JP 2015-514681 A 2015.5.21 (57)【要約】 哺乳類対象における下痢を伴う過敏性腸症候群の処置用の医薬組成物の製造のための、脂 肪酸誘導体の使用を提供する。 (2) JP 2015-514681 A 2015.5.21 【特許請求の範囲】 【請求項1】 哺乳類対象における、下痢を伴う過敏性腸症候群を処置するための医薬組成物の製造の ための脂肪酸誘導体の使用であって、該脂肪酸誘導体が、式(I): 【化1】 10 [式中、 L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキ ル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水 素以外の基であり、該5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく; Aは、-CH3または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり; Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=C H-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり; 20 Zは、 【化2】 であり、ここで、 R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたは 30 ヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシ であることはなく; R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは 複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素 残基であり、該脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄に より置換されていてよく;そして Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ 、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリ ール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または 不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキ 40 シ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ; 複素環基;複素環オキシ基であり、該脂肪族炭化水素の炭素原子の少なくとも1つは酸素 、窒素または硫黄により置換されていてよい。] によって表される、使用。 【請求項2】 ZがC=Oである、請求項1記載の使用。 【請求項3】 Bが-CH2-CH2-である、請求項1記載の使用。 【請求項4】 Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oである、請求項1記載の使用。 50 (3) JP 2015-514681 A 2015.5.21 【請求項5】 Lがヒドロキシまたはオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり 、BがCH2-CH2-であり、ZがC=Oである、請求項1記載の使用。 【請求項6】 該脂肪酸誘導体が、 (-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒ ドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸または(-)-7-{(2R,4aR,5R,7aR)-2-[(3S)1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b ]ピラン-5-イル}ヘプタン酸、その互変異性体またはその官能性誘導体である、請求項1 記載の使用。 10 【請求項7】 下痢を伴う過敏性腸症候群が、下痢優位型の過敏性腸症候群である、請求項1∼6のい ずれかに記載の使用。 【請求項8】 下痢を伴う過敏性腸症候群が、交代型または混合型の過敏性腸症候群である、請求項1 ∼6のいずれかに記載の使用。 【請求項9】 哺乳類対象における下痢を伴う過敏性腸症候群の処置用の医薬組成物であって、請求項 1∼6のいずれかに記載の脂肪酸誘導体を有効量含む、医薬組成物。 【請求項10】 20 哺乳類対象における下痢を伴う過敏性腸症候群の処置に用いるための脂肪酸誘導体であ って、請求項1∼6のいずれかに記載の脂肪酸誘導体。 【請求項11】 哺乳類対象における下痢を伴う過敏性腸症候群の処置方法であって、それを必要とする 対象に、請求項1∼6のいずれかに記載の脂肪酸誘導体を有効量投与することを含む、処 置方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 関連出願との相互参照 30 この出願は、2012年4月23日出願の米国特許仮出願第61/637,082号および201 2年10月26日出願の仮出願第61/718,924号に対する優先権を主張し、これらの文献の 記載は全て、参照により本明細書中に包含される。 【0002】 技術分野 本発明は、下痢を伴う過敏性腸症候群の処置方法に関する。 【背景技術】 【0003】 過敏性腸症候群 (IBS)は、典型的に数ヶ月または数年にわたる、腸機能の変化、下痢、 便秘またはその組合せを伴う、反復性の腹部の痛みおよび不快感を特徴とする胃腸管(GI) 40 の機能性腸障害である。IBSの原因は知られていない。過敏性腸症候群の診断は米国の成 人の約15%についてなされており、IBSの症候が原因で医師の診察を受ける件数は年間350 万件を超えていることが報告されている。研究により、過敏性腸症候群は、最も一般的な 機能性胃腸管障害の1つであり、一次診療の医師または胃腸科医の診察を受ける最も一般 的な理由の1つであることが示される。IBSは、健康に関連するクオリティライフに、有 意に悪影響を及ぼすにもかかわらず、IBSの症候を示す人のうち、治療を求める人は30%に すぎない。過敏性腸症候群は、男性に対して2:1の比率で、女性に優先的に見られる。IBS にはいくつかのサブタイプがある。 ・ IBS-D: 下痢優位型 ・ IBS-C: 便秘優位型 50 (4) JP 2015-514681 A 2015.5.21 ・ IBS-AまたはIBS-M: 下痢型と便秘型の交代型または混合型 ・ IBS-U: 分類不能型過敏性腸症候群 (下痢型でも便秘型でもない) 【0004】 IBSに罹患している人は、下痢、便秘、腹部の痛み、腹部膨満感、過度の膨満感、膨満 感、連続的な排便欲求、トイレに行く緊急性、失禁、残便感、排便時の力み、硬い/塊状 の便または、さらに、排便が全くできないなどの様々な症候を経験する場合がある(‘htt p://www.ibsgroup.org’and Gastroenterology 2006; 130:1480-1491、これらの文献の内 容は参照により本明細書に包含される)。 