水の働きを、板を使って調べることができ る。 【観察・シート】 知・理川岸や川原の様子や、川の流れ方は、場 所によって違うことを理解している。また、流 れる水には、土地を侵食したり、石や砂などを 運搬したり、堆積したりする働きを理解してい る。 【観察・シート】 <D> ◎野外観察で学んだことをまとめ、そ れを検証する学習活動を実施す る。個に応じて課題を選択し、流 水のモデル実験を企画する。その 計画に従い人工の流れをつくり、 流れる水の速さや量を変え、地面 の変化の様子を改めて観察し、今 まで学習したことを具体的な場面 に適応することで、「流れる水の 働き」に関する概念を強固にする。 第三次 雨が大量に降 ◎過去に水害があった市内の加治川 関・意・態 ることで、川の について学習する。水害が起きた 増水時の川や自然災害の写真を見て、自然の力 川の流 水の量が増え、 原因や防災について考え、雨の降 の大きさを感じ、川や土地の様子を観察しよう れと土 流れが速くな り方によって、水の速さや量が増 とする。 【観察・シート・ポスター】 地の変 り、土地を侵食 し、地面を大きく侵食したり、岩 思・表川を流れる水の量や速さが大きくなる 化 し、災害を起こ 石や土を多量に運搬したり堆積さ と、「侵食」「運搬」「堆積」の働きも大きくな すことがあるこ せたりして、土地の様子を大きく ることを3つに分けて、まとめることができ とが分かる。 変化させることをとらえる。そし る。 【観察・シート・ポスター】 て、これからの防災について考え 技能増水時の川や自然災害の資料から、川の流 る。 れと土地の変化についてまとめることができ 3時間 人々は、川の <E> 水害を防ぐため に川の流れを調 る。 【観察・シート・ポスター】 整するいろいろ 知・理雨の降り方によって、流れる水の速さや な工夫をしてい 水の量が変わり、増水により、土地の様子が大 5 5 ることが分か きく変化する場合があることを理解している。 る。 【観察・シート・ポスター】 単元と児童 (1) 単元について 本単元では、人工の流れや実際の河川において、雨水が地面を流れることで侵食・運搬・堆積の働き をしていることを捉えるようにする。また、上流では大きく角張った石が下流では小さくなったり、丸 みを帯びたりしていることから、川を全体として見て、上流・中流・下流での川の様子の違いを捉える ようにすることをねらいとしている。さらに、「台風の接近」や「雲と天気の変化」の学習と関連させ て、大雨で川が増水することで流れる水の働きが変化し土地を大きく変化させることがあることを捉え られるようにする。 大まかな学習の流れを「A:単元の導入 B:視点をもつためのモデル実験 察 C:実際の河川での観 D:検証のためのモデル実験 E:まとめ」の5段階とする。事物・現象に繰り返しかかわりなが ら、自分の考えを整理して書くとともに、その考えを基に実験を工夫したり、友だちと考えを練り上げ たりしながら、科学的思考力を確かにしていく姿を期待したい。 (2) 児童の実態 児童は、理科の学習に対して意欲的になってきている。「理科の学習が好きですか」というアンケー トに対し、4月は66%、7月末では88%の児童が「好き」と答えた。また、「自分の考えを整理し て書くことができる」というアンケートに対しては、7月末に80%の子どもが「よくできる」「でき る」と感じている。一方で、「予想や理由を考えるのが難しい」「実験方法を考えるのが難しい」「生 活とのかかわりを感じない」「考えを書くことが難しい」と感じている児童もいる。 これまで「課題→予想→実験方法→結果の見通し→結果→考察→結論(まとめ)」の流れで学習を進 めてきた。しかし、生活経験や学習経験と関係付けて予想したり、児童の思考過程を振り返って結論を まとめたりする力は十分とはいえない。 本単元での、川と児童の生活経験との結びつきを考えると、校区にある川はコンクリートの用排水路 のみである。