米連邦取引委員会(FTC)から消費者の皆様へ FTC から消費者への

(和訳文)
米連邦取引委員会(FTC)から消費者の皆様へ
FTC から消費者への警告
希少コインへの投資
自己防衛の方法
投資目的で希少コインやブリオンコイン(地金型金貨)の購入を検討する人に
とっての最善の自己防衛とは、購入を持ちかけられているコインを時間をかけ
て研究することです。 従来からコイン投資による利益の大半は、貨幣研究家と
しても知られている収集家が手にしてきました。こうした人々は、コインに関
するさまざまな側面(希少性、等級付け、市場での入手しやすさ、価格動向な
ど)について、慎重に研究を重ねています。厳選されたクオリティと希少性の
裏付けを備え、貨幣としての地位が確立しているコインを賢く手に入れること
が、投資での長年の成功につながります。慎重なバイヤーの多くは、最初のコ
イン 1 枚を購入する前に、相当な時間をかけてコインについて広く勉強してい
ます。コインだけでなくディーラーについても色々と調べていけば、成功する
チャンスはさらに広がります。
コイン投資の勧誘を受けたときは、以下のポイントに留意してください。

投資に関するどのような宣伝も常識を使って判断し、買い急ぎはしないことで
す。うますぎる話などありえない、というのが普通なのだと覚えておきましょ
う。

ディーラーに代金を送ったりクレジットカードでの決済の承認を与えてしまう
前に、そのディーラー会社の評判や信頼性を熟知することが大切です。できれ
ば、その会社がいつからこの事業を行っているのかも調べておきましょう。担
当者が電話で話すことを鵜呑みにしてはいけません。「☓☓という業界団体に
加盟しています」という説明をディーラーから受けたときは、当該団体にその
事実を問い合わせてみてください。投資を行う上でディーラーの信頼性に確信
が持てない場合は、別のディーラーに当たってみることです。

ディーラーから「購入価格またはそれ以上の額で必ず買い戻します」あるいは
「鑑定保証付きです」と話を持ちかけられても、そのディーラーに十分な資金
力があると確信できない限り、そのような口車に乗ってはいけません。顧客へ
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の保証やその他の義務を遵守できなかったとして FTC に訴追されたディーラ
ーは、過去数年で相当な数に上っています。

コインを受け取ったらすぐに、そのコインの等級や価値についてセカンドオピ
ニオンを仰ぐというのは賢明な方法です。従って、セカンドオピニオンの結果
次第でどのような救済が受けられるのか、購入前に確認しておきましょう。例
えば、購入に満足できない顧客に対し 30 日以内なら返金する、という会社もい
くつか存在します。ディーラーからのこうした情報は、内容をしっかり確認す
ることが大切です。「購入代金の全額を払い戻してくれるのか、あるいは別の
コインを購入できるクレジットが提供してくれるのか?」という点などです。
「購入時の格付けのままでコインを買い戻します」というディーラーの約束は、
支払い代金そのものを返してくれるのか、あるいはある程度差し引かれた額の
返金なのでしょうか?

