Maritime > Global Xpress Global Xpress LバンドからKaバンドへの歴史的転換 インマルサット・マリタイム © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 高橋 佳子 本日の講演内容 特に、なぜKaバンドという新周波数を使うのか、という疑問に丁寧に答えます 1 インマルサットについて 2 Global Xpressサービスについて 3 なぜ Ka バンドなのか? 4 Kaバンドについての率直な疑問 5 Global Xpressサービスの準備状況 6 まとめ 7 Q&A MARITIME > Global Xpress 01 インマルサットについて © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 インマルサットについて 安全と信頼 : GMDSSを提供する唯一の衛星通信事業者 沿革 (35年以上にわたる無休サービスの提供) ˃ 1979 国際間の条約により設立(1982サービス開始) ˃ 1992 航空分野へ進出、1996 陸上分野へ進出 ˃ 1999 条約改正により事業部門が民間会社へ移行 ˃ 2005 ロンドン証券取引所に上場、BGANサービス開始 ˃ 2015 Global Xpress(GX)サービス開始 現況 (5つの事業部門、世界中に約1600人の従業員) ˃ 事業部門:海事部門、法人部門、航空部門、政府機関部門、米政府部門 ˃ 保有衛星:I-2 2機、I-3 5機、I-4 3機、I-5 2機(4機予定) インマルサット衛星の世代交代 第1世代 (Marisat) 第2世代(I-2) 第3世代(I-3) 第4世代(I-4) Lバンド 次期計画 民営化 インマルサット設立 Kaバンド 第5世代(I-5) GXサービス開始 1970 1980 1990 年代 2000 2010 2020 MARITIME > Global Xpress 02 Global Xpressサービスについて © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 Global Xpressサービスのエッセンス 海事サービスとしてはFleet Xpress :Lバンドとの統合サービスを1社で提供 世界初のKa帯での衛星移動通信サービス ˃ モバイルだけでなく、固定サービスとの共存 3機+1機(予備)での全世界サービス ˃ 89スポットビーム+6ステアラブルビームで全域をカバー 既存のLバンドとの補完 ˃ 海事サービスでは既存サービスとの併用が可能 1社だけのネットワークで完結 ˃ KuはNWサービス提供と衛星所有者が別々 ˃ Kuは本来モバイル用の衛星ではない GX衛星のカバレッジとゲートウェイ Launched in 2015 Launched in 2013 To be launched 衛星のスペック 世界でも最大級の静止衛星、かつ世界初のKaバンド移動通信用衛星 衛星バス:ボーイング702H 搭載アンテナ:89固定/6ステアラブルビーム ウイングスパン:33.8m 軌道制御:キセノンイオンエンジン 重量:6.1トン 設計寿命:15年 発電量:15kW@初期、13.8kW@末期 Fleet Xpress :L+Ka の海事サービスモデル Lバンドとのシームレスな自動切替で安全・信頼のサービス GX KaバンドとLバンドの併用 ˃ Kaでの高速・広帯域性 FB ˃ Lでの安定性・セキュリティ ˃ ユーザは切り替えを意識する必要なし ˃ 船内部のルータにて自動切替 Ku-VSATからのアップグレーダブル端末もあり ˃ 現場でのユニット交換だけでKuからKaにわずか 10分程度でアップグレードが可能 GX FB NSD Inmarsat Core Network MARITIME > Global Xpress 03 なぜKaバンドなのか? © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 各周波数バンドの定義と違い インマルサットだけで完結する安心・安全、かつKu以上の高速・グローバル Lバンド Kuバンド Kaバンド 利用周波数(Up/Dn) 1.6/1.5GHz 14/12GHz 30/20GHz 割当帯域幅 34MHz 550MHz 3500MHz ビームの形状と数 1グローバル 228スポット スポット(使用する衛 89スポット 星に依存) 6ステアラブル トランスポンダ帯域幅 34MHz 36MHzまたは54MHz 100MHz 最大速度(Up/Dn) 432kbps/432kbps 512kbps/2Mbps 5Mbps/50Mbps 衛星の保有形態 インマルサット所有の 専用衛星 多数衛星のトラポン の一部借用 インマルサット所有の 専用衛星 なぜKaバンドを使うのか? 