【0005】 脂肪酸誘導体はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的 10 活性を示す有機カルボン酸の群の一員である。天然に存在するいくつかの脂肪酸誘導体は 一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。 【化1】 20 【0006】 一方、いくつかのプロスタグランジン(PG)の合成類似体は修飾された骨格を持って いる。天然PG類は5員環部分の構造によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類 、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さら に炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される。 タイプ1(下付1):13,14-不飽和-15-OH タイプ2(下付2):5,6-および13,14-ジ不飽和-15-OH タイプ3(下付3):5,6-、13,14-および17,18-トリ不飽和-15-OH。 【0007】 30 さらに、PGF類は9位のヒドロキシ基の配置によってαタイプ(ヒドロキシ基がα配置 である)およびβタイプ(ヒドロキシ基がβ配置である)に分類される。 【0008】 PGは種々の薬理学的および生理学的な活性、例えば血管拡張作用、炎症誘導、血小板 凝集、子宮筋刺激、腸管筋刺激、抗腫瘍効果などを有することが知られている。 【0009】 プロスタン酸骨格の15位にオキソ基(15-ケト型) および13-14位の間に単結合と、15 位にオキソ基を有する (13、14-ジヒドロ-15-ケト型)のプロストンは、天然のPGの代謝 の間に酵素反応によって天然に産生する物質として知られる脂肪酸誘導体であり、何らか の治療上の効果を有する。プロストン類は、米国特許第5,073,569号、第5,534,547号、第 40 5,225,439号、第5,166,174号、第5,428,062号、第5,380,709号、第5,886,034号、第6,265 ,440号、第5,106,869号、第5,221,763号、第5,591,887号、第5,770,759号および第5,739, 161号明細書に記載されており、これらの参考文献の内容は、引用により本明細書内に包 含される。 【0010】 米国特許第5,317,032号明細書(Ueno et al.)は、二環式の互変異性体を含むプロスタグ ランジン類似体の下剤を記載しており、米国特許第6,414,016号および第8,071,613号 (Ue no)は、抗便秘薬として明確な活性を有するものとして、二環式の互変異性体を記載して いる。該二環式の互変異性体は、1つ以上のハロゲン原子により置換されており、少量で 便秘の軽減に用い得る。少量で便秘の軽減に用い得るためには、特に、C-16位にフッ素原 50 (5) JP 2015-514681 A 2015.5.21 子を用い得る。 【0011】 米国特許第7,064,148号明細書(Ueno et al.)には、プロスタグランジン化合物がクロラ イドチャネル、特にClCチャネル、より具体的にはClC-2チャネルを開き、活性化させるこ とが記載されている。 【0012】 米国特許第8,097,653号明細書 (Ueno et al.)は、便秘の処置および予防のためのハロ ゲン化プロスタグランジン類似体の具体的な組成物を記載している。 【0013】 米国特許第7,795,312号明細書(Ueno et al.)は、腹部の不快感の処置および機能性胃腸 10 障害、例えば過敏性腸症候群および機能性胃腸障害の処置用のクロライドチャネル開口薬 、特にプロスタグランジン化合物を開示している。 【0014】 米国特許公開第2006-0063830号明細書(Ueno)には、二環式化合物を用いた、胃腸障害の 長期間の処置が記載されている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0015】 しかしながら、脂肪酸誘導体がどのようにして下痢を伴う過敏性腸症候群に作用するの かは知られていない。 20 【課題を解決するための手段】 【0016】 本発明は、哺乳類対象において下痢を伴う過敏性腸症候群を処置する方法であって、か かる処置を必要としている対象に、式(I) 【化2】 30 [式中、 L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキ ル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水 素以外の基であり、該5員環は少なくとも1つの二重結合を有してもよく; Aは、-CH3または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり; Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=C H-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり; 40 Zは、 【化3】 であり、ここで、 R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたは 50 (6) JP 2015-514681 A 2015.5.21 ヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシ であることはなく; R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは 複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素 残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によ り置換されていてよく;そして Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ 、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリ ール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または 不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキ 10 シ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ; 複素環基;複素環オキシ基であり、該脂肪族炭化水素の炭素原子の少なくとも1つは酸素 、窒素または硫黄により置換されてよい。] によって示される脂肪酸誘導体を有効量投与することを含む、 方法を提供する。 