コインを購入するときは、そのコインの等級を必ず第三者機関に鑑定してもら
いましょう。鑑定証明書や「スラブ」(コインの入っているケース)について
は(特に、それがディーラーから提供される場合には)、十分な注意が必要で
す。第三者として鑑定作業を行う会社の多くは、アクリル製のケースにコイン
を封入し鑑定番号を付けて提供しています。これは、コインがこれ以上損傷す
ることを防ぐとともに、ケースの中身が等級の高いコインから低いものへすり
替えられるリスクを減らすために有効な手段です。セカンドオピニオンとして
鑑定証明書やスラブに頼るのであれば、その意味するところを正しく理解する
必要があります。鑑定とは厳密な科学ではなく、それゆえ鑑定証明書やスラブ
は、それを提供した鑑定サービス会社の見解に過ぎません。その会社が本当に
利害関係のない立場にあるのか、どのような基準で鑑定を行っているのか、業
界における評判はどうかをチェックしましょう。また、鑑定基準は業者によっ
て異なるため、同じ等級が付いたコイン同士であっても、鑑定サービス会社が
違えばそのコインの価格に差が生じることもあり得ます。毎週発行の専門誌や
現物未確認取引に関する情報ネットワークには、さまざまなサービス会社が鑑
定したコインの価格がリストアップされています。購入を検討中であれば、こ
うしたリストで価格をチェックすることも大切です。
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値段比べも重要です。等級だけでなく、価格にも注意しなければなりません。
購入を決める前に、複数のディーラーの話を聞くようにしてください。法外な
値段を請求されていないか、コイン関連の信頼できる専門誌や現物未確認取引
(現物を見ないで取引をすること)に関する情報ネットワークで価格をチェッ
クしておきましょう。現物未確認取引に関する情報ネットワークでは、コイン
の最低入札価格しか掲載されていません。一方、出版物に関しては、製造年や
グレードがさまざまな Fine コインの代表的卸価格を掲載している専門誌もい
くつか発行されています。ただし、こうした情報で示されるコインの価値は、
通常、そのコインを保有する消費者がすぐに売却した場合の予想買取価格より
高く、一方、そのコインを消費者が購入しようとする場合の小売価格より低い
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ものになりがちです。コインの現在の価値については、ディーラーの話を鵜呑
みにする前に、こうした出版物で市場価格を調べておきましょう。こうした出
版物に記載されたものより大幅に安い価格を宣伝しているディーラーがいたら、
そのコインの状態や等級について虚偽表示が行われている可能性があります。
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現物が存在し、それが適切に保存されていることを確認できるよう、コインを
購入したら必ず手許で保管しましょう。

