(新製品)世界最高出力50mWの深紫外線LEDの量産化に成功

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Press Information
2015 年 10 月 14 日
【新製品】
従来の 1.7 倍の光出力達成。世界最高出力 50mW の深紫外線 LED の量産化に成功
要旨
日機装株式会社は、量産化技術が確立されたものとしては世界最高出力となる 50mW の深紫外
線 LED1) の開発に成功しました。新製品は、当社従来品の約 1.7 倍の光出力となる 50mW(350mA
駆動時)を達成、中心波長が 285nm の波長帯、3.5mm×3.5mm のセラミックパッケージにチッ
プ搭載された表面実装(SMD)タイプ 2) となります。
当社は、これまで培ってきた当社独自の結晶成長・電極形成技術に加え、光取り出し効率の改善、
発光面積の拡大、およびチップ搭載方法の変更を進めた結果、放熱特性向上を実現し、光出力
50mW(350mA 駆動時)の深紫外線 LED の量産化に成功しました。2016 年 1 月よりサンプル品
の出荷を開始し、同年春には本格的な量産出荷を開始する予定です。
なお、2015 年 10 月 14 日(本日)~16 日、パシフィコ横浜で開催される「LED JAPAN 2015」
に、今回開発した光出力 50mW(350mA 駆動時)の深紫外線 LED を参考出展します。
□ LED JAPAN 2015
http://www.optojapan.jp/led/
図 1. 新規開発の深紫外線 LED 外観写真
(SMD パッケージ)
新製品の特長
(1) 電極構造の最適化による、光取り出し効率の向上
LED では投入された電力が活性層と呼ばれる層で光に変換されます。深紫外線 LED は、青
色 LED 等と比較して変換された光をパッケージ外部へ取り出す効率が著しく低い状況でした。
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当社はメサ側壁の光反射効率、n 型電極の反射率の向上を進めた結果、これまでチップ内部
で吸収されていた光を外部へ効率良く取り出す構造を実現、光出力の向上に成功しました。
(2) パッケージ構造の最適化による、光取り出し効率の向上
チップ外部へ取り出された光は石英窓を通り、パッケージ外部へ放射されます。深紫外線
LED では、チップ内部と同様にパッケージでの吸収で損失が発生していました。当社はパッ
ケージ形状、使用部材の最適化を進めた結果、これまでパッケージ内部で吸収されていた光を
外部へ効率良く取り出す構造を実現、光出力の向上に成功しました。
(3) 発光面積の拡大および放熱特性の向上によるドループ現象 4) の低減
深紫外線 LED では、大電流駆動することにより発光効率が低下するドループ現象が高輝度
化の妨げになっておりました。当社は結晶および電極作製方法の最適化を進めた結果、単一素
子内の発光面積を拡大させ、電流密度を低減することに成功しました。また、LED チップの
パッケージ搭載方法も変更し、チップとパッケージの接触面積を大きくすることで、放熱特性
を向上させました。これら改良により 350mA 駆動時のドループ現象の低減を実現、従来より
も高出力の深紫外線 LED 開発に成功しました。
(4)特性仕様(概要)
新規開発品
従来品
製品名
VPS173
VPS171
定格電流
350mA
350mA
光出力
50mW
30mW
中心波長
285nm
285nm
順電圧
6.5V
6.5V
製品寿命(MTTF)
10,000 時間以上
10,000 時間以上
測定ケース温度
Tc=25℃
Tc=25℃
表1. 新規開発品特性概要
今後の展開
深紫外線 LED は、これまで医療応用での殺菌・治療、水および空気の殺菌、表面改質、あるい
は樹脂/インク硬化用の光源として、装置の小型化、高効率化への寄与を目指して、研究開発がす
すめられてきました。当社は 2015 年 5 月より 10,000 時間以上の製品寿命 5) をもつ高出力製品の
量産出荷を開始していましたが、市場からは更なる高出力の製品が望まれていました。
今回、更なる高出力を求める市場ニーズにお応えする深紫外線 LED を提供することにより、応
用面での用途がより一層拡大するものと予測しています。当社は、2016 年 1 月にサンプル出荷開
始、同年春に量産出荷を開始することで、市場ニーズにお応えしていきます。
また、中心波長が 265nm、300nm となる深紫外線 LED 製品の高光出力化も推進し、製品ライ
ンナップを拡充していく予定です。
以上
本件に関するお問い合わせ先
日機装技研株式会社 UV-LED 事業部
TEL: 03-3443-3732
日機装株式会社 経営企画部企画第二グループ
TEL: 03-3443-3717
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□用語の説明
1) 深紫外線 LED
紫外線とは 400nm よりも波長が短い光の総称です。一方で、LED の発光波長は発光領域
の材料で決まります。LED で紫外線発光を得る場合、365nm より長い波長と短い波長で
は主となる材料がことなり、短い波長では AlGaN が主材料として使われます。当社は、
365nm よりも短い波長の LED を扱っており、その波長域を深紫外線と定義しています。
波長域では 255nm~350nm の領域を示します。
2) 表面実装(SMD)タイプ
パッケージのタイプとして、LED 搭載部から突出したリードを電極に接続し通電するタ
イプとパッケージ裏面に電極がついており、直接、半田材で基板等に接着し通電するタイ
プの 2 種類があります。後者を表面実装型(Surface Mounted Device Type)とよび、実
装面積が小さく、また、放熱性に優れる特徴があります。当該製品は熱伝導性の良いセラ
ミックを用い、表面実装型パッケージとすることで放熱性を良くして、大電流に対応でき
るようにしています。
3) メサ構造
深紫外線 LED では、サファイア基板上に n 型半導体層、活性層、p 型半導体層と順に積
層させていきます。n 型半導体層に電極を形成するため、p 型半導体層と活性層の一部を
削り断面形状を作製します。その断面が台地(メサ)状で、厚み方向に電流を流す構造の
ことをメサ構造と言います。今回、当社は従来よりもメサの周長を長くすること、またメ
サの面積を大きくし、構造を最適化することにより、従来品よりも発光効率を向上させま
した。
4) ドループ現象
チップに大電流を投入することにより、LED の発光効率が低下する現象のことを言いま
す。チップの発熱や大電流投入による素子への電流集中によって発生すると考えられてい
ます。今回、当社は電極構造およびチップ搭載方法を変更することにより、従来品よりも
ドループ現象を低減させ、発光効率を向上させました。
5) 製品寿命
深紫外線 LED は、通電をしていると光出力が徐々に低下していきます。これを光出力劣
化と言いますが、LED では一般的に、光出力が初期値の 70%まで劣化したところを故障
と定義し、故障に至るまでの時間を素子寿命と呼びます。個々の素子で寿命はばらつくの
ですが、多くの素子を試験したときの平均的な寿命を平均寿命=製品寿命と定義されます。
製品寿命を求めるには、通常の半導体素子と同様に、多くの素子を実際に通電し、光出力
の劣化状態を調べ、その結果をワイブル確率紙にプロットすることで求めるのが一般的で
す。当社は、深紫外線 LED の劣化の進行をメカニズムから調べ、比較的短時間の結果か
ら製品寿命を推定する方法を確立しています。
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