【0017】 本発明はさらに、下痢を伴う過敏性腸症候群の処置用の医薬組成物であって、有効量の 脂肪酸誘導体を含む医薬組成物に関する。 【0018】 本発明はさらに、下痢を伴う過敏性腸症候群の処置用の医薬の製造のための該脂肪酸誘 20 導体の使用に関する。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0019】 【特許文献1】米国特許第5,073,569号明細書 【特許文献2】米国特許第5,534,547号明細書 【特許文献3】米国特許第5,225,439号明細書 【特許文献4】米国特許第5,166,174号明細書 【特許文献5】米国特許第5,428,062号明細書 【特許文献6】米国特許第5,380,709号明細書 30 【特許文献7】米国特許第5,886,034号明細書 【特許文献8】米国特許第6,265,440号明細書 【特許文献9】米国特許第5,106,869号明細書 【特許文献10】米国特許第5,221,763号明細書 【特許文献11】米国特許第5,591,887号明細書 【特許文献12】米国特許第5,770,759号明細書 【特許文献13】米国特許第5,739,161号明細書 【特許文献14】米国特許第5,317,032号明細書 【特許文献15】米国特許第6,414,016号明細書 【特許文献16】米国特許第8,071,613号明細書 40 【特許文献17】米国特許第7,064,148号明細書 【特許文献18】米国特許第8,097,653号明細書 【特許文献19】米国特許第7,795,312号明細書 【特許文献20】米国特許公開第2006-0063830号明細書 【非特許文献】 【0020】 【非特許文献1】Gastroenterology 2006; 130:1480-1491 【発明を実施するための形態】 【0021】 本明細書中で用いる脂肪酸誘導体の命名は上記式(A)に示したプロスタン酸の番号付 50 (7) JP 2015-514681 A 2015.5.21 けシステムに基づく。 【0022】 式(A)は、C-20脂肪酸誘導体の基本骨格を示すが、本発明は同じ炭素原子数を持つも のに限定されない。式(A)において、脂肪酸誘導体の基本骨格を構成する炭素原子の番 号は、カルボン酸から始まり(1と番号付け)、5員環に向かって2∼7をα鎖上の炭素原子 に、8∼12を5員環の炭素原子に、13∼20をω鎖上の炭素原子に付している。炭素原子数が α鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し;α鎖上で炭素原子数が増加する場合 、2位にカルボキシ基(C-1)に代わる各置換基を有する置換化合物として化合物を命名す る。同様に、ω鎖上で炭素原子数が減少する場合、20位から番号を順次抹消し;ω鎖上で 炭素原子数が増加する場合、21位以上の炭素原子は、20位の置換基として命名する。化合 10 物の立体配置は、特にことわりのない限り、上記式(A)と同じである。 【0023】 一般的に、PGD、PGEおよびPGFはそれぞれ、9位および/または11位にヒドロキシ基を有 する脂肪酸誘導体を表すが、本明細書中では、これらはまた、9および/または11位にヒ ドロキシ基以外の置換基を有するものをも包含する。かかる化合物は、9-デオキシ-9-置 換-脂肪酸誘導体または11-デオキシ-11-置換-脂肪酸誘導体とよばれる。ヒドロキシ基の かわりに水素を有する脂肪酸誘導体は、単純に9-または11-デオキシ-脂肪酸誘導体と命名 される。 【0024】 上述のように、脂肪酸誘導体の命名はプロスタン酸骨格に基づく。化合物が天然のPG 20 と類似の部分的構造を有する場合には、「PG」の略語を利用することがある。したがって 、α鎖の炭素原子が2個延長された脂肪酸誘導体、すなわち、α鎖の炭素原子数が9である 脂肪酸誘導体は、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル) -PG化合物と命名する。同様 に、α鎖の炭素原子数が11である脂肪酸誘導体は、2-デカルボキシ-2-(4-カルボキシブチ ル)-PG化合物と命名する。また、ω鎖の炭素原子が2個延長された、すなわち、ω鎖の炭 素原子数が10である脂肪酸誘導体は、20-エチル-PG化合物と命名する。なお、これらの化 合物はIUPAC命名法に基づいて命名することも可能である。 【0025】 上記脂肪酸誘導体の置換化合物または誘導体を含む類似体の例には、α鎖末端のカルボ キシ基がエステル化された脂肪酸誘導体;α鎖が延長された脂肪酸誘導体;それらの生理 30 学的に許容される塩;2-3位に二重結合を、または5-6位に三重結合を有する脂肪酸誘導体 ;3、5、6、16、17、18、19および/または20位の炭素原子上に置換基を有する脂肪酸誘 導体;9位および/または11位にヒドロキシ基の代わりに低級アルキルまたはヒドロキシ( 低級)アルキル基を有する脂肪酸誘導体が含まれる。 【0026】 本発明において、3、17、18および/または19位の炭素原子の好ましい置換基には、1∼ 4個の炭素原子を有するアルキル、特にメチルおよびエチルが含まれる。16位の炭素原子 の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲ ン原子、例えば塩素およびフッ素、およびアリールオキシ、例えばトリフルオロメチルフ ェノキシが含まれる。17位の炭素原子の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチ 40 ルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素、アリールオキシ 、例えばトリフルオロメチルフェノキシが含まれる。20位の炭素原子の好ましい置換基に は、飽和または不飽和の低級アルキル、例えばC1-4アルキル、低級アルコキシ、例えばC1 -4アルコキシ、および低級アルコキシアルキル、例えばC1-4アルコキシ-C1-4アルキルが 含まれる。5位の炭素原子の好ましい置換基には、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ 素が含まれる。6位の炭素原子の好ましい置換基には、カルボニル基を形成するオキソ基 が含まれる。9位および11位の炭素原子にヒドロキシ、低級アルキルまたはヒドロキシ(低 級)アルキル置換基を有するPG類の立体配置は、α、βまたはそれらの混合でありうる。 【0027】 さらに、上記の類似体または誘導体は、天然のPG類よりもω鎖が短く、その切断型ω鎖 50 (8) JP 2015-514681 A 2015.5.21 の末端にアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、フェノキシおよびフェニ ルのような置換基を有してよい。 