何を購入する場合でも、クレジッカード番号を他人に(特に電話で)教えると
きは、常に慎重であるべきです。
詐欺的業者をどう見分けるか
現実には、希少コインやブリオンコインの詐欺的業者を見分けるのは非常に困
難です。なぜなら、一見真面目そうな詐欺的業者というのは珍しくないからで
す。大都市の金融街に構えた優雅なオフィス、「アカウント・エグゼクティブ」
や「投資カウンセラー」といった肩書のスタッフ、投資戦略を語るけばけばし
くて豪華なパンフレット等は、詐欺的業者がよく使う手口の一例に過ぎません。
彼らは、自社のスタッフが有名なコイン専門家であるとか、自らを業界最大手
あるいは最も権威あるディーラーだと吹聴することもあります。詐欺的業者で
も誠実そうに見えることは珍しくないため、提供された情報を確認することが
なおさら重要となります。
希少コインやブリオンコインのバイヤーを惹きつけるために、真っ当なディー
ラーと同じ手法を数多く用いるというのも、詐欺的業者の常套手段です。新聞
や雑誌に広告を掲載したり、ファイナンシャルプランナーや保険代理店を介し
て有望顧客と面会する例もあれば、テレマーケティングという流行りの営業方
法を利用する輩もいます。この方法では、知らない人から突然電話がかかって
きてコイン投資を勧められたり、ある宣伝について回答した消費者に業者が電
話をしてくるということもあります。テレマーケティングを利用した詐欺的商
法は、ここ数年で急速に広まっているため、見ず知らずの電話をきっかけにコ
イン投資にのめり込むことのないよう、十分な注意が必要です。最近では、マ
ルチ商法(ピラミッド商法)を利用してコインを販売しようとする詐欺的業者
も出現しています。こうした業者がよく用いる手口を、以下に紹介します。
等級付けに関する騙しの手口
希少コインの価値は、その等級と希少性により決まるのが一般的です。その意
味で、購入予定の希少コインの等級が適正であることは非常に重要です。希少
コインに付けられる等級は、そのコインの状態を表す最も簡潔な方法と言えま
す。等級付けを行うための評価方法には、「全体的な外観」「肉眼での観察」
といった項目が含まれるため、ある程度主観に左右されることは避けられませ
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ん。そのため、特に等級が高い投資向けのコイン(より微妙な特徴で状態の評
価が分かれるようなコイン)の場合、真っ当なディーラーたちの間でも異なる
等級が付くこともあります。等級ごとに定められているわずかな特徴の違いに
よって、コインの価値や価格に大きく影響することも珍しくないため、等級付
けにおける主観というものは、ある意味でコイン投資に潜む本質的なリスクで
あると言えます。
しかし、詐欺的業者は、売ろうとするコインの等級を意図的にかさ上げし、実
際の数倍もの額を要求するということをしばしば行います。例えば、貴方が 1882
年 S -モーガンダラーコインを購入する際、状態がすばらしいので高い等級が付
いているという説明を業者から受けて 450 ドルの価格を支払ったとしましょう。
しかし、後になってから、そのコインの実際の等級は 2、3 段階も低く、わずか
50 ドルの価値しかなかった、ということもあり得るのです。独立した鑑定サー
ビスが登場する前は、等級付けに関する不正行為が希少コイン詐欺の代表的な
ものとされていました。
スラブおよび鑑定書に関する騙しの手口
現在では、消費者やファイナンシャルプランナーの多くが、購入前にコインに
付された等級の正しさを確認するため、第三者である評価・鑑定サービスを利
用しています。こうしたサービスでは、コインに付された等級を「証明」し、
何らかの鑑定書を付けた「プラスチック」のケースまたは「スラブ」にコイン
を封入する作業を行います。ただし、鑑定や評価サービスを利用した場合でも、
損失を被らないとは限りません。悪質なコインディーラーによる鑑定サービス
が詐欺的な販売スキームの一部に組み込まれていたり、そうしたサービスが消
費者を誤認させるという例が、後を絶たないからです。
また時には、真っ当な業者による鑑定書やスラブですら誤認を招くこともあり
ます。例えば、鑑定サービス業者が、希少コイン業界で一般に認められた基準
より甘い基準を採用している場合です。そうした業者が鑑定書を付けたコイン
は、同じ等級が付いた別のコインより価値が低いということも、結果的にあり
得るのです。大手の鑑定サービス会社が鑑定したコインについては、その価格
情報をまとめた特別な出版物や現物未確認取引に関する情報ネットワークがあ
ります。
鑑定書付きコインを購入する場合でも、その最新価値については、こうした情
報を事前に必ずチェックしましょう。詐欺的業者の中には、古い鑑定書を持ち
出してきて、そのコインの等級は現在の基準で適正なのだと消費者に思い込ま
せるという例もあります。
購入に踏み切る前に、鑑定書またはスラブの日付を確認するとともに、その発
行元である鑑定サービス会社についてもよく調べるようにしましょう。
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現在価値に関する騙しの手口
希少コインの詐欺的業者の中には、コインの等級付けを正しく行っておきなが
ら、その価値について消費者を誤認させようとする者もいます。つまり彼らは、
コインの等級付けを正確に行っておきながら、実際の価値を大幅に上回る価格
設定を行うのです。これだと、現在の小売価値が 1,750 ドル程度の 10 ドルイン
ディアン金貨(ただし、等級は適正)が、5,000 ドルで売られるということもあ
り得ます。価値に関する不正行為は、希少コイン詐欺に関してますます一般化
しています。
異論はあるでしょうが、コイン投資には大きなリスクが潜んでいます。コイン
に関する知識が不十分だと、投資額の大半あるいは全てを失いことにもなりか
ねません。
価格上昇に関する騙しの手口
ニューヨークの投資銀行ソロモン・ブラザーズがかつて毎年公表していた希少
コインの価格上昇率データを引用し、バイヤーを誤認させようとするのも、詐
欺的業者の常套手段です。このデータによると、価格上昇率は毎年 12~25%と
されています。しかし、このソロモン・インデックスは、希少価値の極めて高
い 20 種のコインを基準とするものでした。一方、詐欺的業者が扱うのは希少性
の低いコインであるため、たとえ価値が上昇するとしても、ソロモン・インデ
ックス並みの上昇率というのはまず期待できません。それにもかかわらず、真
っ当であれ詐欺的であれ、以前は大半のコインディーラーがこのソロモン・イ
ンデックスを利用していました。だからこそ、ディーラー選びは慎重に行うこ
とが極めて重要なのです。どんなコインでも、価値が上がる保証はどこにもあ
りません。投資対象としてのコインの人気は、ここ数年停滞しているのが実情
です。
ブリオンコインに関する不正行為
ブリオンコインは、厳密には「希少」コインではありません。希少性や状態で
はなく、主にそのコインが含有する金や銀の量によって価値が決まるからです。
ブリオンコインの代表格には、アメリカンイーグル金貨(米国)、メイプルリ
ーフ金貨(カナダ)、クルーガーランド金貨(南アフリカ)があります。 こう
したコインは、銀行、ブローカー、コインディーラー、貴金属ディーラーなど
が競って価格提示を行う中、世界中で取引されています。ブリオンコインの価
格は、世界の金・銀相場に連動して毎日変化します。ブリオンコインに法外な
価格を設定したり、地金や地銀の含有量について消費者を誤認させるというの
は、詐欺的業者の常套手段です。ブリオンコインを購入するときは、複数の信
頼できるディーラーやブローカーに問い合わせて価格を比較するとともに、追
加の手数料や送料が発生しないかについても、必ず確認してください。
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詐欺的業者は、実際にはコインでも何でもない代物を「コイン」だと称し、消
費者を誤認させて売りつけることもあります。購入しようとするコインが、不
正な「鋳造所(ミント)」で製造されたイミテーションメダルでないかどうか、
必ず確認しましょう。民間の鋳造所の中には、米国造幣局の製造コインとデザ
インは同じでサイズが異なるブリオンコインを発行しているところもあります。
自分が何を買おうとしているのかを正しく理解するには、購入前にブリオンコ
イン市場をよく研究し、ディーラーを慎重に選ぶことが、最善の自己防衛とな
ります。
困ったときは
コインディーラーとの間で問題が生じ、満足できる解決策をそのディーラーが
示さない場合には、いくつかの機関に相談することができます。ディーラーの
中には、第三者機関(通常、同業者団体の一つ)による拘束力ある仲裁を通じ、
紛争を解決するところもあります。FTC をはじめとする消費者保護を目的とす
る機関では、詐欺的業者を訴追するための準備として、消費者からの苦情に注
意を払っています。ほとんどの場合、政府機関に個人の紛争を解決する権限は
認められていませんが、訴訟の進め方について消費者に適切なアドバイスを提
供することは可能です。また、コインに関する業界団体の多くは、会員である
ディーラーが絡んだ紛争について、消費者に支援を提供することができます。
ご参考までに、以下の組織および政府機関を紹介します。
コイン業界団体

