2015年8月18日会社説明会要旨

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8248
ニッセンホールディングス
市場
信行
(イチバ
ノブユキ)
株式会社ニッセンホールディングス社長
来年の経常黒字化のため、抜本的な経営構造改革に取り組む
◆売上、利益ともに大幅に下落
2015 年 12 月期第 2 四半期の売上高は 791 億 71 百万円(前年同期比 88.3%、計画比 93.4%)、営業損失は 46
億 72 百万円、経常損失 42 億 34 百万円、四半期純損失は 39 億 81 百万円となり、前年同期差、実額ともに大き
な損失となっている。当期は来期以降の経営構造改革に注力していることから、損益確保を優先した。売上はマイ
ナスながら販管費圧縮等による損益構造改善で営業利益は計画内となった。
セグメント別では、コマース事業のニッセン関連が売上高 478 億 30 百万円、営業損失 40 億 40 百万円、経常損
失 40 億 20 百万円となった。一方、シャディ関連が売上高 288 億 60 百万円、営業損失 3 億 90 百万円、経常損失
4 億円となっている。有店舗チャネルにおいては、売上の大半がお中元、お歳暮に集中することから、上半期は赤
字計画としている。ファイナンス事業は売上高 5 億 70 百万円、経常利益 4 億 70 百万円で着地した。
ニッセン関連の概況だが、3 年連続で売上を落としている。2016 年に向けた商品開発体制の見直し中につき、
新規カタログ削減等で販売固定比率の改善を優先した。ただし今年の第 2 四半期までは、昨年来のカタログ多頻
度発行施策により、高水準の販売固定費が継続している。新規のカタログの見直し、カタログの薄型化等により、
カタログ発行部数は 9,244 万部(前年同期比 73.2%)、延ページ数 146 億 60 百万頁(同 60.6%)となった。チャネル
別売上高はスマートフォンが堅調に推移している。
シャディ関連は、有店舗チャネルにおけるお中元、冠婚葬祭などのフォーマルギフトが縮小し、売上、利益ともに
未達となった。一方、ポイントアライアンスや価値訴求型 PB 商品の投入、ギフトカードの導入で、店舗活性化を図
っている。
ファイナンス事業については、「マジカルクラブ T カード JCB」の導入により、ショッピングの取扱高が大幅に増加
中である。一方、過払い金利の返還請求については想定内で推移している。持分法投資利益は前年実績から改
善した。
◆通期業績予想を大幅に修正
2016 年に向けて経常黒字化を目指すため、通期業績予想を大幅に修正にした。通期修正計画は売上高が
1,620 億円(期初計画差 156 億円減)、営業損失が 66 億円(同 10 億円減)、経常損失が 61 億円(同 11 億円減)、
当期純損失 119 億円(同 64 億 50 百万円減)で、大きく特別損失を積んでいる。下期修正計画は売上高 828 億 20
百万円(同 100 億 30 百万円減)、営業損失 19 億 20 百万円(同 12 億 70 百万円減)、経常損失 18 億 60 百万円(同
14 億円減)、当期純損失 79 億 10 百万円(同 69 億 70 百万円減)とした。
売上減少は、上期同様、収益確保よりも 2016 年に向けた商品開発体制の見直しおよび販売固定比率良化等
の損益構造改善を優先することによる。営業利益および経常利益の減少は、前年下半期に大きく積み上がった在
庫の早期処分の優先に伴う原価率の悪化が主な要因である。また、ディスカウントで併売する関係で、プロパー商
品の売上に影響を与えている。当期純利益の減少は、経営合理化策で特別損失を織り込んだことによる。
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◆3 つの経営合理化策
連結経常黒字化に向けた経営合理化策は 3 点である。一つは、不採算事業からの撤退である。基本戦略事業
への経営資源の重点配分を行うため、将来的に損益回復が見込めないニッセンブランド大型家具事業からの撤
退を決めた。売上高の下降は、当社の大型商品が顧客のニーズに合わなくなったことが最大の要因と解釈してい
る。また、二人配送化、人材不足等により発送費が非常に高騰する一方、大幅な配送料の値上げ分の価格転嫁
が困難で、事業損益構造は急速に悪化していた。
二つ目は、人員体制のスリム化である。組織全体の統廃合を含め、人的リソースの再配分および人員体制スリ
ム化による固定費の圧縮が経営上必要と判断し、希望退職者を募集する。対象会社はニッセンホールディングス
