ラ・セレナ紹介文

ラ・セレナ紹介文
三井物産
北嶋 勇也
チ リ 共 和 国 で サ ン チ ャ ゴ に 次 い で 2 番 目 に 古 い 都 市 と し て 知 ら れ る ラ • セ レ ナ (La
Serena) は 、 文 字 通 り 「 穏 や か な 」 街 で あ り 、 物 騒 な 事 件 を 殆 ど 耳 に し な い 極 め て 治 安 の
良 い 場 所 で あ る 。 観 光 客 の 多 く は コ ロ ニ ア ル 調 の 街 並 (Centro) 及 び 長 い 海 岸 (Avenida del
Mar)目 当 て に 訪 れ る 人 が 多 い 。 街 の 中 心 地 の み な ら ず 、 ラ •セ レ ナ 近 郊 に は チ リ 人 初 の ノ
ーベル賞受賞者ガブリエラミストラル所縁の場所や、ピスコ生産が盛んな土地、及びチリ
屈 指 の 満 点 の 星 空 が 見 ら れ る ツ ア ー 等 が 近 年 人 気 を 呼 ん で い る 。 昔 か ら ラ •セ レ ナ と ロ ス
アンデスの中間点の独特な気候を生かしたパパイヤの生産が盛んであり、今でも町中の店
(Comida Rapida) で 多 く の パ パ イ ヤ ジ ュ ー ス を 堪 能 す る こ と が 可 能 。 対 岸 に 位 置 す る コ キ
ン ボ (Coquimbo) 住 民 は 同 市 民 の こ と を パ パ ジ ェ ロ ( 少 し 皮 肉 を 込 め て ) と 呼 ぶ こ と が 、 ラ •
セレナの歴史と名産を物語っていると言えよう。
気候は「年間通して温暖」とは体内温度の高いチリ人の弁であり、我々日本人の肌感覚
から言えば「夏以外は年間通してやや肌寒い」という表現が当てはまる。一日の気候の特
徴は午前中に晴れることが殆どないが、昼を過ぎた辺りから嘘のように晴れ渡る独特の気
候を見せることが多い。バカンスで来た際は午前中曇天気候であっても気落ちせずに、午
後の劇的な気候変更を見越した予定を立て、夕方からビーチに繰り出すのが正解。夏の気
温 は 日 中 約 23〜 24℃、夜 は 15℃前 後 に て こ れ 以 上 快 適 な 気 候 は な い と 言 え る が 、冬 の 最 高
気 温 は 日 中 約 12〜 13℃、夜 は 7〜 8℃で あ る 。海 岸 線 特 有 の 強 い 風 と 海 岸 の 湿 り 気 に よ り 冬
は 温 度 計 の 気 温 よ り も 体 感 気 温 は 寒 く 、晩 秋 /冬 /初 春 シ ー ズ ン の ラ •セ レ ナ 訪 問 は お 薦 め し
ない。
通常街の中心部から海岸沿い迄は程近い距離に位置している都市が多いが、ラセレナは
少 し 様 相 が 異 な る 。 徒 歩 で あ れ ば 海 岸 の 起 点 と な る 場 所 の 灯 台 (El faro)迄 約 30-40 分 程 要
し、更に海岸線をコキンボまで散策するとなると 2 時間以上必要である。従いセントロか
ら 海 岸 沿 い へ の 移 動 は タ ク シ ー を 使 う こ と を お 薦 め す る 。尚 、海 岸 沿 い の 道 路 (Avenida del
Mar)は 公 共 の 交 通 機 関 の 乗 り 入 れ が 禁 止 さ れ て お り 、バ ス や コ レ ク テ ィ ー ボ は 利 用 出 来 な
い。タクシー自体も中々見つからないのでレストラン等で食事をした後にタクシーが必要
な場合は流しを待つよりも店に依頼することが良いであろう。斯かる背景からレンタカー
を利用すれば何れの煩わしさからも解放され、中心部及び近郊の双方を堪能出来るであろ
う。
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1月〜2月には全く別の都市であるかと思わせる程の観光客が押し掛け、海岸沿いの宿
泊施設やレストラン及び駐車場はパンク状態となるのが恒例行事である。1月はアルゼン
チ ン 人 が 多 数 を 占 め ( 昨 今 の 財 政 破 綻 危 機 に よ り 年 々 漸 減 傾 向 に な る )、 2 月 は サ ン テ ィ ア
