平成 27 年 7 月 21 日 キーワード:ペタワットレーザー、量子ビーム発生、医療応用、非破壊検査 医療応用やインフラの非破壊検査など新基盤技術の創成に大きく前進 世界最大 2,000 兆ワット出力できるペタワットレーザー完成 ~レーザー核融合の点火に弾み~ 記者発表・LFEX レーザー見学会:7 月 27 日(月)14 時~@阪大レーザー研 【本研究成果のポイント】 ■ 高出力レーザー装置「LFEXレーザー」※1を増強、1兆分の1秒に最大 2,000 兆ワット出力することに成功 ■ 高出力化は、大口径の4ビーム増幅器技術と世界最高性能の誘電体多層膜回折格子※2などにより実現 ■ 粒子線ガン治療などの医療応用や橋梁などのインフラの非破壊検査など、長寿社会や安全・安心社会に貢献 する新基盤技術創成や、将来のエネルギー源である高速点火レーザー核融合の実現に向けて大きく前進 概要 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターは、高出力レーザー装置「LFEXレーザー」を増強し、1兆分の1秒(1 ピコ秒)の短い時間内に、最大 2,000 兆ワット(2ペタワット※3、世界で使用される総電力の 1,000 倍)の出力を発生す ることに成功しました。この高出力レーザーを使うことで、高エネルギーの量子ビーム(電子、イオン、ガンマ線、中性子、 陽電子)の全てを発生できるようになりました。 これらの大電流量子ビームにより、医療応用や社会インフラの非破壊検査など、長寿社会や安全・安心社会に貢 献する新基盤技術を創成できるだけでなく、将来のエネルギー源である高速点火レーザー核融合の実現に向けて大 きく前進しました。 研究の背景と今回の成果 ペタワットを発生できるレーザーは世界でも数えるほどしか無く、中性子やイオンなどの高エネルギー量子ビーム発 生など、基礎物理研究に利用されています。 これまで、比較的小さな出力(〜数十ジュール)でこのペタワットが実現されてきましたが、大阪大学ではその何十倍 もの出力(1,000 ジュール以上)のレーザーを世界で初めて完成させました。この高出力化は、大口径の4ビーム増幅 器技術と世界最高性能の誘電体多層膜回折格子などにより実現したものです。 また、ペタワットの性能を真に発揮させるには、パルス ※4の裾が急峻である必要があります。例えば、丘陵地に足場 を拡げている東京タワーではなく、東京スカイツリーのように平地に竣立したレーザーパルスが望まれています。「LFEX レーザー」はパルスの前に存在する余分な光(ノイズ)をパルスピークに対して 10 桁低く抑えること(10 桁のパルスコント ラスト)に世界で初めて成功しました。ノイズの高さは、スカイツリーの先端の高さに対してインフルエンザウイルスの大き さに相当します。 これらの先端的な高出力レーザー技術により、真に実用可能なペタワットレーザー装置が実現できました。 1m 左写真は「LFEX レーザー」の増幅部全景。「LFEX レーザー」は4本のレーザービームを有しており、1ビ 1m ームのサイズは 37cm x 37cm の矩形をしていま す。この大口径レーザービームを実現するために、 大型の光学素子を開発しました。 右写真は、誘電体多層膜回折格子(91cmx42cm) を 16 枚使った、「LFEX レーザー」のパルス圧縮器 です。 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義) 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターは、共同利用・共同研究拠点として、高出力レーザーを用いた様々な 研究を推進しています。「LFEX レーザー」を活用することで、大電流の高エネルギーパルス量子ビーム発生が可能と なり、医療応用(粒子線ガン治療)や橋梁などの非破壊検査(ガンマ線ビームや中性子による欠陥検査)などの実用 化研究が期待できます。 また、大阪大学発案の高速点火レーザー核融合方式は、比較的小規模なレーザーで核融合エネルギー発生が可 能と予測されています。高速点火レーザー核融合に不可欠な加熱レーザーがこの「LFEX レーザー」の技術で実現で き、核融合点火の成功に向けて大きく研究が前進するものと期待されています。 記者発表、LFEX レーザーの見学について 本件に関して、7月27日(月)14時から、大阪大学レーザーエネルギー学研究センター慣性核融合実験棟(E棟) 3階大セミナー室(吹田市山田丘2-6)にて記者発表を行います。 また、記者発表の後、LFEX レーザーを見学していただくことができます。 是非とも取材方、よろしくお願い申し上げます。 ※ご出席される場合は、7月27日(月)13時までに、別紙連絡票をFAXにて送付願います。 【発表者】 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 【スケジュール】 14時~14時30分: 記者発表 センター長 疇地 宏 14時30分~15時: LFEXレーザー見学会 准教授 河仲 準二 准教授 余語 覚文 本件に関する問い合わせ先 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター センター長 疇地 宏 (あぜち ひろし) TEL: 06-6879-8700/携帯: 080-4154-2141 E-mail: [email protected] 准教授 河仲 準二 (かわなか じゅんじ) TEL: 06-6879-8728/携帯: 090-5254-8764 E-mail: [email protected] FAX: 06-6877-4799 FAX: 06-6877-4799 記者発表会場(大阪大学吹田キャンパス) 用語説明 ※1 LFEX レーザー 高出力レーザー装置 「LFEX レーザー」は日本の光技術の粋を結集したものであり、国内企業の技術力(1m 大口径石英ガラス材料と 0.1 マイクロメーターの平坦度を持つ高精度研磨、高耐力多層膜、大型フラッシュラン プ、高電荷密度高電圧コンデンサー、世界初の核磁気共鳴イメージング(MRI)用超電導磁石を利用したファラ デー回転子など)の向上に大きく寄与しました。また、1m 級誘電体多層膜回折格子は「LFEX レーザー」プロジェ クトで開発されたものであり、世界的に高く評価されています。 ※2 誘電体多層膜回折格子 回折格子とは、格子状のパターンによる回折を利用して光を空間的にスペクトル(周波数もしくは波長)分解す る光学素子です。その作用はプリズムと同じで、太陽光を様々な色に分解した経験を持つ人も多いはずです。高 い回折効率を安価に得るために、回折格子の表面は一般に、金や銀の薄膜でコーティングされますが、強いレ ーザー光には弱くなります。誘電体多層膜は、レーザーなどの高強度の光を効率よく反射できる高い耐力を持っ たコーティングで、回折格子の裏面に施すことで高いレーザー耐力の回折格子が実現できます。「LFEX レーザ ー」では、レーザーエネルギーが最大となる最後の光学素子として、パルスを1兆分の1秒(1ピコ秒)に縮めるた めに使用されています。 ※3 ペタワット(記号 PW) 1,000 兆ワットという強い光、あるいは大きな電力を表す単位。 ※4 パルス 極めて短い時間だけ流れる電流や電波。 【別紙】 送信日 平成27年 月 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 庶務係 行 FAX 06-6876-4110 医療応用やインフラの非破壊検査など新基盤技術の創成に大きく前進 世界最大 2,000 兆ワット出力できるペタワットレーザー完成 ~レーザー核融合の点火に弾み~ 7月27日(月)14時~ 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 記者発表ご出席者連絡票 ※会場設営の関係上、お手数ですが、7月27日(月)13時までにご連絡を お願いいたします。 貴社名 ご 氏 名 備 考 日
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