並びにニッセンで、募集人数は 120 名とする。
三つ目は、海外拠点、海外検品所の整理等である。昨今は為替の変動や中国国内における人件費の高騰、検
品体制の見直しなどで、検品固定費がまかなえず、赤字となっている。
経営合理化策の実施による特別損失は 57 億円を見込んでいる。これらを計上することで 2016 年は 17 億円の
営業利益改善効果、3 億円の経常利益改善効果を見込んでいる。特別損失の内訳は、ニッセンブランド大型家具
の撤退 39 億円(次年度の経常利益改善効果 6 億円)、希望退職の募集 8 億円(同 9 億円)、海外事務所、海外検
品所の整理等 10 億円(同 5 億円)としている。
◆2015 年下期のセグメント予想
2015 年下期のセグメント予想は、コマース事業のニッセン関連が、売上高 384 億 80 百万円、営業損失 29 億円、
経常損失 29 億 20 百万円である。営業利益、経常利益ともに前年同期差 23 億円の改善となっている。シャディ関
連は売上高 413 億 60 百万円、営業利益 10 億円、経常利益 10 億円である。ファイナンス事業は売上高 6 億 70
百万円、営業利益 1 億 10 百万円、経常利益 2 億 80 百万円である。ニッセングループ全体の経常利益の推移を
みると、2012 年から大幅な赤字に転落したが、2014 年下期に大きく数字を落とし、これが 2015 年上期に影響を与
えている。経営構造改革によって 2016 年以降は、連結経常黒字化を目指す。
◆ニッセンの本質的な課題
当社グループの連結業績はニッセンの復活が大きな鍵を握る。ニッセンが抱える本質的課題は 3 つに集約され
る。一つは MD 面での課題である。低価格訴求に比重を置きすぎたことで、プライスゾーン別の品揃えが不十分と
なり、素材を含めた付加価値訴求力が大幅に低下してしまった。また、不十分な品揃え管理のもとで、売れ筋商品
の拡大や SKU の拡大を進めた結果、商品間カニバリ、品揃えの欠落が起きた。取引先の分散により、素材開発力
の低下、生産品質の劣化、原価の悪化を招いた。
二つ目は、調達面での課題である。売れ筋、死筋の見極めが不十分なままの画一的な発注で、売れ筋商品の
欠品による機会ロス、死筋商品の在庫過多によるデッドロスが発生した。発注・在庫責任部門の分散により、発
注・在庫のコントロール力の低下が一因である。今後は、調達部門を一元化し、在庫コントロールを万全にしてい
く。
三つ目は、売り場面での課題である。2014 年 8 月からカタログ発行頻度を春・夏・盛夏・秋・冬の 5 回から 8 回に
変更した。最近の傾向として、顧客からの注文がシーズン直前にならないと動かず、更にカタログのライフサイク
ルが短くなっている。そのため、カタログの端境期を埋めるためにも多頻度発行を行ったが、大幅な在庫の駆け上
がりが発生した。端境期需要をカタログに頼ったことが失敗であった。一方、カタログノウハウの依存によって、楽
しみながら読めるというカタログビジュアル、情報訴求力が低下していた。また、PC を前提としたサイトユーザビリ
ティ、コンテンツ重視により、スマートフォンシフトへ遅れをとってしまった。
最大の課題は、これらの本質的な課題に対して後手に回ってきたことである。下半期についてもこの 3 点につい
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て抜本的な経営構造の改革を進めていく。
◆ニッセンの経営構造改革
MD 改革では、価格訴求から価値訴求へ転換する。商品力とカタログパワーを上げることで、顧客の離脱率は
減少し、売上は増大すると予想している。今年は拡大を抑制し、商品の改善が整った来年に攻勢に転じたい。
具体策として、品揃えの絞り込みとカテゴリーマトリクスによる欠落の防止を行う。2014 年は、売れ筋は全体 2%
の 613 スタイルで売上構成 30%を占め、全体 7%の 1,900 スタイルで売上構成 50%を占める。一方、死筋は全体
22%の 6,100 スタイルであった。昨今は、売れ筋商品は SNS で評判となり、注文が集中する傾向にある。結果とし
て機会ロスにつながっていた部分を大きく改善していく。また、SKU の広げ過ぎで商品保管のために外部倉庫を借
りるという事態を招き、コスト高になった反省から、商品を絞り込み、売れ筋、死筋の見極めを強化していく。たとえ
ばワイシャツを例に挙げると、従来のプライスゾーンは 1,000 円未満から 2,500 円未満で、2,000 円未満に商品が集