ゴを中心とした国内観光客がバカンスに訪れる姿が多く見られる。盛り上がる観光地を好
む方はこのシーズンを狙うと良いだろう。但し、ラ・セレナ海岸線のホテル事情はバラエ
ティに乏しく、特にリゾート気分を味わうことが目的であれば近年建設が急増しているコ
ン ド ミ ニ ア ム を 利 用 す る こ と を 進 め る 。 1-2 月 に 人 気 の コ ン ド ミ ニ ア ム を 利 用 す る 場 合 は
早い時期の予約が必要。サンチャゴ在住の方にとっては近隣に元祖海岸保養地ビーニャデ
ルマールがある為に、より静かなプライベートビーチを望む方もいるだろう。ラ・セレナ
近 郊 に は 、ラ ス タ カ ス (Las Tacas)や プ エ ル ト ベ レ ー ロ (Puerto Velero) 等 、コ ン ド ミ ニ ア ム
保有者或はその利用者しか入れない完全プライベート空間が存在する。幾人かのサンチャ
ゴの富裕層がラスタカスにヘリコプターでバカンス入りする姿が見られるが、ラ・セレナ
か ら 何 れ も 約 20-30km 程 南 の 地 点 に あ り 自 家 用 車 或 は レ ン タ カ ー に て 到 着 す る の が 一 般
的。
ラ・セレナ海沿いの名物は、コキンボまで続くその「長い海岸そのもの」であると言わ
れ る が 、 も う 一 つ の 名 物 が そ の 海 岸 を 利 用 し た 「 海 岸 乗 馬 」 (夏 期 限 定 )で あ る 。 当 地 の 紹
介でよく使用される「灯台」から北部に向かって海岸沿いを優雅に闊歩出来る。乗馬初心
者 で あ っ て も 全 く 問 題 な く 愉 し め る 上 、値 段 も 良 心 的 で あ り 1 時 間 の コ ー ス か ら よ り 長 い
コースまで幾つかの時間まで選択可能。灯台より北側は昔から波が荒く遊泳には不向きで
あり未開発地域であることも相俟って、その静謐な海岸沿いで乗馬するのは極上の体験で
ある。
セントロ自体は特に見所があるわけではないが、サンチャゴに次いで二番目に設立され
た 場 所 だ け あ っ て 雰 囲 気 は 風 情 が あ る の で 散 策 す る の が 良 い だ ろ う (日 曜 日 は 大 抵 の 店 が
閉 ま っ て い る の で 注 意 )。か つ て の ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト 的 役 割 を 果 た し た Rocova に は チ リ
料 理 を 堪 能 出 来 る レ ス ト ラ ン と 民 芸 品 市 場 が あ る 。 し か し 特 筆 す べ き は 2 階 部 分 に 約 20
店 の 理 髪 店 が と こ ろ 狭 し と 並 ん で い る 様 で あ り 、チ リ 国 で 最 も 競 争 の 激 し い 理 髪 店 マ ー ケ
ットであると言われているので一見の価値があるかもしれない。セントロから少し離れた
場 所 に 日 本 庭 園 「 Parque Japones Kokoro No Niwa 」 な る 場 所 が 存 在 す る 。 作 り は 比 較 的
確りしており時間が許せばセントロ観光ついでに訪れてみても良いかもしれない。
星 空 ツ ア ー は 、市 内 各 地 か ら ツ ア ー が 出 て お り 片 道 1 時 間 程 か け て 到 着 す る の が 一 般 的 。
ツアー自体は2時間程であるが開始時間が遅くかなり冷え込むので防寒着は必須。ツアー
の内容は相当マニアックであるので天文学に興味のない方は退屈するかもしれない。従い
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満 点 の 星 空 を 楽 し む だ け で あ れ ば 、 個 人 的 に レ ン タ カ ー 等 で 天 文 台 (Observatorio) ま で 行
き、ツアー客とは離れて星空を心行くまで楽しむ方法が通の楽しみ方。これら地域は年間
通して晴れが続くので極めて高い可能性で雲一つない星空を楽しむことが可能である。
