平成 27 年 9 月 7 日 No.510 合同会社(LLC)の特徴及び株式会社との相違点について 独立・開業の形態として、個人事業主や株式会社だけでなく、合同会社(以下「LLC」という。)という形態が増加しています。 株式会社設立の条件が緩和されたこともあり、資産保有会社を設立し、相続対策として資産保有会社の活用を検討している方も おられると思います。同族経営や株式を分散せずお互い信頼できる者だけで経営する場合には、LLC のほうが利点がある場合も あります。 株式会社と LLC では税務上の取扱いは基本的には変わりませんが、会社法上の規定にいくつかの相違点があります。そこで、 LLC の主な特徴と株式会社との相違点をご紹介します。 1.LLC の主な特徴 (1)出資者全員が有限責任 LLC の出資者は、株式会社の株主と同様に出資の範囲内で有限責任を負います。したがって、同じ持分会社である合名 会社や合資会社にのように無限責任を負う社員が存在せず、個人事業者と比較した際のメリットであるといえます。 (2)利益分配の割合を自由に決定することが可能 株式会社では、出資の割合によって配当額が決められますが、LLC ではあらかじめ定款に定めることにより出資者間に おいて自由に分配することが可能です。 つまり、出資額は少なくても貢献度の高い社員に出資割合を上回る利益配当を行うことができることになります。 (3)設立費用やランニングコストが安い LLC は資本金額の 7/1000(6 万円に満たない場合は 6 万円)のみで設立可能です。なお、株式会社は払込金額の 1/2 以 上を資本金にしなければなりませんが、LLC はそのような規定がないため、多額の増資を行った場合にも費用が抑えられ ます。また、決算公告義務がなく役員の任期もないことから、株式会社のように官報掲載費や重任登記費用の必要もあり ません。 (4)必置の機関が存在しない LLC には必置の機関が存在しません。株式会社では株主総会と取締役は必ず置かなければなりませんが、LLC では、 出資者が自由に機関構成を行うことができます。 2.LLC と株式会社との相違点 項目 設立費用 株式会社 合同会社(LLC) 定款認証手数料:5 万円 定款認証手数料:0 円 登録免許税:資本金額の 7/1000 登録免許税:資本金額の 7/1000 (15 万円に満たない場合は 15 万円) (6 万円に満たない場合は 6 万円) 出資者の名称 株主 社員 最高意思決定機関 株主総会 社員総会 業務執行者 取締役 業務執行社員 業務執行者の任期 2 年~10 年 任期なし 出資者と業務執行者の関係 株主が業務執行者に委任 社員=業務執行者 決算の公開 公告義務あり 公告義務なし 議決権 普通株式は持株割合に応じて保有 出資額に関係なく一人につき一票 配当の分配比率 普通株式は持分割合に応じて決定 原則自由 会社を運営していく上でのコストが株式会社と比較しても安く、かつ、税務上株式会社と同様の取扱いが受けられるため、法 人設立の際の選択肢の 1 つと言えます。 なお、株式会社と LLC の最も大きな相違点は、出資者と業務執行者との関係及び議決権にあります。同族経営の法人であれ ば、株主=経営者となる場合が多く、この場合、株式会社と LLC のどちらを選択しても問題はありませんが、経営に関与しな い株主に株式を保有させたい場合や種類株式を発行したい場合等は株式会社を選択することが望ましいです。 また、国内における LLC の知名度が低いということや、議決権が出資額に関係なく一人につき一票であるため、社員同士が 対立した場合には問題解決が困難になるケースもあります。 このような相違点を踏まえて、LLC を法人設立の際の選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょう。 (担当:谷本 俊)
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