また、雨の日に外で砂遊びや泥遊びをすることも考えにくく、流れる水の働きに関する生 活経験の乏しさが考えられる。 6 本時の展開 (1) ねらい カーブでの流れる水の働きを、実験を基に考え、表現することができる。 (2) 指導について ① 獲得した知識の定着を図るためのサイエンスカードの活用 学習から児童が知識を獲得するごとに、カードに事実や概念を書き溜めさせる。毎時間の導入時に は、そのカードを用いてクイズ形式で問題を出し合わせる。「侵食・運搬・堆積」など科学的な言葉 が定着することで使うことができるようになり、イメージの言語化・共有化ができると考える。 6 ② 問題解決の過程に沿った書き方ガイドの提示 ㋐ワークシート(ガリレオシート)の活用と書き方ガイドの提示 「課題→予想→実験方法→結果の見通し→結果→考察→結論(まとめ)」の一連の流れで記入でき るワークシート(ガリレオシート)を用意し、自分の思考過程を整理できるようにする。また、書く 活動の際には書き方ガイドを示し、児童自身が思考過程を振り返り、見直すことができるようにする。 また、教師は児童が書いた考えに応じて、支援ができるようにする。 ㋑実験写真とホワイトボードの活用 流れる水の様子は目に見えるが、水の速さや量は言葉では表現しにくく、曖昧になりがちである。 そこで、自分たちの考えを筋道立てて構築できるようにさせるために、実験写真に書き込みをさせる。 それにより、思考過程の流れや共通点、相違点が明確になり、根拠をもった話し合いにもつながると 考える。 また、児童一人一人が考えをもち、より確かな考えにまで練り上げるために、各グループに1つ、 ホワイトボードを用意する。考えを自由に記述して、互いの考えを練り上げられるようにする。それ により、考えを吟味し、多面的に考えることで、客観性を高めていくことにつながり、個に戻したと きにガリレオシートに自分の考えが書けるようになると考える。 ㋒付箋紙の活用 黄色の付箋紙は「予想ワード(予想)」を書かせる。予想の段階で自分(たち)の考えを書くとき に使う。 ピンク色の付箋紙は「ツイッターワード(実況中継)」を書かせる。観察・実験で生じる変化を細 かく記録するときに使う。 水色の付箋紙は「シンキングワード(考えたこと)」を書かせる。事象・現象を見て分かったこと、 考えたことを表現するときに使う。 これらの付箋紙を、実験写真やホワイトボードに貼ることで、児童の思考過程が明確になるように する。また、付箋紙を類型化しながら話し合うことで、互いの考えを深め、自分の思考過程を整理し たり、振り返ったりして書くことができるようになると考える。 ③ 主体的に、獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場の設定 単元の始めに水害時の映像や写真を提示し、「どうしてこのような水害が起こるのか」を問い、流 れる水の働きの追究意欲と目的意識をもたせる。事物・現象に繰り返しかかわることで、児童は様々 な気付きや疑問を抱き、予想や理由を考える際の根拠をもつだろう。気付きや疑問を話し合いながら、 児童の考えを集約・類型化していく。それにより、児童の問題意識が明確になり、主体的に学習する ことができるだろう。 また、「どうしてこのような水害が起こるのか」という課題を、単元を通して意識できるように、 それぞれの次ごとに立ち返らせるようにする。単元のまとめでは、身近にある市内の加治川を取り上 げ、それまでの学習を活用し、防災について考える活動を設定する。 大まかな学習の流れを「A:単元の導入 B:視点をもつためのモデル実験 7 C:実際の河川での 観察 D:検証のためのモデル実験 E:まとめ」の5段階とする。これらの活動を通して、問題を 見いだし、継続的に追究していく。そして、事物・現象に繰り返しかかわりながら、科学的思考力を 育てていく。 (3) 展開 <前時> 時 つ 児童の活動と思考の流れ 1 サイエンスクイズをする。 