ラ・セレナからの往復は比較的時間を要し近隣にレストラン等がない為、美味しいコーヒ
ー等を水筒で持参し、軽食を持っていくと良い。
[そ の 他 地 域 ]
ビ ク ー ニ ャ (Vicuña)、 バ ー ジ ェ ・ デ ・ エ ル キ (Valle de Elqui) へ の ピ ス コ 工 場 見 学 や 星 空
ツ ア ー 、 南 部 に 位 置 す る ラ ス ・ タ カ ス (Las Tacas) 、 プ エ ル ト ・ ベ レ ー ロ (Puerto Velero)
のプライベートビーチを堪能するのが、ラ・セレナ近郊を楽しむ一般的なものであるが、
他の地域も記載する。
・ バ ジ ェ ナ ー ル (Vallenar)/ バ ー ジ ェ ・ デ ・ サ ン ・ フ ェ リ ッ ク ス (Valle de San Felix) :
当 地 域 は ラ・セ レ ナ か ら 北 200km 地 点 に 位 置 す る 小 さ な 都 市 で あ る 。こ の 地 域 の 特
筆 す べ き 点 は 、 シ ェ リ ー 酒 (Pajarete) を 堪 能 で き る 点 で あ ろ う 。 チ リ 国 で 生 産 し て
いる地域は他に見られない為にシェリー酒好きは訪れる価値があるかもしれない。
同 地 域 に は 約 10 程 の 伝 統 的 な シ ェ リ ー 酒 工 場 が 存 在 し て い る 。ピ ス コ 生 産 も 盛 ん で
あ り 、 Horcon Quemado と い う 工 場 は 、 樹 齢 150 年 の 葡 萄 を 使 用 し 、 屋 外 の 空 気 で
発酵させる伝統的な工法に拘っているユニークな工場である。オーナーに頼めば、
特別なピスコを試飲させてくれるかもしれない。販売しているピスコで最もアンテ
ィ ー ク な も の は 30 年 物 で $300,000 で あ る 。
・ フ ラ イ ・ ホ ル ヘ 国 立 公 園 (Parque Nacional Bosques de Fray Jorge) :
ラ ・ セ レ ナ 南 部 の オ バ ー ジ ェ (Ovalle) か ら 程 近 い 場 所 に 位 置 す る 国 立 公 園 。 サ ン テ
ィアゴ以北は基本的に乾燥し緑が少ない場所であるが、ここは何故か局地的に緑が
見られる貴重な場所である。
[補 足 ]
以 下 は ラ・セ レ ナ 地 域 に 於 い て 個 人 的 に 惹 か れ た レ ス ト ラ ン や カ フ ェ 等 を 紹 介 す る 。我 々
日本人は旅をする際の楽しみの重要ポイントとして食事が極めて大きな要素を占めると思
い記載した次第。しかし極めて私見の混じった選定となっていることもあり、解釈及び訪
問は読者自身の判断と責任に任せたい。紙面の都合上選定に限りがあるので、現地に到着
してからパパジェロ達におススメの場所を伺う等して補って頂くことをお勧めする。
■Cafetería Poisson : カ フ ェ
木 を 基 調 と し た 落 ち 着 い た カ フ ェ 。 南 北 約 30km に 奔 る 当 地 の 海 岸 線 を 眺 め な が ら 半 テ
ラ ス 席 (海 岸 に 突 き 出 た つ く り ) で テ ィ ー タ イ ム を 楽 し め る 。 特 に 夕 日 が 沈 む 時 間 帯 は 真 ん
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前 に そ の シ ー ン を 捉 え る こ と が 可 能 で あ る の で 訪 れ る 価 値 有 り 。し か し 、店 名 が Poisson(ポ
ワ ソ ン:フ ラ ン ス 語 で「 魚 」を 意 味 す る )に も 拘 ら ず 、魚 料 理 と は 無 縁 (Reineta y Arrotz con
Ensalada の み ) の メ ニ ュ ー 構 成 で あ り サ ン ド イ ッ チ や ハ ン バ ー ガ ー を 中 心 と し た 軽 食 で
あるので当カフェでは種類豊富なカフェやジュースのみにしておくのが無難であろう。当