【0028】 本発明で用いる脂肪酸誘導体は、式(I): 【化4】 10 [式中、 L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アル キル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここで、LおよびMの少なくとも1 つは水素以外の基であり、該5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく; Aは、-CH3もしくは-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり; 20 Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=C H-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり; Zは、 【化5】 30 であり、ここで、 R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたは ヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシ であることはなく; R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは 複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素 残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によ り置換されていてよく;そして Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ 、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリ ール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または 不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキ シ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ; 複素環基;複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素の炭素原子の少なくとも1つは、酸素 、窒素または硫黄で置換されていてよい。] で表される。 【0029】 本明細書で用いる好ましい化合物は、式(II): 40 (9) JP 2015-514681 A 2015.5.21 【化6】 10 [式中、 LおよびMは、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アル キル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つ は水素以外の基であり、該5員環は1つ以上の二重結合を有してよく; Aは、-CH3もしくは-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり; Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=C H-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり; Zは、 【化7】 20 であり、ここで、 R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたは ヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシ であることはなく; X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり; 30 R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは 複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素 残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によ り置換されていてよく; R2は、単結合または低級アルキレンであり;そして R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキ ル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オ キシ基であり、脂肪族炭化水素の炭素原子の少なくとも1つは酸素、窒素、もしくは硫黄 により置換されていてよい。] で示される。 40 【0030】 上記式において、R1およびRaについての定義における「不飽和」なる用語は、主鎖およ び/または側鎖の炭素原子間に孤立して、分離してまたは連続して存在する、少なくとも 1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含むことを意図している。通常 の命名法に従って、2つの連続した位置の間の不飽和結合は、2つの位置の低い数を表示 することによって表され、2つの遠位の間の不飽和結合は、その両方の位置を表示するこ とによって表される。 【0031】 「低級または中級の脂肪族炭化水素」なる用語は、1∼14個の炭素原子(側鎖について は、1∼3個の炭素原子が好ましい)、好ましくは1∼10個、特に1∼8個の炭素原子を有す 50 (10) JP 2015-514681 A 2015.5.21 る直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。 【0032】 「ハロゲン原子」なる用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。 【0033】 「低級」なる用語は、本明細書を通して、特にことわりのない限り、1∼6個の炭素原子 を有する基を含むことを意図する。 【0034】 「低級アルキル」なる用語は、1∼6個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖の飽和 炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ ブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。 10 【0035】 「低級アルキレン」なる用語は、1∼6個の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖の、 二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピ レン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。 【0036】 「低級アルコキシ」なる用語は、低級アルキル-O-の基を意味し、ここで低級アルキル は上記に定義する通りである。 【0037】 「ヒドロキシ(低級)アルキル」なる用語は、少なくとも1つのヒドロキシ基により置換 されている、上記に定義する低級アルキル、例えばヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチ 20 ル、2-ヒドロキシエチルおよび1-メチル-1-ヒドロキシエチルを意味する。 