衛星通信に割り当てられているL/S/C/Ku/Kaバンドの中で一番高い周波数帯 周波数の高い方が、より高速伝送が可能だから ˃ 同じアンテナサイズなら、実効出力(EIRP)をより高くできる(周波数の2乗に比例) ˃ ビットレートを倍にするには、理論的に倍の実効出力が必要(実効出力に正比例) 周波数が高い方が、衛星中継器や端末の帯域幅を広く取れるから ˃ 元々国際的な割当帯域幅が広いので、トランスポンダの帯域幅も広くできる 周波数が高い方が、より衛星の総通信容量を増やせるから ˃ ビーム数をより多く、スポット径をより小さくでき、周波数繰り返し利用によって総通信容量を増やせる 周波数が高い方が、より安いコストで通信サービスを提供できるから ˃ 部品コストを別にすれば、1衛星の総通信容量が大きいほど、原理的に1bpsあたりの通信単価は安い ˃ 同じ衛星規模なら、KuよりもKaの方が必ず安くなる(部品コストは将来的に同じレベルになるはず) 高速伝送できる理由:伝送速度と帯域・出力の関係 通信理論の基礎であるシャノンの定理:C=W log2( 1 + Pr/N ) C:無誤りで可能な伝送速度の上限、W:帯域幅、Pr:受信電力、N:雑音電力 シャノンの定理からわかること ˃ 伝送速度を大きくするには、帯域幅をより広く、受信電力をより大きくすれば良い(雑音電力は不変) ˃ 受信電力を大きくするには、実効送信電力をより大きく、アンテナをより大きくすれば良い 実際の衛星通信回線で伝送速度を大きくするには アンテナサイズ変更は制約が多い ˃ (アンテナサイズを変えないなら)端末・衛星のEIRPを大きくするか、帯域幅を広くするしかない ˃ EIRPを大きくするには、送信機出力を大きくするか、周波数を高くすれば良い (送信機出力は部品能力の限界があり、あまり大きくできない) ˃ 帯域幅を広くするには、周波数を高くすれば良い ˃ 結局、伝送速度を大きくするには周波数を高くすることが最も現実的 広い帯域幅の理由:衛星通信への周波数割り当て状況 衛星通信に使える周波数は国際的に決められている(WRC/ITU) Lバンド帯域 34MHz L S Cバンド帯域 635MHz C Kaバンド帯域 3500MHz幅 Kuバンド帯域 550MHz幅 X Ku K Ka 下り/上りペア運用 下り 回線 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 周波数(GHz) 上り 回線 22 24 26 28 30 総通信容量が増やせる理由:多数のスポットビーム 周波数が高いほど各ビーム径を狭くできるので、ビーム数を増やせる 離れたビーム同士は同じ周波数チャネルが繰り返し利用できるため 限られた割当帯域でもビーム数に比例した総通信容量が確保できる (ビーム数が2倍になれば総通信容量も2倍にできる) 低コストで提供できる理由:衛星の総通信容量 衛星通信システム全体のコスト配分 ˃ システム全体コストの中で衛星コストが支配的 ˃ したがって、1衛星あたりの総通信容量が通信コストを決める最大要因 ˃ 1bpsあたりの通信コスト ≒ 衛星製造・打上・運用コスト/総通信容量 総通信容量は周波数が高い方が有利 ˃ 同じ衛星規模なら、帯域幅が広いほど総通信容量が大きい ˃ 同じ衛星規模なら、ビーム数が多いほど総通信容量が大きい ˃ 同じ衛星規模なら、周波数が高いほど帯域幅もビーム数も多くできる つまり、周波数が高いほど、低コストの通信サービスが提供可能 MARITIME > Global Xpress 04 Kaバンドについての率直な疑問と回答 © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 Kaバンドへの率直な疑問と回答 1. Kaバンド衛星通信というのは実績があるの? 2. より高い追尾精度が要求されそうだが大丈夫なのか? 3. 降雨減衰が大きいと聞くが大丈夫なのか? 4. KuバンドHTSに比べてのメリットは? (1)実績は大丈夫?:Kaバンド衛星通信の実績 日本は、世界にさきがけてKaバンド衛星通信の実績を積んできた 世界最初のKaバンド衛星 ˃ 1977 6本のKaバンドトランスポンダを搭載実験用通信衛星「さくら」が 打上げ(1985まで運用) ˃ 1983~ 国内用通信衛星として、ずっとKaバンドが使われてきている 世界の衛星通信のトレンド ˃ 衛星通信はHTS(High Throughput Satellite)の時代へ(Kuバンド およびKaバンド) ˃ 現時点で運用中は少数だが、予定・計画中の衛星は多数 ˃ 運用中のKaバンドHTSの例 Intelsat-EPIC、KA-SAT(Eutelsat)、Viasat-1、ExpessAM5、他 (2)追尾精度は大丈夫?:周波数とアンテナ特性の関係 周波数が高くなるほど高利得(高い実効出力EIRP)が得られるので有利 