地 は サ ー フ ィ ン ス ク ー ル を 併 設 し て お り 、前 後 に サ ー フ ィ ン を 愉 し む こ と も 可 能 (御 多 分 に
漏 れ ず 此 処 ラ ・ セ レ ナ の 海 も 夏 期 で あ っ て も 水 温 は 低 い )。
→住 所 : Avenida del Mar ♯1001/La Serena の シ ン ボ ル で あ る Faro か ら 南 約 300m に 位 置
■Tololo Beach : シ ー フ ー ド 料 理
シーフードが堪能出来る小綺麗なレストランとして富裕層及び観光客に人気が高いが、
料理自体は特筆すべきというレベルではない。しかしテラス席がビーチの中にあるつくり
は 独 特 で あ り 優 雅 な 気 分 が 味 わ え る 。Tololo 系 列 は ラ セ レ ナ に も う 一 つ 存 在 し 、Tololo Beaf
という肉料理を中心に提供するレストランがある。本場所も海岸沿いに位置し洒落た作り
で あ る が 、 肉 料 理 の 質 自 体 で は 後 述 す る Martín Fierro に 軍 配 が 上 が る 。
→住 所 : Avenida del Mar ♯5150
■Martín Fierro : 肉 料 理
肉 料 理 全 般 を 提 供 す る 店 で あ り 店 員 は 常 に Lomo を 薦 め て く る が 、 Cordero も 秀 逸 。 足
部分、あばら部分、ロース部分等がミックスされた羊のグリルが提供され、非常に美味で
ある。
→住 所 : Avenida Cuatro Esquinas con Avenida Pac ifico
■(Fuente de Soda) O riente: コ ン プ レ ー ト
セ ン ト ロ 地 域 に 位 置 す る ラ・セ レ ナ 名 物 の ホ ッ ト ド ッ ク (コ ン プ レ ー ト )専 門 店 。平 日 は 1
日 1,500 食 、 週 末 及 び 繁 忙 期 に は 2,000 食 の 販 売 を 誇 る 。 パ ン の 焼 き 具 合 及 び マ ヨ ネ ー ズ
ソ ー ス が 絶 妙 で あ り コ ン プ レ ー ト に 目 が な い 方 は 是 非 訪 問 さ れ た い 。店 内 は 1 階 と 2 階 が
あるが、調理を観覧出来る 1 階のカウンター席が好位置。
住 所 : Balmaceda 677
■Daniela Ⅱ : チ リ 料 理
庶 民 価 格 (昼 食 の Menu が $3,000)の レ ス ト ラ ン で あ る が 、 観 光 客 も 多 数 訪 れ る 隠 れ た 名
店 で あ る 。メ ニ ュ ー は ス ー プ と プ ラ ト フ ォ ン ド の 2 品 か ら 構 成 さ れ て お り 前 菜 の ス ー プ は
カスエラをお薦めする。フォンドは毎日メニューが変わるので店側の采配に任せるしかな
いが、何れの料理も外れがない。セントロ観光ついでに寄ると良いだろう。
住 所 : Avenida Francisco de Aguirre 335
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■Café Colonial : チ リ 料 理 、 多 国 籍 料 理
セントロ中心地に位置し、建物の中庭で食事やカフェが可能であるので天気の良い日に
訪れるのが正解。レストランエリアの横に別の店であるがカフェエリアも存在するのでカ
フェのみの利用も可能。
→住 所 : Balmaceda 475
■AYAWASI: オ ー ガ ニ ッ ク 料 理
2013 年 6 月 に 開 店 し た ラ ・ セ レ ナ 唯 一 の 自 然 (有 機 )野 菜 を 利 用 し た 店 。欧 米 観 光 客 に 人
気。
→住 所 : Pedro Pablo Muños 566
※ こ の 記 事 は 、 カ マ ラ 会 報 234 号 ( 2014 年 5 月 発 行 ) に 掲 載 さ れ ま し た 。
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