か む 指導上の留意点と支援 ・グループごとにサイエンス グループごとに、カードを使い、クイズ形式で問題を出し合う。 2 クイズを行い、科学的な言葉 実験計画を確認する。 の言語化・共有化をさせる。 流れる水のはたらきは、直線とカーブで違うのだろうか? ・前時に「ミッション1 <ミッション2 カーブのなぞを解き明かせ!> 線のなぞを解き明かせ!」を 直 学習する。また、中流でのカ ・そろえる条件は、水の量と斜面の傾きだ。 ーブの様子をグループ内で話 ・変える条件は、直線とカーブ。今日はカーブを調べる。 し合い、予想する。 ・流れる水の働きが分かりや <実験の視点> A:水の速さ B:侵食 C:運搬 D:堆積 すいように、道具を準備して おく。 学 3 び グループの計画に沿って実験で確かめる。 (3回実験) ンク色付箋紙で記録させる。 A:水の速さ・・・おがくず 合 (ツイッターワード) B:侵食の力・・・旗 う ・変化する地面の様子を、ピ C:運搬の力・・・カラーサンド C、D の実験は合 D:堆積の力・・・カラーサンド わせて見る ・実験で使う道具は、これか らも視点の観察ごとに同じよ ・デジカメで実験前の写真を撮影する。 うに使わせていく。 ・ 「ツイッターワード」をピンク色付箋紙に記入する。 A:「カーブの B: 「カーブの C: 「カーブの外 D: 「カーブの 外側は、おがく 外側は、旗が 側は、カラーサ 外側は、カラー ずが速く流れ たおれた。 」 ンドが運ばれ サンドが流れ る。」「カーブの 「カーブの内 る。」 「カーブ る」「カーブの 内側は、おがく 側は、旗がた の内側は、カラ 内側は、カラー ずがゆっくり流 おれない。 」 ーサンドが流れ サンドが積も ない。 」 る」 れる。 」 ・視点をもとに、はっきりとし た結果が出るように、また、は っきりとした思考ができるよう に、①A②B③C・D の3回の実験 をさせる。うまく観察できなか った場合や確認したい場合は、 視点がずれないように再度実験 してもよいこととする。 ・デジカメで実験後の写真を撮影する。 ・グループで撮影した写真を 4 印刷しておく。 次時の課題の確認をする。 ・次の時間は今日の結果を考察していくことを理解する。 8 <本時> 時 つ か む 児童の活動と思考の流れ 1 指導上の留意点と支援 サイエンスクイズをする。 ・グループごとにサイエンス グループごとに、書き溜めたカードを使い、クイズ形式で問題を出し合う。 2 8 今日の学習を確認する。 の言語化・共有化ができるよ 流れる水のはたらきは、直線とカーブで違うのだろうか? うにする。 <ミッション2 カーブのなぞを解き明かせ!> ・思考過程の流れを大切にす 分 学 クイズを行い、科学的な言葉 るための道具を事前に準備し 本時は、前時の学習のまとめをすることを確認する。 ておく。 3 グループ内で結果と考察をまとめる(ホワイトボード・付箋紙) ・ホワイトボードに、付箋紙 カーブがかかれたホワイトボードに、 「ツイッターワード」を貼り、そ 貼りながら結果をまとめさせ び 合 の脇に「シンキングワード」を記入しながら貼る。 る。 (実験の視点ごとにツイッ う ・「シンキングワード」を水色付箋紙に記入する。 ターワードから考えられるシ A(つまり) B(つまり) C(つまり) D(つまり) 3 「カーブの外側は、水 「カーブの外 「カーブの 「カーブの 0 の流れが速い。」 側は、侵食す 外側は、運搬 内側は、堆積 「カーブの内側は、水 る力が強い。 」 する力が強 する力が強 い。 」 い。 」 分 の流れがおそい。」 4 個人で考察をまとめる(ガリレオシート) ンキングワード(水色付箋紙) を書かせる) ・ガリレオシートには、考察 ・付箋が貼られた実験写真を見ながら、ガリレオシートに結果と考察を書く。 の書き方ガイドを示し、結果 「カーブの外側は流れが速い。だから、侵食する力と運搬する力が強くなる。 」 を基に考察を書かせる。 ( 「(結 「カーブの内側は流れがおそい。