周波数が高くなるほど高精度の追尾が必要だが、現状の技術レベルは十分 (むしろKuの130cmよりもKaの65cmの方が軽いため追尾は簡単で利得が高い) EIRP:Equivalent Isotropic Radiated Power Lバンド 65cmφ Kuバンド 65cmφ Kuバンド 130cmφ Kaバンド 65cmφ 注:以下で計算 θ=65λ/D G=(πD/λ)2η η=0.6 利得=19dBi ビーム幅=18° 利得=37dBi ビーム幅=2° 利得=40dBi ビーム幅=1° 利得=43dBi ビーム幅=1° 降雨減衰量や稼働率は統計量なので 平均的スループットは簡単な計算で比較可能 Kaバンドでの降雨減衰 ˃ 同じ雨量と同じ確率で比較すると減衰量はKuの数倍 システムとしての対応策 ˃ Lバンドとの組合せ、自動切替により稼働率はLバンドと同じ 降雨減衰量(dB/km) (3)降雨減衰は大丈夫?:降雨減衰と平均スループット 平均スループットの計算例 周波数(GHz) 前提1:Lバンド99.9%、 Kuバンド99%、 Kaバンド95% の稼働率 前提2:Lバンド0.2Mbps、Kuバンド2Mbps、Kaバンド4Mbps のスループット ˃ Kuバンド:2Mbps×0.99+0.2Mbps×(1-0.99)=1.982Mbps(Ku平均スループット) ˃ Kaバンド:4Mbps×0.95+0.2Mbps×(1-0.95)=3.810Mbps(Ka平均スループット) (4)KuバンドHTSとの比較したメリットは? 基本的に同じサービス内容の提供はKuでも可能ではあるが… インマルサット1社が提供する統合的なサービスがGXであり、Fleet Xpressであること ˃ 35年以上無休でサービス提供し続けてきたインマルサットだからできる安心・安全なサービス ˃ Lバンドとの組み合わせを1社だけで完結したサービスとして提供 (他社Ku+インマルサットL)よりもコスト面・リスク面での優位性 将来システムとしての有望性、可能性 ˃ 完全なグローバル・カバレッジ ˃ 原理的にシステム全体で見た時にKuよりも低コストになる MARITIME > Global Xpress 05 Global Xpressサービスの準備状況 © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 GXの準備状況(1):衛星 右写真:ロシアのプロトンロケットにより打上げられるI-5 F2 I-5 F1:2013年12月打上げ(IOR) I-5 F2:2015年02月打上げ(AOR) I-5 F3:2015年予定*(POR) I-5 F4:2016年後半予定(軌道上予備) *F3については、プロトンロケットの5月16日打ち上げ失敗の 原因を究明するためスケジュールが遅延する見込み。 inmarsat-5 F2の打ち上げ プロトンMロケットでの打上げシーンのビデオ GXの準備状況(2):船舶用端末 一部端末はKuバンドからの アップグレーダブル GXの準備状況(3):陸上端末 GXの準備状況(4):国際ルール・国内ルールの整備 ITU/WRCでの議論 ˃ ESOMP(Earth Station On Mobile Platform)としてKaバンドを移動にも使わせる気運 ˃ WRCで決まらなくても各国個別にESOMPを認める可能性(英国等は既に使用を許可済) 日本でのルール整備 ˃ 総務省が電波利用料技術試験事務として実験を計画中 ˃ 実験データを基に技術基準(無線設備規則)を設け、ESOMPを認める可能性? (情報通信審議会への諮問⇒答申⇒無線設備規則の改訂⇒包括免許) MARITIME > Global Xpress 06 まとめ © Copyright Inmarsat Global Limited 2015 Fleet Xpressサービス導入のメリット Planned Maintenance Security systems Remote IT support Internet Access Engine Monitoring Anti-piracy Corporate email Voice & Video Chart Updates Video surveillance Voice & Video chat Weather routing Telemedicine VPN to office systems Current news & sports TV and Radio まとめ MARITIME > Global Xpress ご清聴、ありがとうございました。 © Copyright Inmarsat Global Limited 2015
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