【0038】 「低級アルカノイルオキシ」なる用語は、式RCO-O-により表される基を意味し、ここで RCO-は、上記に定義する低級アルキル基の酸化により形成されるアシル基、例えばアセチ ルである。 【0039】 「シクロ(低級)アルキル」なる用語は、上記に定義する低級アルキル基の環化により形 成されるが、3以上の炭素原子を含有する、環状基を意味し、例えば、シクロプロピル、 シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。 【0040】 30 「シクロ(低級)アルキルオキシ」なる用語は、シクロ(低級)アルキル-O-の基を意味し 、ここでシクロ(低級)アルキルは上記に定義する通りである。 【0041】 「アリール」なる用語は、非置換または置換芳香族炭化水素環(好ましくは単環式の基 )、例えば、フェニル、トリル、キシリルを含みうる。置換基の例は、ハロゲン原子およ びハロ(低級)アルキルであり、ここでハロゲン原子および低級アルキルは上記に定義する 通りである。 【0042】 「アリールオキシ」なる用語は、式ArO-により表される基を意味し、ここでArは上記に 定義するアリールである。 40 【0043】 「複素環基」なる用語は、置換されてよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および 硫黄原子から選択される1種または2種のヘテロ原子を1∼4個、好ましくは1∼3個有する、 5∼14員、好ましくは5∼10員環の、単環式∼三環式の、好ましくは単環式の複素環基を含 みうる。複素環基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリ ル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、 ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、2−ピロリニル、ピロリジニル、2 −イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ 、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、 プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイ 50 (11) JP 2015-514681 A 2015.5.21 ミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリル、フェノチアジニルを含む。この 場合、置換基の例は、ハロゲン、およびハロゲン置換低級アルキル基を含み、ここでハロ ゲン原子および低級アルキル基は上記の通りである。 【0044】 「複素環オキシ基」なる用語は、式HcO-により表される基を意味し、ここでHcは上記の 複素環基である。 【0045】 Aの「官能性誘導体」なる用語は、塩(好ましくは医薬上許容される塩)、エーテル、 エステルおよびアミドを含む。 【0046】 10 好適な「医薬上許容される塩」は、慣用される非毒性塩、例えば、アルカリ金属塩(例 えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩および マグネシウム塩)、アンモニウム塩のような無機塩基との塩;または、例えばアミン塩( 例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩 、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ト リエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノ エタノールアミン塩、プロカイン塩およびカフェイン塩)、塩基性アミノ酸塩(例えばア ルギニン塩およびリジン塩)、テトラアルキルアンモニウム塩のような有機塩基との塩を 含む。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によって、または塩 交換によって製造しうる。 20 【0047】 エーテルの例には、アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プ ロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブ チルエーテル、ペンチルエーテルおよび1−シクロプロピルエチルエーテルのような低級 アルキルエーテル;およびオクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエー テルおよびセチルエーテルのような中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル およびリノレニルエーテルのような不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテルの ような低級アルケニルエーテル;エチニルエーテルおよびプロピニルエーテルのような低 級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテルおよびヒドロキシイソプロピルエーテ ルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテルおよび1−メト 30 キシエチルエーテルのような低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル 、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキ シフェニルエーテルおよびベンズアミドフェニルエーテルのような、置換されていてよい アリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテルおよびベンズヒドリルエ ーテルのようなアリール(低級)アルキルエーテルが含まれる。 【0048】 エステルの例には、脂肪族エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロ ピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチ ルエステル、ペンチルエステルおよび1−シクロプロピルエチルエステルのような低級ア ルキルエステル;ビニルエステルおよびアリルエステルのような低級アルケニルエステル 40 ;エチニルエステルおよびプロピニルエステルのような低級アルキニルエステル;ヒドロ キシエチルエステルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステ ルおよび1−メトキシエチルエステルのような低級アルコキシ(低級)アルキルエステル; および、例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリ チルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステルおよびベンズアミドフェニルエステ ルのような、置換されていてよいアリールエステル;およびベンジルエステル、トリチル エステルおよびベンズヒドリルエステルのようなアリール(低級)アルキルエステルが含ま れる。 