だから、堆積する力が強くなる。」 果)。つまり~となる。 」) 5 全体で考察をまとめる テレビの実験写真を見ながら、全体で考察を話し合い、まとめをする。 ・全体で考察する場面では、 意図的指名をし、児童の思考 <ミッション2 カーブのなぞを解き明かせ!> 流れる水の働きは、カーブの外側では流れが速い。だから、侵食し たり運搬したりする力が強くなる。カーブの内側では水の流れがおそ い。だから、堆積する力が強くなる。 過程を整理する。 ・今回のミッションに立ち返 らせ、 「(結果)。だから~とな る。」でまとめるようにする。 見 6 つ ・「やっぱり」「そうだったのか」「なるほど」「どうして」の立場を書い 考察までの自分の思考過程を振 め てから、結論(まとめ)を書く。 り返って書かせる。 結論(まとめ)を書く。 学習の結論(まとめ)を予想から る <科学的な思考・表現> *「<やっぱり>わたしは、内側が水の流れがおそくなるから、堆積す 流れる水の働きと土地の変化を関係 7 る力が強く、外側は流れが速くなるから、運搬する力と侵食する力 付けて考察し、自分の考えを表現して 分 が強くなると予想した。実験したら、わたしの予想通りだった。 」 いる。(行動観察・ガリレオシート・ 発言) 9 7 実践2を振り返って 【実践2】 平成25年度 第5学年(30名) 『流れる水のはたらき』 (1) 獲得した知識の定着を図るためのサイエンスカードの活用 実践1のように、授業で出てきた科学的な言葉や概念を、カー ドに書き溜めさせた。毎時間の授業始めに、カードでクイズを出 し合わせた。児童は楽しみながら用語(侵食、運搬、堆積など) を繰り返し声に出したり、意味を確かめたりしていた。また、事 象についても繰り返し問題を出し合うことで、定着を図ることが できた。その結果、科学的事象を説明する際にも、科学的な言葉 や概念を進んで用いたり、記述したりする児童が増え、クラス共通の言葉になった。 カードは封筒で各自がカード入れを 作り、単元ごとに輪ゴムでとめ、いつで も使えるようにした。それにより、児童 は、科学的な言葉やその概念を確認した いときにさっと出して確認することが できた。 (2) 問題解決の過程に沿った書き方ガイドの提示 「課題→予想→実験方法→結果の予想→結果→考察→結論」を一連の流れで学習できるよう、ガリ レオシートを用意した。また、色分けした付箋紙を用意し、それぞれの付箋紙での書き方を提示し、 児童の問題解決の過程を一連の流れとして学習できるようにした。 「予想ワード」(黄色付箋紙)…予想の段階で自分(たち)の考えを書くときに使う。 「ツイッターワード」 (ピンク色付箋紙)…観察・実験で生じる変化を細かく記録するときに使う。 「シンキングワード」 (水色付箋紙)…事象を見て、考えたことを表現するときに使う。 <第1次 流れる水のはたらきは、直線とカーブで違うのだろうか。 ミッション2 カーブのなぞを解き明かせ!> 予想の段階で、児童は、 「予想ワード(黄色付箋紙) 」を、①実験A:水の速さ(おがくず)②実験 B:侵食の力(はた)③実験C:運搬の力、D:堆積の力(カラーサンド)の観察の視点を基に予想 を記入し、ガリレオシートに貼りつけた。その際、 「~だと思う。それは・・・だから。」の書き方を 示した。 C2はカーブの外側では「A:おがくずがはやく流れる と思う。それは、ほとんど水が外側にくるから。」と予想 ワードを記入し、直線での結果や考察を基にして、B:侵 食、C:運搬、D:堆積の力を予想した。カーブの内側で は、「A:おがくずがおそく流れると思う。それは、水が ほとんど外側にいって、内側にこないから。」と予想し、 それを基にして、B:侵食、C:運搬、D:堆積の力を予 想した。その後、グループで観察の視点を基に、おがくず、 10 はた、カラーサンドを使って実験を行った。 児童は「ツイッターワード(ピンク色付箋紙)」に 観察・実験で生じる変化を書き、ツイッターワード(ピ ンク色付箋紙)を基に、「シンキングワード(水色付 箋紙)」をグループで記入し、グループごとのホワイ トボードに貼り付けた。