中していた。しかし、顧客にとっては満足できる品揃えではなかった。2016 年春以降は、1,500 円から 4,000 円のプ
ライスゾーンとし、2,500 円から 3,000 円を中心に据えた菱形のプライス構成とする。SKU は減少するが、素材や仕
立ての良質化も含めて、プライスゾーンごとの品揃えを充実させていく。更に EC 限定商品の充実、スリム体型へ
の対応なども図る。全てのカテゴリに対して、このような考え方で品揃えを進めていきたい。
調達改革では、機会ロス、デッドロスの削減により売上を伸ばし、原価率を改善する。具体策として、欠品やデッ
ドロスを招いた平準発注から単品管理による傾斜発注へ転換し、発注精度を向上させ、機会ロス、デッドロスを最
小化する。早期在庫処分の徹底で、数十億円のロスを解消できると考えている。
懸案の在庫は、2014 年 8 月以降のカタログの多頻度発行施策の不振により在庫水準が急増した。2015 年 1
月に 196 億円まで膨らんだ在庫を今期末までに 50 億円絞り込む。今年中の原価率の改善は実現しないが、来年
は在庫処分の負担減少により、原価率の大幅な改善を見込んでいる。それに伴い、粗利、限界利益の大きな変化
を予想している。
売り場面改革では、カタログの薄型化でインターネットへ誘導し、特にスマートフォンへのシフトを図り、販売固定
費を削減する。具体策としては、インターネット上のコンテンツをこまめに変える 52 週マーチャンダイジングで、カタ
ログ端境期需要に対応する。カタログの発行回数は一昨年と同水準の年 5 回とし、端境期にはクリスマスなどの
特集でタイムリーな季節商品を投入していく。今夏にテストで動かしたが、順調に推移している。
さらに、カタログの訴求効果向上のため、セブン&アイ出版の協力により、雑誌制作ノウハウを導入し、ビジュア
ルを刷新する。当社の主要ターゲットのワーキングママの「憧れ」を提案していく。2016 年春号以降は大きくイメー
ジが変わる予定である。
また、シナジー創出として、9 月末からセブン-イレブン受取サービスをスタートし、単身世帯などのニーズを取り
込んでいく。さらに、イトーヨーカドー・アリオへのスマイルランド出店、セブン&アイ各社との業務連携の強化を図
る。これら経営構造改革を一丸となって進めていきたい。
◆質
疑
応
答◆
売上高が伸びなかった場合でも黒字化が果たせるのか。
商品と見直し中のサービスについて確実に力がつけば、売上を伸ばせるだろう。売上が想定を下回った場合は、
損益構造、経営構造改革を更に推し進めたい。
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経営構造改革において、原価率、販管費率がどの程度になると、営業利益が黒字化するのか。
詳細な数字については公表できない。ブレークイーブンを確実に下げることが今期の命題の一つである。その
ために在庫の評価損等を最小化し、プロパーの在庫、原価率の適正化を図っていく。販売固定費は大幅に削減し
ているが、来期は更に押し下げる。固定費についても来期は更に押し下げていきたい。
今後の資本政策を教えてほしい。
来期は経常黒字化を考えており、現状では 2015 年末でかなり毀損するが、まだまだ危険水域ではない。セブン
&アイ グループであること、銀行を含めた経営状況は問題ないため、必要であれば、資本を含めて最適な調達
が可能と考えている。
御社の変化を判断するには、原価率、変動費率、販売固定費、固定費のどこに注目すべきか。
経営合理化の数字は、2016 年の固定費に現れるのではないかと考えている。今年度は在庫を最大限処分する
ため、処分に関わるロスが上乗せされた原価となっている。来年度以降は原価が劇的に改善するとみている。販
売固定費に関しても改善を進めていくが、半減するまでには時間がかかるだろう。
在庫評価損は期初の見立てから、どの程度増えているのか。
期初と計画上の在庫評価減の差額の見積は、追加で約 5 億円強としている。
期初計画よりも上期の原価率が悪化した要因は何か。
上期については、計画より原価率の高い処分セールの売上が多く、一方で原価率の低いプロパーが少なかっ
たことが挙げられる。
(平成 27 年 8 月 18 日・東京)
*当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。
http://www.nissen.info/ir/presentation.htm
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