―工房便り― □ WILLIAMS GENGAKKI VIOLINS 楽器の特性を引き出す“カスタマイズ”への挑戦 日々、楽器に真摯に取り組まれる皆様には、楽器をお好みや環境、そして目的に合わせて個別調整を行う“カスタ マイズ”への挑戦を推奨しています。楽器は、日頃より定期的なメンテナンスを実施し、良好な状態での音の基準を ご確認頂いた上で、理想とする状態とのギャップを弊社工房職人と共に“カスタマイズ”によって埋めていく作業プ ロセスを経ることで、これまで以上に活用することが可能となります。“カスタマイズ”の項目は多岐に渡りますが、 今回はその中でも主要な項目を取り上げます。 ◇楽器本体 ・弦の選択 弦の違いが音に大きな変化をもたらします。様々なメーカーから多くの種類が発売されていますが、 まずは長く市場で評価されている、定番と呼ばれる弦を数種類お試しいただきながら、音の特徴等をメモにお残しく ださい。その過程を経て、音のお好みや、演奏される曲、場所や用途に合わせた適切な弦のご選択が可能になります。 弊社では、皆様の楽器とより相性の良い弦の特徴を探る一助として、 “弦のトライアルサーキットプログラム”をご用 意しておりますので、是非、お試しください。 ・魂柱制作 魂柱は、弦から駒、表板へと伝わった振動を裏板へ伝えており、その 位置や入り加減によって、楽器の音色や響き方を左右する大変重要な役割を果たしてい ます。弊社工房では、最長 19 年乾燥のフィエメ産最高級スプルース(1996、1998、2002) と、15 年以上、弊社工房で乾燥を進めている割り材を使用した魂柱の制作、交換を承っ ております。フィエメ産の材料は、ストラディバリウスが楽器製作に用いたとされるイ タリアのフィエメ渓谷の松材を指しますが、その材料を用いて制作される魂柱は発音、 倍音の響きに大きな変化をもたらします。割り材は 15 年以上乾燥を進めている高級ス プルース材で、柔らかい材料から堅い材料までご用意でき、この違いを利用して発音、音色面において皆様の幅広い ご要望にお応えします。それぞれの材料は、お客様が望まれる音のお好みや方向性に応じて、長さや太さを調整し、 制作します。 近年の研究では、上記の厳選材料に独自の特殊炭化処理を施すことによって、より水分を飛ばして繊維を引き締め、 音の抜けの良い状態を作ることも可能となりました。ご興味のある方は“カーボナイズド”とご用命ください。 ・駒制作 弦の振動を表板に伝達し、音を作り出す上で大きな役割を担っている駒は、その形状と材質により発 音や音色、また、アーチにより移弦の感覚等の演奏性能に大きく影響を及ぼす重要パーツです。小さなパーツですが、 伝統技術や、工房と職人のこだわりが凝縮されています。弊社では、良質材を長期乾燥させた駒材をご用意しており ます。日々の使用により消耗する部分でもありますので、抜本的に音の出方を変えてみたい、重音や移弦の感覚を変 えてみたいと思われた際には、新たな駒を制作することで多くの問題を解決するきっかけと なると思います。特に良質な二種類の駒材をご紹介致しますので是非、お試し下さい。 Millostamn(写真) 10 年以上乾燥を経た推奨材。きめの細かな繊維が音の伝達速度を 速めるとともに、美しい音色を生み出します。 Despiau 最高グレード選別材。10 年以上、弊社管理の下、乾燥を進めております。 ・パーツ交換 黒檀(エボニー)、紫檀(ローズ)、柘植(ボックスウッド)の三種の材質の違いによって、音色 と見栄えを大きく変化させられます。 チェロに関しては、エンドピンの素材を、発音や音色の特徴が異なるスチール、チタン、カーボンの三種類からお 選びいただくことで、変化を生み出すことが可能です。 ◇弓 ・毛替え 良質な馬毛を用い、伝統技法による正しい毛替えを行う事が必要です。ご要望により、毛のテンショ ン、毛量の調整をすることで演奏性能に変化をつけることが可能になります。 ・ラッピング 重量の違う素材の適用により、弓のバランスの調整が可能となる他、見栄えを作る 上でも重要な項目です。弓のバランスを見ながら、一般的にドイツ、フランス系には銀線もしくは銀糸、 そしてイギリス系にはクジラ髭(イミテーション含)等、弓の伝統的な観点から素材を選択します。 革巻き部分は牛、トカゲの革からご選択いただき、お求めになられるイメージを作り上げます。 ・反り入れ スティックの歪みを矯正する他、より深く反りを入れる等の調整を行うことで演奏性 ラッピング例 能の向上を目指します。 各項目についてご検討いただく際には、詳しくご説明差し上げますので、弊社スタッフへお問い合わせください。 調整の際には、より細かいご要望をお伺いし、皆様のお好みの状態を作り上げるお手伝いをさせていただきます。 楽器の特性をより引き出す“カスタマイズ”への挑戦をお待ち致しております。 工房主任 古川
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