その際、「つまり~いえる。」 の書き方を提示した。 左の写真のグループでは、カーブの内側では「A: おがくずの流れがおそい。 」 (ツイッターワード) 「A: つまり、内側の流れはおそいといえる。 」 (シンキング ワード)と書いた。「B:はたがたおれない。」(ツイ ッターワード) 「B:つまり、内側の侵食の力は弱いといえる。 」(シンキングワード)と書いた。グ ループ内で相談したり、分担したりしながら、ツイッターワードとシンキングワードを関連させて書 くことができた。 考察の場面では、グループから個人にもどした。児 童はガリレオシートに、提示した書き方「~だか ら、 ・・・となる。 」と、ホワイトボードに貼ってある ツイッターワードとシンキングワードを基に、考察を 書いた。 その後、クラス全体で実験時の画像を見ながら、カーブの外側と内 側での、水の速さ、侵食、運搬、堆積の力を意見交流しながら確認し、 児童の発言を基に「流れる水の働きは、カーブの外側では流れが速い。 だから、侵食したり運搬したりする力が強くなる。カーブの内側では水の 流れがおそい。だから、堆積する力が強くなる。 」とまとめをした。 結論の場面では、自分の思考過程を振り返り、思 考を整理させるために「やっぱり」「そうだったの か」 「なるほど」 「どうして?」を選択させてから記 入させた。C2は予想と結果が一致していたので、 「やっぱり」を選び、予想から考察までの思考過程 を振り返って書き、自分の考えに自信をもった。 C3は、予想の段階で、カーブの外側では「A:おがく ずがおそくなる。それは、グラウンドと同じで外を走って いるとおそいから。」と予想ワードを記入し、直線での結 果や考察を基にして、B:侵食、C:運搬、D:堆積の力 を予想した。カーブの内側では、「A:おがくずが速く流 れる。それは、グラウンドと同じで内側を走っていると速 11 いから。 」と予想ワードを記入し、直線での結果や考察を基にして、B:侵食、C:運搬、D:堆積 の力を予想した。C3は結果とは反対の予想をしていたが、グループでのツイッターワードやシンキ ングワードの記入では、結果や他者との交流により、考えを修正することができた。 結論の場面では、C3は予想と結果は違っていたけれど、 学習を進めることで納得したので、「そうだったのか」を選 んだ。自分の予想と結果や考察を比較し、 「内側の流れでも、 同じ結果になったので、よくわかったなと思いました。」と 書いた。外側と内側の流れの速さの予想が違っていたため、 侵食、運搬、堆積の予想も全て反対の結果になったことを振 り返って書くことができた。 (3) 主体的に、獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場の設定 単元の始め(第一次(A) )で、水害の映像や写真を見て、「どうし てこのような水害が起こるのか」を、単元を通しての課題とし、流れ る水のはたらきの追究意欲をもたせた。 単元の終末(第三次(E) )で、第一次(A)で提示した水害の写真 に立ち返らせ、市内にある加治川で過去に水害があったことを学習し、 加治川全体の航空写真を使って、グループごとにハザードマップを作 成した。児童は、危険箇所とその理由、対応策を考え、まとめた。理 由では「~だから」、対応策では「~するために」「~すれば」の書き方を提示して書かせた。写真 のグループは、危険だと考える箇所を5つ選び、その理由、対応策を地図に書き込んだ。 Aの地点では、「カーブの外側は水の流れが速いから、 カーブの外側は水害になる危険がある。 」対応策として「外 側の川岸を強くすれば、けずられることがないので、ブロ ックにあみをはればいい。 」と話し合いながら書いた。 Bの地点では、「二つの川が合流するから、一気に水が 流れる危険がある。」対応策として「水の流れをゆるやか にするために、砂防ダムをつくればいい。」