American Numismatic Association(ANA)は、コイン収集家の非営利団体で
すが、多くのディーラーも会員として加盟しています。ANA では初心者と
経験豊富な収集家の両方を対象に、さまざまな教育プログラムを提供してい
ます。会員に関する苦情は、ANA に文書で申し立てることができます(宛
先:818 North Cascade Avenue, Colorado Springs, CO 80903)。
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Industry Council for Tangible Assets (ICTA)は、全米コイン・貴金属ディ
ーラーの業界団体です。ICTA では会員に対し、American Arbitration
Association (AAA:アメリカ仲裁協会)が行う拘束力ある仲裁プログラム
への同意を求めています。また、その他の仲裁や和解プログラムで会員が遵
守するものの記録も保管しています。ICTA 会員が AAA 仲裁プログラムその
他に同意しているかに関する照会は、ICTA に文書で行うことができます(宛
先:P.O. Box 1365, Severna Park, MD 21146)。

Professional Numismatists Guild (PNG)は、コインディーラーと貨幣研究
家の団体です。PNG には入会審査があり、ディーラーが会員になるには、
業務年数と純資産に関する最低条件を満たすことが必須とされています。
PNG は会員に対し、消費者や他のディーラーからの苦情を解決するため、
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拘束力ある仲裁手続きに従うことも義務付けています。会員に対する苦情は、
PNG に文書で申し入れることができます(宛先:3950 Concordia Lane,
Fallbrook, CA 92028)。
(注意:英語原文で Fraudulent Sellers と書かれている部分は法的用語として「詐
欺的業者」と訳しました。東京大学出版会 田中英夫の「英米法辞典」では
Fraudulent は「詐欺的な」と訳され、Fraud の訳は「詐欺。虚偽の事実を伝えま
たは開示すべき真実を秘匿することによって他人を欺罔し、その者に損害を与
えること。」とあります。)
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