【0049】 Aのアミドは、式-CONR’R”で表される基を意味し、ここでR’およびR”はそれぞれ水 50 (12) JP 2015-514681 A 2015.5.21 素、低級アルキル、アリール、アルキル−もしくはアリール−スルホニル、低級アルケニ ルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド およびジエチルアミドのような低級アルキルアミド;アニリドおよびトルイジドのような アリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホ ニルアミドのようなアルキルもしくはアリールスルホニルアミドを含む。 【0050】 好ましいLおよびMの例としては、水素、ヒドロキシ、オキソがあり、特に、LおよびM がともにヒドロキシであるか、LがオキソでありMが水素もしくはヒドロキシである。 【0051】 好ましいAの例は、-COOH、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドである。 10 【0052】 好ましいX1およびX2の例は、ともにハロゲン原子であることであり、より好ましくは、 フッ素原子であって、これは16,16-ジフルオロタイプと称される。 【0053】 好ましいR1は、1∼10個の炭素原子、好ましくは6∼10個の炭素原子を含有する炭化水素 残基である。さらに、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素また は硫黄により置換されていてよい。 【0054】 R1の例には、例えば、以下の基が含まれる: -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2、 20 -CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、 -CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-、 -CH2-CH=CH-CH2-O-CH2-、 -CH2-C≡C-CH2-O-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、 -CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-、 30 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、 -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、 -CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-および -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-。 【0055】 好ましいRaは、1∼10個の炭素原子、より好ましくは1∼8個の炭素原子を含有する炭化 水素である。Raは1個の炭素原子を有する1または2の側鎖を有しうる。さらに、脂肪族炭 40 化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄により置換されていてよ い。 【0056】 好ましい化合物としては、式(I)において、Raがハロゲンにより置換されており、およ び/またはZがC=Oであるものか、または式(II)において、X1およびX2の1つがハロゲンで 置換されており、および/またはZがC=Oであるものが挙げられる。 【0057】 好ましい態様の例は、(-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロ キシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸 (ルビプロストン )または(-)-7-{(2R,4aR,5R,7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロ 50 (13) JP 2015-514681 A 2015.5.21 キシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸 (コビプロストン )、その互変異性体または官能性誘導体である。 【0058】 上記の式(I)および(II)において環およびαおよび/またはω鎖の立体配置は、天 然のPG類と同じであっても、または異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然 タイプの立体配置を有する化合物および非天然タイプの立体配置の化合物の混合物も含む 。 【0059】 本発明において、13および14位の間にジヒドロを有し、15位にケト(=O)を有する脂肪 酸誘導体は、11位のヒドロキシと15位のケトの間にヘミアセタールが形成されることによ 10 り、ケト-ヘミアセタール平衡の状態にありうる。 【0060】 例えば、X1およびX2の両方がハロゲン原子、特にフッ素原子である場合は、該化合物は 互変異性体として二環式化合物を含むことが確認されている。 【0061】 かかる上記互変異性体が存在する場合、両互変異性体の比率は分子の残りの構造または 存在する置換基の種類により変動する。場合により、一方の異性体が他方と比較して優先 的に存在することもある。しかし、本発明は両方の異性体を含むと解されたい。 【0062】 さらに、本発明で用いる脂肪酸誘導体は、二環式化合物およびその類似体または誘導体 20 を含む。 