と話し合いな がら書いた。 Eの地点では、「急なカーブだし、急な斜面なので、 水害になる危険がある。」対応策として「川の流れを二 つにすれば、水があふれなくなるので、川を二つに工事 すればいい。 」と話し合いながら書いた。 水害が起こる事象に対し、これまでの一連の学習で出 てきた科学的な言葉や概念、科学的な見方や考え方を使 いながら話し合い、事象と思考を結びつけたハザードマ ップを作成することができた。 12 5 研究の成果と課題 (1) 成果 『獲得した知識を書き溜めたサイエンスカードの活用や問題解決の過程に沿った書き方ガイ ドを提示したこと、主体的に獲得した知識や技能、見方や考え方が活用できる場の設定は、児童の 科学的思考力の育成に有効』 <実践1>思考過程を、文型を用いて表現させたことで、児童は既習の知識の活用も含め、思考過程が 見えるようになり、自身の思考過程を振り返ることが可能になった。 ○獲得した知識を書き溜めたサイエンスカードを使ってクイズ形式の学習を行った。それによ り、科学的な言葉を用いて文章を書くことができた。カードを広げ、言葉や概念を確認する 姿も見られた。 全体で共有化も図られ、考えを出し合いながら問題解決をすることができた。 ○児童の思考過程を、文型を用いて表現させた。思考過程を筋道立てて書くことが苦手だった 児童も、問題解決の過程を一連の流れとして、学習することができた。説明文を書く活動で は、明確な根拠に基づき、予想から考察までの思考を筋道立てて書くことができた。 ○ワークシートの結論の記述では、全員の児童が「やっぱり」 「そうだったのか」 「なるほど」 「どうして?」の自分の立場を選択し、予想からの思考過程を振り返った書き方ができた。 これは単に実験で学習が終わらず、科学的思考をしながら学習している姿だと考える。 <実践2>実践1の手立てに加え、予想や考察の場面で、自分の考えと他者の考えをグループや全体で 比較・検討する場を十分に確保した。 ○予想や考察の場面で、ホワイトボードや色付き付箋紙を使って、他者と意見交換を行うこと で、比較・検討が活発になり、自分の考えに自信をもったり、修正したりする姿が見られた。 ○個人の考えをグループや全体で比較・検討する場を設定した。本時では、予想は個人で考え を書かせ、考察は、グループで話し合いながら書かせてから全体でまとた。それにより、予 想と結果が違った児童も、自分の考えと他者の考えとを比較・検討しながら修正を行い、結 論(まとめ)では、事象を正しく認識し、自分の思考過程を振り返って書くことができた。 ○単元を通した課題(第一次(A)で提示した水害の写真や映像から「どうしてこのような水 害が起こるのか」 )を設定し、その課題を明らかにするために、流れる水のはたらきの学習を 進めていった。単元の最後に、その課題解決のために、身近にある市内にある加治川のハザ ードマップをグループで作成させた。児童は、事象と思考とを結びつけながら考えていた。 また、グループで話し合わせたことで、自分の考えや他者の考えを比較・検討することがで き、自分の考えに自信をもったり、修正したりしながらハザードマップを作成することがで きた。これは、科学的思考力を高めている姿だと考える。 (2) 課題 『他の単元でも「書く」活動による科学的思考力育成のための手立てを研究する』 実践1の課題から実践2を行った。実践2では、自分の考えと他者の考えを比較・検討する場を十 分に確保し、考えの再確認や修正を行うことができた。それにより単元を通して追究する意欲も育っ てきた。児童の科学的思考力をさらに向上させるために、 「書く」活動の取組を継続していきたい。 さらに、他の単元でも児童の思考過程を大切にした「書く」活動による科学的思考力育成の実践が できるよう、手立てを考え、研究していく。 *参考文献 13 新学習指導要領解説理科
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