田 中 和 広 - 田中金属製作所

Kazuhiro Tanaka
不撓不屈のリーダー
株式会社田中金属製作所
田中和広
代表取締役
日本のものづくりを支えてきた町工場。こ
れまで大手メーカーの下請け部品を作って
き た が、リ ー マ ン シ ョ ッ ク で 注 文 は 激 減。そ
んな中、長年培った技術を生かしてオリジナ
ル製品を開発し、ヒットを飛ばす企業が出て
き た。田 中 金 属 製 作 所 も そ の ひ と つ だ。様 々
な場所で引っ張りだこのオリジナルシャ
ワーヘッドを開発した田中金属製作所の社
長、田中和広に叩き上げブランディングプロ
デューサー安藤竜二が迫る。
きっかけは祖父の一言
ただけますか。
安 藤 竜 二︵以 下 安 藤︶ ま ず は 創 業 の 歴 史 か ら 教 え て い
田中和広︵以下田中︶ 1965年に父、田中昭雄が借家
にて旋盤機1台で創業しました。当時は、現在工場のある
場 所 ま で の 道 が な く、工 場 は 5 キ ロ メ ー ト ル ほ ど 南 に あ
りましたが、祖父の﹁死んだら生まれ故郷に埋めてくれ。﹂
と い う 言 葉 が き っ か け で 一 念 発 起 し、現 在 の 場 所 へ 移 転
したのです。当時はお金もなく、木造の小さな工場で買っ
て き た 中 古 の 機 械 を 修 理 し て 使 っ て い ま し た。そ こ か ら
少しずつ広げていったのです。
安藤 当 時 は 主 に 何 を 作 ら れ て い た の で す か 。
%程を
田 中 岐 阜 県 山 県 市 は 水 栓 バ ル ブ 発 祥 の 地 と 呼 ば れ て い
ま す。バ ル ブ な ど の 水 栓 金 具 で 国 内 出 荷 額 の 約
作所で働き始めたのですか。
なって教えていただいたのもあり、
順調に覚えられたと思
誓って、
必死にそこで加工技術を覚えました。
先輩に親身に
を製品化できませんか。と提案を受けたため、東急ハンズ
身乗り込んだ際、東急ハンズさんなどからこのアダプター
はこの商品で何が何でも会社の業績を上げようと決意し
ルシャワーの商品化にこぎ着けることができたのです。私
そして、彼は要素技術の改良に成功し、マイクロナノバブ
わ ぬ 奇 跡 を 起 こ し ま し た。﹃ガ イ ア の 夜 明 け﹄の デ ィ レ ク
ることができたのです。そして、こ の実演販売の継続が思
中で覚悟がさらに大きくなり、諦めることなく実演を続け
年間5500時間働いてみえる塾生の方の話を聞き、私の
安 藤 ご 縁 が 転 機 に な っ た ん で す ね。そ の シ ャ ワ ー に つ
張りに顔向けできませんから。
ですね。その反響はいかがでした。
安 藤 諦 め ず に 続 け た こ と で 最 高 の 出 会 い に 恵 ま れ た ん
ターから 電話がかかってきたのです。
した。平成
いて教えていただけますか。
田中 反響はかなりありました。﹃ガイアの夜明け﹄
の放送
田 中 当 時 の 業 績 は 順 調 で し た が、孫 請 け の 仕 事 の た め、
元 請 会 社 が 値 決 め を し て い ま し た。私 は 値 決 め を 自 分 の
かなか思うように売れませんでした。しかし 、安くて性能
などへも営業に行きました。今ではワシントンホテルさん、
田中 商品名は﹃アリアミスト ボリーナ﹄です。従来のマ
あって、
経常利益が1.4%から25.6%と跳ね上がり、
終 了 後、
想 像 以 上 の 販 売 数 を 記 録 し ま し た。
その成果も
ホテルで弊社の節水シャワーヘッドが使われています。
が良いという自負はありましたので、同時にシティホテル
ル ー ト イ ン ホ テ ル ズ さ ん 、星 野 リ ゾ ー ト さ ん な ど 多 く の
イ ク ロ バ ブ ル 発 生 方 法 の 多 く は、外 気 混 入 し て マ イ ク ロ
安 藤 入 社 当 時 は ど の よ う な 仕 事 を さ れ て い た の で す か。
安 藤 ホ テ ル に と っ て 格 好 の 製 品 だ っ た わ け で す ね。他
弊社は見 事V字回復したのです。
しかし、
これはきっかけ
責 任 で 行 い、商 い を し た い と 考 え て い ま し た の で、﹁メ ー
μー j et︵ミ ュ ー ジ ェ ッ ト︶シ ス テ ム は、水 分 中 に あ る
日々邁進しないと継続して成長できないと考えています。
に 過 ぎ ま せ ん。
こ れ に 慢 心 す る の で は な く、
これからも
バブル化させています。しかし、ボリーナに内蔵している
の で す が、父 は 倹 約 家 で 中 古 機 械 を 修 理 し て 使 う よ う な
そ の た め に は、ど う し て も 設 備 投 資 を 行 う 必 要 が あ っ た
外 気 の 影 響 を 受 け に く い の が 特 徴 で す。外 気 吸 気 を し な