【0063】 二環式化合物は、式(III) 【化8】 30 [式中、 Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり; X1’およびX2’は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり; Yは、 【化9】 40 であり、ここで、 R4’およびR5’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシま たはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4’およびR5’が同時にヒドロキシおよび低級ア ルコキシであることはなく、 R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素 50 (14) JP 2015-514681 A 2015.5.21 環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素残基 であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置 換されていてよく; R2’は、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキ シ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、ア リール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基により置換された、飽和または 不飽和の低級または中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキ シ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ; 複素環基;複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素の炭素原子の少なくとも1つは酸素、 窒素または硫黄で置換されていてよく、 10 R3’は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基である。 ] で表される。 【0064】 さらに、本発明で用いる化合物は、異性体の存在の有無にかかわらずケト型に基づく式 または名称により表しうるが、かかる構造または名称はヘミアセタール型の化合物を除外 することを意図するものではないことに留意されたい。 【0065】 本発明においては、いずれかの異性体、例えば、個々の互変異性体、それらの混合物、 または光学異性体、それらの混合物、ラセミ混合物、および他の立体異性体を、同じ目的 20 に用いうる。 【0066】 本発明で用いるいくつかの化合物は、米国特許第5,073,569号、第5,166,174、第5,221, 763号、第5,212,324号、第5,739,161号および第6,242,485号明細書(これらの引用文献は 引用により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法により製造しうる。 【0067】 哺乳類対象は、いずれの哺乳類対象であってもよく、ヒトを含む。本化合物は、全身ま たは局所適用しうる。通常、化合物は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、静脈内注射 (点 滴を含む)、皮下注射、眼局所投与、直腸内投与、膣内投与、経皮投与等によって投与す ることが出来る。 30 【0068】 投与量は、動物の系統、年齢、体重、処置すべき症状、所望の治療効果、投与経路、処 置期間等に応じて変化しうる。1日に0.00001∼500mg/kg、より好ましくは0.0001∼100mg /kg量を、1日に1∼4回全身投与または連続投与することにより、満足のいく効果を得う る。 【0069】 本化合物は、従来法により投与に適した医薬組成物として製剤化するのが好ましい。か かる組成物は、経口投与、経鼻投与、眼局所投与、吸入投与、注射またはかん流に適した もの、ならびに外用薬、坐剤または膣坐剤でありうる。 【0070】 40 本発明の組成物は生理学的に許容しうる添加剤をさらに含んでいてもよい。かかる添加 剤には本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤 、潤滑剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬用基剤、エ アゾール化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤 、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性物質、例えばシクロデキストリン、生分解 性高分子、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に 関する一般書籍に記載されているものから選択してよい。 【0071】 本発明の組成物における上記に規定の化合物の量は、組成物の処方に応じて変化させて よく、一般に0.000001∼10.0%、より好ましくは0.00001∼5.0%、最も好ましくは0.0001 50 (15) JP 2015-514681 A 2015.5.21 ∼1%でありうる。 【0072】 経口投与のための固体組成物の例には、錠剤、トローチ剤、舌下錠剤、カプセル剤、丸 剤、散剤、顆粒剤等がある。固体組成物は1以上の活性成分と少なくとも1つの不活性希 釈剤を混合して調製してもよい。該組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤、例えば 、潤滑剤、崩壊剤および安定剤を含んでいてよい。錠剤および丸剤は、必要であれば、腸 溶性または胃腸溶性フィルムによって被覆してもよい。錠剤および丸剤は2以上の層によ って被覆してもよい。それらは徐放性物質に吸着させても、またはマイクロカプセル化し てもよい。さらに、本組成物は、ゼラチン等の易分解性物質を用いてカプセル化してもよ い。それらは、脂肪酸またはそのモノ、ジもしくはトリグリセリドのような適切な溶媒に 10 さらに溶解させて軟カプセルとしてもよい。即効性が必要な場合は舌下錠を用いてもよい 。 【0073】 経口投与のための液体組成物の例としては、乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエ リキシル剤等が挙げられる。かかる組成物は、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば 精製水またはエチルアルコールをさらに含んでもよい。該組成物は、不活性希釈剤以外の 添加剤、例えば湿潤剤および懸濁剤といった補助剤、甘味剤、香味剤、芳香剤および防腐 剤を含んでいてもよい。 【0074】 本発明の組成物は、1以上の活性成分を含有する噴霧用組成物の形態であってもよく、 20 これは公知の方法にしたがって調製することが出来る。 【0075】 鼻腔内の製剤の例としては、1つ以上の有効成分を含む、水性または油性の液剤、懸濁 剤または乳剤が挙げられる。吸入による有効成分の投与については、本発明の組成物は、 エアロゾルを提供し得る懸濁剤、液剤または乳剤の形態、または乾燥粉末吸入に適した粉 末の形態であってよい。吸入投与用の組成物は、さらに、慣用される噴霧剤を含んでいて よい。 【0076】 非経口投与用の、本発明の注射用組成物の例としては、無菌の水性または非水性の液剤 、懸濁剤および乳剤が挙げられる。水性液剤または懸濁剤のための希釈剤としては、例え 30 ば、注射用蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が挙げられる。 【0077】 液剤および懸濁剤用の非水性希釈剤には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレ ングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコールおよびポリソ ルベートが含まれうる。該組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の添加剤をさら に含んでいてもよい。それらは、例えば細菌保留フィルターを通した濾過、滅菌剤の配合 、またはガスもしくは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してよい。 【0078】 注射用組成物は、使用前に注射用の滅菌溶媒に溶解させる滅菌粉末組成物として提供す ることもできる。 40 【0079】 本発明の外用剤は、眼科および耳鼻咽喉科の分野で用いられる全ての外用製剤を含み、 軟膏剤、クリーム剤、ローション剤およびスプレー剤が含まれる。 【0080】 本発明のまた別の形態は坐剤または膣坐剤であり、これらは、有効成分を慣用の基剤、 例えば体温にて軟化するカカオバターと混合することにより製剤でき、吸収性を改善する ために、適当な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を用いてもよい。 【0081】 本発明によれば、本発明の脂肪酸誘導体は、下痢を伴う過敏性腸症候群、例えば下痢優 位型過敏性腸症候群(IBS-D)および交代型または混合型の過敏性腸症候群(IBS-AまたはIBS 50 (16) JP 2015-514681 A 2015.5.21 -M)の処置に有用である。特に、本発明は、BM(bowel movement:便通)の頻度に関係なく下 痢を伴う過敏性腸症候群の症候を軽減するのに有用である。 【0082】 さらに、本発明によれば、本発明の脂肪酸誘導体は、下痢を伴う過敏性腸症候群と関連 があるおよび/または下痢を伴う過敏性腸症候群を伴う症状、例えば、異常に多数の細菌 (少なくとも体液1ml当たり100,000個の細菌)が小腸内に存在し、小腸内の細菌の種類 が、小腸よりも大腸の細菌に類似している症状である、小腸細菌過増殖(SIBO)を処置する のに有用である。 【0083】 本明細書において用いる「処置すること」または「処置」なる用語は、予防的および治 10 療的な処置を含み、予防、治療、症状の軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる制 御手段を含む。 【0084】 本発明の医薬組成物は、本発明の目的に反しない限り、単一の活性成分または2つ以上 の活性成分の組合せを含んでよい。 【0085】 複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を 考慮して適宜増減してよい。 【0086】 本明細書において用いる「組合せ剤」という用語は、2つ以上の有効成分が、患者に、 20 単一の実体または剤形で同時に投与されるか、または別々の実体として、特に時間の制限 なく、同時または連続的に投与され、該投与により、体内中でのかかる2つの成分の治療 有効レベルが、好ましくは同時に得られることを意味する。 【0087】 本発明のさらなる詳細は、以下の実施例を参照に記載するが、これは本発明の範囲を限 定することを意図するものではない。 【実施例】 【0088】 実施例1 ベースライン調査の間に、25%以上軟便または非常に柔らかい便であった患者を、下痢 30 を伴う過敏性腸症候群の患者として登録した。該患者は、1日当たり、プラシーボまたは ルビプロストン16mcgの投与を受けた。 【0089】 7点のバランス評価を用いて、以下の質問に答えることによって、症候緩和について週 ベースで患者に質問した: 試験を開始する前の感覚と比較して、ここ数週間のIBS症候 (腹部不快感/痛み、排便習慣 および他のIBSの症候)の軽減をどのように評価しますか? ・有意に軽減した ・中程度に軽減した ・少し軽減した ・変化無し ・少し悪化した ・中程度に悪化した ・有意に悪化した 【0090】 対象が、中程度または有意に軽減したと答えた場合、該対象は週レスポンダーである。 【0091】 結果を表1に示す。 40 (17) JP 2015-514681 A 2015.5.21 【表1】 【0092】 10 結果から、本発明の化合物は、下痢を伴う過敏性腸症候群の処置に有用であることが示 される。 【0093】 実施例2 実施例1で規定した、下痢を伴う過敏性腸症候群の患者は、ルビプロストンを1日あた り16mcgの量で12週間投与を受けた。 【0094】 評価は以下の判断基準によって行った。 腹部膨満感の主観評価: 0 = なし、1 =軽度、2 = 中程度、3 = 重度および4 = 非常に重 度 20 腹部不快感/痛みの主観評価: 0 = なし、1 = 軽度、2 = 中程度、3 = 重度および4 = 非 常に重度 便秘の重症度の主観評価: 0 = なし、1 = 軽度、2 = 中程度、3 = 重度および4 = 非常に 重度 BM 頻度 = (7 x BMの回数) / (日数) 腸の緊張の主観評価: 0 = なし、1 = 軽度、2 = 中程度、3 = 重度および4 = 非常に重度 【0095】 結果は表2に示す。 【表2】 30 40 【0096】 表2によれば、下痢を伴う過敏性腸症候群の患者の症候は、実質的にBMの頻度に影響を 与えることなく、腹部膨満感、腹部不快感/痛み、便秘の重症度および腸の緊張について 改善が見られた。 【0097】 この結果により、本発明の化合物は、BMの頻度に関わらず、下痢を伴う過敏性腸症候群 の症候を軽減するのに有用であることが示される。 (18) JP 2015-514681 A 2015.5.21 【国際調査報告】 10 20 30 40 (19) JP 2015-514681 A 2015.5.21 10 20 30 40 (20) JP 2015-514681 A 2015.5.21 10 20 30 40 (21) JP 2015-514681 A 2015.5.21 フロントページの続き (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,T M),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,R S,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB, BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,H U,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI ,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG, US,UZ,VC 10 Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 BA05 MA01 MA04 ZA73 ZC12
© Copyright 2024 ExpyDoc