な 良 質 の マ イ ク ロ バ ブ ル を 生 成 す る こ と が で き ま す。
道 料 金 の 削 減 を し た い と い う 会 社 に 出 会 い ま し た。そ の
績は右肩上がりになっていった のです。そんなある日、水
社 で も あ っ た た め、得 意 先 か ら は 取 引 停 止 に。し か し、業
し、取 引 が 始 ま っ た メ ー カ ー は 得 意 先 が 受 注 し て い た 会
メ ー カ ー か ら 直 接 取 引 が で き る よ う に な り ま し た。し か
という1通のメールが届いていました。そのメールの最後
パ ソ コ ン を 開 い た ら、﹁い ま 開 発 は 募 集 し て い ま せ ん か ﹂
自信を失いました。ところが、2010年のお正月休みに
彼が退職する予兆を感じとることができなかったんだと
が退職したのです。その時は目の前が真っ暗になり、なぜ
田中 実はさらに追い打ちをかけるように、開発部の課長
安藤 その苦境をどう乗り越えられたのですか。
る 販 売 の プ ロ の 方 を 紹 介 し て い た だ き ま し た。そ の 方 に、
んな時、東急ハンズのバイヤーさんから完売王と異名をと
た。それでも高いとどこも扱ってくれなかったのです。そ
ア ミ ス ト ボ リ ー ナ﹄の 価 格 を 9 8 0 0円︵当 時︶に し ま し
れていたので、1万円を切れば売れるだろうと思い、﹃アリ
クロナノバブルシャワーは1万 5000円ほどで販売さ
田 中 それが、そう簡単にはいきませんでした。元々マイ
だったのではないですか。
品 加工 の 傍 ら 自 社 商品﹃節 水 シャワーア リ ア ミ ス ト﹄を 開
行 を 終 え 真 鍮 部 品 加工 の 職 人 と し て 家 業 を 継 ぐ。水 栓 部
1968年生まれ。地元部品加工会社に就職、5年間修
田中和広 株式会社田中金属製作所 代表取締役
立たせていきたいと考えています。
れ、自分たちが培った節水の技術を、水の少ない地域で役
を掛けていただいております。今後は海外進出も視野に入
ルへ行きましたが、他にも中国や台湾、韓国な どからも声
る し っ か り と し た デ ー タ を 取 れ て い な い で す が、実 験 は
年も継続することに決
月に1年のアニ
チ ャ ン ネ ル さ ん で 販 売 し ま し た。 年
年にかけて、
ご縁があってショップ
バーサリーとして少し価格を下げて販売した際、
1日に1
安 藤 そ れ は 間 違 い な い と 思 い ま す。で は 今 後 の 展 開 を
年から
人 で し た か ら、私 の 事 業 ス タ イ ル は 綱 渡 り に 映 っ た と 思
万5000本も売れたため、
平成
0.1マイクロメートルという微細気泡が毛穴やシワの
教えていただけますか。
田 中 平成
います。それでも父とぶつかりながら、強引に設備投資を
奥 に 入 り、汚 れ を 吸 着 し て キ レ イ に な る。ま た、そ れ に
田 中 美 容 関 係 は 既 に 進 ん で い ま す が、医 療 や 水 耕 栽 培
際、かなり高額 な節水器具が流通していたことを知り、適
に苗字だけ明記されていました。ひょっとしたら廃業した
売れないのだったら実演販売すればいいとアドバイスし
発し事業化。幾多の困難に見舞われても決して諦めず、常
る分野はたくさんあると思っています。まだそれを裏付け
な ど、ま だ ま だ マ イ ク ロ ナ ノ バ ブ ル と い う 技 術 を 活 か せ
正価格で性能の良い節水器具を作れば必ず売れるという
水栓メーカーにいた開発者では。とピンときて、直接電話
ていただき、これしかないと決意しました。社員は反対し
に前を見て努力し続ける不撓不屈のリーダー。
半年後の2013年5月にパートナーの体調が悪くなっ
るとともに、取り扱い店舗も増えていったのです。しかし、
い実演販売を続けた結果、各店舗から実演の依頼が殺到す
店の方もびっくりしていました。それから毎週末東京へ通
モールサン出版︶他2冊がある。
め、全国を奔走中。著書に﹃安藤竜二ブランドテキスト﹄︵ス
ポーターに委 嘱。地 域 を 元 気に、地 域 を 世 界に発 信 す る た
主 催。2 0 0 7 年 8 月、経 済 産 業 省 よ り 地 域 中 小 企 業 サ
デューサ ー。地 域 ブラ ンド﹁サ ム ライ日 本 プロジェクト﹂を
実践で培った経験が武器の叩き上げブランディングプロ
安藤竜二 株式会社DDR 代表取締役
現在進行中です。また、﹃ガイアの夜明け﹄ではシンガポー
思いから節水事業をスタートしました。さらに、節水は企
しました。彼は安定した企業に就職できる技術を持ってい
ましたが、良い製品を作っても製品が踊るステージがなけ
と の 出 会 い が 増 え て い く う ち、つ い に 念 願 だ っ た 水 栓
業 も 一 般 家 庭 も 望 ん で い る は ず だ か ら、ど ち ら で も 使 え
れば知られることもなく、作り手の自己満足で終わる、ス
月に東急ハンズの銀座
たことで、もうやめようと弱気に。そんな時、ある経営塾で
店で実演販売を行ったのです。結果、1日で 本を達成。お
しました。そして、2012年の
テージを作るのが大事という私の持論で挑戦することに
るのにも関わらず、ボーナスも出せない田中金属製作所で
安 藤 素 晴 ら し い 効 果 が あ る ん で す ね。売 れ 行 き も 好 調
奇跡を呼び込んだ実演販売
次なる一手とは
していきました。それだけに失敗は絶対に許されない。そ
まったのですが、
ベンダーの失態によって、
全て白紙になっ
よって通常のものより6倍という温め効果もあります。
いので、白濁する大きなマイクロバブルではなく、超微細
の強い気持ちをもって昼夜仕事に邁進しました。
てしまったのです。
さらに悪いことは重なり、
長く取引をし
分の1にまで落ち込みました。
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働きたいと言ってくれたのです。それが転機になりました。
転機は千載一遇のご縁から
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る も の を 作 ら な け れ ば な ら な い。今 ま で は 下 請 け だ け で
メーカーとして企業から一般まで網羅できるもの作りを
するため、製品の開発に着手することに決めたのです。
安藤 どんな製品を作られたのですか。
田中 ﹃アリアミスト﹄という節水シャワーヘッドです。は
じ め は、シ ャ ワ ー ヘ ッ ド と ホ ー ス を 繋 げ る 節 水 ア ダ プ
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が 受 注 が 取 れ る よ う に な っ て き た の で す。い ろ い ろ な 方
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し た が、こ の 暴 利 な 仕 組 み を 変 え た い と い う 思 い も あ り、
が ら、新 規 顧 客 獲 得 に 励 み ま し た 。す る と、少 し ず つ で す
田 中 ま ず は 以 前 お 世 話 に な っ た 得 意 先 の 仕 事 を 請 け な
かがでした。
てきた水栓メーカーが内製化され仕事が激減。
売り上 げは
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安藤 自 分 を 信 じ て 努 力 さ れ た の で す ね 。そ の 成 果 は い
空 気 を 利 用 し て マ イ ク ロ バ ブ ル を 発 生 さ せ て い ま す の で、
にはどこで販売されたのですか。
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カ ー と 直 接 取 引 す る こ と﹂を 将 来 の 目 標 に 決 め た の で す。
思いが身を結ぶ
さんに置くことを前提に節水シャワーヘッドを開発しま
のかもしれません。
そして、
もう2度と負けられないと心に
時のくやしい思いが、
今の私の負けず嫌いの源泉となった
校へは進学せず、
父の工場の得意先に就職しました。
その当
継ぐため早く技術を身に着けたいという理由を作って、
高
時のクラスメートと同じ高校へ通うのが嫌で、
父の仕事を
す。
実は小学校の頃いじめにあったことがありました。
その
田 中 私 が 田 中 金 属 製 作 所 で 働 き 始 め た の は
歳からで
安 藤 地 場 産 業 な の で す ね。社 長 は い つ か ら 田 中 金 属 製
ルブなどの真鍮部品を作っていました。
他と同じく大手メーカーさんの下請けとして主に水栓バ
担 う 地 域 で、田 中 金 属 製 作 所 も こ の 地 域 の 工 場 で す か ら、
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田中金属製作所
代表取締役 田中和広
下請けからメーカーへ
成功に導く諦めない心
安藤竜二
います。
そして、
5年間務めたのち家業に入りました。
代表取締役
ました。このチャンスを活かさなければ父や社員たちの頑
株式会社DDR
年5月から店頭に並んだのですが、始めはな
叩き上げブランディングプロデューサー
ターを作ったのですが、それを持って中小企業総合展に単
株式会社田中金属製作所
〒501-2253 岐阜県山県市日永1095番地 TEL : 0581-53-2653 FAX : 0581-53-2654 URL : http://www.tanakakinzoku.com/
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